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政府主導の経済は自由市場の経済に勝てない

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2024/07/14 (Sun) 08:29:23

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ハイパーインフレのアルゼンチン大統領、紙幣印刷が経済を悪化させる理由を語る
2024年7月13日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51206

アルゼンチン大統領にしてオーストリア学派の経済学者であるハビエル・ミレイ氏がMilken Instituteにおけるインタビューでインフレと紙幣印刷について語っている。

転落したアルゼンチン経済

ミレイ氏が大統領を務めるアルゼンチンはかつて経済大国だった。ミレイ氏は次のように語っている。

アルゼンチンは、1860年に自由主義的な憲法を採用してからたった35年で世界に名だたる大国となった。

野蛮人の国からGDPがブラジル、メキシコ、パラグアイ、ペルーの合計よりも多い国となり、ラテンアメリカ諸国にある鉄道網の合計よりも巨大な鉄道網を有する国になった。

ブラジルはBRICSの一角であり、世界8位の経済大国だが、元々はアルゼンチンの方が大国だったのである。

しかし今やアルゼンチンはハイパーインフレと債務不履行の国として知られ、そうした社会的混乱のさなか経済学者のミレイ氏が大統領として選出された。

繁栄していたアルゼンチン経済に何が起きたのか。ミレイ氏は次のように説明している。

しかしこの絶頂の最中、アルゼンチンの指導者たちは手に入れた富をすべての人に分け与えるという善意の考えから、人々の限りない需要を政府が満たし続けるべきだという誤った社会正義の教義を実行し始めた。

アルゼンチンがハイパーインフレと通貨暴落を味わうようになったのは、際限のない政府支出と紙幣印刷が原因である。

政府支出は通常経済的に困っている人々を助けるという名目で行われる。だが日本でもガソリンへの補助金が消費者ではなく業者の懐に消えてゆくように、それはしばしば経済的に困っている人々のところへは届けられない。

だがミレイ氏はそもそも経済的に困っている人々を政府支出で助けるという考え方自体が国の経済に貧困をもたらすと主張する。

ミレイ氏は次のように述べている。

そうした考えに現実は味方していない。好む好まざるにかかわらず、人々の需要は無限で、資源は有限だ。

政府がいくらでも紙幣を印刷すれば経済問題は解決するという考え方がある。だが考えてほしいのだが、例えば国中のすべての人が紙幣を印刷する以外の仕事を辞めたらどうなるだろうか?

明らかに国民は紙幣以外のものを手にできなくなる。この程度の思考実験で明らかになる通り、経済の問題とは供給される商品とサービスの量の問題であり、流通する紙幣の量の問題ではないのである。

アルゼンチン経済の没落

このように、何でも政府が解決するという考え方を政治家と国民の両方が支持した結果、ミレイ氏によればアルゼンチンには次のようなことが起きた。

政府と経済に関するこうした考えの結果、政府支出は劇的に増加した。

だから政府はまずアルゼンチン国民を税金で窒息させようとした。それで十分でなければアルゼンチンの黄金時代に蓄えた外貨準備を取り崩し始めた。

アルゼンチンはデフォルトを繰り返し、誰もアルゼンチンにお金を貸してくれなくなった時、政府は無制限の紙幣印刷を開始した。

政府債務は何らかの形で返されなければならない。徴税か、紙幣印刷か、あるいはデフォルトである。

ガンドラック氏: 米国債が債務減免される可能性


アルゼンチンはそれらすべてを経験した。上記のうち紙幣印刷に問題がないと主張したのがインフレ主義者たちだが、アメリカでは物価が高騰し、日本では通貨暴落が起きた。

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日本では税率も有り得ないほど高い水準になっている。だが政府支出の恩恵は苦しむ国民とは別のところにだけ流れて行っている。

レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する


「先進的」なアルゼンチン経済

アルゼンチンは日本やアメリカの先を行っているという点で先進的である。そのアルゼンチンがどうなったかと言えば、ミレイ氏によれば次のようになった。

当然の結果として、アルゼンチン国民は構造的な貧困から逃れられなくなり、1人当たりGDPは世界140位にまで転落した。

税金の増加、通貨の下落、インフレ、そしてGDPの順位の凋落。まるで何処かの国のようではないか。これでも自分の国はアルゼンチンとは違うと主張できるだろうか。

だからこそアルゼンチンの大統領であるミレイ氏は、西側諸国に同じ失敗をしないように語りかけているのである。

そのために必要なことは政府支出に依存しない自由な経済である。どういう商品やサービスが必要かを政府ではなく消費者が決める自由主義経済である。

だが政府支出を支持する人々には自由主義経済は敵視される。貧しい人々を助けないのかということである。

だがミレイ氏がダボス会議で言っていたように、自由主義経済による経済成長こそが世界人口の大半を貧困から救い、政府支出がもたらすインフレや通貨下落が貧困を増やしているのである。


ミレイ大統領: 政府主導の経済が自由市場の経済に勝てない経済学的証拠
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815


自由主義経済を敵視する「倫理的な」人々

だからミレイ氏は、貧しい人々を助けるべきだと主張し、自由主義経済に反対する人々に次のように問いかける。

なぜ学者たちや国際機関、政治家たちは地球の人口の90%を酷い貧困から救った経済システムを敵視するのだろうか?

なぜ西側諸国は歴史的に何度も失敗している実験にこだわり続けるのだろうか?

インフレ主義者たちはデフレが問題だと言う。だがなぜデフレになったのか? デフレとはものが売れない状態である。なぜ売れないのか? 政府支出によって消費者が欲しくもないものが大量に作られたからである。

海外の左派のように、政府支出によって貧しい人々を助けようとする人々に対して、ミレイ氏は次のように言っている。

自由市場では資本主義者が絶え間ない利益追求によってより良い商品やサービスをより安い価格で提供するようになっている。

政府の介入を好む人々は、この市場の大切な役割を阻害するだけに留まらず、互いに自画自賛して社会正義のメダルを与え合い、最終的には共産主義に通じる価値観を推進して経済を酷い状態にする。

自由主義経済ならば、消費者が欲しくもないものは作られない。だがインフレ主義者たちは政府支出によって不要なものを経済にばら撒き、デフレを引き起こし、デフレを是正するために紙幣をばら撒いてインフレを引き起こす。

そういうことをしながら海外の左派たちは自分たちは財政支出で貧困層を救ったと主張する。日本はやや特殊である。日本では口実などなくとも政治家が好き放題やることを国民が認めるからである。

結論

いずれにしてもそのようにして経済は沈んでゆく。それはまさに共産主義の最期と同じである。インフレ主義が本質的には共産主義と同じものであることは、インフレになるよりも前にレイ・ダリオ氏が指摘していた。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる (2020/5/17)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831


このプロセスで得をするのは政治家だけである。政治家(とそのばら撒きを受ける業者)だけは利益だけを得て罰せられることなく颯爽と去ってゆく。

ミレイ氏と同じオーストリア学派の経済学者である フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣論集』において次のように言っていたことが思い出される。

しかし、短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51206


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ミレイ大統領: 政府主導の経済が自由市場の経済に勝てない経済学的証拠
2024年5月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815

2024年1月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)から、アルゼンチンの大統領でありオーストリア学派の経済学者でもあるハビエル・ミレイ氏の演説を紹介したい。

アルゼンチンのミレイ大統領

前回の記事では、政府による補助金や寄付金が国民に対する不当な資本移動になっていると批判するファンドマネージャーのスタンレー・ドラッケンミラー氏がアルゼンチンのミレイ大統領を賞賛していた。

ドラッケンミラー氏、やはりアルゼンチンのミレイ大統領が好きだった


何故ならば、ミレイ氏は過去の緩和政策によって100%を越えるインフレとなったアルゼンチンで、政治家による勝手な政府債務の増加と財政支出を止めるために選ばれた大統領だからである。

新アルゼンチン大統領のミレイ氏、経費削減のため閣僚の半分を削減する


ミレイ氏はオーストリア学派の経済学者だが、オーストリア学派では財政支出は無駄な公共事業を積み上げるだけで国民の幸福には繋がらず、生産性向上のためには民間セクターにおけるイノベーションと努力が必要だと考える。

ハイエク氏: 金融緩和でデフレを防ごうとすれば経済は悪化する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48045


ミレイ氏の経済学的論証

ミレイ氏はそれを論証するために経済統計を持ち出す。

彼は次のように述べている。

西暦元年から1800年ほどまでの間、世界の1人当たりGDPは期間を通して変化しませんでした。

人類の経済成長のグラフを振り返れば、それはホッケーのスティックのような指数関数的なグラフで、期間の90%はほとんど変わらないまま留まり、19世紀になって初めて指数関数的な上昇を見せ始めるのです。

停滞の期間における唯一の例外は15世紀後半のアメリカ大陸発見です。

ミレイ氏が語るのは世界の1人当たりGDPの成長の歴史である。指数関数的なグラフとは、最初はほとんど上昇を見せないが、途中から物凄い勢いで上がってゆくグラフのことである。

驚くべきことだが、19世紀になるまで世界の経済成長は極めて緩慢だった。より詳しくは次の通りである。

西暦元年から1800年までの1人当たりGDP成長率は0.02%ほどで安定しています。ほぼ無成長だということです。

厳密には今の成長率と比べると無成長に見えると言うべきなのだろう。昔にも多少のイノベーションは積み重ねられてきたのだろうが、今のイノベーションと比べると僅かということになってしまう。

産業革命と1人当たりGDP

だが19世紀にはそれが変わる。19世紀に何が起こったか。産業革命である。

ミレイ氏は次のように続ける。

19世紀の産業革命からは成長率が年率で0.66%になります。

1900年から1950年までの期間では、成長率は年率1.66%に加速しました。

ここから現代的な成長率へと変わってゆく。

産業革命以降は大量生産の時代である。大量生産ということは、単に金銭的に豊かになるというだけの話ではなく、より多くの人にものが届けられるということである。

そしてそのトレンドはまだ加速している。ミレイ氏は次のように続ける。

1950年から2000年では、成長率は2.1%になっています。

このトレンドは止まるどころか今でも続いています。2000年から2023年までの期間では、成長率は年率3%に更に加速しました。

結論

だからミレイ氏は、特に政府が支出を増やすべきだと主張し、自由市場を批判し政府の経済介入を支持する左派の人々の向けて次のように言う。

結論は明らかです。自由市場と資本主義という経済システムは、社会の問題の原因であるどころか、地球上の飢餓と貧困を終わらせるための唯一の手段なのです。

これは政府が大きく徴税し大きく支出する「大きな政府」と、それを最小限にする「小さな政府」の問題である。

「大きな政府」は日本の自民党やアメリカの民主党であり、小さな政府はほとんど存在しないが今のアルゼンチン政府か、あるいはスイス政府くらいだろうか。

「大きな政府」はお金が費やされる先を消費者ではなく政治家が決定するという意味で本質的には共産主義である。レイ・ダリオ氏なども、先進国のほとんどが多額の財政支出をしている状況を共産主義的と呼んでいた。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831


「大きな政府」の問題を指摘するには共産主義国の失敗を 指摘するだけで十分である。だが経済学者のミレイ氏は経済の歴史を振り返り、資本主義の時代とそれ以外では経済成長がまったく違うことを示した。

日本の自民党やアメリカの民主党のような、ムラの権力者が財政を勝手に決めるようなムラ社会は太古の昔からあったはずだ。だがそれでは経済成長は0.02%のままだった。「大きな政府」も共産主義も、その時代の経済成長に戻すことを意味しているのである。

それは人々に貧困で しねと言っているのと同じである。だが日本の自民党やアメリカの民主党のような左派(誤植ではない)の人々は、人々を経済停滞から救うためには財政支出しかないと言う。

面白い冗談ではないか。東京五輪や大阪万博がインフレと円安で苦しむ市民をどう助けるのか見てみたいものである。

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564


だがミレイ氏の議論は本当に政治家のものとは思えない。本職の経済学者なのだから当たり前なのだが。米国の財務長官を務めた経済学者ラリー・サマーズ氏(彼は左派である)の他に、政治の世界に関われるまともな経済学者という稀有な人材が出てしまった。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815


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ミレイ大統領: 多様性やSDGSは強要の文化である
2024年7月15日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51312

引き続き、アルゼンチン大統領でありオーストリア学派の経済学者であるハビエル・ミレイ氏のMilken Instituteにおける講演である。

自由主義者ハビエル・ミレイ氏

ミレイ氏は財政支出と紙幣印刷のやり過ぎでハイパーインフレと通貨暴落を経験したアルゼンチンの大統領に選出された経済学者である。

そのミレイ氏は前回の記事で政府による無節操な支出を批判していた。

ハイパーインフレのアルゼンチン大統領、紙幣印刷が経済を悪化させる理由を語る


その理屈は、どういう商品やサービスにお金が支払われるのかは政府ではなく消費者が決めるべきだというものだった。そうでなければ消費者が見向きもしない不要なものが山積みになってしまう。

