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2025/01/16 (Thu) 01:31:22
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レイ・ダリオ著 「変わりゆく世界秩序」
Principles by Ray Dalio 2023/10/03
https://www.youtube.com/watch?v=y3oy8y0EljY
世界秩序の変化に対処するための原則 なぜ国家は興亡するのか – 2023/9/23
レイ・ダリオ (著), 斎藤聖美 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%A7%A9%E5%BA%8F%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8C%96%E3%81%AB%E5%AF%BE%E5%87%A6%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87-%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%AF%E8%88%88%E4%BA%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%AA/dp/4296116185/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=
【内容紹介】
米中交代のシグナルはどこを見れば分かるか。
過去の類似する時期を学べば、
これから起きる事に対応できる。
世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者が、世界秩序のサイクルを明かす。
過去の教訓から学び、未来を歩むための実践的ガイドブック
●伝説的投資家で世界的ベストセラー『PRINCIPLES』の著者レイ・ダリオは、半世紀以上をかけて世界各国の経済とマーケットを調べ上げてきた。その彼が、過去500年に起きた政治的・経済的な激変を研究し、現在に生きる人々が経験したことのない根本的変化が、将来、発生し得ることを解説する。だが、これらの激変は、過去の類似する時期に起きてきたことなのだ。
●数年前、ダリオはこれまで経験したことのない大きな出来事を目撃した。巨大債務と、ゼロあるいはゼロに近い金利が同時に生じ、世界の3大準備通貨で大規模な金融緩和がなされた。過去1世紀で最大と言える経済的・政治的格差と価値観の相違により、各国で大きな政治的・社会的な対立が生じた。それはとくにアメリカで顕著だった。新たな世界的勢力(中国)が興隆し、既存の世界大国(アメリカ)と世界秩序に挑戦するようになった。これらにもっとも類似する出来事が起きたのは、1930~1945年だ。これを目の当たりにしたダリオは、過去500年の主要な帝国とその通貨の興亡を研究し、その盛衰の背後にあるパターンと時空を超えた因果関係を探求した。その成果が、本書である。
●パートIでは単純化した典型的な帝国の興亡を解説。パートⅡでは過去500年間に準備通貨国となったオランダ、イギリス、アメリカについて深く掘り下げ、さらに米中対立についても1章割く。パートⅢでは、これらすべてが将来にどういう意味を持つかを論じる。
「本書をなぜ書いたのかと不思議に思っているかもしれない。今までは自分が学んだことを口にすることはなかった。だが、人知れず達成することはもうあまり重要ではなく、私の学んだことが他の人の役に立てばと思う人生の段階にきている。私が目指すのは、世界がどう機能するかを見るために私が作ったモデルを伝えることだ。現在起きていることと表面的な形は違っても、パターンとしてはよく似た事象が歴史では繰り返し起きている。まるで「韻を踏む」ように。過去500年の歴史を1つのわかりやすい物語として伝えたい。そして、あなたたちがもっとよい意思決定をして、もっとよい将来を手にするお手伝いをしたい。」──(本書より)
【目次】
PART I 世界はどのような仕組みになっているのか
はじめに
1 ビッグ・サイクルをごくごく簡単にまとめると
2 決定要因
補遺 決定要因
3 お金、信用、債務、そして経済活動のビッグ・サイクル
4 貨幣価値の変化
5 内部秩序と内部混乱のビッグ・サイクル
6 外部秩序と外部混乱のビッグ・サイクル
7 ビッグ・サイクルに照らし合わせて投資する
PART II 世界は過去500年間、どのように動いてきたのか
8 ごく簡単に過去500年間をまとめると
9 オランダ帝国とギルダーの興隆と衰退のビッグ・サイクル
10 大英帝国とポンドの興隆と衰退のビッグ・サイクル
11 アメリカ合衆国とドルの興隆と衰退のビッグ・サイクル
12 中国と人民元のビッグ・サイクル
13 米中関係と米中戦争
PART III 将来
14 将来
付記 主要国の現状と長期見通しのコンピュータ分析
南海泡沫事件: バブル経済の語源となった近世イギリスの株式バブルを振り返る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/3199
世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 2020年5月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨 2020年5月23日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 2020年5月25日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10953
世界最大のヘッジファンド: 豊かな国ほど借金まみれになる理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175
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レイ・ダリオ氏の新著: 基軸通貨を持つ世界一の大国でも政府債務増加で破綻する
2025年1月14日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58483
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInの自身のブログで新著を発表しているので内容を紹介したい。
ダリオ氏が新著発表
ダリオ氏と言えば、コロナ初期に先進国政府が現金給付を決めた時、多くの人々が現金給付の危険性を無視した中で、ダリオ氏は淡々とインフレ政策の研究を進め、歴史上の大国のほぼすべてが債務とインフレによって衰退していったという歴史的事実を著書『世界秩序の変化に対処するための原則』に纏めたことで有名である。
そしてその後世界はダリオ氏の予言通りインフレに見舞われたことは今や誰もが知っている。
そのダリオ氏が新著を発表している。その名も『国家はどのようにして一文無しになるのか?』(日本語版はまだなので筆者仮訳)である。
ダリオ氏は新著のテーマとして、以下の論題を挙げている。
政府債務の増加には限界はないのか?
政府債務の増加が止まらない場合、金利には何が起き、それはどういう結果に繋がるのか?
世界で使われる主要な通貨を持つ大国が財政破綻することはあるのか? あるとすれば、それはどのように起きるのか?
明らかに先進国の破綻を心配しているダリオ氏
新著のタイトルを読んで筆者は少し笑ってしまったのだが、ダリオ氏は明らかにアメリカや日本などの先進国の破綻を心配している。
レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する
インフレが起きる前にインフレをテーマにして本を書いたダリオ氏は、『世界秩序の変化に対処するための原則』では歴史上の例を交えて国家が大国へと成長してからインフレと債務で衰退してゆくまでの様子を解説していたが、今回は直球で破綻に焦点を合わせている。
つまりダリオ氏は、コロナ後のインフレと金利上昇によってその段階が近づいたと予想しているのだろう。
先進国は破綻しないのか?
