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トランプの副大統領候補ジェイムズ・ヴァンスの半生

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2024/07/26 (Fri) 19:03:18

無敵の太陽 2024年07月26日
副大統領候補は「反トランプ」だった !
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祖父母に育てられた少年

Vance & Trump 564Vance & Usha 444

   暗殺未遂後に行われた共和党全国大会で、ついにドナルド・トランプと一緒に戦う副大統領候補(running mate)が発表された。ジェイムズ・デイヴィッド・ヴァンスの(James David Vance)の名は前々から候補者リストに載っており、評論家からは最有力候補と目されていた。一部の共和党員は、女性か黒人が副大統領候補に選ばれるんじゃないか、と予想していたが、トランプ陣営はエスタブリッシュメントに籠絡されていない新人を仲間にしようと決めたようだ。

  筆者はこの銓衡(せんこう)基準に賛成する。なぜなら、支持者の感情を優先する選択であったからだ。凡庸な政治評論家だと、「黒人票や女性からの支持を集めるためにも、ティム・スコット(Tim Scott)のような黒人の上院議員がいいんじゃないか」とか、「エリス・ステファニック(Elise Stefanik)といった女性の下院議員を選ぶべし」と助言するが、支持者を増やすために“コアなファン”を落胆させるのは愚行でしかない。熱心なトランプ・ファンを大切にすることが肝心だ。常連客というか、前々からの支援者を鼓舞することが人気を維持する秘訣である。マスコミ報道で意見を変えるような一般国民などは頼りにならない。政治に感心が薄い一般人は、“通りすがりの野次馬”程度である。

  副大統領候補になったヴァンスは、指名前から既に有名人であった。というのも、彼の自伝『Hillbilly Elegy』がベストセラーになったし、NetflixのTVドラマにもなっていたからだ。D.Jの母親役はエイミー・アダムス(Amy Adams)が演じており、育ての親となる祖母の役には大物女優のグレン・クローズ(Glenn Close)が起用されていた。J.D.ヴァンス役には、『砂上の法廷(The Whole Truth)』に出演したガブリエル・バッソ(Gabriel Basso)が採用されていた。

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(左 : グレン・クローズとエイミー・アダムス  / 右 : J.D.役のガブリエル・バッソ )

  J.D. ヴァンスはジェイムズ・ボウマン(James Bowman)とベヴァリー・ヴァンス(Beverly)との間に生まれた息子だ。二番目の子であるJ.D.には、リンゼイ・ヴァンス(Lindsay Vance)という姉がいる。父親の名前からも判る通り、D.J.が誕生した時の名前は、ジェイムズ・デイヴィッド・ボウマン(James David Bowman)であった。しかし、母親のベヴァリーがジェイムズと別れ、ボブ・ハメル(Bob Hamel)という男と再婚したので、J.D.の名前は「ジェイムズ・デイヴィッド・ハメル(James David Hamel)に変わってしまう。ところが、ベヴァリーはこの再婚相手(義父)とも別れたので、J.D.は最終的に母親の旧姓「ヴァンス」を名乗ることになる。

  とにかく、アメリカでは離婚する夫婦が異常に多い。J.D.が6歳の時、父親のジェイムズが家を去ったので、幼いJ.D.とリンゼイは母子家庭で育つことになる。日本でもそうだが、シングル・マザーが子育てをしながら仕事をこなすのというのは想像以上に困難だ。フルタイムで働いても看護婦の給料は高くないし、小学生の子供を抱えていれば何かと苦労が多い。夜勤明けで子供の弁当など作る気にならない。ピーナッツ・バターを塗ったパンとリンゴを袋に入れて、それが昼飯なんて最低だ。シリアルやオートミールだって人間用の食事じゃない。ドッグ・フードと同じである。(馬の餌なら解るけどね。)

  不安と重圧に耐えきれなかったのか、看護婦だったベヴァリーは、病院の薬をクスねて“ヤク中”になってしまう。子育てと仕事でキリキリ舞いの母親は、ストレスが溜まっていたようで、息子のD.J.に辛くあたってしまうし、折檻することもあったという。時には親子心中を考えることも。実際、クルマを運転していたベヴァリーは、急にスピードを出して何処かに衝突しようと図ったらしい。一緒に乗っていたD.J.は、かなり怯えたようだ。

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(左 : ベヴァリー・ヴァンス / リンゼイ / ボニー・ヴァンス / 右 : ジェイムズ・リー・ヴァンス )