それはいわば、経済にどのような商品やサービスが存在するべきかを政府が決める社会制度であり、それは程度の違いはあれ共産主義の一種である。

現代西洋における共産主義の文化

共産主義の本質は国民ではなく政府が決めるということである。そしてミレイ氏によれば、その共産主義的なイデオロギーはインフレ主義的な経済政策だけではなく、西洋諸国の文化や教育にまで及んでいる。

それは多様性や環境問題などにおける左派的なイデオロギーである。ミレイ氏は次のように説明している。

企業やマスコミ、教育、そしてエンターテイメントの世界にまで浸透している自己抑圧的な文化が存在する。

それは直接的であれ間接的であれ、様々な形を取った強要の文化であり、政府によって強制され、ジェンダーや人種問題や環境問題などの倫理的問題とされる問題について服従しない個人は迫害される。

特に欧米諸国では、こうした問題に対して多数と同じ反応を返さない個人は迫害される。

最近ではそういう左派のイデオロギーに嫌気が差した人が増えてきて、そうでない人の人権もある程度戻ってはいるのだが、少し前までドイツなどでは二酸化炭素のために風呂に入らないなどということが真面目に議論されていた。


ドイツの政治家、カーボンニュートラルのために風呂に入らないことを推奨


また、人種問題に関して言えば、ハーバード大学などが黒人学生などを優先するために人種ごとに入学者の人数を決めていた件で、優秀なアジア人学生が人数制限のために他の人種の学生よりも不利な状況に立たされるという人種差別的な状況が発生していた。

人種差別に反対する人々のせいで学生が人種差別に遭うというほとんどジョークのような状況だったのだが、ミレイ氏は次のように述べている。

こうした考えは多様性のために人間の長所を罰し、政治的に過敏な一部の人々に気を遣うために自由なアイデアの交流を妨げる愚かさに繋がっている。

結論

日本人はアメリカやヨーロッパでは同調圧力が少ないと思っている人が多いが、とんでもない間違いである。政治的に同調しなければ迫害されるようなことは日本では起こらない。

だが欧米諸国ではそういう状況が長らく続いている。ウクライナなどの問題も同じような立ち位置にあるが、ハマスとイスラエルの問題が勃発してからは西側が支持する側が必ずしも正義ではないことがようやく明らかになりつつある。

ハマス・イスラエル戦争でメッキが剥がれかけている欧米諸国のメディア戦略

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51312


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世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
2020年5月17日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831

新型コロナウィルスによる景気後退が迫るなか、世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏がCNNへの寄稿記事で共産主義化する社会に懸念を示している。

新型コロナで増大する政府のプレゼンス

新型コロナによるロックダウンで経済活動が停滞し多くの人が失業しているため、日本やアメリカなどの国では政府が国民に現金を給付するヘリコプターマネー政策などの景気刺激策を取っており、またインフラ投資などの公共事業も議論されている。

しかしそれは同時に、これまでは他人の役に立つものを作っていた人が報酬を受け取っていた時代から、政府に選ばれた人が収入を得る時代へのシフトを意味している。ダリオ氏は次のように述べている。

世界中で人々や企業が収入と貯蓄を失っており、中央銀行と政府は資金を注入してそれを補おうとしている。これはつまり自由市場がもはや資本の配分を決定しているのではなく、政府がそれを決めているということを意味する。

その規模はアメリカでは数兆ドルに及んでおり、また日本でもマスクの配布が不要だったのではないかという話や、そもそもマスクの製造会社はどのように選ばれたのかという議論がなされている。これらの企業は政府によって税金の配布先として選ばれたのである。

ダリオ氏は次のように続ける。

政府と中央銀行は何兆ドルもの資金と信用を作り出し、それを受け取りたい人に受け取らせている。この状況が続けばすぐに、これらの資金は誰が出すべきでそれを誰が受け取るべきかという議論を呼ぶか、より悪い場合には争いに発展するだろう。

政府から景気対策として和牛券の発行を提案したときに反対の声が上がったのが典型的だろう。自分の都合で資金を振り分けたい政治家とそれに反対する国民の争いが今後大きくなるとダリオ氏は予想しているのである。

資本主義という名の共産主義

それでなくとも先進国の低成長は政府が債務を膨張させて非効率な事業を生み出し続けたことで生まれてきたのである。公共事業は誰も使わない箱物を生み出し、低金利政策は誰も使わない商品やサービスを作る三流企業を借金で延命させることを許した。

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7103


そもそも人々はデフレということの意味を考えてみる必要があるだろう。作ったものを誰も買っていないということがデフレの意味なのである。デフレとは需要に対して供給が過多であること意味しているからである。無駄なものが作られ続けているのである。

これはまさに共産主義の問題と同じである。政府が誰々はこれを作るようにと指示を出して経済を回そうとしたソビエト連邦と中国の経済は悲惨なことになった。日本やアメリカの人々は新型コロナで経済が窮地にある今をわざわざ選び、かつてのソ連や中国と同じ経済実験をやろうとしているのである。

「利益」とは何か

そうした政策が選ばれる中、ダリオ氏は資本主義の基本を冷静に説明する。

「利益を出す」ということがどういうことかを考えれば、資本主義は特に資源の配分や社会の生産性と生活水準の向上に向いたシステムであると言える。

相変わらず分かりやすいダリオ氏の説明は続く。

話は非常に単純である。製品の価値がそれを生産するために使った資源の価値よりも高いとき、その差が「利益」となり、利益を生む生産活動はより多くの資源を集めることができる。

もし製品の価値がそれを生産するために使った資源の価値よりも低いとき、そうした生産活動は行き詰まり倒産することになる。

このシステムは人々が欲しいと思う製品を作る個人に報酬を与え、その能力のある人はその事業アイデアを評価し資金を出すリスクを負っても良いと判断した投資家から事業のための資金を受け取ることができる。

倒産は必要である。しかしリーマンショック以来、多くの国がそれを拒み続けてきた。その結果が現在の低成長であり、そこにコロナ危機が来て経済は危機に瀕している。にもかかわらず多くの政治家は同じ過ちを繰り返そうとし、それが多くの人々に支持されている。

しかしはっきり言わなければならないが、世界経済は新型コロナのために危機的状況に陥っており、どの国の経済にもそのようなことをしている余裕などないのである。

新型コロナ、米国経済の景気後退はリーマンショックの倍以上か、第1四半期GDP速報


無駄に資源を浪費するだけのゾンビ企業は潰し、社会は限られた資源を本当に人々が使うものを生産する事業だけに振り分け、ロックダウンで失われた莫大な経済活動を取り戻して行かなければならないのだが、実際には無駄を助長する政策が行われ、経済は票が欲しい政治家とそれを支持する短絡的な人々が支配している。


結論

経済を理解している人々は皆、公共事業や量的緩和で経済は救えないということを理解している。多くの著名投資家が警告を発してきたが、誰も聞かなかった。

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7103


ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9681

世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473


ダリオ氏は、紙幣を無制限に印刷する量的緩和が経済を救うかどうかについてはシンプルな意見を表明している。

われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

しかし多くの人々にはこのダリオ氏の言葉は難解過ぎるようである。

飢餓者が出るかもしれないが、経済は沈むしかないのだろう。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831


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ハイエク氏: 金融緩和でデフレを防ごうとすれば経済は悪化する
2024年4月30日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48045

20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が、

著書『貨幣理論と景気循環』
https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%A8%E6%99%AF%E6%B0%97%E5%BE%AA%E7%92%B0%EF%BC%8F%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E3%81%A8%E7%94%9F%E7%94%A3-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF%E5%85%A8%E9%9B%861-1-%E3%80%90%E6%96%B0%E7%89%88%E3%80%91-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF/dp/4393621719?_encoding=UTF8&dib_tag=se&dib=eyJ2IjoiMSJ9.7fiv-LTQDkbWlWqxfYHq9TlHI9v3qiTmF5B9TPEhsbtMZK2uauC-vJ4d8jRXRp8CRS0jruo033Ycd8U_DNZGh8gcyuGZJmZLTJglpfD3x12rz5GWvxVwWFQbMhdy4TLuVoLvkYFpHjSyqAb5_3q9p3wgdS7sVABOsnllJqcjX6_3HFqjXNhDRs_RldtAE6WhoElWqXXn7y9LUtYgS-2tAiPMEaJNZ-17TVbRBNBTuk38TgkOkpB5Dji7Ptw32vIWfVvMtPJs26qJRA9D1X_UGu2TdicFlV3INtG2JJ2JOmc.CtTGkUQTIgxh8J59tcT_g0zCwHjQd6yyaOJ4qN-Jdjc&qid=1714317157&sr=8-41&linkCode=sl1&tag=globalmacrore-22&linkId=da2bd7ddc45b232fa60b020cf8b98c19&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl


で、インフレ政策によってデフレを打倒しようとする考えを批判している。

デフレ打倒のためのインフレ政策

日本では今円安が問題となっている。その原因はアベノミクス以来行われてきた金融緩和である。現日銀総裁の植田氏がそれを段階的に終わらせようとしているが、その速度は円安を止めるのに間に合っていないようだ。

日銀の植田総裁が円安を止められない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/47910


この緩和政策はもともとデフレを打倒するという名目で安倍首相(当時)によって開始された。

しかしその結果のインフレ政策は円安と輸入物価上昇によって見事にインフレをもたらしてしまった。

何故なのか? インフレ政策は何故インフレをもたらしてしまったのか。インフレが起こる前から筆者は「インフレとは物価上昇という意味だ」と何度も繰り返して主張してきたのだが、誰も信じなかった。辞書ぐらい引いてほしいものである。

インフレ政策の何が悪かったのか

だが何が問題だったのか。ハイエク氏の『貨幣理論と景気循環』は1929年に書かれた本であり、世界はまさに世界恐慌のまっただ中だった。そして中央銀行はインフレ政策でデフレを打ち払おうとしていた。

ハイエク氏は次のように書いている。

いま経済ではデフレが進行しており、それが永遠に続けば計り知れない悪影響を及ぼすということにはほとんど疑いがない。

だが、それはデフレが景気低迷の原因であるとか、現在のデフレを人工的な資金注入で打ち消すことでそうした景気低迷を解決できるとかいうことを決して意味しない。

当時も、アベノミクスの開始時と同じように、人々はデフレをインフレに転換しようとしていた。今では人々はインフレをデフレに転換しようとしている。

誰も物価しか気にしていない。そして問題の根源に誰も気付かないのである。

どういうことか? ハイエク氏は次のように続ける。

もしデフレが企業の不採算の原因ではなく結果であるならば、単にデフレをインフレに逆転させることで好景気の永続を達成できると願うのは完全に無意味である。

デフレは何の結果か

デフレは問題の原因ではなく結果である。

経済学において物価とは需要と供給の結果である。インフレは需要に対してものの供給が足りていない状況であり、デフレとは需要以上にものがあふれており買い手がいない状況である。

つまり、デフレだったということは人がものを買いたがらなかったということだ。

何故世のなかには人々の買いたがらないものがあふれているのか? 通常の経済では、人びとの需要を満たせない商品を売る企業は倒産する。

だが人為的な低金利となっている経済では、特にゼロ金利の経済ではどれだけ借金をしても利払いがないので、どれだけ商品が悪くても企業は倒産しない。

そうしたゾンビ企業があふれる経済で、人びとが買いたがらないものがあふれるのは当然である。

更に、それに輪にかけて政府が公共事業によって誰も使わないもの(例えば東京五輪や大阪万博のための建造物)を世の中に量産している。

以前、麻生太郎氏は次のように主張していた。

麻生太郎氏、日銀による財政ファイナンスを肯定: 日本の財政破綻問題はどのように解決されるか (2016/3/13)


誰もお金を借りようとしない。少なくとも預金する人は多いけれども借りる人がいなけりゃ銀行はみんな潰れちゃうんですよ。

年間約30兆くらい借りてくれる人が足りない。約30兆。年によって違うけど。誰かがそれを借りてくれない限りは30兆分だけデフレになりますから。それを借りてくれてるのが政府。

だが需要が足りないというのは、誰も使わないものを大量に作るために人的・物的資源を浪費して日本経済に害がないという意味ではない。

経済再建のために本当に必要だったもの

どうすれば良かったのか。ハイエク氏は次のように述べている。

経済が必要としているのはデフレになる前から存在していた要因の再整理であり、その要因とはすなわち生産と物価の構造が、企業が設備投資のために資金を借りても利益を出せないような状況になっていたことである。

人的・物的資源が浪費されているということは、人びとが本当に必要とする商品を作る企業に資源が行っていないということである。その構造が根本原因なのであり、物価の上下という結果が根本原因なのではない。