ダリオ氏は次のように述べている。
一部の人々は政府債務の増加には限界はなく、その国の通貨が世界で使われている準備通貨である場合には特にそうだと信じている。
世界中で広く使われている準備通貨を持つ中央銀行は、いつでも紙幣を印刷して負債を払うことができると彼らは信じているからだ。
コロナ前には、インフレ政策には何の問題もないと主張する人々が、インフレ政策を公然と行う政党を支持していた。インフレ政策の目標であるインフレ自体が問題なのに何を言っているのかと筆者は思っていたが、今でもそう主張する人はいる。
ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11992
だがダリオ氏のように、歴史を少しでも勉強した人には、現実はその逆だということが分かる。むしろ債務増加とインフレを引き起こして無事だった国などほぼ皆無なのである。
ダリオ氏は次のように続けている。
1700年以来存在した750の通貨および国債のうち、現在ではたった20%しか生き残っておらず、生き残っているものもそのすべてがわたしがこの新著で説明しているメカニズムによって大きく価値が毀損されている。
それは先進国であろうが発展途上国であろうが関係がない。そしてそれは過去の現象ですらない。何故ならば、例えばアルゼンチンは以前は1人当たりGDPが日本より高い先進国だったが、政治家によるインフレ政策と無節操な政府支出によってハイパーインフレに陥ったからである。
ミレイ大統領、インフレ政策を永遠に続けるとどうなるかを語る
ミレイ大統領、政府支出を削減してハイパーインフレを打倒した方法を語る
ダリオ氏のように、実際にこうした研究を少しでも始めてみると、逆に「先進国は破綻しない」という主張にほとんど根拠がないことが分かる。
だがダリオ氏によれば、国家が大国に育って債務を積み上げ、インフレと通貨安を引き起こして衰退してゆくまでのサイクルには100年ほどの時間がかかり、生きている人は誰もそれを経験したことがないため、それが起こらないと思い込むという。
ダリオ氏は次のように警告している。
莫大な政府債務が急増しているとき、これまでの事例をきちんと勉強せずに、今回はこれまでとは違うと想定するのは危険だ。
それは今生きている人が生まれて以来内戦や世界大戦が起きていないから、そういうものはもう二度と起きないと想定するようなものだ。
結論
戦争の研究は多くの人が何百年もやってきたから、戦争が二度と起こらないと想定する人はいないだろう。だが国家の成長と衰退のサイクルは一般の人にはまだほとんど知られていない。
ダリオ氏の新著は、アメリカや日本の現実がコロナ後に急激に衰退の段階に近づいたため、衰退のフェイズが具体的にどのようにして起きるのかに焦点を置いたものになる。
レイ・ダリオ氏: 莫大な政府債務のせいで日本の円安とインフレは止まらない
出版はもう少し先になるだろうが、ダリオ氏は内容をブログで紹介しているので引き続きそちらを報じてゆきたい。
増税とインフレと通貨安に苦しむ人にとっては必読の本になるだろう。前著『世界秩序の変化に対処するための原則』の続きということになるので、そちらをまだ読んでいない人は新著の出版までに読んでおくことをお勧めする。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58483
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レイ・ダリオ氏: 政府の借金が中央銀行の紙幣印刷で解決できない理由
2025年1月15日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58524
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、自身のブログで新著『国家はどのようにして一文無しになるのか?』(仮訳)の内容を解説しているので、引き続き紹介してゆく。
ダリオ氏の新著
前回の記事で述べた通り、コロナ後のインフレを早々と予期し、インフレになる前に歴史上のインフレの研究を纏めた著書
『世界秩序の変化に対処するための原則』
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%A7%A9%E5%BA%8F%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8C%96%E3%81%AB%E5%AF%BE%E5%87%A6%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87-%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%AF%E8%88%88%E4%BA%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%AA/dp/4296116185?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=TDM09MVBZJYL&dib=eyJ2IjoiMSJ9.2qGKODN6BuEkRGN66w2lk5c7tiDRWnjw8QLPf8q8a4_lBi1_BZsYeLlqKq40XOphncuWPFl1F2t9xsgXoBkP3KJZtXtzyxctA4LTs9rv921NiLX1BPDxa4TnhoMsscmhn6UucyuTZ6A4qham6cIM8w07-1Xo4QFNrXd-0FQDD5mKyIStvOhbFihdu6RlizxhM_0XBGrfr47Mn_Gvh615MpmzvZiEFocTDRK2vOyaUGU.JUyDI1IllWDpBrm9koD1ocXqqBMm8byeXtcgoOzKRro&dib_tag=se&keywords=%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%AA&qid=1711598966&rnid=2321267051&s=books&sprefix=%E3%83%80%E3%83%AA%E3%82%AA,aps,173&sr=1-1&linkCode=sl1&tag=globalmacrore-22&linkId=68780e19b8fca524d8a1da3965884e95&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl
を書いたダリオ氏が、新たな本を発表した。
レイ・ダリオ氏の新著: 基軸通貨を持つ世界一の大国でも政府債務増加で破綻する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58483
その名も『国家はどのようにして一文無しになるのか?』である。