  娘の窮状を知った両親、つまりD.J.の祖父母は、孫のD.J.とリンゼイを預かることにした。D.J.は祖父のジェイムズ・リー・ヴァンス(James Lee Vance)を「Papaw」と呼び、祖母のボニー・エロイーズ・ブラントン・ヴァンス(Bonnie Eloise Blanton Vance)を「Mamaw」と呼んで慕っていた。母親代わりになったボニーも大変な苦労人で、娘のベヴァリーが薬物中毒となっていたのに、夫のジムもアルコール中毒の“ダメ亭主”ときている。何処の国にも「崩壊した家庭」というのは存在するが、アメリカの寂れた田舎で、祖父母に育てられる少年というのは惨めなものだ。D.J.がギャング仲間にならず、まともな青年に成長したことだけでも奇蹟だ。そして、祖父母に苦労をかけたくなかったのか、D.Jは高校を卒業すると、合衆国海兵隊に入った。伍長になったD.J.は、イラクに派遣されている。

  TVドラマになるくらいだから、ヴァンス家の内情は凄まじい。ある日のこと。亭主のジムが酔っ払って帰宅し、カウチ(所謂「ソファー」)でゴロ寝をしていた事があったそうだ。これに怒ったボニーは、殺意が湧くほど腹を立てた。ちょっと信じられないが、彼女は泥酔する亭主にガソリンを振り掛け、ライターで火をつけたそうだ。たぶん、D.J.は大袈裟に語っていたのだろうが、祖父のジムは黒焦げにならず生き延びることが出来た。この爺ちゃんも変わった人で、昔、商店へ行くけど子供達(ジミーとベヴァリーとロリー)に「何か欲しいモノはないか?」と尋ねたそうだ。おそらく、三人の子供はクルマと答えたのだろう。父親のジェイムズは新車の「シボレー(Chevrolet)」を買ってきたそうだ。そして翌月になると、このシボレーを誰かと交換して「オールズモービル(Oldsmobile)」を持ってきたというから、子供達は唖然となる。

  なんか、映画『ミリオン・ダラー・ベイビー(Million Dollar Bay)』に出てきそうなシーンだが、上品さに缼(か)ける家族だと、このくらいのエピソードなんて普通だろう。下層中流階級の夫婦は感情的になりやすい。特に、ジェイムズとボニーが喧嘩になれば壮絶で、壁やドアを叩いたりするのは当たり前。場合によっては、皿や鍋が飛んできそうだ。案の定、激昂したボニーは花瓶を鷲摑みにし、ジェイムズの額に投げつけたことがある。もちろん、ジェイムズの眉間からは血がしたたり落ち、憤慨した亭主は自動車に乗って家を出て行く。

  労働者階級の夫婦喧嘩は凄まじいが、ボニーはそんなに悪い人じゃない。若い頃、彼女の夢は弁護士になることだった。結構、気の優しいボニーは困っている子供を助けたかったそうだ。でも、1950年代のアメリカだと、平凡な女性がロー・スクールに通って弁護士になるのは現実的じゃない。惚れた男と結婚して子供を産むのが普通だ。ヒラリー・クリントンのように、法科大学を経て「ローズロ法律事務所(Rose Law Firm)」に入るキャリア・ウーマンなんて滅多にない。もちろん、同僚(ヴィンセント・フォスター)が不審な自殺を遂げるのも異例である。とにかく、ボニーからすれば、成長した孫のJ.D.が法律の学位を取ったのは、彼女にとって誇りになったはずだ。

James & Bonnie Vance, Papaw & MamawDJ Vance 623J.D. Vance as US Marine
(左 : 若い頃のジェイムズとボニー / 中央 : 幼い頃のJ.D. / 右 : 海兵隊に入ったJ.D.)

  ベンチャー・キャピタリストのビジネスマンから上院議員になったD.J.は、カトリック教徒の共和党員である。といっても、彼はが洗礼を受けたのは2019年という最近のことだ。スコット・アイリス系の家系だったヴァンスは、プロテスタント教会に属する少年であったが、それほど熱心な信者ではなかったという。実父の影響でペンテコスト教会に通い出したJ.D.は、カトリック教会を嫌っていたが、叔母がカトリック信徒と結婚したことで考え方が変わったそうだ。J.D.はその亭主を尊敬していたからカトリックへの偏見が薄くなったのかも知れない。