この状況を解決するための唯一の方法は、人びとが求めないものを大量に生産するゾンビ企業と政府を経済から追い出すことである。

インフレ政策によるバブルとゾンビ企業の延命

しかし日本政府は、アメリカもそうだが、経済が誰も買いたがらない商品であふれている状況で、誰も買いたがらないものを更に量産するという驚くべき対処法を発見した。

その目的のために借金(信用)が大量に積み重ねられた。ハイエク氏は次のように言う。

アメリカなどの国の中央銀行はデフレ政策どころか、これまでにないほど拙速で広範囲な信用拡大政策で現在の不況に対応してきたが、結果として不況はより長く続き、しかもこれまでのどの不況よりも深刻なものになっている。

アベノミクスはデフレをインフレ政策で打ち払おうとした。それから11年、インフレ政策は確かに円安を通してインフレをもたらした。そして問題は何も解決していないどころか、むしろ状況は悪化している。

何故こうなってしまったのか。ハイエク氏は次のように説明する。

しかし過去3年間のバブルによって生じた腫瘍を取り除くという不可避のプロセスを推し進める代わりに、腫瘍の除去を避けるためのあらゆる努力が行われてきたのだが、現在の不況の最初から最後まで行われ続け、しかも何の効果も生み出さなかったものこそが、この意図的な信用拡大政策なのである。

デフレという結果のみを消し去ろうとして本質的な経済の腫瘍を減らすどころか増やそうとする試みは、状況を単に悪化させるだけだろう。

緩和は永遠に続く

アルコール依存症をアルコールを飲むことで治そうとする馬鹿げた治療がもう10年以上行われ続けたのである。

ハイエク氏は皮肉めいた言い方で次のように言う。

不況に人為的な信用拡大で対抗しようとすることは、腫瘍の原因を増やすことで腫瘍を治そうとすることに等しい。

生産の方向性が間違っているから、もっと生産の方向性を間違わせようというわけだ。だがそのようなやり方では信用拡大が終わった途端に更に悲惨な経済危機が生じるだろう。

緩和政策は確かに短期的にGDPを増大させる。政府支出はGDPの一部なので、公共事業で作られたものがどれだけ無駄なものであろうとも、定義上はちょうどその金額分、1円の無駄もなく、GDPを増加させるからである。

だがGDPが定義上増加しようが無駄なものは無駄である。それは国民を幸福にはしない。無駄なものが借金によって作られ続けることで日本円の価値は薄まり、長期的には円安が日本国民に罰を与えるだろう。

日本経済の凋落は始まっている。植田総裁は円安の弊害に最初から気付いているが、それでも彼がこれ以上金利を上げられないのは、以下の記事で説明したように日本経済が既に沈みかけているからである。

日銀の植田総裁が円安を止められない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/47910


低金利政策によって弱った日本の経済構造は、これからの金利上昇に耐えられない。だが金利を上げないと円安で輸入物価はどんどん上がってゆくだろう。アルコールを止められない末期のアルコール中毒者のような状況が、アベノミクスのもたらした日本経済である。

日本経済はこれから沈んでゆく。インフレ政策にこれだけの被害を受けながら、これから来る景気後退においては日本人はまたインフレ政策による救済を求めるだろう。

今でさえ多少生き残っているアベノミクスの支持者たちは、未だに現在の状況がインフレ政策の引き起こしたバブルの弊害だという事実を認めていない。

だがそういう人びとに対しては、100年近く前に書かれたハイエク氏の『貨幣理論と景気循環』に既にふさわしい言葉が用意されている。

これまで金融緩和がバブルの原因だという説明を拒んできた人々が、不況になった途端に不況の原因は金融政策にあると主張し始めたのは興味深いことだ。

そして人びとまた緩和政策が正しいと言うのだろう。

結論

何故最初から結果が見えているインフレ政策を支持してしまったのか。

それはハイエク氏のまったく正しいマクロ経済学が、まったく間違っているケインズ氏のマクロ経済学に押しのけられたからなのだが、ケインズ氏の経済学が主流になった理由は、単に公共事業を肯定するケインズ経済学が政治家たちにとって都合が良かったからに過ぎないのである。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198


そして国民は、それが自分を害するものであるにもかかわらず、喜んで呑み込んでしまったのである。

経済学は、政治に非常に近い分野であるがゆえに、主流のものをそのまま信じてはならない。そろそろハイエク氏が読み直されるべき頃合いではないか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48045


▲△▽▼


ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
2023年4月7日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564

世界的なインフレが問題となっているなかで、いくつかの国ではいまだに補助金や現金給付といった政策が人気である。

このことについて20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏の

『貨幣発行自由化論』
https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E7%B5%8CBP%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E7%99%BA%E8%A1%8C%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%8C%96%E8%AB%96-%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88%E2%80%95%E2%80%95%E7%AB%B6%E4%BA%89%E9%80%9A%E8%B2%A8%E3%81%AE%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%A8%E5%AE%9F%E8%A1%8C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%88%86%E6%9E%90-%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF-Friedrich/dp/4822288846?&linkCode=sl1&tag=globalmacrore-22&linkId=fcbc06c8fcdd215c08c6315e02ba46cd&ref_=as_li_ss_tl


から彼の意見を取り上げよう。

紙幣印刷政策

リーマンショック以後、世界中の中央銀行が量的緩和政策、つまりは紙幣印刷によって金利を下げ、自国通貨の価値を下げる政策を行ってきた。

ハイエク氏は紙幣印刷政策について次のように述べている。

貸付のための紙幣を印刷することで人為的に貸付用の資金を安価にすることは、貸付先を助けるだけなく、他の人々を犠牲にすることによってではあるが、経済活動全体を少しの間刺激する。

一方でそうした紙幣発行が市場の操縦メカニズムを破壊する効果を持つことは理解されにくい。

そうして2008年以降、紙幣印刷と低金利政策が行われ続けた。それはインフレを目指すという名目のもと行われていた。

当時の未開人たちはインフレが物価上昇を意味するということを知らなかったので、インフレ政策は多くの人々に歓迎された。だがインフレが何を意味するかは誰も理解していなかった。

そしてコロナ以後にはついに人々の口座に直接資金を放り込む現金給付まで行われた。そしてそれはついにインフレを引き起こした。2021年には既に始まっていた現在の物価高騰がウクライナ情勢とは無関係であることは、ここでは何度も説明している。

ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30188


そしてインフレになって初めて人々はインフレは物価上昇という意味だということを理解した。文明がようやく生じ始めたのだろうか。

いや、そうでもないらしい。何故ならば、インフレ対策に例えば日本政府が行っていることは、電気・ガスの購入支援や全国旅行支援などのインフレ政策だからである。

ハイエク氏は次のように続ける。

しかし商品の追加購入のためのそうした資金供給は商品の相対的な価格の構造を歪め、資源を持続不可能な経済活動へと引き込み、後に起こる不可避の反作用の原因となる。

例えば全国旅行支援は旅行者が殺到したことで宿泊料金の高騰を引き起こし、しかもホテル側は需要の急増に対応できずに既存の従業員を酷使して後の雇用に影響を与えている。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29551


既存の従業員を酷使しても一時的な需要のために従業員を増やしても後で問題が生じる。それが歪みである。

だが日本政府はそんなことを気にしたりはしない。インフレにインフレ政策で対応するような人々にそれだけの頭脳があるわけがないのである。

紙幣印刷の本当の意味

果たして未開人はいつ文明化されるのだろうか。インフレの原因は需要に対してものが不足していることであり、ものの不足を紙幣印刷で解決することはできない。レイ・ダリオ氏はインフレが起こる前に次のように述べていた。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831


われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

世の中にあるものの量が同じであるとき、紙幣だけを増やして一部の人々に配れば、その効果は本来他の人々が買えたものをその一部の人々に与えることになるだけである。全体のパイは変わらないのだから、その人々に与えたものは本来他の人々の取り分である。

これは現金給付だけでなく紙幣印刷全般に言える。例えば量的緩和政策は中央銀行が債券を買い入れることで債券価格と株価を上昇させる政策だが、その結果は債券と株式を持っている人が他の人の取り分を奪いながらより多く消費できるようになることである。

これは若者から老人へと資金を転移させる政策の一部でもある。

ドラッケンミラー氏、高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31231


紙幣印刷という窃盗

ハイエク氏は次のように語っている。

自分で得たわけでも他人が放棄したわけでもないものを得る権利を特定の人々に与えることは、本当に窃盗と同じような犯罪である。

だが世の中における一番の犯罪者は捕まらない。トランプ氏は口止め料を事業費として計上したことで捕まる可能性があるそうだが、オバマ政権下でウクライナ政府を自分の好きなようにしたバイデン氏や、虚偽の理由でイラクに戦争を仕掛けたブッシュ氏は捕まらない。


サマーズ氏、トランプ元大統領の起訴について語る

ロシアのウクライナ侵攻でバイデン大統領が犯した一番の間違い



そして実質的には明らかな窃盗である量的緩和や現金給付も、政府がそれを行えば政治家が捕まることはない。

ハイエク氏はこう述べている。

一般的な理解が不足しているために、紙幣発行の独占者による過剰発行という犯罪はいまだ許容されているだけではなく称賛さえされている。

ちなみに日本政府は窃盗を行うだけではなく、物価指数の計算を恣意的に変えることで自分のせいで起こっているインフレを隠蔽している。

日本政府の詐欺的な物価指数の計算方法がインフレを悪化させる


人々はどうするべきか。日本政府による窃盗の被害者になりたくなければ、経済と金融市場を知ることである。インフレは資産運用で回避できる。


世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502


ちなみにハイエク氏の『貨幣発行自由化論』(『貨幣論集』に含まれている)は1976年の発行である。だがまさに今のために書かれたような内容となっている。

インフレの意味さえ知らずにインフレ政策を支持した未開の人々が居た一方で、現在の状況を50年前に予想していた天才も居る。
政府による窃盗を投資で避けられる人がいる一方で、喜んで自分から窃盗される人もいる。


「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/27644


すべてはその人次第である。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564
2:777 :

2024/07/14 (Sun) 08:46:25

【ゆっくり解説】ハイエクvsケインズ~経済学を変えた世紀の対決
https://www.youtube.com/watch?v=K3uZHzdi9Jk
https://www.youtube.com/watch?v=cOaxStGHQD8

【ゆっくり解説】ハイエクvsケインズ・完結編~経済学を変えた世紀の対決~ケインズの遺したスタグフレーション
https://www.youtube.com/watch?v=lEe7KCshrec



ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31597

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11992

ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31421

ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31363

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564

ハイエク氏: インフレを引き起こすインフレ政策を止めさせるには民間企業が通貨を発行すべき
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35579

ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/12051


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政府主導の経済は自由市場の経済に勝てない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16860493

史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14040247

ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14068389

MMT論者はネズミの巣穴に帰ってもう出て来ない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16825321

「賃金上がらず予想外」アベノミクス指南役・浜田宏一氏証言 トリクルダウン起こせず…
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14095196

政治とは税金を集めて政治家の裁量でそれをばら撒くこと
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16841750

低金利の間に大量生産されたゾンビ企業は高金利にして一掃しないといけない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16852548

倒産する企業はそのまま倒産させるのが正しい
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14033162


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すべての紙幣の価値は最終的にゼロに向かってゆく
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16856204

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 2020年5月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨 2020年5月23日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 2020年5月25日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10953

世界最大のヘッジファンド: 豊かな国ほど借金まみれになる理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175

南海泡沫事件: バブル経済の語源となった近世イギリスの株式バブルを振り返る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/3199


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ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33890

ガンドラック氏: 量的緩和は権力者と中国を裕福にし貧乏人をより貧乏にする
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13619

世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19942

インフレが制御不能になれば政府は価格統制を始める
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11964

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7103

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29551

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502

日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32797

ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36355

日銀植田総裁の曖昧なイールドカーブコントロール「運用柔軟化」を解説する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38378

世界最大のヘッジファンド、量的緩和と現金給付に続く新たな金融緩和を語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行の損失に対する政府の資金注入は始まっている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38689

ガンドラック氏: アメリカは2年物国債金利の警告通り利下げする、中央銀行はまったく不要
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32780

ポジャール氏: 中央銀行は金利高騰か通貨下落かを選ぶことになる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29314

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198

ドラッケンミラー氏: インフレを引き起こした政府の間違いは長期にわたって貧困層を苦しめる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/28780

中央銀行が中央銀行自身を救済するという現金給付に次ぐ新たな緩和方法が既に始まっている
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14137906

大西つねきがやろうとしていること(第49回衆議院選挙に向けて)
https://www.youtube.com/watch?v=Z0aesmYcl0U

「大西つねきはMMT派ではない」大西つねきのパイレーツラジオ2.0(Live配信2023/04/10)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14108096


3:777 :

2024/07/14 (Sun) 08:56:45

追い込まれた日銀!? 石原順チャンネル
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16848778

石原順チャンネル - YouTube
https://www.youtube.com/@ishihara-jun/videos
https://www.youtube.com/@ishihara-jun/playlists