これまで歴史上国家がどのように成長して大国になり、そこから債務の増加とインフレによって衰退していくのかを説明していたダリオ氏が、今度は衰退の段階にだけに焦点を当てた本を出そうとしている。
それは何故かと言えば、先進国経済がまさにその衰退の段階に近づいているからである。
景気のサイクル
ダリオ氏は何故そう予想しているのか。それは、普段の好景気・不景気のサイクルの他に、更に大きい債務の長期サイクルというものを想定しているからである。
ダリオ氏は次のように述べている。
景気のサイクルについては多くの人が認識していて、それは短期の債務サイクルによって引き起こされると気付いている人もいるが、長期の巨大な債務サイクルについてはそうではない。誰も気付いておらず、それについて話す人もいない。
普通の景気のサイクルとはこういうものだ。中央銀行が金利を下げ、それによって人々が借金を増やす。借金でものを買うので景気が過熱する。
低金利を続けると景気が過熱し過ぎるので中央銀行が緩和を止め、やがて利上げをするようになる。そうすると景気が減速し、最終的には借金のバブルが崩壊して短期サイクルが一巡する。
このようにして2000年のドットコムバブルや2008年のリーマンショックが起こり、その後中央銀行は低金利政策に戻って短期サイクルがもう一度始まるということが繰り返されてきた。
長期の債務サイクル
バブル崩壊は、その後1〜2年の景気後退をもたらしはしたものの、その後景気は回復してきた。だから多くの人々はドットコムバブルもリーマンショックも終わった話だと考えている。
だが、筆者やダリオ氏が指摘したいことが1つある。危機を繰り返す度に、緩和政策の副作用が酷くなっているということである。
リーマンショックまでは量的緩和、つまり中央銀行による紙幣印刷でも実体経済への副作用はないように見えた。だがコロナ後には量的緩和以上の緩和政策が必要となり、印刷した紙幣を直接国民に給付する現金給付が行われ、緩和政策は遂に実体経済の物価高騰を引き起こした。
トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
これは個々のバブルの生成と崩壊の話とは別のトレンドである。つまり、リーマンショックの話はそれだけで終わっていないし、コロナショックのインフレも、それが終わったと思えるのは次の危機が来るまでだろう。
短期のサイクルにおけるバブルの生成と崩壊を通してどんどん悪化しているこの状況こそが、ダリオ氏の言う長期の債務サイクルなのであり、しかもダリオ氏はこの長期サイクルが終わりに差し掛かっていると考えている。
長期の債務サイクルの終わり
ダリオ氏は、短期サイクルと長期サイクルの違いについて次のように説明している。
短期の債務サイクルと長期の債務サイクルの主な違いは、中央銀行がそれをひっくり返せるかどうかだ。
短期の債務サイクルなら、その減速フェイズは中央銀行が紙幣と信用を大量にばら撒けばデフレ状態の不景気から経済を持ち上げ、元に戻すことができる。
経済にはインフレなき成長を続ける余力がまだ残っているからだ。
だが短期の債務サイクルを人為的に元に戻すには政府債務の増加を必要とする。
そしてそれは経済危機のたびに膨張し続け、インフレによって金利が上がり、今のアメリカのように膨張した政府債務に高い金利がついて、借金の利払いだけで債務が急激に増えてゆく状況が生じる。
レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する
短期のバブル崩壊を紙幣印刷で解決することは、長期の債務サイクルを悪化させることに繋がる。それは数十年かけて少しずつしか悪化しないので、多くの人々には長期のサイクルなど存在しないように見える。
だがこの長期の債務サイクルこそが国家の「老化」の兆候であり、人が中年になり白髪になって死んでゆくように、国家も債務を増やしインフレを引き起こして死んでゆくのである。
それがかつての覇権国家、大英帝国やオランダ海上帝国などにも起こったことであり、ダリオ氏はそうした歴史研究を前著『世界秩序の変化に対処するための原則』に纏めている。
歴史上それを逃れた覇権国家などないというのに、アメリカだけそこから逃れられると考える理由は何だろうか。
結論
問題は、それは中央銀行の紙幣印刷ではどうしようもないことだ。ダリオ氏は次のように述べている。
しかし長期の債務サイクルの景気減速フェイズでは、中央銀行が紙幣と信用をばら撒いても元に戻せない。負債とその増加が持続不可能なレベルになっていて、国債の保有者が国債の価値が維持されることを信じなくなっているので、国債から逃げ出そうとするからだ。
中央銀行が問題を解決できるのは、印刷された紙幣を国民が有難く受け取る間だけだ。だが人々はインフレと通貨安によって徐々に紙幣の価値に疑問を持ち始めている。そういう人々は貴金属やビットコインを買っている。
ポール・チューダー・ジョーンズ氏がインフレ再燃予想、ゴールドとビットコインとNasdaqを推奨
レイ・ダリオ氏: 人々が自国通貨の無価値さに気付くにつれてゴールドやシルバーへの逃避が加速する
中央銀行がいくら紙幣を印刷しても、人々がそれを受け取らなければ、穴の合いたグラスに水を注ぎ続けるようなものだ。ゾルタン・ポジャール氏が世界的なドル離れの帰結は米国債の下落だと言っていたことを思い出したい。
ポジャール氏: 世界的なドル離れの結果はドル円下落ではなくアメリカの財政危機
そうなれば緩和によって経済を支えてきた時代が終わる。長期の債務サイクルの終焉である。
人々がインフレによって紙幣の価値に疑問を持ち始めていることが、長期の債務サイクルが終わり始めていることの証明なのである。
ダリオ氏は次のように結論している。
世界経済は、歴史上何度も起こってきた政府と中央銀行の破綻のシナリオに突き進んでいる。そしてそれは大きな政治的・地政学的結末を引き起こす。
ダリオ氏が前著『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説したように、経済不安は政治不安を呼ぶからである。それらは連動している。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58524
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レイ・ダリオ氏: インフレと通貨安のリスクを考えれば政府がデフォルトするかどうかは問題ではない
2025年1月16日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58565
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、自身のブログで新著『国家はどのようにして一文無しになるのか?』(仮訳)の内容を解説しているので、引き続き紹介してゆく。
衰退に近づく先進国
ダリオ氏のテーマは政府債務と、それに伴うインフレや通貨安である。それは前著『世界秩序の変化に対処するための原則』で、歴史上の国家が大国に成長してから債務増加とインフレで衰退してゆく様子を解説した頃から変わっていない。