  J.D.ヴァンスの政治思想も祖父母と違ってくる。彼の祖父母は元々労働組合所属の民衆党員であった。D.J.曰く、「典型的な生粋の民衆党員(classic blue-dog Democrats)」であったという。しかし、祖父のジムは一回だけ裏切ったことがある。それはロナルド・レーガンが大統領選挙に出馬した時だ。レーガン旋風が巻き起こると、ジム以外にも多くの民衆党員が共和党へと寝返ってしまったから、民衆党の幹部は真っ青となる。親子代々、ある人々だと南北戦争以来、民衆党を支持してきた南部の白人でも、エスタブリッシュメントの臭いがするウォルター・モンデールは大嫌いで、忠実だった党員が続々と鞍替えしていたのだ。オハイオ州の労働者階級も同じで、民衆党に投票するはずの白人が、こぞって共和党のレーガンに靡いていた。ドナルド・トランプにも似たようなところがあり、中流階級の白人や小規模ビジネスの自営業者などは、熱烈にトランプを支持している。

  元々、民衆党は「皆の衆を代表する政党」で、普通の暮らしをする“労働者の味方”であるはずだった。ところが、現在の民衆党は、ヘッジファンドや軍産複合体の大富豪が君臨するファシズム政党へと成り下がっている。しかも、黒人やヒスパニックの極左が、党内に跋扈しているんだから最低だ。偉人の彫像にスプレーで落書きをするなど言語道断。愛国者の白人は民衆・共和を問わず皆怒り心頭だ。それに、「批判的人種理論」とやらを振り回し、「BLM」運動や「LBGTQ」といった変態擁護を肯定するんだから、敬虔なキリスト教徒の員は我慢ができない。民衆党支持だったカトリック信徒も、こんな反米活動を目にすれば、こっそりと転向し、トランプ支持者になってしまうだろう。

  今では信じられないが、1950年代か60年代までの民衆党は、白人中産階級を基盤とする「庶民の政党」で、“アングロ・アメリカ”を守る牙城であった。特に、南部の民衆党員には、JFKが進めるような人種統合に反対し、従来の人種隔離政策に固執する者が多かった。例えば、ミシシッピー州のセオドア・ビルボ(Theodore Bilbo)知事やサウス・カロライナ州選出のストロム・サーモンド(Strom Thurmond)上院議員などは有名だ。ヴァージニア州だとトマス・B・スタンレー(Thomas B. Stanley)知事や地元名士(入植地時代からの名門)のハリー・バード(Harry F. Byrd)上院議員が挙げられる。

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(左 : セオドア・ビルボ / ストロム・サーモンド / トマス・B・スタンレー / 右 : ハリー・バード )

  ついでに言うと、“人権派”の大御所で“良心的リベラル派”の政治家、2010年に亡くなったロバート・バード(Robert C. Byrd) 上院議員は、何度も再選された民衆党の長老議員であった。(養子になる前の本名はCornelius Calvin Sale, Jr.であった。)しかし、若い頃のバード議員は、黒人を徹底的に嫌うKKKのメンバーデで、黒人と同じ部隊じゃ厭だ、とビルボ知事に懇願していたくらいだ。主流メディアは二枚舌の偽善者で、元KKKのデイヴッド・デューク(David Duke)が州の下院議員になると悪魔扱いだった。ところが、バードがKKKから転向し、左翼の守護神になると天使のような扱いだ。腹黒いヒラリー・クリントンは、バード上院議員を絶賛していたが、まともな日本人ならクリントン夫妻とCNNに対し、「いったい、お前らは何枚の舌を持っているんだ?」と尋ねたくなる。

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(左 : ロバート・バード / 中央 : デイヴィッド・デューク / 右 : ルイジアナ州の下院議員になったデューク)

  脱線したので話を戻す。アメリカの南部や中西部には、民衆党を支持する白人労働者が結構多い。だが、その何割かは現在の民衆党に疑問を抱いている。たぶん、D.J.の祖父母も左傾化した民衆党に眉を顰めたはずだ。祖母のボニーは上品な白人女性とは言えないが、ちゃんと孫の面倒を見ていたし、一応、キリスト教徒でもあった。ただ、このお婆ちゃんは口が悪かったそうである。J.D.の親戚であるボニー・メイバースによれば、汚い言葉を使ったら罰金を払う決まりがあったそうで、お金を入れる壺がキッチンに置いてあったそうだ。(1語につき25セントの罰金だった。)

  ところが、ボニー婆ちゃんは“いつも通り”の口調じゃないと気が済まない。彼女が孫(D.J.とボニー)の世話をしていた“ある日”のこと。お婆ちゃんは孫に白紙の小切手を渡し、「さあ、これで好きな事が何でも言えるわ!後で(小切手にペナルティーの)金額を書いてあげるから!」と言ったそうだ。さすが、アメリカのお婆ちゃんは凄い。日本のバアさんだと、「今日だけ特別よ!」といって例外を作るが、アメリカ人のバアさんは、ちゃんと契約(約束)を守って罰金を払う。