ザ・マネー 西山孝四郎のマーケットスクエア - YouTube
https://www.youtube.com/@user-yz8gy6ug6q/streams


追い込まれた日銀!?
石原順チャンネル 2024/04/02
https://www.youtube.com/watch?v=cgTDzeV6Ups

<チャプター>
00:00 追い込まれた日銀!?
00:15 ドル円(日足)
02:00 日銀は追加利上げをする気があるのか?
05:54 資産バブルは円安バーゲンセール
09:41 日経平均CFD(日足)
11:13 ドル円と日経平均の月足の推移
16:05 S&P500CD(日足)
18:28 米国の利下げは資金繰りか!?
19:52 米国の負債総額
22:43 米国の利息は年末までに1.6兆ドルに達し、米国政府の最大の支出になる
26:33 コアCPIインフレと北海原油価格の推移
27:25 NY原油CFD(日足)
30:08 この青写真が続くなら、市場は再び衝撃に見舞われるだろう


バブルは11月の米大統領選挙までか!?
石原順チャンネル 2024/06/04
https://www.youtube.com/watch?v=XCJ70uQbkuU

<チャプター>
00:00 最高値更新が続くゴールド!インフレは終わらない?
09:03 米国の負債総額
10:16 民主党と共和党のどちらも持続不可能な債務に対処しようとはしない
11:55 米国の利息は年末までに1.6兆ドルに達し、米国政府の最大の支出になる
12:51 米商業銀行が保有する未実現損益の推移
14:35 バブル延命は11月の米大統領選挙までか!?
20:28 過去の利下げサイクル
22:22 米国のFF金利の推移と景気後退期
24:10 ナスダック100と米国2年国債の推移(1996年~2010年)
24:45 歴史は「ピボット」が本当の暴落の引き金になることを示している
27:40 米国株式市場における弱気相場の歴史(S&P500)
29:25 市場は再び衝撃に見舞われるだろう



迫り来るクラッシュにどのように備えるか!暴落対策に何をする!?
石原順チャンネル 2024/06/11
https://www.youtube.com/watch?v=RX9a-OqULNk

<チャプター>
00:00 迫り来るクラッシュにどのように備えるか!暴落対策に何をする!?
02:13 CPIとFOMCによる株価ショックの可能性?
03:09 市場は既にCPIを織り込み済み?
05:08 米国政府の利子支出は1兆ドルを超えた。
07:58 ヨーロッパの政治が大きく変化
10:22 ウクライナを支援するのは日本
15:19 大統領が代わっても戦争は止まらない?
19:57 政治とは産業の娯楽部門である
25:45 80年サイクルが示唆するもの
28:17 歴史的に見れば、暴落は常にいくつかの問題から生じている。
31:06 迫り来るクラッシュにどのように備えるか
38:51 喫茶店のディスクール



米国の負債総額は34 兆ドルを突破!世界の借金はもう限界か?
石原順チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=mJAuyVjfX10

<チャプター>
00:00 米国の負債総額は34 兆ドルを突破!世界の借金はもう限界か?
02:08 米国10年国債金利(月足)
08:00 米国の負債総額
11:25 インフレ調整後の連邦赤字
13:39 S&P500(月足)
16:54 日経平均(月足)1960年~2024年
19:15 日経平均と日銀のバランスシート
20:29 ドル/円(月足)
23:12 民主党と共和党のどちらも持続不可能な債務に対処しない
25:22 経済の仕組み(FRBの後始末戦略)
29:26 ナスダック100と米国2年国債の推移(1996年~2010年)
31:04 歴史は「ピボット」が本当の暴落の引き金になることを示している


ドル円は再び160円目前!円安は米国の都合!?
石原順チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=V3tuNHXrpGI

<チャプター>
00:00 為替介入もドル円は156円まで上昇! 円は破滅のループに陥った!?
01:05 何かが壊れるのは時間の問題!?
03:03 民主党と共和党のどちらも持続不可能な債務に対処しない
04:11 連邦債務利息が1兆ドルを超える
04:58 インフレ調整後の連邦赤字
06:41 米国債の3大購入国である中国、日本、サウジアラビアおよび湾岸諸国
11:55 米・日10年国債金利(週足)
16:00 日本国債の買い手
17:35 日本から米国へ過剰流動性の提供
23:23 ドル/円(月足)
26:09 ドル/円(日足)


株、不動産・・・円安バーゲンセールで全てが上昇!インフレヘッジを急げ!?
石原順チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=M8zVWY7c0S8

<チャプター>
00:00 インフレヘッジを急げ!?
00:38 日経平均CFD(日足)
02:05 円は2012年以降50%下落
05:25 インフレ不況は?
12:00 ドル/円(日足)円安大バーゲンセール
13:40 ユーロ/円(日足)
15:40 ポンド/円(日足)
16:25 インフレ調整後の連邦赤字
21:25 S&P500CFD(日足)
24:40 もうひとつのアメリカ帝国のサイクル(今、⑮)
25:07 ナスダック100(月足)
26:41 失業率の上昇
27:36 景気循環と株式市場の循環


日本、金利上昇で経済崩壊の可能性
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16856196

これから起きる超円高によるバブル崩壊と預金封鎖
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14091470
4:777 :

2024/07/16 (Tue) 02:00:52

aあ
5:777 :

2024/08/21 (Wed) 01:59:24

ガンドラック氏: アメリカ民主党の奨学金ローンや医療ローンの帳消しが愚かである理由
2024年8月20日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/52526

11月のアメリカ大統領選挙が近づく中、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がTwitterでカマラ・ハリス副大統領の経済政策を痛烈に批判している。

医療債務の免除

バイデン大統領が出馬を撤回したため、大統領選挙はトランプ氏とハリス氏という構図になったが、ここに来てガンドラック氏がtwitterに連続投稿し、ハリス氏の経済政策を批判している。ガンドラック氏は共和党員だったのかと思わせるほどの勢いである。

まず最初はハリス氏の提案している医療債務の免除である。アメリカでは日本のような国民皆保険制度がないため、医療費が非常に高額である。

だから医療費を払うために借金をしている人もいる。

そこでハリス氏は医療債務の免除を提案している。アメリカ民主党は奨学金ローンの帳消しをやったように、こういう政策が大好きである。

債務を帳消しにすることの問題点

だが特定の債務の帳消し政策には問題点がある。債務によって得た資金は他の用途にも使えるということである。

例えば後で返さなければならない奨学金を背負った学生は、生活を切り詰めるかもしれない。だが奨学金を返さなくて良いと分かった途端、学生は本来切り詰めていたはずのお金を娯楽や投資などに使うだろう。

このように、奨学金の免除は他の支出を増大させる。むしろ奨学金や今回の場合医療債務は、返さなくて良い借金として人気になるだろう。

だからガンドラック氏は次のように述べている。

医療債務の免除を提案などすれば、債務者が自分の負債を医療債務に置き換えようとするので、全体の負債における医療債務の割合が増加する。それは国民の医療費を増加させることになる。

医療債務とクレジットカードの債務残高がある場合、誰も医療債務の方を返済しようとは思わなくなるだろう。その分クレジットカードで多く借金できるようになるのである。

債務免除で金利上昇

しかも問題はそれだけではない。国全体で医療債務が増えればどうなるか。お金を貸す側が増えていないのに借りる側が増えたとすれば、貸す側をより多く惹きつけるために債券市場では医療ローンの金利が上がるだろう。

つまり、免除された人間は良いかもしれないが、免除を受けていない多くのアメリカの患者にとって医療費が上がってしまうのである。

これは補助金政策の本質である。補助金政策とは誰かを助けることではなく、別の誰かからお金を奪い取って特定の人々に与えることである。

経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣発行自由化論』で次のように言っていたことを思い出したい。

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
自分で得たわけでも他人が放棄したわけでもないものを得る権利を特定の人々に与えることは、本当に窃盗と同じような犯罪である。

一般的な理解が不足しているために、紙幣発行の独占者による過剰発行という犯罪はいまだ許容されているだけではなく称賛さえされている。

政治家は今日も窃盗を行なっている。しかもそれを支持する人々は多い。政治とはそういうものである。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/52526
6:777 :

2024/08/22 (Thu) 01:44:51

ガンドラック氏: 金価格上昇の理由はハリス副大統領の食品の価格統制の公約
2024年8月21日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/52544

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のツイートを紹介する。今回はカマラ・ハリス副大統領の公約と金相場について語っている部分を紹介したい。

ガンドラック氏のハリス氏批判

バイデン大統領を引き継いで大統領選挙に立候補したハリス副大統領をガンドラック氏がTwitterで連日批判している。前回の記事ではハリス氏の医療ローンの帳消し公約はむやみに医療費を高騰させると怒っていた。

ガンドラック氏: アメリカ民主党の奨学金ローンや医療ローンの帳消しが愚かである理由
ガンドラック氏は大統領選挙でハリス氏もトランプ氏も支持しておらず、民主党支持でも共和党支持でもないのだが、間違った経済政策は許容できないということだろう。

そしてガンドラック氏がもう1つ批判しているのがハリス氏の価格統制政策である。

食品の価格統制

これはハリス氏だけでなくハリス氏の所属する民主党全体に言えることだが、アメリカ民主党はコロナ後に発生したインフレを強欲な企業が価格を釣り上げているせいだと主張している。

だが実際にはインフレはバイデン政権(とトランプ政権)が行なった現金給付によって発生した。

トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
つまり、民主党の政治家は自分で発生させたインフレを強欲な企業のせいだと主張しているのである。

この論理は無茶苦茶であり、民主党支持者でクリントン政権の財務長官も務めたラリー・サマーズ氏でさえその論理を批判していた。

サマーズ氏、インフレを強欲な企業のせいとした民主党を批判
サマーズ氏: インフレは有権者が紙幣印刷を支持したせい
サマーズ氏はやや気まずそうに次のように言っていた。

企業が最近急に強欲になったという議論は無理があると思う。

ガンドラック氏の価格統制批判

民主党の理屈はほとんど馬鹿のための経済学である。だがハリス氏の愚かさはそこでは終わらない。ハリス氏が今回の大統領選挙で公約しているのが「価格釣り上げの禁止」だからである。

具体的には食品の値上げを制限するようだが、そもそも「価格釣り上げ」とは何なのだろうか? 誰がその範囲を決めるのか? 経済学者でも算出に困るような「適正価格」が民主党には分かると言うのか?

そもそも民主党の理屈は企業が原材料の価格上昇以上に製品価格を上げているという話なのだが、ガンドラック氏は企業の仕入れ価格である生産者物価と製品の価格である消費者物価を比べて次のように言っている。

2021年1月から消費者物価は19.7%上がったのに対して、生産者物価は20.6%上がっている。何処に「価格の釣り上げ」がある?

生産者物価(仕入れ値)は消費者物価(商品価格)より上がっている。つまり、企業の利ざやはむしろインフレによって狭まっている。

なので「価格の釣り上げ」はそもそも存在すらしていない。企業の強欲さによってインフレが発生しているという話が民主党による妄想なのだから当然である。で、ハリス氏は「価格の釣り上げ」を禁止すると言うが、一体何を禁止するつもりなのか?

価格統制とインフレーション

ハリス氏が存在しない価格の釣り上げを規制するとき、企業は原材料高騰による自然な値上げが出来なくなって潰れてゆくだろう。大統領選挙でどちらも支持していないガンドラック氏がこれだけ批判するのも当然である。

そもそもインフレを価格統制で何とかしようという考え方自体が経済学の観点からは致命的に間違っているのである。

インフレの原因は需要に対して供給が足りないことである。つまりものが不足している。そして価格上昇はものの不足という根本的な問題を是正するために必要なプロセスなのである。

ものが足りなければ価格が上昇する。価格が上昇すれば生産者のモチベーションが上がり、より多くものを作ろうとする。そして供給が増え、価格が安定してくる。

だが価格の上昇を無理矢理止めるとどうなるだろうか? 供給が増えないのでものの不足という根本問題が一向に解決しない。

ハリス氏の言うような「価格が上がるなら価格を上げさせなければ良い」は、前回の記事における医療ローン免除と同じような、聞こえは良いだけで実際には問題を悪化させるだけの政策なのである。

ガンドラック氏: アメリカ民主党の奨学金ローンや医療ローンの帳消しが愚かである理由
そんなことはインフレの歴史を少しでも学べば分かる。だからガンドラック氏は次のように言っている。

価格統制を公約の中核に置くことは世界経済の歴史を完全に無視しており、どれだけ控えめに言ってもナイーブ止まりの考えだ。

結論

ハリス氏は11月の大統領選挙に向けて様々な経済政策を発表している。だが彼女は現職の副大統領でもある。だからガンドラック氏は次のように言っている。

ハリス氏は「大統領になった初日」にインフレを押し下げると言った。何で今やらないんだ?