だが新著は、そのタイトルから分かる通り、国家の興亡の段階のうち衰退のフェイズに焦点を当てていることが分かる。
何故衰退に焦点を当てているかと言えば、ダリオ氏はコロナ後のインフレでアメリカや日本などの先進国がその段階に近づいたと感じているからである。
レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する
政府債務は問題ないのか
問題の根源は政府による政府支出と政府の借金である。コロナ後、先進国の莫大な現金給付が世界的なインフレを引き起こした。
トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
政府債務は問題ないのか。それこそダリオ氏が前著で語っていたことだが、低金利政策は最初はインフレなき株高を生む。流入した資金が金融市場にしか行かない間は、インフレ政策に副作用がないように見える。
しかし低金利政策は量的緩和になり、コロナ後には量的緩和でも足りなくなって現金給付に移行し、世界的な物価高騰を生んだ。
そしてインフレ対策で金利を上げなければならなかったことによって、政府債務に多額の利払いが発生し、アメリカではGDPの4%近くが国債の利払いに消えている。
アメリカは借金の利払いを新たな借金によって返している。だがそれが新たな利払いを生む。
それで政府債務がねずみ算式に増えており、多くの機関投資家がアメリカの財政を心配しているのである。
ヘイコック氏: 米国は債務危機を乗り切るためにドルを犠牲にし下落させる
国債を持つリスク
機関投資家たちは主に国債の価格下落を心配しているが、それは一般の国民にとっても他人事ではない。何故ならば、人々の預金先の銀行は預金で国債を買っているので、預金者は間接的に国債を保有していると言えるからである。
だが一般に、あるいは金融業界でも国債は安全資産だということが言われていた。だがインフレや通貨安が起きる世界では、「安全」の意味を考える必要がある。
ダリオ氏は次のように言っている。
わたしにとって興味深いことだが、格付け会社が国債の格付けを行うとき、国債が価値を失うリスクを評価していないことは不適切だ。
彼らはデフォルトのリスクだけを評価する。そしてそのことにより、高格付けの国債はすべて富の貯蔵手段として安全だという誤解を与えてしまう。
ダリオ氏が言っているのは、インフレや通貨安のリスクのことである。ダリオ氏の前著の歴史研究では、歴史上のすべての通貨はインフレや通貨安で消え去るか、そうでなくとも大幅に価値が下がってきた。
レイ・ダリオ氏: ドルは大英帝国のポンドと同じように長期的に下落してゆく
価値が上がった通貨などない。それは政府が自分の債務負担を実質的に減らすため、金貨でも銀貨でも紙幣でも、その価値を長期的にずっと下げ続けてきたからである。
借金とは紙幣を返すという約束である。だから紙幣印刷は債務者にとって得になる。しかし国債を持っているのは実質的に国民だから、国民にとっては自分の資産を政府によって減価させられるということを意味しているのである。それがインフレであり、通貨安である。
ミレイ大統領、インフレ政策を永遠に続けるとどうなるかを語る
紙幣印刷の意味
中央銀行が紙幣を印刷すれば政府債務は返せる、だから先進国はデフォルトしないということがまことしやかに囁かれてきた。
それは正しい。中央銀行が紙幣印刷をすれば政府はデフォルトしない。だが、それは通貨安とインフレで国民がどうなっても良いと考える人だけが口にするアイデアである。
事実、日本円の価値はアベノミクス以来の量的緩和によってドルと比べて半分になっている。それは日本円を保有する日本人にとって輸入物価が倍になったことを意味する。
だが、日本円に比べれば価値を維持しているように見えるドルでさえも、これまでのインフレのお陰でゴールドに比べれば著しく減価しているのである。
レイ・ダリオ氏: 人々が自国通貨の無価値さに気付くにつれてゴールドやシルバーへの逃避が加速する
では日本円はゴールドに比べてどれだけ価値を失ったのか。あなたの財布に入っている紙幣の話である。
結論
どんどん紙幣ではものが買えなくなってゆく。だがそれはものの価値が上がっているということではない。あなたの持っている紙幣の価値が下がっているのである。
「国債や預金は安全だ」「政府はデフォルトしない」という主張は、インフレや通貨安という現実の前には何の意味も持たない。無意味な主張である。
ダリオ氏は次のように言っている。
中央銀行は政府を救済できるので、国債の本当のリスクは隠される。
債権者にとっては、格付け会社がデフォルトと減価の両方のリスクを正しく評価できていた方が良かっただろう。結局、国債は富の貯蔵手段なのだから、そのように評価されるべきなのだ。
デフォルトか減価か、そんなことはどちらでもいい。わたしにとって重要なのはその資産価値が下がるかどうかであって、それはどちらにしても避けられない。
「それはどちらにしても避けられない」とさらっと書いているところが恐ろしい。だがダリオ氏の前著の歴史研究を読めば、それを避けられた大国など歴史上ほとんどないことが分かるのである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58565
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レイ・ダリオ氏: アメリカが破綻しそうかどうか調べる方法
2025年1月19日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58660
世界最大のヘッジファンドBridgewaterのレイ・ダリオ氏が自身のブログで新著『国家はどのようにして一文無しになるのか?』(仮訳)の内容を紹介している。
国家の寿命
これはダリオ氏の前著『世界秩序の変化に対処するための原則』でもテーマになっていたことだが、国家には繁栄して衰退するまでのサイクルがある。
前著では、アメリカの前に覇権国家だった大英帝国やオランダ海上帝国などが成長して衰退するまでの段階を詳しく説明していた。
今回の著書でもダリオ氏は次のように言っている。
長期の債務サイクルの進行は、病気や寿命までの各段階の進行のようなもので、それぞれの段階に異なる兆候が見られる。
だから兆候を見ればサイクルが何処まで進行し、次にどうなりそうかが大体分かる。
人間と同じように国家にも寿命があるとダリオ氏は言っているのである。そして、歴史上すべての覇権国家が繁栄して衰退していったように、今の覇権国家であるアメリカもそこからは逃れられない。
国家の段階
だが問題は、今のアメリカは繁栄から衰退の段階のうち何処にいるのかということである。アメリカは衰退の段階に近いのか、遠いのか。
人間なら、まず子供から大人へと成長し、徐々に老いの兆候が見られ、白髪が生え、徐々に病気も多くなり、認知機能や身体機能が衰え、やがて死んでゆく。