  こんなボニー婆ちゃんだが、意外にもキリスト教の信仰を持っていた。でも、教会の制度には疑問を抱いていたそうで、教義や経営方針に反撥することもあったという。例えば、教会の牧師は同性愛者に厳しいが、ボニーは彼らを否定せず、ゲイやレズビアンであっても天主は愛してくれると考えていたそうだ。昔気質のアメリカ人は、どんなに貧しくとも信仰心だけは持っていた。ビル・クリントンやバラク・オバマのように、自分の欲望や左翼思想を隠すための頭巾にする奴は最低だ。“選挙用の信仰心”を見せびらかす政治家なんて人間のクズである。

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(左 : 祖母のボニーと孫のJ.D. / 右 : 祖父のジェイムズとJ.D. )

  また、ボニー婆ちゃんは典型的な田舎のアメリカ人であった。彼女は2005年に亡くなるが、D.J.たち遺族は、祖母の遺品を整理していた時に驚く。何と、ボニー婆ちゃんは銃を24丁も所持していたのだ。彼女は何処に居ようと、家族を守るべく、色々な場所に銃を隠していた。確かに、辺鄙な田舎だと、強盗が押し入った時、身を守るには拳銃やライフルを構えるしかない。たとえ、暴漢が現れた時に警察へ連絡しても、到着までには時間がかかる。その間に、自分や孫が襲われれば一巻の終わりだ。パトカーが到着した時には、金品が強奪され、血塗れの死体が横たわっている、といった光景は珍しくない。

  バイデン政権は何百万人も不法移民を引き込んだが、民衆党のベテラン議員はバイデンを糾弾しなかった。もし、本当に「庶民の味方」なら、トランプ以上に不法移民の排斥を訴えていたはずだ。実際、MS-13のようなギャングが街をうろつき、一匹狼の強姦魔が少女を襲うことも珍しくない。こうなれば、無力な国民は自前で銃を購入し、自分自身でゴロツキを退治するしかない。日本人のように、国家と自宅の安全を「他人任せ」というのは狂気の沙汰である。「たとえ悪党でも、話し合えば解りあえる」というのは、脳天気なインテリが言いそうな愚論である。

個人的な理由から反トランプだったのか?

  副大統領というのは選挙前には多少“話題”となるが、ホワイトハウスに入ると“閑職”の身分となる。共和政ローマでは二人の執政官がいたけど、共和政アメリカだとバットマンに附き添うロビン程度。しかし、今回の副大統領候補は注目に値する。なぜなら、トランプが再選されても、2028年の大統領選挙には絶対に出ないからだ。となれば、四年後に副大統領のヴァンスが、「共和党の指名候補」になる可能性は非常に高い。MAGAを掲げる共和党員は、トランプ旋風の潮流が続くと思っているが、ヴァンスがトランプ路線を踏襲するとは限らない。ヴァンス独自の“保守主義”を全面に出してくる事態もありうる。今後、彼がどんな行動を取るのか、慎重に見定める必要がある。

  トランプ支持者からすれば「やっぱり!」といった人選であったが、“相棒”となったヴァンスはトランプ支持派ではなかった。むしろ、共和党に存在する「反トランプ陣営」の一員であったと言える。それゆえ、民衆党贔屓の主流メディアは、“ここぞ”とばかりにヴァンスが口にした過去の発言を蒸し返す。一応、ヴァンスは“保守派”であったのに、トランプを辛辣に批判していたから驚きだ。例えば、次の通り。

  トランプはニクソン(大統領)の如き“ひねくれた馬鹿野郎(cynical asshole)”なのか、それともアメリカのヒトラーなのか、私には判らず迷っているところだ。(Savannah Kuchar, 'In first interview as VP candidate, JD Vance explains why he called Trump 'America's Hitler', USA TODAY, July15, 2024およびGrayson Quay, 'J.D. Vance said Trump might be 'America's Hitler' in 2016 text message, The Week, 19 April 2022.)

  こうした「アメリカのヒトラー」という批評は、まるでCNNやABCのキャスターから教えてもらったような罵倒だが、ヴァンスの“トランプ嫌い”は相当なものだった。曰く、

 トランプは文化的ヘロイン(cultural heroin)だ。彼の選挙公約は、アメリカ全体の血管に打ち込まれる注射針のようである。(A.J. McDougall, '‘America’s Hitler’: All the Times J.D. Vance Trashed Trump', Daily Beast , July 15, 2024.)