身も蓋もない。彼女は大統領候補として何か言わなければならないために何かを言っているに過ぎない。

また、ガンドラック氏は金相場に関して重要なコメントをしている。彼は次のように述べている。

金融市場の血も涙もない判断を見た方が良い。

更なる債務と紙幣印刷を必要とする補助金政策と食品への価格統制が発表された途端、金価格は即座に大きく上がった。

レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説しているように、歴史上、紙幣と価格が政府によって乱用されるときにはいつでも、紙幣から現物資産への資金逃避が始まる。

ガンドラック氏はそれでゴールドが上がっていると言う。金価格は次のように推移している。


ハリス氏でもトランプ氏でも経済政策はインフレ方向になりそうな気はしている。

大統領選挙後のトランプ氏、インフレを起こさずに株価上昇を引き起こす余地があるか?
なので長期的に言えば筆者も貴金属には強気である。 インフレ相場はインフレと経済が減速した時に本当の正念場を迎える。

フォン・グライアーツ氏: ゴールドとシルバーの本当の上げ相場はこれから

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/52544
7:777 :

2024/09/18 (Wed) 06:59:19

法人税と譲渡益税をあげると株価は大暴落する
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16869879




ついに始まる世界金融恐慌
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793

40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513

グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート | 世界の金融市場における分析と実践
https://www.globalmacroresearch.org/jp/

追い込まれた日銀!? 石原順チャンネル
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ザ・マネー 西山孝四郎のマーケットスクエア - YouTube
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【ゆっくり解説】ハイエクvsケインズ~経済学を変えた世紀の対決
https://www.youtube.com/watch?v=K3uZHzdi9Jk
https://www.youtube.com/watch?v=cOaxStGHQD8

【ゆっくり解説】ハイエクvsケインズ・完結編~経済学を変えた世紀の対決~ケインズの遺したスタグフレーション
https://www.youtube.com/watch?v=lEe7KCshrec

政府主導の経済は自由市場の経済に勝てない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16860493

史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14040247

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564

ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14068389

MMT論者はネズミの巣穴に帰ってもう出て来ない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16825321

「賃金上がらず予想外」アベノミクス指南役・浜田宏一氏証言 トリクルダウン起こせず…
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14095196

政治とは税金を集めて政治家の裁量でそれをばら撒くこと
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16841750

低金利の間に大量生産されたゾンビ企業は高金利にして一掃しないといけない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16852548

倒産する企業はそのまま倒産させるのが正しい
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14033162




すべての紙幣の価値は最終的にゼロに向かってゆく
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16856204

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 2020年5月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨 2020年5月23日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 2020年5月25日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10953

世界最大のヘッジファンド: 豊かな国ほど借金まみれになる理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175

南海泡沫事件: バブル経済の語源となった近世イギリスの株式バブルを振り返る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/3199
8:777 :

2024/10/22 (Tue) 18:26:21

「ゾンビ企業」の淘汰加速か、日銀利上げで耐えきれなくなる公算大
高橋ニコラス 2024年10月22日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-22/SLQ7LET0AFB400

昨年の企業倒産件数は約8500件、2015年以降で最多
既に困難な状況下の企業、金利上昇で債務返済負担さらに増加
30年にわたって日本銀行の超金融緩和政策が続いた後、わずかな利上げでも、支払い不能に陥る「ゾンビ企業」が急増し、淘汰が加速しかねない状況にある。

  東京商工リサーチが今月発表した全国企業倒産状況によれば、2024年度上期(4ー9月)の倒産件数は5095件と10年ぶりに5000件を突破。負債総額は約1兆3800億円で、産業別ではサービス業が最多だった。

  ゾンビ企業とは、営業利益だけでは借入金の利払いが困難な状況にある企業と定義され、日本の低金利と政府支援のおかげで長年生き延びてきた。投資も人材採用もできないゾンビ企業は、新規企業の誕生を阻害し、雇用の流動性を妨げている。CLSA証券のストラテジスト、ニコラス・スミス氏によると、ゾンビ企業を一掃することはそれほど悪いことではなく、より健全な新規企業が参入する余地を与え得る。

  ゾンビ企業はどれも倒産しても「悲しまれることはないだろう」と話すスミス氏は「日本では失業を心配する必要がなく、むしろ深刻な労働力不足が最も懸念される状況になっている」と指摘した。

Bankruptcies Are Picking Up in Japan
Easy money helped until the pandemic, rate hikes


Source: Tokyo Shoko Research

  東京商工リサーチの3月のリポートによると、金利が0.1ポイント上昇すると、利益のほとんどを負債返済に充てているゾンビ企業の数は、約56万5000社から約63万2000社に増加する可能性がある。

  そのうちの1社は、国内最大の旅行代理店の一つであるエイチ・アイ・エス(HIS)だ。2023年10月期に14億円の営業利益を計上したが、純支払利息は15億円に上った。

  低価格パッケージツアーで知られるHISは、新型コロナウイルス禍後の日本からの海外旅行の低迷で苦戦を強いられている。日本に海外から観光客が殺到しているのとは対照的だ。数十年にわたる低金利政策のもう一つの遺産である円安が一因。ブルームバーグが集計したデータによると、HISは20年以降、負債をさらに増やし、現在は300億円の債務を抱えている。

  同社はコメントを控えた。

Views of Kyoto Ahead of Government Statistics on Foreign Visitors
京都の「三年坂」を歩く観光客Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg
  「ゾンビ企業」という用語は、2008年に星岳雄・東京大学教授を含む3人の教授が作り出した。星教授はゾンビ企業を経営課題に対処せず、政府や債権者からの金融支援で破綻を免れている企業と定義している。

  一方、国際決済銀行(BIS)は、設立から10年超で3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(年間の事業利益が金融費用の何倍かを示す指標)が1を下回る企業をゾンビ企業と定義している。

  今年最大の倒産案件の一つは、三菱航空機の後継会社MSJ資産管理の特別清算で、負債総額は6413億円に上った。その他に環境経営総合研究所、ホクシンメディカル、アサヒフードクリエイトなどがある。

  銀行・保険だけでなく、日本のあらゆるセクターや地域でこの6カ月間に倒産件数が増加している。金利が上昇し、運輸や人工知能(AI)、ソフトウエアなどの産業がグローバルプレーヤーとの熾烈(しれつ)な競争にさらされる中、この数字は今後も増え続ける見通しだ。

  日本の大企業でさえ、もはや倒産の可能性から免れることはできない。2023年、パナソニック液晶ディスプレイが国内の倒産企業の中で負債総額トップとなった。競争により、液晶ディスプレーパネル事業は自動車および産業分野に重点を移したが、米中貿易摩擦による打撃を受けた。

Inside The Panasonic Corp. Technics Factory
栃木県のパナソニック製造施設の液晶テレビ生産ライン(2016年)Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  親会社のパナソニックホールディングスはパナソニック液晶ディスプレイの清算を決定。負債総額は5836億円だった。パナソニックが21年に持ち株会社体制に移行したのは、各部門の説明責任と収益性の改善が狙いだった。経営最高責任者(CEO)の楠見雄規氏は今年5月、「最適な所有者」を見つけることで業績不振部門の改善を図ると述べている。

  日本では負債を抱えた企業数が急増しており、そのペースはバブル崩壊後の1992年より速いとのデータもある。東京商工リサーチによると、ゾンビ企業は日本の上場企業の14%を占めている。

  またゾンビ企業はレストランやホテル、運輸、観光など国内で労働力不足が最も深刻な業界に集中しているという。

  生産性の低い企業は雇用や競争力を維持できず、買収や身売りもできず、利益を生み出すこともできない。特に大都市の人口密集地以外では、経営難が続く企業への投資は難しくなる。

  しかし、数十年にわたる低金利の融資や手厚い補助金が破綻寸前のバランスシートを抱える非生産的な企業を次々と生み出してきた。日本政府は新型コロナウイルス禍にこうした企業に巨額の資金を注ぎ込んだ。一部の専門家はこうした「無利子・無担保」の融資が最近の倒産急増の主因になった可能性があると指摘している。

  中小企業が倒産するとその従業員が解雇され、別の企業、願わくば収益性や生産性がより高く、収支のバランスが良好な企業に転職できる可能性が出てくる。どちらかといえば、これは日銀の利上げによる自然ながらも意図せざる副産物であり、高齢化と人口減少に伴う労働力不足の進行に歯止めをかけるのに役立つかもしれない。

  みずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミスト、服部直樹氏は「日本は経済環境の大きな転換点を迎えつつある状態で、企業もそのデフレ環境からのマインドチェンジなど意識転換を図っていくことが求められる」と指摘。倒産件数の増加は避けられないが、だからといってこれらの企業全てを倒産に追い込むべきではなく、どの企業をどのように支援できるかを決めることが課題だとした。

  各企業は独自の事業を展開しており、それぞれに合わせたアプローチが必要だ。一部の専門家は地元の金融機関がこのようなアプローチに最適な立場にあると主張している。

  東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長は「目指すのは倒産増加ではなく、債務の減少だ」とし、これがわれわれの暮らし方を守ることにつながるとの見方を示した。

  今のところ、日銀が利上げを急ぐ可能性は低いもようだ。日銀は先月、金融政策の据え置きを決定したが、服部氏は日銀が来年1-3月に金利を最大0.5%まで引き上げると予想している。これは1990年代初頭以来の高水準で、負債を抱えたり倒産したりする企業がさらに増えるかもしれない。

  CLSAのスミス氏は、 金利が上昇すると円高が進み、インフレが低下し、消費者に一息つく機会をもたらすと指摘。「もちろんストレスは大きいが、世界が金利上昇に対応しなければならない。経済全体としては金利が上昇した方がはるかに良い」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-22/SLQ7LET0AFB400
9:777 :

2024/11/04 (Mon) 14:13:51

ガンドラック氏: 景気後退が起きればアメリカは資金調達できなくなる
2024年11月3日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/55934

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がオルブライト・ノックス美術館で世界的な金利動向と財政赤字の問題、そして金価格について語っている。

1921年世界恐慌の事例

アメリカや日本ではこれまで、景気後退が起きる度に緩和を行い、景気後退から脱出してきた。コロナ禍においても莫大な現金給付を行い、酷い景気後退を避けた代わりに世界中がインフレになった。

トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
今の人々はそれを当たり前のように思っている。だが違う時代には違う対応があった。例えばガンドラック氏は1921年の世界恐慌の事例について次のように述べている。

1921年の世界恐慌は途方もない経済問題だった。アメリカのGDPは1/3減少した。

1/3だ。だが当時の人々はその景気後退を受け入れた。すべての不良債権と間違った投資が精算された。金利を上げて政府支出を削減し、そして経済は崩壊した。

この世界恐慌について誰も知らないことは、それこそが行なうべきことだったということだ。痛みを受け入れる必要があったのだ。そして1923年にはすべてが順調に戻っていた。

ガンドラック氏のような機関投資家がしばしば言うことは、景気後退は必要だということである。金利の下げ過ぎや不要な補助金によってゾンビ企業が延命され、誰も買わないような製品が作られ続け、売れなかったことこそが景気後退の原因なのだから、そういう企業を潰してしまわなければ問題は解決されないということである。

例えばスタンレー・ドラッケンミラー氏も、中央銀行がソフトランディングを目指すこと自体が間違いだと主張している。

ドラッケンミラー氏: ソフトランディングのことは忘れろ


インフレ政策の未来

だが今の時代では低金利と現金給付で景気後退を避けようとする。

それで景気後退が避けられるなら何が悪いのか? それを続けてゆくとどうなるのか? ガンドラック氏は次のように続けている。

それは今の時代への教訓のように思える。わたしの40年のキャリアの中で、経済問題が起きる度に問題は増幅している。

景気後退は起きる度に前のものよりも酷くなっている。それは偶然ではない。景気後退を遠ざけようとするからだ。そして永遠の缶蹴りが続いてゆく。

2008年の景気後退でわれわれがやったのは、恒常的なゼロ金利やマイナス金利だ。あれは酷い政策だ。

そして今では景気が悪くないとされているのに2兆ドルの財政赤字を垂れ流している。景気後退になれば財政赤字はもっと上がるだろう。

景気後退が起きる度に緩和政策は過激になっている。2008年のリーマンショックではゼロ金利と量的緩和だった。2020年のコロナショックではそれが現金給付に代わり、そして世界中にインフレを引き起こしている。

アメリカの財政赤字は際限なく増え続けている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2024/08/2023-us-budget-deficit-to-gdp-chart.png



インフレ政策の行きつく先

これからもそれが続くとすれば、インフレ政策の副作用もまた過激化してゆくということである。

現金給付の副作用がインフレなら、財政赤字の副作用は金利上昇である。政府は赤字になった分を国債発行で補わなければならないので、赤字が増えれば国債発行が増える。

国債市場で国債の供給が増えれば、需要と供給の関係から国債の価格は下落する。そして債券の価格下落は金利上昇を意味する。

今、金融市場ではアメリカ大統領選挙に向けて金利が上がっている。ガンドラック氏は次のように述べている。

金利が上昇を開始している。ヨーロッパでもアメリカでも上がっている。

金利上昇の理由について、債務が懸念され始めているのだと人々は話し始めている。

トランプ氏もハリス氏も財政赤字を気にしているようには見えないからである。金融市場は国債の供給過多を気にしている。

それを早くも今年の2月には懸念していたのがポール・チューダー・ジョーンズ氏である。

チューダー・ジョーンズ氏: 今年中に米国債暴落、金利急上昇の可能性 (2024/2/24)