ダリオ氏によれば、国家も同じである。成長する国家の最初の段階についてダリオ氏は次のように述べている。
健全な財務の段階: 債務の水準は低く、金融政策は健全で、国の競争力は高く、債務の増加は生産性の増加に繋がっている。
最初は民間で健全な借り入れが行われ、借金は返済される。だが徐々に民間が借りすぎに陥り、損失をかかえ、返済に問題が生じる。
この債務の長期サイクルの初期段階では、通貨には現物資産の裏付けがある。
最初、国家には借金がない。経済は成長してゆき、債務は少しずつ増えてゆくがまだ問題になる規模ではない。
また、通貨にゴールドやシルバーなどの裏付けがある(金本位制・銀本位制)ことがこの段階の特徴である。それは段々変わって行かなければならないのだが。
債務膨張の段階
前著『世界秩序の変化に対処するための原則』にも書いてあることだが、債務の量は一番分かりやすい国家の寿命を計る指標である。
国家が歳を取るにつれて債務が段々増えてゆく。ダリオ氏は次の段階について次のように述べている。
債務バブルの段階: 債務と投資の伸びが収入では賄えないほどに増えてくる。
この段階ではお金はばら撒かれ、負債による経済成長とバブルが見られる。
「お金がばら撒かれている」というところがポイントである。政府は苦労して金鉱山まで行って、ゴールドを採掘して金貨をばら撒くわけではない。
政府はまず金貨のゴールドの含有量を薄め、金貨を多く作り出してそれを自由に使う。それでも駄目なら何の価値もない紙幣がお金として代用される。それが歴史上起きてきたことである。
政府は自分が自由に支出するために通貨の価値をどんどん下げてゆく。それは金貨でも紙幣でも変わらない。ダリオ氏が新著において強調している歴史的事実である。
レイ・ダリオ氏: すべての通貨は最終的に価値を落とされて死ぬという歴史的事実を認識すべき
だが、その問題は最初の何年かは表面化しない。アメリカが量的緩和を始めたのはリーマン・ショック後だが、インフレになったのはそこから緩和政策がエスカレートして現金給付に移行した時である。
トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
問題が生じるまでは、誰もが紙幣印刷を喜んでいた。インフレを目指したインフレ政策がその名の通りインフレを引き起こすまで誰も何もおかしいと思わなかった。何の冗談なのか。ダリオ氏はその段階について次のように述べている。
市場も経済も上手く行っているように見え、誰もが更に良くなると信じていてるが、それは大量の借金によって生み出されており、富は何もないところから作り出されている。
ダリオ氏はコロナ後、口癖のように次のように言っていた。
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。
紙幣は食べられない。
債務バブルの崩壊
そして遂に最後の瞬間が来る。ダリオ氏は次のように述べている。
債務の縮小の段階: 痛みを伴う借金とその利払いの解消が、収入に見合った大きさに戻り、債務が持続可能な状態になるまで続く。
最終的に、ツケを払う瞬間が来る。緩和政策がインフレを引き起こし、インフレは金利の上昇を引き起こして、これまでゼロ金利だった大量の政府債務に利払いが発生する瞬間が来る。
実際、アメリカの国債の利払いはGDPの4%に達しようとしている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2024/07/2024-2q-us-federal-government-interest-payment-to-gdp-chart.png
借金を紙幣印刷で返そうとすればインフレになり、インフレを止めようとすれば金利が上がって借金が増える。どうしようもない袋小路に突っ込んだとき、国家の終わりが来る。大英帝国もオランダ海上帝国もそのように沈んで行ったのである。
結論
重要なのは、これがアメリカに関するダリオ氏の予想ではなく、これまでの覇権国家に起きたことの歴史分析だということである。過去の覇権国家がどうなったかは前著『世界秩序の変化に対処するための原則』で詳しく解説されている。
従ってこれは事実に過ぎない。その実際に起きた諸段階に照らし合わせてみると、アメリカは何処にあるのか。現金給付、インフレ、利払いの増加などを見れば、債務バブルの頂点から崩壊に差し掛かる辺りだと言えるだろう。
だからダリオ氏は『国家はどのようにして一文無しになるのか?』というタイトルで新著を書いているのである。そして同じことを心配している著名投資家は多い。
ベッセント氏: 米国の債務問題にはアメリカの覇権がかかっている
ガンドラック氏: 利下げで長期金利が上がっているのは米国債暴落の予兆
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58660
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レイ・ダリオ氏: 量的緩和が現金給付になったように、現金給付はやがてハイパーインフレに進化する
2025年1月20日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58719
引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の新著『国家はどのようにして一文無しになるのか?』(仮訳)の紹介である。
今回はダリオ氏が先進国の金融政策の行方について語っている部分を紹介したい。
国家にも寿命がある
ダリオ氏は前著『世界秩序の変化に対処するための原則』の時から国家の興亡についての歴史研究をやっている。前回の記事では、ダリオ氏は国家が成長し大国になってから徐々に負債を増やしてインフレで破綻してゆくまでの国家の一生について説明していた。
レイ・ダリオ氏: アメリカが破綻しそうかどうか調べる方法
ダリオ氏によれば、人間にも若者と年寄りがいるように、国家にも若者と年寄りがある。世界の大国は元々は実力で経済成長をしていたが、徐々に負債に頼るようになり、最終的には負債でも成長を保てなくなって衰退してゆく。
国家が繁栄から衰退の歴史的なサイクルの内、今どこにいるのかを計る上でダリオ氏は負債の量を指標の1つに挙げていたが、今回は別の指標について語っている部分を紹介する。
国家の年齢と金融政策
それは金融政策である。ダリオ氏は次のように述べている。
長期の債務サイクルの段階はどういう金融政策が使われているかにも表れている。
長期の債務サイクルが進行するにつれて、中央銀行は信用と負債と経済の拡大を保つために金融政策のやり方を変えなければならなくなる。
つまり、若い国と老いた国は異なる金融政策を使っているということである。
国家の寿命が近づくにつれて、金融政策はどう変わってゆくのか。ダリオ氏は順を追って説明している。
金本位制の段階
まず最初の段階は金本位制の段階である。この時点では通貨はゴールドやシルバーなどの現物資産の裏付けがある。