  主流メディアが南米からの移民を擁護し、彼らを門前払いに使用とするトランプを憎む気持ちは解る。だが、ヴァンスは「錆びついた地域(Rust Belt)」の労働者を支援する為政者じゃないか。本来なら、庶民の暮らしを脅かす移民や難民の流入に反対するはずだ。それなのに、なぜかトランプに反撥していたのである。ヴァンスによれば、トランプが提案する解決策というのは、複雑な問題に対するバンドエイド(band-aid solutions)にすぎす、賛成できないと述べていた。

  また、ヴァンスは感情的にもトランプに共鳴できない反トランプ派であった。彼は公共放送局(NPR)の司会者テリー・グロス(Terry Gross)に語っていたけど、トランプが大統領選挙に出馬した時のヴァンスの反応はとても酷かった。

 私は第三党に投票するつもりだ。なぜなら、トランプに対し我慢できないからだ。トランプは鼻持ちならない。そして、白人労働者を暗黒の場所に導いている。・・・もし、必要なら、つまり、もしトランプが選挙で勝ちそうなら、不本意ながら、私はヒラリー・クリントンに投票するかも知れない。

  不動産王のトランプが当選し、大統領になる前、ヴァンスはチャーリー・ローズ(Charlie Rose)のインタヴューを受け、その時に彼は次のように述べてた。

  私は反トランプ主義者(Never-Trump guy)だ・・・私は彼を好きになったことは一度もない。(上掲記事、A.J. McDougall, ‘America’s Hitler’)

  ヴァンスがこれだけトランプを嫌っていたということは、彼にはよほど腹に据えかねる理由があったに違いない。これは筆者の勝手な憶測に過ぎないが、根本的な原因は彼の妻であるウシャ・ヴァンス(Usha Chilukuri Vance)にあったんじゃないか? 彼女はアイリス系やドイツ系の西歐女性ではなく、インドからやって来た有色移民の娘である。かつてのJ.D.は、トランプ支持者の中に“人種差別”の雰囲気を嗅ぎ取ったから、反トランプ主義者になったのかも知れないぞ。

Usha Vance 423(左 / ウシャ・ヴァンス )
  聡明なインテリ女性に見えるウシャは、1986年にインドで生まれた有色人種。様々な民族が暮らすサン・ディエゴで成長した。父親のクリシュ・チルクリ(Krish Chilukuri)は、航空産業で働くエンジニア。彼は大学で教える講師でもあったという。母親のラクシミ(Lakshmi)も知識人で、彼女は分子生物学を研究する大学教授ときている。これなら、娘のウシャが名門のイェール大学に入れたのも不思議じゃない。(Murali Krishnan , 'Usha Vance, wife of Trump's VP pick, has deep ties to India', Deutsche Welle , July 17, 2024) 彼女はイェール大のロー・スクールに進み、法曹界で働くようになる。この才女は連邦最高裁の首席判事となったジョン・ロバーツに仕え、彼の業務を手伝っていたそうだ。(Sakshi Venkatraman, 'Who is Usha Vance? JD Vance’s wife is a lawyer and daughter of immigrants', NBC News , July 17, 2024)

  優秀な弁護士となったウシャは、以前、ブレット・カヴァノー(Brett Kavanaugh)判事にも仕えたことがあるそうだ。しかし、彼女はサン・フランシスコにある大手の法律事務所「Munger, Tolles & Olson」に就職する。でも、夫が副大統領候補になったので、彼女はこの事務所を退社することにした。表面上かも知れないが、一応、ウシャは良妻賢母のようで、イワン(Ewan)とヴィベク(Vivek)という息子二人、そしてミラベル(Mirabel)という娘を産んでいる。

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(左 : ヴァンスの家族 /  中央 : 娘を抱くウシャ・ヴァンス / 右 : 娘と一緒のJ.D.ヴァンス)

  ただし、非西歐系のインド人家庭に生まれ、リベラル色が強いカルフォルニア州で育った秀才とくれば、多文化・多民族主義の賛同者であってもおかしくはない。だいたい、サン・ディエゴで思春期を過ごしたインド人が、アングロ・サクソンの文化や伝統を尊重し、建国の父祖との赤い絆(crimson thread of kinship)を有するのか? ウシャの家族はヒンドゥー教徒で、ウシャ自身も信仰に基づく生活をしているそうだ。でも、その政治思想はどうなのか? たとえ保守的な思想の持ち主であっても、アングロ・アメリカを優先する行動様式(ethos)とは限らない。