ジョーンズ氏の予想通り、新大統領のばら撒きが財政赤字とインフレを悪化させるだろう。一方でアメリカ経済は減速しているのだが、金利はそれを気にしていないようにも見える。

景気が減速しても金利は下がらないのか。ガンドラック氏は次のように述べている。

これまでの経験は役に立たない。

2021年までの40年間、金利は下がり続けた。短期的には上がった時もあったが、長期的には15%から0.2%まで下落した。

だがそのような金利低下はもう起こらない。

ガンドラック氏が特に懸念するのは、次の景気後退時のことである。

リーマンショックでもコロナショックでも、景気後退になれば中央銀行は金利を下げてきた。

次の景気後退でも、政策金利は無理矢理にでも下げられるかもしれない。だが国債の需給とインフレに反応して動く長期国債の金利はどうだろうか。

大量の国債発行とインフレの懸念に耐えられるのだろうか。債券の専門家であるガンドラック氏は、次の景気後退への政府の対応について恐ろしいことを予想している。

人々はインフレ政策に懸念を抱いている。次に景気後退が来たとき、いつものやり方以外の何が起きるだろうか? いつものやり方とは金利を下げて借金を大量に増やすことだ。

だが次に景気後退が来たとき、人々は資金を調達できないことに気づくだろう。

ガンドラック氏は米国債の需給が破綻することを懸念している。

実際に国債の下落に既に賭けている機関投資家も多い。運命の大統領選挙が近づいている。

ポール・チューダー・ジョーンズ氏、大統領選挙でインフレ再加速を予想、米国債を空売り
ドラッケンミラー氏: 米国が0.5%利下げをした日に米国債を空売りした

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/55934
10:777 :

2024/12/06 (Fri) 13:43:44

サマーズ氏、アメリカの公共事業の非効率さを皮肉る
2024年12月5日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/56998

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がハーバード大学での講演で公共事業の非効率さを嘆いている。

アメリカの公共事業

アメリカの財政赤字が話題になっている。コロナ後の高金利で大量の政府債務に多額の利払いが発生して以来、アメリカの借金を心配している専門家が増えている。

サマーズ氏、アメリカの財政危機を警告
ネイピア氏: 米国債はあと27年下落し続け、金利は上がり続ける
サマーズ氏もその1人である。だがリベラル派で民主党の支持者であるサマーズ氏は、公共事業の必要性も訴えている。

だがサマーズ氏のような優れた頭脳には、政治家が事業と業者を選ぶ公共事業が非効率であることは否定できない事実である。

それはアメリカでは特にそうである。アメリカの道路はかなり壊れている。また、高速鉄道がなぜか整備されていないので、アメリカ人は日本の何倍もある国土を自家用車で走り回っている。何時間ものドライブはそれほど稀ではない。

非効率な公共事業たち

さて、サマーズ氏は公共事業の非効率さを説明するためにいくつかの例を挙げている。まずはこれである。

この会場に来ている人はみな、この場所とビジネススクールを繋ぐラーズ・アンダーソン橋を渡ったことがあるだろう。

あの橋は、建設されてから1世紀経ったので、何年か前に改修が必要になった。橋の全長は350フィート(訳注:100メートル強)で、歴史的な橋だ。

改修のために道の片側が62ヶ月の間通れなくなった。

聴衆はほとんどがハーバードの学生なので、身近な例で分かりやすいだろう。その工事の何が問題なのか。サマーズ氏は次のように続けている。

ちなみに第2次世界大戦で勝利するのに45ヶ月かかった。

日本に勝つより橋を建てるほうが難しいというわけだ。

サマーズ氏の例はまだまだ続く。彼は次のように続けている。

こんな話はそれだけではない。ニューヨークの2番街の地下鉄は効率性で名高いとは言えない都市と比べて1キロあたり10倍のコストがかかっている。パリと、トルコのアンカラだ。

アメリカはお世辞にも鉄道建設の経験が豊富だとは言い難い。ロサンゼルスなどは車がなければ移動できない。長距離も短距離も電車がないのである。

次はサンフランシスコの有名なゴールデンゲートブリッジで、サマーズ氏は次のように言っている。

いくらでも例を出せるがこれで最後にしよう。ゴールデンゲートブリッジの下にネットを張ろうという提案が出されたことがある。自殺のリスクを減らせるかもしれないという考えのためで、まともで良い提案だと思う。

素晴らしい計画ではないか。ちなみにゴールデンゲートブリッジに自殺防止のネットを張るためのこの計画は、ある別の工事よりも30%長く時間がかかり、コストはその80%かかると計算された。

ある別の工事とはゴールデンゲートブリッジの建設だ。ちなみにインフレ調整後の値段だ。

もはや笑うしかないが、それはアメリカのせいなのか、公共事業のせいなのか。

結論

おそらく両方だろう。サマーズ氏は上のが最後だと言いながら、もう1つ例を挙げている。

イーロン・マスク氏は多才な優れた人物で、賞賛すべき男だ。だがいち私企業の社長が世界最大の国家が誇るNASAの4倍の重量を毎年宇宙に打ち上げているというのは何かおかしくないだろうか。

最後に非効率の例として挙げられたのは、アメリカの誇るNASAだった。

サマーズ氏はリベラルだから、こうした問題を改善して政府はきちんと公共事業をやるべきだと主張している。サマーズ氏は次のように述べている。

ディベロッパーが事業に取り掛かるまでに何年も認可を待つような状況を何とかし、ディベロッパーが本当にディべロップできるようにしなければならない。

だが公共事業が民間企業より非効率であることには理由があるのではないか。それはサマーズ氏自身が以下の記事で言っていたことである。

サマーズ氏: 本当の資本主義国家では権力者が大衆にごまをする
政治家は認可を好む。自分が認可を決める立場になれば、自分に「ごまをする」ようになる人々が増えるからである。

公共事業が非効率な理由は政府がすべてを決定する社会主義国家が非効率な理由と同じである。

それは政府が政府であるかぎり変わらないのではないか。だが、サマーズ氏も言及しているイーロン・マスク氏がトランプ政権が新設する政府効率化省のトップに就任し、政府の無駄を削減するという。

マスク氏はTwitterの社員の8割を削減してもTwitterを動かし続けている男である。それはなかなか凄いことである。

マスク氏はアメリカ政府の無駄を削減し、アメリカの債務問題を救うことができるのだろうか。できなければ、サマーズ氏が以下の記事で述べていたシナリオが実現するだろう。

サマーズ氏: アメリカは財政赤字増加による軍事力減少で大英帝国の衰退に近づいている

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/56998
11:777 :

2024/12/09 (Mon) 23:17:33

植草一秀の『知られざる真実』2024年12月 9日
理念が歪んでいる日本財政
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/12/post-592296.html

日本財政の本当の問題は財政資金の配分にある。

血税の使い方がおかしいのだ。

「財政規律」という言葉が使われるが、使い方が間違っている。

政府や与党が「財政規律」を口にするとき、主張の帰結は「増税」が「歳出削減」だ。

「歳出削減」で真っ先に来るのが社会保障支出。

社会保障支出を削るか社会保険料負担引き上げが提案される。

財政運営を徹底的に切り詰めて実行しているなら理解もできる。

しかし、現実は違う。

一番わかりやすい例を示そう。

国の財政支出を包括的に知ることができるのは

「一般会計・特別会計歳出純計」

国の歳出全体像を知ることができる。

2024年度の数値を示す。

全体は259兆円。

大きいのは社会保障支出102兆円と国債費89兆円。

国と地方を合わせた社会保障給付は138兆円で80兆円は保険料収入で賄う。

公費負担は55兆円で国が38兆円、地方が17兆円。

2024y12m09d_011554947

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国の社会保障支出102兆円のうち公費で賄っているのが38兆円、保険料が65兆円だ。

2024

国債費が大きいのは満期が到来した国債の償還費が計上されているため。

償還財源の大半は借り換え国債発行で賄っている。

これ以外の支出では地方交付税交付金が22兆円、財政投融資が11兆円。

国の政策支出から社会保障支出を除いたのが「その他」で34兆円。

このうち、防衛費が7.9兆円、予備費が1.6兆円。

両者を除くと24.5兆円になる。

ここにすべての政策支出が含まれる。

この金額は22、23年度が23兆円で24年度が24.5兆円でほとんど変わらない。

一般会計・特別会計歳出純計は259兆円と大きいが、社会保障、防衛以外の政策支出は1年間合計で24兆円程度である。

すべての政策支出を24兆円でやりくりしている。

このなかにも存在意義の乏しい無駄な政府支出は含まれているが、予算査定で厳しい折衝は行われている。

問題なのはこれらの本予算とは別に編成される補正予算。

2020年度から23年度までの4年間に合計154兆円の追加支出が補正予算に計上された。

1年平均39兆円。

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1年間の政府支出を24兆円に収めているなかで1年平均39兆円もの追加支出が計上された。

コロナで一気にたがが外れたと言える。

2020年度に補正予算で計上された歳出追加は73兆円。

空前絶後だ。

1人10万円の給付が実施されたが、これだけが透明公正な政府支出だった。

この金額が13兆円だが、これ以外の支出は不透明極まりないものだった。

最大の支出は「資金繰り対策」の名目で計上された19兆円。

内実は財務省天下り先への「資金贈与」だった。

「出資金」の名目だが、実態は政策投資銀行や政策金融公庫などの財務省天下り政府系金融機関への資金贈与。

どさくさに紛れて、自分たちの天下り先に法外な金を流し込んだ。

ワクチン関連に4,7兆円。

ワクチン代金は2.4兆円だったが、なんと回数にして8.8億回分だった。

ワクチン接種対象人口は1億人強だろう。

8.8億回分の算出根拠が不明だ。

接種代金が2.3兆円。

病床確保等に6兆円。

どさくさに紛れて血税の大争奪戦が展開された。

154兆円の補正予算全体が利権の塊。

この一方で社会保障支出を切り刻み、社会保険料負担の引き上げが熱烈推進されている。

このような歪んだ財政運営のことを「財政規律の欠落」と表現するのが正しい。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/12/post-592296.html
12:777 :

2024/12/17 (Tue) 08:58:23

ハイエク氏: 通貨を政府がコントロールしなければならないというのは根拠のない幻想
2024年12月16日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57350

何十年ぶりにインフレが現実のものとなり、インフレを回避するためにビットコインなどの暗号通貨も盛り上がる中、今一度20世紀最大の経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏の著書『貨幣発行自由化論』から通貨に関する論考を紹介しよう。

先進国の財政赤字

コロナ後、先進国の政府債務は急速に悪化しており、更に悪いことにインフレ対策の金利上昇により国債に利回りが付き始めたことから、アメリカなどの各国政府は財政状況が急激に悪化している。

金利がゼロだった頃には、債務がいくら増えても利払いはゼロだった。だから債務はどれだけ増やしても問題ないということがまことしやかに言われていた。

しかしインフレ政策でインフレが発生し、金利が上昇し始めれば、政府は借金の利払いを新たな借金によって支払わなければならなくなり、乱発される大量の国債が国債市場を下落させる危険性が出る。


レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する


だから政府はインフレ政策などと言いながら、中央銀行に量的緩和で国債を買い入れさせたりすることで、死にものぐるいで金利を低く保ってきたのである。

低金利政策の意味

それが長年行われてきた低金利政策の意味である。ハイエク氏は次のように述べている。

政府の肥大化は主に紙幣印刷によって財政赤字を補填できることが原因だが、表向きはそれによって雇用を守れるからだという言い訳によって行われる。

完全雇用ということが経済学の世界で長年言われてきた。それがあたかも経済学の最大の目標であるかのように持ち上げられてきた。

だが実際には政治家はそれを自分の使える予算が国債の利払い費用に食われないようにするためにやっていたのであり、ケインズ氏の系譜に属する大量の自称経済学者たちがそれを支持してきたのである。

だがケインズ氏と同じ時代に生きたハイエク氏は次のように言う。

人類の歴史は大まかにいってインフレの歴史であり、インフレは政府によって政府の利益のために引き起こされた。

通貨の歴史を研究する者なら誰でも、政府が2000年以上もの長い間、人々を騙して搾取するために通貨を恒常的に使ってきたことを我慢しなければならなかったのかと疑問に思うことを避けられないだろう。