歴史的には、紙幣は元々ゴールドの預かり証だった。人々はゴールドを銀行に預け、預かり証である紙幣を中央銀行に持っていけばゴールドを取り戻すことができた。それこそが誰もが紙幣を信頼している理由だった。
だが歴史上金貨は徐々に政府によってゴールドの含有量を減らされてきたように、政府はゴールドの保有量を上回る紙幣を勝手に使うようになり、紙幣の保有者が中央銀行へ行ってもゴールドが返ってこない事態になった。
それで政府は紙幣を持ってきてもゴールドを返さないという決断を下した。1971年のニクソンショックである。
レイ・ダリオ氏、紙幣が紙切れになり物価高騰を引き起こした1971年のニクソンショックを説明する
この時点をもって紙幣は本当に何の価値もないただの紙切れとなった。ダリオ氏は次のように述べている。
アメリカはこのタイプの金融政策を1944年から1971年まで使っていた。
だが何故か人々はその後も紙幣を使い続ける。
金融緩和の段階
政府はこれまで紙幣をゴールドの裏付けなく勝手に使うことで金融政策を行なってきたが、紙幣がそもそもただの紙切れとなった後は、金利操作と量的緩和の時代がやってくる。
どちらも金利を下げることを目的とした金融政策であることは変わらない。
金利低下は債務者の債務負担を押し下げることになり、政府自体が経済最大の債務者なので、政府は自分で金利を下げることによって何年も自分の債務負担を減らし続けてきた。
一方で預金者は本来、低金利政策がなければ受け取っていたはずの金利収入を失うことになる。だからダリオ氏は低金利政策を預金者から政府への資金流出だと指摘していた。
レイ・ダリオ氏: 日本人は日本政府の低金利政策のせいで年間7%の資産を失っている
だがこの金利操作の段階も永遠には続かない。短期の金利も長期の金利もゼロに近づいてしまったとき、それ以上の大きな緩和ができなくなるからである。
現金給付の段階
低金利政策が限界に達したとき、政府はどうするのか。
それは現代ではコロナの後に起こった。現金給付である。中央銀行が紙幣を印刷して政府に資金を融通し、政府がそれを直接消費者に配る。
だがこの政策は経済全体に影響を与える規模で行えばインフレを引き起こす。
トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
問題は、このプロセスが不可逆だということである。緩和政策はどんどん過激になってゆくが、その効果は薄くなってゆく。
現金給付に移行したのは量的緩和では十分ではなくなったからであり、現金給付がインフレを引き起こしたからといって前の段階に戻ることは出来ないのである。
だから60代の人間が50代に戻ることが出来ないように、国家もこのプロセスを前に進むしかない。では、現金給付の段階の次には何が起こるのか。
信用縮小の段階
それは、やや専門的に言えば信用縮小の段階であり、分かりやすく言えばこれまで増やしてきた借金のツケを何らかの形で払う段階である。それは国家の終わりを意味する。
ダリオ氏によれば、この段階では紙幣の信頼が地に堕ち、人々がゴールドなどの紙幣の代わりの資産に逃避する。
それは現代において既に始まっている。
レイ・ダリオ氏: 人々が自国通貨の無価値さに気付くにつれてゴールドやシルバーへの逃避が加速する
ミレイ大統領: ビットコインは中央銀行という詐欺行為に対する自然な反応
インフレはものの価値が上がることではなく、紙幣の価値が下がることである。だから紙幣では十分なものが買えなくなる。
それに気付いた人から紙幣から逃げてゆく。そして人々が紙幣から逃げれば逃げるほど、インフレは酷くなる。
それでも経済危機は起きる。政府はどうするか。現金給付で更なるインフレを引き起こすか、緩和を諦めて景気減速を受け入れるしかない。
ダリオ氏の歴史研究によれば、人々が景気減速を受け入れる段階は、インフレが限界まで酷くならなければ起こらない。例えばアルゼンチンではそのフェイズが起こっている。
ミレイ大統領、政府支出を削減してハイパーインフレを打倒した方法を語る
それがこれまで政府債務を膨張させてきたインフレ政策の最終的な結末である。政府債務は返済不可能だが、デフォルトを避けてインフレで実質的に帳消しにする方法がある。
そもそも政府のインフレ政策は、それを目指してきたのである。人々にとって何の得にもならないインフレをわざわざ目指した理由は、政府が自分の借金をインフレで帳消しにするためである。インフレのメリットは他にはない。
だからダリオ氏は次のように言っている。
この段階は国債の保有者がデフォルトかインフレのどちらか、あるいは両方によって焼かれた後に起きる。
結論
今回の記事と前回の記事で、先進国の経済が今どれほど老いているのかが読者にも分かったのではないだろうか。
レイ・ダリオ氏: アメリカが破綻しそうかどうか調べる方法
ちなみにダリオ氏のこの研究は予想ではない。歴史上の覇権国家にこれまで起きてきた歴史的事実を纏めただけである。ダリオ氏は単にそれを今の先進国に当てはめて述べているだけだ。
アメリカ以前の覇権国家である大英帝国やオランダ海上帝国はその運命から逃れられなかった。詳しくは前著『世界秩序の変化に対処するための原則』に纏められている。
アメリカはこれまでの覇権国家が逃れられなかった運命から逃れられるのだろうか。読者はどう思うだろうか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58719
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2025/01/16 (Thu) 01:38:44
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日本もアメリカも政府債務はインフレで解決されるしかない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16875882
すべての紙幣の価値は最終的にゼロに向かってゆく
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16856204
ビットコイン相場が上がっている原因は中央銀行が紙幣を増やし続けている事
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16887076
40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513
ついに始まる世界金融恐慌
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793
金子勝 _ 保守・右翼の経済評論家(伊藤貫、中野剛志、藤井聡、三橋貴明、髙橋洋一)は経済が全くわかっていない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16886615
トランプの真の敵/ディープ・ステートとは何か?