  以前、ウシャは登録済みの民衆党員で、2014年の大統領予備選では民衆党の候補者に投票していたという。(Joseph Bernstein , 'Who Is Usha Vance, the Wife of J.D. Vance? ', The New York Times, July 15, 2024)となれば、おそらくウシャは2008年と2014年の大統領選挙でバラク・オバマに投票していた可能性が高い。そして、2016年の大統領選挙でも民衆党を支援し、共和党のトランプじゃなく、政敵のヒラリー・クリントンに投票していたとも考えられる。ただし、夫のJ.D.が共和党から出馬したので、2021年頃に共和党へ鞍替えしたのだろう。

Amy Chua & Jed Rubenfeld 435(左 : ジェド・ルーベンフェルド / 右 : エイミー・チュア )
  もう一つ注目すべきは、J.D.がイェール大学のロー・スクールに通っていた時、指導教授というか、恩師となっていたのが、支那系アメリカ人のエイミー・チュア(Amy Chua / 蔡美兒)であったことだ。この野心家については別の機会で紹介したいが、「ドラゴン・マザー」と称されたエイミーの教育方針や人生観というのは、如何にも支那人らしい。支那人は世俗の利益を最大限にしようとする。また、東洋のユダヤ人は西洋の支那人と馬が合うのか、エイミーはジェド・ルーベンフェルド(Jed Rubenfeld)と結婚した。この亭主はユダヤ人で、エイミーと同じくイェール・ロー・スクールの教授を務めていた。

  これは筆者の個人的意見になるけど、どうして支那人女性は年を取ると、どいつもこいつも宋美齢みたいになってしまうのか分からない。『レイプ・オブ・南京』を書いたアイリス・チャンが、もし自殺をせずに生きていれば、エイミーのようなオバちゃんになっていた可能性は非常に高い。日本にもキリストト教の仮面を着けた支那人がいる。元アイドル歌手のアグネス・チャンを見ていると、エイミーとソックリだ。CBSやABCのキャスターを務めたコニー・チャン(Connie Yu-Hwa Chung)も左翼思想の支那人で、彼女もエイミーと同じく、ユダヤ人のモウリス・ポヴッチ(Maurice Richard Povich)というテレビ司会者と結婚している。ただし、コニーは夫の信仰を受け容れ、内心はどうか判らないが、一応、ユダヤ教徒になっている。

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(左 : エイミー・チュア / アイリス・チャン / アグネス・チャン / 右 : コニー・チャンとモウリス・ポヴッチ)

  話を戻す。エイミー・チュアはJ.D.の人生で重要な役割を果たしたそうで、彼が自伝を出版する時にアドヴァイスを与え、出版界のティナ・ベネットを紹介したそうだ。さらに、同大学で法律を学んでいたウシャとの結婚を“後押し”したのもエイミーであった。二人は2014年に結婚し、三人の子供をもうけるが、J.D.の子供達はケルト系やゲルマン系の白人ではなく、薄いけど茶色い混血児である。ヴァンスのスタンスは保守主義なんだろうが、それはどちらかと言えば、バターリアン的な保守思想で、イングランドの伝統的な保守思想に基づくものではない。彼は演説の中で次のように述べていた。

  アメリカは単なる理念ではない。歴史を共有し、同じ未来を抱く人々の集まりだ。すなわち、国家である。今や、それは伝統の一部となり、我々は新しい人々を喜んで迎え入れている。しかし、我々が新参者をアメリカという家族に迎える時、我々の流儀でそれを許しているのだ。これこそ、我々が250年の昔から続けていたプロジェクトであり、これから先250年続くものと思っている。

  そこで、この物語について述べてみたい。我々は肌の色が何であれ、アメリカ国民を第一に考えている。我々はアメリカを再び偉大にするつもりだ。皆も承知と思うが、私は東南アジアから我が国へとやって来た娘と結婚した。素晴らしい人々が様々な方法でこの国にやって来て、我が国を豊かにしてきた。もちろん、私の考えは偏っている。なぜなら、私は彼女と彼女の家族を愛しているからだ。でも、私の話は真実だ。(Tim Hains, JD Vance: "America Is Not Just An Idea... It Is A Nation", Real Clear Politics, July 17, 2024)