常に減価されてきた貨幣

少しでも勉強したことのある人なら、歴史上のあらゆる硬貨は金や銀の含有量を少しずつ減らされ、最終的には無価値になったことを知っているだろう。

こうした政策で一番有利となるのは債務者であり、実体経済で一番大きな債務者とは多くの場合政府である。

だから政府にとって、金を100g借金して50gしか返さなくても良いということになれば、それほど有難いことはないだろう。現代の紙幣印刷も同じことであり、政府は同じように紙幣の価値を薄めている。

そしてその政策で一番の犠牲者となるのは、(麻生太郎氏も借金しているのは政府であって国民ではないと正しくも言っていたが、)銀行にある預金を通して国債を買っている国民なのである。

政府による通貨発行権の独占

だがここで1つの疑問が生じる。そもそも何故通貨は政府だけが発行しているのか? ハイエク氏はその特権をそもそも疑っているのである。

ハイエク氏は次のように述べている。

このことは政府の特権が必要なのだという神話によってのみ説明できるが、この神話はあまりに深く根付いているので経済学の学徒であっても疑問に抱くことが少ない。

しかしその妥当性を一度疑問に思ってみれば、その根拠が薄弱であることはすぐに分かる。

ハイエク氏の上の議論をもう一度持ち出してみよう。

通貨の歴史を研究する者なら誰でも、政府が2000年以上もの長い間、人々を騙して搾取するために通貨を恒常的に使ってきたことを我慢しなければならなかったのかと疑問に思うことを避けられないだろう。

何故なのか? 誰か教えてほしい。それを疑問に思いつつある人々は増えており、そうした人々は日本円やドル紙幣を捨てて、ゴールドやシルバーやビットコインに逃げているのである。

レイ・ダリオ氏: 日本人は日本政府の低金利政策のせいで年間7%の資産を失っている
フォン・グライアーツ氏: ゴールドとシルバーの本当の上げ相場はこれから


ハイエク氏は何十年も前の人なのだが、政府だけが通貨を発行するのではないという話は、まさに現代のビットコインの話ではないか。

暗号通貨がドルや円の代わりになるためにはかなり大きな障害が存在する。それはかつてスイスの銀行業が直面した脅威である。

アメリカに壊滅させられたスイスのプライベート・バンキング


だが ハイエク氏が指摘したように、政府とインフレの関係を人々が意識し始めたのは良いことではないか。ゴールドや暗号通貨の行方をこれからも報じてゆく。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57350
13:777 :

2024/12/25 (Wed) 17:00:59

【納税者は4割だけ?】小野寺政調会長「国民の6割は納税していない」炎上〜労働者への減税より低所得者への給付を優先するの?金融資産より所得中心の課税制度に不公平感が広がる〜自民党税制の限界
SAMEJIMA TIMES 2024/12/25
https://www.youtube.com/watch?v=GRm7jj5HMlg
14:777 :

2024/12/29 (Sun) 04:58:00

ミレイ大統領、インフレ政策を永遠に続けるとどうなるかを語る
2024年12月28日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57641

アルゼンチンのハイパーインフレを打倒した大統領でオーストリア学派の経済学者でもあるハビエル・ミレイ氏が、レックス・フリードマン氏のインタビューで大統領就任時のアルゼンチン経済の状況について語っている。

アルゼンチンのハイパーインフレ

ミレイ氏はアルゼンチンのハイパーインフレを終わらせるべく当選したアルゼンチンの大統領である。

オーストリア学派の経済学者でもあるミレイ氏は、政治家の野放図な財政支出がインフレと政府債務の悪化をもたらしていると批判し、インフレ政策を停止してハイパーインフレを終わらせると公約した。

ミレイ氏は大統領に就任した2023年12月のアルゼンチン経済の状況を次のように振り返っている。

われわれが政権入りした12月の第1週には、インフレは1日で1%上昇しており、それはつまり年率に換算すると3,700%になる。そして12月の半ばには年率7,500%まで上がっていた。

去年の12月、卸売価格のインフレは1日に54%だった。それは年率では17,000%ということになる。しかもアルゼンチン経済はそれまで10年成長していなかった。1人当たりGDPはおよそ15%下落していた。そして人口のほぼ半分が貧困状態にあった。

自国通貨がまったく信用できない途方もない状況である。それはミレイ氏以前の政治家たちが自分と自分の票田を利するために財政支出を続けたことで起こった。

ミレイ氏は次のように述べている。

より細かい議論に入れば、財政赤字はGDPのおよそ15%に達していた。そのうち5%は政府のもので、10%は中央銀行のものだった。

15%の財政赤字と言えば、アメリカがコロナ禍に一度達した水準である。


ハイパーインフレは先進国には起きないか

こうした現象は小国だけのもので、アメリカや日本などの先進国には無縁の現象なのだろうか。しかし実際にアメリカは15%の財政赤字を経験し、コロナ後に物価が高騰している。

アメリカのインフレはその後一度収まった。だがそのレベルの財政赤字が一時的ではなく恒常的なものになれば、インフレも当然恒常的なものになるだろう。それで多くの機関投資家がアメリカの財政赤字を気にしているのである。

だからアルゼンチンのハイパーインフレは小国だけの現象ではない。それどころかアルゼンチンは元々先進国で、1人当たりGDPも日本より高かったのである。それが政治家による政府支出で途上国に転落した。

実際、日本経済はアルゼンチン化している。アベノミクス以来、日本円の価値はほぼ半分に下落している。自国通貨の価値が半分になったというのははっきり言って暴落である。

つまり輸入物価は当時の2倍になっているのだが、日本国民は気にしていない。では4倍になれば気にするのだろうか。輸入物価の上昇はいずれ国内物価のインフレに繋がってゆく。

税金として徴収され東京五輪や大阪万博などに使われる金が国民の手元に残っていれば、国民はもっと好きなものが買えただろう。

アルゼンチンへの道のりは長いというだけの話で、日本経済は事実としてその方向に向かっている。単に日本国民がいつ気づくかという問題でしかないのである。

インフレ政策の結末

国の借金が増えると、中央銀行が国債を買い支えなければならなくなる。量的緩和である。

しかし量的緩和は自国通貨の下落という結果をもたらす。それで日本はここ数年、為替介入で円の価値を維持するということを繰り返している。

経済学者のラリー・サマーズ氏は、量的緩和で円を下落させながら為替介入で円を買い支えようとする日本政府を「1人綱引き」と皮肉っていた。

サマーズ氏: 日本政府はドル円で1人綱引きをしている (2022/10/10)
だが為替介入は保有する外貨を売り払って自国通貨を買い支えることである。だから外貨準備がどんどんなくなってゆく。

日本も外貨準備を削りながら為替介入を行なっている。その先には何があるか。ミレイ氏は自国通貨の買い支えを繰り返したアルゼンチン経済の末路を語っている。

中央銀行の外貨準備はマイナスで、その金額は120億ドルだった。

中央銀行は利払いのある借金を抱えていて、1日にマネタリーベースの4倍の債務が満期を迎えていた。それはつまり、1日でマネタリーベースを5倍にしなければならなかったという意味だ。

単純だ。為替介入をすれば外貨がなくなる。それを繰り返せば外貨準備はマイナスになる。日本は着実にアルゼンチンに向かっているが、一部の日本人は「為替介入はドルを利確しただけだ」などと喜んでいる。

ドルが80円の時にドルを買い入れて、自分で量的緩和をしてドル円が160円になったから喜んでいるのである。馬鹿ではないのか。それはドルの価値が上がったのではなく、円の価値が下がっただけである。日本政府の手元に残ったのは価値の変わっていないドルではなく、自分で刷った円だけである。本当に馬鹿ではないのか。

結論

だから日本経済は着実にアルゼンチンに向かっている。レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で説明したように、国家が経済成長から政府債務の増加の段階に移り、最終的にはインフレと自国通貨の下落によって衰退してゆくというのが国の一生なのである。

アルゼンチンが特異だったのは、普通は200年ほどかかるその国家の一生を50年の間に経験したということだけだ。速度が違うだけであって本質は変わらない。

それでアルゼンチンはインフレ政策の終着点、つまりハイパーインフレまで早々と行ってしまったので、ようやくミレイ氏のようなまともな経済学者を大統領に選ぶことが出来たのである。アルゼンチン国民も流石にインフレ政策に懲りたというわけだ。

ミレイ氏は次のように言っている。

だから財政赤字を何としても終わらせなければならなかった。

そしてミレイ氏はそれを1年で実現してしまった。ミレイ氏はアメリカにも同じことをやれと言っている。

ミレイ大統領: トランプ政権は限界まで政府支出を削れ


トランプ政権は それを実現できるだろうか。2025年が楽しみである。そして日本人はいつ気づくのだろうか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57641
15:777 :

2024/12/31 (Tue) 06:06:49

ミレイ大統領: 政府が紙幣印刷で価値を薄める通貨は他のまともな通貨との競争に晒されるべき
2024年12月30日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57736

引き続き、ハイパーインフレを打倒したアルゼンチンの大統領でオーストリア学派の経済学者であるハビエル・ミレイ氏の、レックス・フリードマン氏によるインタビューである。

ハイパーインフレを終わらせた大統領

ミレイ大統領はアルゼンチンのハイパーインフレを終わらせた大統領である。政治家による無駄な支出は容赦なく削減され、GDPの15%あった財政赤字はゼロになった。しかもアルゼンチンの2025年の経済成長率は5%と見積もられている。

だがミレイ氏の功績はインフレと財政赤字をなくしたことだけではない。政治家が自分と自分の票田のために財政支出を行う政策、すなわちインフレ政策の結果は、日本人も知っての通りインフレと財政赤字だけではないからである。

インフレ政策のもう1つの大きな結果は通貨安である。

日銀の植田総裁が円安を止められない理由
アルゼンチンペソ

前回の記事でミレイ氏はこう言っていた。

ミレイ大統領、政府支出を削減してハイパーインフレを打倒した方法を語る
財政の均衡を達成し、支出のために紙幣印刷をしなくても良い状態になると、債務の利払いなども払えるようになり、そうすると国債市場が再び機能し始めた。

財政がまともになると国債市場に投資家が戻ってくるようになり、高騰していた国債の金利が下がり始める。

そうすれば政府の利払い負担も減り、財政が更に改善するという好循環が始まる。

だが投資家が戻ってきたのはアルゼンチンの国債市場だけではない。為替市場も同じなのである。

ハイパーインフレの結果、当たり前だがアルゼンチンの通貨であるペソは暴落した。日本とまったく同じように、中央銀行による紙幣印刷が自国通貨安を引き起こしたのである。

ネイピア氏: 日本の政府債務は円安で解決される、円を空売りして日本株を買え
だが2024年のペソのパフォーマンスはどうか。高金利通貨のパフォーマンスは多少ややこしい。何故ならば、新興国の為替市場に慣れている人ならば分かると思うが、数十パーセントの金利を持つ通貨は、他の通貨に対してその分だけ為替レートが下落するのが普通だからである。20%の金利があれば、為替レートが20%下落してようやく他の通貨とイーブンなのである。

さて、アルゼンチン・ペソは米ドルに対し、2024年の年始からおよそ21%下落した。

だがペソの金利はハイパーインフレの改善とともに下落してきたとはいえ、2024年の間は126%から32%の間で推移している(書き間違えではなく、それが2024年のペソの金利である)。

だから、2024年にドルを持っていた人とペソを持っていた人を比べれば、為替レートの下落分を補って余りあるペソの金利によって、ペソの保有者の方が大幅に得をしているのである。

ミレイ氏の為替政策

ペソの下落は高金利による当然の下落分を下回っているので、つまり2024年のペソ相場は強かったのである。ミレイ大統領がいなければジンバブエドルに並ぶ紙切れになりかかってたアルゼンチンペソに、投資家の資金が戻ってきている。

だがミレイ氏は、2023年の選挙戦では紙切れになりかかっていたペソに代わってドルをアルゼンチンの公定通貨にすると主張して話題になった。

ミレイ氏は今ではペソについてどう考えているのか。ミレイ氏は次のように述べている。

わたしの発言を再検証してもらえば分かるが、わたしは通貨同士の競争の話をしたのであって、ドルを公定通貨にしなければならないと言ったわけではない。

わたしの論点は通貨同士の競争と中央銀行の廃止だ。

繰り返すが、ミレイ氏はオーストリア学派の経済学者である。そしてオーストリア学派の経済学の一番有名な特徴は、中央銀行による通貨発行権の独占を批判していることである。

例えばコロナ後の物価高騰を引き起こした直接の原因は、現金給付である。だがジョン・ポールソン氏が言うように、中央銀行による紙幣印刷、つまり量的緩和がなければ、無一文の先進国政府には現金給付は出来なかった。

ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした (2023/2/24)
だから現金給付のようなインフレ政策の根本原因は中央銀行とその紙幣印刷なのである。

オーストリア学派と通貨発行権

だからミレイ氏を含むオーストリア学派の経済学者は、通貨の発行を政府と中央銀行が独占している状態を批判する。それこそがインフレの根源だからである。

しかし、例えば17世紀にヨーロッパで中央銀行という概念が誕生する前の世界でそうだったように、民間のあらゆる銀行が自分自身の通貨を発行するようになればどうか。

ある銀行の通貨は紙幣印刷によって価値が毎年下落しており、別の銀行の通貨は発行量の厳格な管理によって価値が安定しているとする。人々はどちらの通貨で貯金をしたいと思うだろうか?