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16878485
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2025/01/16 (Thu) 12:44:22
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ドル崩壊?アメリカで起こる金融革命【アンダーワールド in Radio】
堤未果 / 月刊アンダーワールド / 公式チャンネル 2025/01/16
https://www.youtube.com/watch?v=ysUYjpJFeGc
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4:777
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2025/01/21 (Tue) 07:42:12
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あ
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2025/01/26 (Sun) 05:44:04
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レイ・ダリオ氏: 財政赤字を3%に下げなければ米国債暴落へ
2025年1月23日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58858
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でCNBCのインタビューを受け、2025年の金融市場について語っている。
米国債の問題
徐々に著名投資家の今年初のインタビューが出てきているが、誰もが口を揃えて言うのがアメリカの財政の問題である。
スタンレー・ドラッケンミラー氏などは、アメリカの利下げで長期金利がむしろ上昇するという異常事態をしっかり予想して利益を上げた1人である。
ドラッケンミラー氏、米国債の空売り成功、アメリカの財政危機を警告
ガンドラック氏: 利下げで長期金利が上がっているのは米国債暴落の予兆
米国債がヤバいというのがもはや著名投資家の共通見解になりつつあり、それほど警戒していないのはSoros Fund ManagementのCEOであるドーン・フィッツパトリック氏ぐらいだろうか。だがインタビューは去年のものである。
ソロスファンド、米国株と米国債を買い持ち、金利上昇を予想せず (2024/11/19)
アメリカの財政赤字
ダリオ氏も同じ問題について語っている。重要なのは金利である。ダリオ氏は次のように述べている。
金利だ。国債の金利は株式市場や債券市場などすべての市場、すべての借り入れ、すべての貸し出しの背骨にあたる。
なぜ金利が問題かと言えば、コロナ後の金利上昇でアメリカの政府債務に多額の利払いが生じ、今やその金額はGDPの4%に達しようとしているからである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2024/07/2024-2q-us-federal-government-interest-payment-to-gdp-chart.png
ダリオ氏は次のように述べている。
今年のアメリカの財政赤字はGDPの7%だと予想されている。それは、その分の国債がすべて売りさばかれなければならないということを意味する。
需要と供給が合っていないため、国債を売ってもわたしの計算では買い手が足りない。更に悪いのは、既に米国債を持っている人も米国債を売るかもしれないということだ。
そうなれば需給はまったく合わなくなり、問題が生じる。
債務危機を解決する方法はあるのか
債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏に言わせれば、問題は既に生じているのだろう。アメリカは去年の9月に利下げしたにもかかわらず、長期金利はまさにその時から上昇した。
ガンドラック氏: 利下げで長期金利が上がっているのは米国債暴落の予兆
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2025/01/2025-1-23-us-10-year-treasury-bond-yield-chart.png
米国債から投資家が逃げている。しかし米国債が下落し金利が上がると政府債務の利払いは更に増えることになる。
アメリカはどうすればいいのか。ダリオ氏は次のように述べている。
解決策はGDPの3%だ。
財政赤字を7.5%から3%まで下げる。
それは奇しくもトランプ大統領が財務長官に指名したスコット・ベッセント氏が掲げる目標と同じである。
トランプ氏指名の新財務長官ベッセント氏、アベノミクスをもじった3つの矢の経済政策を提言
借金が多過ぎるのだから、借金を減らすしかない。だがダリオ氏の主張にはそれ以上の狙いがある。
ダリオ氏は次のように説明している。
1991年から1997年まで、財政赤字は縮小した。実体経済が良いときに財政赤字を縮小すれば、金利は下がる。それは債務負担が下がるということだ。
財政赤字は米国債の発行に繋がり、供給増加で米国債の価格は下落する。それは逆に言えば、米国債の発行を減らせばその分米国債の価格は上がり、金利は下がるということである。
よって借金の減少と金利の低下の両方の面でアメリカの財政の助けになることになる。
しかし問題は、それが出来ないからアメリカは財政赤字拡大と金利上昇の負のスパイラルに突入しているということである。
ダリオ氏がこれだけ金利低下にこだわることには理由がある。米国債の利払いがGDPの4%近くに達していることである。
つまり財政赤字の半分以上が米国債の利払いなのである。ダリオ氏はこう述べている。
今や利払いがあまりに巨額になっていて、税収や政府支出の問題よりも大きくなっている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58858
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レイ・ダリオ氏: 金利が上がれば米国株のバブルは崩壊する
2025年1月24日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58891
引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)におけるCNBCのインタビューである。
今回は金利と株価の関係について語っている部分を紹介したい。
米国株のバリュエーション
今年のテーマはアメリカの金利と財政赤字である。前回の記事ではダリオ氏も他の機関投資家たちと同様、米国債の下落による金利上昇について警告していた。
レイ・ダリオ氏: 財政赤字を3%に下げなければ米国債暴落へ
アメリカでは去年から利下げが開始されたにもかかわらず、長期金利が上昇している。スタンレー・ドラッケンミラー氏などはアメリカの財政問題を警告し、見事にこの金利上昇を予想してみせた。
ドラッケンミラー氏、米国債の空売り成功、アメリカの財政危機を警告
金利が上昇しているとなれば、気になるのは株価への影響である。ここまで好調な米国株だが、ダリオ氏はどう見ているのか。