  ヴァンスの“アメリカ物語”は、共和党員だけじゃなく一般民衆からも称賛されると思うが、彼の歴史認識や政治思想には左翼の香りが含まれている。新大陸へ入植したイギリス人やスコット人は、アラブ人やユダヤ人、アフガン人、ペルシア人、インド人、マレー人、支那人などと一緒に共和政体を形成し、“同じ国民”という同胞意識で暮らそうとは考えていなかった。というより、そんな発想は微塵も無かったはずである。トマス・ジェファーソンやジョン・ジェイ、ベンジャミン・フランクリンの書簡を読めば一目瞭然。非西歐人との共生なんて空想と判るだろう。

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(左 : 学生時代のJ.D.とウシャ / 中央 : ヒンドゥー教の結婚式を挙げた二人 / 右 : ウシャが出産した当時の写真 )

  ヴァンスは「人種に関係無い」と言い張るが、建国の父祖や独立戦争に参加した入植者は、アフリカ黒人を“対等な仲間”と思ったことはない。「国教」を制定しなくても、国家の基本はキリスト教で、イスラム教やヒンドゥー教などは論外だ。当時の考えでは、アフリカ人やインド人との混血児は劣等種族でしかない。黒人やインディオとの「ムラート(mulatto)」になれば、まともな職業に就くことはできず、疎外されることもあっただろう。ましてや、州の運命を司る代議士に選ばれることはない。せいぜい、農園の小作人か行商人で稼ぐくらいだ。

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( 上写真 / 異人種間結婚の夫婦と混血の子供たち)

  ヴァンスはトランプのことを「アメリカのヒトラー」と呼んで批判したが、後に謝罪してトランプ支持者となった。でも、重要なのはトランプ人気にあやかる前の思考形態だ。学生時代やビジネスマン時代に持っていた意見の方が、ヴァンスの本性を表しているのかも知れないぞ。もちろん、若い時の軽率さを反省し、考え方を改める人は世の中にいる。だが、無意識の行動や性格から来る“好み”というのは中々変わるものじゃない。不法移民に対しては厳しく当たるが、合法移民なら喜んで受け容れる素地がヴァンスにはある。IT産業のインド人技術者や高度な知識を有するアジア移民なら、ヴァンスは諸手を挙げて歓迎するだろう。

  でも、西歐系白人のトランプ支持者は、茶色の子供が増える未来のアメリカ社会を気にしないのか? もし、自分の息子や娘がインド人と結婚すれば、「インド系アメリカ人」の混血児が生まれる事になる。そして、この孫がアフリカ人やアラブ人と結婚すれば、生まれてくる子供の遺伝子は激変し、西歐人の遺伝子は25%にまで低下するだろう。つまり、曾孫の肉体を形成する遺伝子の75%が有色人種になる、ということだ。そして、この曾孫が黒いジャマイカ人とかアフリカ系ブラジル人と結婚すれば、西歐人の遺伝子はもっと少なくなる。80歳か90歳代の曾祖父は、自分の家系が非西歐系になった時、どんな感情を抱くのか? たぶん、自分と違った人相の曾孫を見ても「時代が変わったんだから」と自分に言い聞かせるだろう。「死んだ後の事は考えない!」と呟いて諦めるしかない。

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(左 : 米国へ雪崩れ込むヒスパニック移民 / 右 : 歐米諸国を目指す「難民」のような「アジア移民」 )

  アメリカの国土面積が変わらなくても、そこに住む国民の肉体が激変すれば、異民族に征服されたのと同じである。ボケ老人のジョー・バイデンが大統領選から撤退し、インド系副大統領のカマラ・ハリスが民衆党の代表候補になった。でも、どうして彼女を支援する国民が多少なりとも存在するのか? それは、脛に傷を持つ元移民(元不法滞在者や帰化した密入国者)と有色人種の国民が増えたからだ。こうした有権者は何があろうとも民衆党に投票する。彼らはアメリカの歴史や伝統を考えない。建国の父祖は単なる「外人」だ。“他人の国”へやって来た居候は、自分の未来と財布にしか興味がない。

  共和党でも多民族主義が普通になっているのは悲しいことだ。正常な選挙が行われれば、インド系のウシャ・ヴァンスが未来の副大統領夫人になるだろう。でも、こうなれば、1970年代から80年代にかけて入国したヒスパニックや、アフロ・アジア系の移民は大喜びだ。既にカルフォルニア州やアリゾナ州では、人口に占める南米人の比率が大きくなっているし、この勢いはニュー・メキシコ州やテキサス州を超えて、ルイジアナ州やジョージア州にまで広がって行くだろう。支那人も暗黒大陸を捨てて、豊かで自由なアメリカに雪崩れ込んでいる。