ミレイ氏を含むオーストリア学派の経済学者が主張するのは、政府の発行する通貨も経済内に流通するあらゆる商品と同じように競争にさらすべきだということなのである。

そうすれば、中央銀行が政治家の都合で紙幣印刷を行い、国民は全員その通貨を持っているので国民全体が犠牲になるということもなくなる。中央銀行は数ある銀行の1つに過ぎなくなる。

オーストリア学派の代表的な経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏は、『貨幣発行自由化論』で次のように書いている。

通貨の発行者同士が競争しなければならない場合、発行者にとって自分の通貨の減価は自殺行為になるだろう。人々がその通貨を使いたいと思っていた理由そのものを破壊してしまうからである。

アルゼンチンと通貨の競争

ミレイ氏も、ハイエク氏らの議論を継承しているようである。ミレイ氏は次のように言っている。

現在、アルゼンチンには通貨同士の競争がある。現在のアルゼンチンではどんな通貨でも決済できる。

それは単に法的に許されているという話ではない。アルゼンチンではミレイ氏の主導により、大手銀行がペソでもドルでも決済できるデビットカードが発行しようとしている。

だから国民はペソとドルを両方自由に使うことができる。ミレイ氏は、政府の発行する通貨を別の通貨との競争にさらすというオーストリア学派の理念を1つ実現しようとしているわけである。

ミレイ氏は次のように言っている。

国民が最終的にドルを選んだとすれば、それはそれで彼らの選択だ。

だがミレイ氏は国民にドルの使用を強制しているわけではない。国民がどちらでも好きな方を選べる環境を作っているだけだ。

ただ一方で、ミレイ氏の最終的な目標は中央銀行の廃止らしい。政府支出を増やすために自由に紙幣を印刷したいという願望がない政治家にとっては、中央銀行は別に利益のない組織だからである。

政治家が中央銀行の通貨発行独占を擁護するのは、自分の意志で紙幣を印刷し、国民の持っている通貨の価値を薄めたいからである。

そういう願望のないオーストリア学派の経済学者には、中央銀行は無用の長物である。

ハイエク氏: 通貨を政府がコントロールしなければならないというのは根拠 のない幻想

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57736
16:777 :

2024/12/31 (Tue) 13:28:34

植草一秀の『知られざる真実』2024年12月30日
苛政と酷税に耐え忍ぶ日本国民
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/12/post-f7471e.html


日本経済の低迷が続く。

各国のドル表示名目GDPの推移を見ると日本経済の低迷がよく分かる。

1995年の名目GDPを100としたとき、2023年のGDPはどれだけになったか。

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米国は358、中国は2416になった。

しかし日本は76。

28年の時が過ぎ去り、GDPは4分の3に縮小した。

一人当たり実質賃金は1996年から2023年までの27年間で16.7%減少した。

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このなかで一般会計国税収入は1996年の52.1兆円が2023年の72.1兆円へ20兆円増加した。

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とりわけ拡大したのが消費税。

1996年度の消費税収(国税)は6.1兆円だったが2023年度には23.1兆円になった。

20兆円税収が増えたが、そのうち17兆円が消費税の増大である。

一般会計税収は2020年度が60.8兆円。

2023年度は72.1兆円。

この3年間で国税収入は11.3兆円増えた。

国税庁の民間給与実態調査では1年を通じて勤務した給与所得者の51%が年収400万円以下、21%が年収200万円以下である。

123024

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10月27日の衆院総選挙で自公は過半数割れに転落。

無所属で当選した裏金議員4名、自民系無所属議員2名を合わせても自公会派は221名にしかならなかった。

衆院過半数は233.

過半数に12名も足りない。

本来は政権を失う局面。

ところが、自公は少数与党で石破内閣を存続させた。

国民民主が自公にすり寄ったのがその原因。

国民民主は「手取りを増やす」と豪語したが、現状では年収600万円の世帯で税負担が1年間で1万円程度しか減らないという結果しか示せていない。

3年間で国税収入は11.3兆円も増えた。

少なくとも10兆円減税が決定されてしかるべきだが、国民民主の意向を取りいれた減税は0.7兆円規模。

お話にならない。

日本国民はどこまでおとなしいのか。

なぜ、消費税率を5%にすることを国民の声としてこだまさせないのか。

選挙期間中は国民民主も「消費税率5%」と叫んでいた。

「維新」も消費税減税を公約に掲げていた。

選挙で野党が国会過半数を確保したのだから、野党が結束して「消費税減税」実現に総力を結集するべきだが、国民民主、維新、立憲民主が消費税減税を一切主張しない。

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この消費税減税こそ、財務省が絶対に阻止したい施策である。

国民民主、維新、立憲民主は財務省の協力隊である。

消費税の特徴は所得の少ないすべての国民からむしり取る税金。

この税がいまや最大の税目になっている。

消費税で巨大な税収を獲得すると何を実現できるか。

答えは明白だ。

大企業の税負担と富裕層の税負担を激減させることができる。

実際に1989年度から2023年度までの税収推移を見てみよう。

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消費税で509兆円もの金を国民から巻き上げた。

その509兆円を一体何に使ったのか。

同じ期間に法人の税負担は319兆円減った。

同じ期間に個人の所得税・住民税負担は286兆円減った。

消費税の税収のすべてを巨大企業と富裕層の減税に使った。

減税規模は605兆円。

消費税収すべてに、さらに100兆円も上乗せして減税を行った。

これほどむごい政治を実行している国は世界に一つもない。

一般国民を踏みつけ にして、大企業と富裕層に「ばらまき財政」を実行している。

それなのに、日本国民は従順にこの悪政に耐え続けるのだろうか。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2024/12/post-f7471e.html
17:777 :

2025/01/02 (Thu) 14:28:17

アダム・スミス氏: 乞食だけが補助金や給付金にすがる、そうでない人々は自分の成果を他人と交換する
2025年1月1日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57853

マクロ経済学の父として知られるアダム・スミス氏の『国富論』より、社会・経済における他人との人間関係について書いた部分を紹介したい。


国富論(上) (講談社学術文庫 2562) – 2020/4/10
アダム・スミス (著), 高 哲男 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/%E5%9B%BD%E5%AF%8C%E8%AB%96-%E4%B8%8A-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%B9/dp/4065190940?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dib=eyJ2IjoiMSJ9.UG3FnnHrBU5QKHvcsFFAfM6IxD9ENyyf0D549RjyEW66c3bUQj6zdKwM8nMjan0CEGtLP8IuXSz9wI4cNsYxW2Sdl39H2LSEOTayEyv6Wua6s5uB18X6NlFrOPD_GaZLz30sfbf1SnEAsMNSKgMlXWr6jt6d2JZyXgSxUR0hKHe0SkLR_yBENddPGKPW7N9MsnU83h0E5p66wQNDltps6cmPqOsy-4AUcDCHatVycrd9BTMpowF-0FI4TgtmundZZwNUgXzymwAyvIZUXmEMo60NLBiESALw0Gs0_ho1jus.LhmhPxHx8rthE5QOZ-RHOgx1xZPkUwbaCY7MYQ-iVAw&dib_tag=se&keywords=%E5%9B%BD%E5%AF%8C%E8%AB%96&qid=1708495820&sr=8-2&linkCode=sl1&tag=asyuracom-22&linkId=806a7d7ebf78cb5497330bd534cc35eb&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl

人間の性質

『国富論』はマクロ経済学という概念を発明した歴史的名著であると同時に、社会のあり方について論じた人間関係の本でもある。

そしてそれは現代のマクロ経済学の専門書とは違い、非専門家でも分かるような平易な説明で書かれている。(当時はマクロ経済学者など居なかったのだから当たり前である。)

スミス氏によれば、人間と動物の根本的な違いは交換をすることである。スミス氏は次のように書いている。

犬が別の犬と公平で用意周到な骨の交換をするのを見た人はいない。

人間は物々交換から始まり、最終的には貨幣経済を発達させた。それは自分たちの労働の成果を互いに交換するためのシステムである。

だが動物の世界ではどうだったか。スミス氏はこう説明している。

動物が人や他の動物から何かを手に入れたいとき、それをくれる相手の好意を手に入れるほか手段はない。子犬は母犬に甘え、夕食のおこぼれが欲しい犬はあらゆる芸をして主人の興味を惹こうとする。

人間は交換する

だが人間の場合、それを単にやらないどころか、それだけで生きてゆくことはほとんど難しい。

スミス氏は次のように続けている。

だが人間には常にその時間があるわけではない。文明社会では人間はあらゆる助けや協力を必要としているが、人の一生は何人かの友を得ることにさえ十分ではない。

人間が行うあらゆる買い物を、お金を払うことではなくすべての店の人の好意を得ることで行なっていたとしたら、パンを得るだけで何日かかるか分かったものではない。

だから人間は交換する。それをスミス氏は次のように分析している。

人間は他人の自己愛を自分の利害を結びつけ、自分のやってほしいことをやってくれれば彼らにとっても利益になるということを示す方が成功しやすいだろう。

わたしの欲しいあれを下さい、そうすればあなたが欲しいこれをあげますから、というのがそうした提案の意味するものである。

そしてそれこそが人間が自分の必要とするものの大部分を互いに手に入れるための方法である。

相手の好意か利害か

スミス氏によれば、それが人間と動物の違いである。彼はこう続ける。

人間は肉屋や酒屋やパン屋の情けではなく彼らの利害に働きかけることによって食事を手に入れようとする。

人間は相手の慈悲ではなく自己愛に語りかける。つまり、自分の欲求をもとにものを言うのではなく、相手の利害を念頭に相手に話しかけるのである。

ここが重要な箇所ではないか。相手の好意を得ようとする人間の念頭にあるのは自分の利害である。しかし交換を持ちかける人間は、自分だけではなく相手の利害をも考慮に入れなければならない。

相手の利害を思いやる交換こそが社会を物質的に豊かにしてゆく。自由な交換を目指した考え方が、自由市場経済である。

しかし近年では人々が自分の欲しいものを自分のお金で買うのではなく、社会に必要なものを政治家が決め、人々から取り上げた税金で代わりに購入する、政府支出が幅を利かせている。

自由な交換と相容れない政府支出

政府支出を大幅に減らし、アルゼンチンを通貨安とインフレから救ったハビエル・ミレイ大統領はそれを批判していた。

ミレイ大統領、政府よりも市場経済が資源を効率良く配分できる理由を説明する


ミレイ氏は政府の支出は無駄を積み上げるだけだと批判するオーストリア学派の経済学者でもある。だが本来、こうした考え方はオーストリア学派の経済学だけのものではなかったはずだ。

上に見たように、それはマクロ経済学の父であるスミス氏の頃からの思想のはずなのである。

しかし今では国民が必要なものを政府が勝手に決めたり、政府が自分の裁量で自分の票田に補助金や給付金をばら撒く政府支出が流行っている。

それはどういう心理で支持されているのか。交換によってものを手に入れようとしない人々について、スミス氏は次のように書いている。

乞食だけが同胞市民の情けに依存しようとする。いや、乞食でさえも完全に情けに頼り切ることなどしない。

自分自身は何も提供しなくてもお金が降ってこればラッキーというわけだ。

だがそれは乞食よりも悪い。何故ならば、情けを期待した乞食に誰かが食事を与えるならば、両者の間には合意が存在している。

しかし補助金を受け取る政治家の票田と、政治家から資産を奪われる別の国民との間には合意が存在しない。

だからオーストリア学派の代表的な経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏は、補助金のことを正直にも窃盗と呼んだのである。

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である


ミレイ氏はそれを暴力と呼んだ。

ミレイ大統領: 自由と財産の権利を擁護し暴力に反対するならば政府はなくなる
政府支出を善とするケインズ経済学の蔓延によって、こうした考えはオーストリア学派だけに残る少数派のものとなってしまった。

しかしそれも少しずつ変わりつつある。アルゼンチンは、インフレ政策によるハイパーインフレを経験したからだが、ようやくインフレ政策は政治家とその票田を利するだけだと気付いた。

ミレイ大統領、インフレ政策を永遠に続けるとどうなるかを語る


世界は少しずつスミス氏の経済学に回帰しようとしている。だから今こそ『国富論』を読むべきなのである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57853


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アダムスミス『国富論』の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/917.html

ハイエク、フリードマンのマネタリズムの世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/913.html

新自由主義の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/916.html

史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14040247

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564

政府主導の経済は自由市場の経済に勝てない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16860493

政治とは税金 を集めて政治家の裁量でそれをばら撒くこと
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16841750


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