ダリオ氏は次のように述べている。
株式市場はかなり割高なところまで来ている。いくつかのセクターは特にそうだ。
やはりダリオ氏も米国株のバリュエーションを気にしている。筆者も含め、多くの投資家が気にしているのは米国債の金利と比較した場合の米国株のバリュエーションである。
投資家がよく見る株価収益率は、株価と純利益の関係を示す数字である。デイヴィッド・ローゼンバーグ氏は、現在の株価収益率では米国株のパフォーマンスは米国債を買って4%の金利を得る場合のパフォーマンスにさえ負けてしまうとして、今の株価で米国株を買う理由はないと酷評していた。
ローゼンバーグ氏、米国株のバリュエーションを酷評
金利が上がれば、リスクを取って株を買わなくても国債を買うだけで十分な利益が得られてしまう。だから金利上昇は株価にとって脅威なのである。ダリオ氏は前回の記事で次のように言っていた。
レイ・ダリオ氏: 財政赤字を3%に下げなければ米国債暴落へ
国債の金利は株式市場や債券市場などすべての市場、すべての借り入れ、すべての貸し出しの背骨にあたる。
金利上昇と株価
問題は、アメリカの財政赤字は大きく、このまま国債の大量発行が続くと金利が更に上昇するとダリオ氏が予想していることである。
今でさえ国債に負けるバリュエーションになっている米国株は、財政赤字が抑えられず金利が更に上がればどうなってしまうのか。
ダリオ氏は次のように予想している。
現在の株価収益率で金利が上がってゆくことになれば、バブルは崩壊する。
それは2018年や2022年の下落相場のような状況である。どちらも利上げによる金利上昇が株安に繋がった相場だが、今回は利下げによる金利上昇で株安になってしまうのだろうか。
AI銘柄は買いか
一方で、ダリオ氏はセクターごとに見れば有望な銘柄もあるという。
ダリオ氏は次のように述べている。
今の株高は素晴らしいセクターによって先導されてはいる。AIなどのイノベーションを起こす企業だ。
株式市場の目線はAIをどう使うかまでに落とし込まれていないと思う。
中国や他の場所でAIがどのように使われているかは非常に興味深いが、AIの利用は市場にまだ織り込まれていないと思う。
AIブームでは、NVIDIAのようなAIの演算に直接使われる部品を供給する企業の株価が大きく上がったものの、AIを利用して利益を得る側の企業の株価ブームにはまだなっていない。
筆者もNVIDIAで大きな利益を上げた後、LumentumなどのAI向けデータセンターで使われる商品を製造する銘柄に切り替え、そのトレードは成功しているが、AIのユーザ企業で有望な銘柄はまだ見つけられていない。
NVIDIAの次のAI銘柄Lumentum、予想上回る決算で株価は推奨時から60%高騰
結論
ダリオ氏は何か良い銘柄を見つけたのだろうか。だが米国株全体のバリュエーションに警戒しながらも、個別銘柄には望みを捨てない姿勢は以下の記事におけるドラッケンミラー氏と共通している。
ドラッケンミラー氏: 米国経済はトランプ政権で強力に息を吹き返す
だが米国株のバリュエーションが米国債以下という異常事態になっていることは頭に入れておくべきである。ダリオ氏はこう述べている。
素晴らしいイノベーションや変化が起こっているのは確かだが、人々は金利や株価収益率に十分な注意を払っていない。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58891
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レイ・ダリオ氏: 金利上昇からの量的緩和再開に備えてドルから退避せよ
2025年1月25日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58908
引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)におけるCNBCのインタビューである。
アメリカの財政危機
機関投資家の誰もが口にしている通り、今年のテーマはアメリカの財政赤字と米国債の大量発行である。
コロナ後の金利上昇で米国債に多額の利払いが生じ、今やGDPの4%近くが借金の利払いで消えている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2024/07/2024-2q-us-federal-government-interest-payment-to-gdp-chart.png
アメリカはそれを借金を増やして返すほかないため、それが米国債の大量発行に繋がっているのだが、これまでの記事でダリオ氏は米国債に買い手が足りていないと述べていた。
レイ・ダリオ氏: 財政赤字を3%に下げなければ米国債暴落へ
上昇している長期金利
それで、去年からFed(連邦準備制度)の利下げが始まったにもかかわらずアメリカでは国債価格が下落し長期金利が上がっているのである。
ガンドラック氏: 利下げで長期金利が上がっているのは米国債暴落の予兆
スタンレー・ドラッケンミラー氏などは利下げでインフレ懸念がぶり返すと去年から予想していた。
ドラッケンミラー氏、米国債の空売り成功、アメリカの財政危機を警告
だからダリオ氏は次のように言っている。
Fedはこれ以上金融政策を緩和するべきではない。
米国債からの資金流出
だが、上述の通りそもそも米国債には買い手が足りないのである。ダリオ氏は次のように続けている。
今、債券市場はインフレ率よりも米国債の需要と供給で動いている。
わたしはこの米国債の需給バランスに問題が生じると予想しているが、そうなれば政府はどうする?
国債の買い手不足を国債買い入れで穴埋めしなければ、金利が上がりあらゆる箇所にまずい状況が生じることになる。
それは要するに量的緩和を再開するということである。
ダリオ氏の主張は一見矛盾している。緩和をするなと言う一方で、緩和をしなければ金利が上昇してまずい状況になると言うのである。
まずい状況とは、例えばダリオ氏は前回の記事で米国株と金利の関係について論じていた。
レイ・ダリオ氏: 金利が上がれば米国株のバブルは崩壊する
通貨から脱出せよ
中央銀行がどうするのか、株式市場にはどう影響するのかという話はあるが、根本的な問題は国債から人々が逃げ出しているということである。
ダリオ氏は次のように纏めている。
それが今後6ヶ月のテーマだ。
米国債からの逃避とは、つまりはドル紙幣からの逃避である。ドルを銀行に預ければ銀行はそのドルで米国債を買うので、要するにドル紙幣から人々が逃げていることになる。紙幣と米国債の刷りすぎで両方の価値が危うくなっているのである。
レイ・ダリオ氏: すべての通貨は最終的に価値を落とされて死ぬという歴史的事実を認識すべき
ダリオ氏は次のように結論している。
重要なのは、何を通貨の代わりにするかということだ。
ダリオ氏が奨めるのはいつも通りゴールドだが、司会者にビットコインはどうかと聞かれて「反通貨」とまとめた。
ダリオ氏はドルの破綻からのアメリカの凋落を予想し新著を出そうとしている。
レイ・ダリオ氏の新著: 基軸通貨を持つ世界一の大国でも政府債務増加で破綻する
前著『世界秩序の変化に対処するための原則』の続きである。前著をまだ読んでいない人は、新著が出る前に読んでおくことをお勧めする。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/58908