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(左 : 中南米から侵入するヒスパニック・ギャング / 右 : アフリカ大陸からやって来る黒人難民 )

  トランプ支持者の保守派は黙っているけど、国民の人種が変わるというのは深刻な事態である。なぜなら、ライフルや戦車を使わずとも、南米人は「レコンキスタ(失地恢復)」を達成できるからだ。1836年に起きた「アラモ砦の戦い(Battle of the Alamo)」では、メキシコ軍の攻撃に対し、テキサス人の守備隊が奮闘した。結果的には敗北したが、その英雄譚はずっと語り継がれている。有名なデヴィー・クロケット(Davy Crokett)やアーマロン・ディキンソン(Almaron Dickinson)、ジェイムズ・ボナム(James Bonham)達は壮絶な死を遂げたが、彼らの討死は無駄ではなかった。テキサスは勇敢なアメリカ人のお陰で「独立」を保つことができたし、ちゃんと報復戦争も行っている。
 
  しかし、現在のアメリカは違う。ドナルド・トランプはデヴィー・クロケットのように殺されることはあっても、南米人を排除することはできまい。副官のヴァンスとなればもっと頼りなく、南米移民を排斥するために自分の政治生命を賭けることすらないだろう。錆びついた中西部が、再び経済的活気を取り戻すことがあるかも知れない。だが、そこで働く住民は、以前のアメリカ人じゃない。ヒスパニック系移民の3世とか、アラブ系のイスラム教徒の筋肉労働者であろう。これならトランプ支持者の中高年はガッカリだ。ドナルド・トランプの同級生は、卒業アルバムを眺めながら、「昔のアメリカは消えてしまった。もう戻ってこない」と嘆くだろう。共和党の白人至上主義者は「MAGA」を捨てて「イスラエルのようなアメリカ」、つまり排他的な民族国家を目指すんじゃないか? ユダヤ人は「種の保存」をよく弁えているからねぇ~。
https://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68963424.html
2:777 :

2024/07/26 (Fri) 19:06:45

トランプ氏銃撃、30分前に警察が容疑者認識=米報道
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16860523

サマーズ氏、トランプ元大統領の起訴について語る
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14102196

トランプ氏再選ならアメリカの政策はどうなるか
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16849059

どうしても戦争だけはやりたくなかったドナルド・トランプ大統領
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1152.html
3:777 :

2024/07/27 (Sat) 01:01:06

◆映画『ヒルビリー・エレジー』今後も貧困層は這い上がることができない理由
2024.07.26
https://blackasia.net/?p=45452

ドナルド・トランプが副大統領候補として選んだのは、J.D.バンスという上院議員だった。1984年8月2日生まれの39歳なのだが、彼の半生は自伝『ヒルビリー・エレジー:アメリカの繁栄から取り残された白人たち』に描かれ、後にそれが名匠ロン・ハワード監督で映画化されている。

この映画を見てみた。

彼の住んでいたのはラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる貧困地域で、彼もまた貧困層出身で、ドラッグ依存症に苦しむ母親や、育ての親である祖母との関係が描かれている。

貧困でもがく家族、聡明だったのにドラッグ依存から抜け出せずに追いつめられていく母親、悪い仲間に引きずられそうになって落ちていく主人公のJ.Dを何とかまともな方向に連れ戻そうとする祖母……。

アメリカの「ホワイト・トラッシュ(白人のクズ)」とも呼ばれる彼らの境遇と、そのやるせなさが胸に響く。

ヒルビリーというのは、アパラチア山脈の丘陵地帯などに住んでいる白人を指すのだが、そこに住む白人たちは「貧しい白人」の象徴ともなっている。彼らのファッションは「プアールック(貧しい見かけ)」とも呼ばれて、ひとつのジャンルを形成しているほどだ。

つまり、ヒルビリーというのはアメリカではよいイメージで捉えられていない。「田舎者」という意味合いが強いのだが、その田舎者という言葉が含有しているのは、「貧困」「低学歴」「古くさい」というマイナスのものばかりである。

彼らが、貧困と格差の怒りで政治に閉塞感を感じ、「すべてをぶち壊してくれる」と思ってワシントンに送り込もうとしているのが、ドナルド・トランプであり、ヒルビリー出身の副大統領候補であるJ.D.バンスだったのだ。

現代アメリカの社会問題である「貧富の差による分断」の貧しい側の人々が、どのような人々なのかを知るには、これほど優れた映画はない。
https://blackasia.net/?p=45452

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