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全国で5万店以上あった「魚屋」=鮮魚専門店が1万店を切った。激変する日本の水産流通

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2024/05/31 (Fri) 15:33:20

全国で5万店以上あった「魚屋」=鮮魚専門店が1万店を切った。激変する日本の水産流通
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https://news.yahoo.co.jp/articles/93df8fb068e105951e098630eabb6f421f8d24ec

東洋経済オンライン
日本の漁業が危ない。生産量はピークの1984年から7割減。輸入金額も増え、海外勢に買い負けている。持続的な漁業を確立しなければ、消費者もおいしくて安全な魚を食べ続けることはできない。
『週刊東洋経済』6月1日号の特集は「全解剖 日本の魚ビジネス」。特集ではデータによる漁業の「今」や、漁師の実情、企業による養殖ビジネスの最前線リポートなどを取り上げた。

【グラフで見る】「魚屋」=鮮魚専門店数の推移
https://toyokeizai.net/articles/photo/756386?pn=3&utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=inarticle


ここでは激変した日本の水産流通について、北海学園大学の濱田武士経済学部教授が解説する。

 日本漁業の発展プロセスにおいて、卸売市場が核となった市場流通が果たしてきた役割は大きい。多様な魚が水揚げされ、卸売市場に持ち込めば何でも販売してくれるし、われわれの食を潤わせてきたからである。

 だが今日、その役割に陰りが生じ、市場外流通が拡大している。

 漁業生産の現場は漁獲量や魚種構成が日々変動する。水揚げが集中する時期もあれば、しけなどで出漁が限られる時期もある。農業も天候に左右されるが、漁業はそれ以上に自然の影響を受けている。魚の鮮度落ちは農産物より早く、ストックできないことから、漁業者は水揚げ後すぐに販売していくほかない。

 市場流通はその特性に合わせ、需要先に素早く流通させる仕組みとして機能してきた。

■産地と消費者の2大市場がある

 市場流通は次のようになっている。

 全国の主要漁港には産地市場が設置されており、水揚げされた魚がすぐに産地市場の卸業者に販売委託され、競りを通じ高値をつける仲買人に販売されている。仲買人は買い付けた魚について、各地のニーズに合う魚を発泡スチロール箱に詰め、消費地市場へトラックで輸送する。

 その荷を受けた消費地市場の卸業者は、競り・入札・相対によって仲卸業者や売買参加者に販売し、消費地市場へ買い付けに来る小売業者や外食業者に販売する。産地と消費地で2段階の卸売市場を介したネットワークが全国の漁業者と消費者をつないでいるのだ。消費地市場しかない、青果や花き、肉の市場流通と異にしている。


卸売市場はさまざまな産地から多様な生鮮品を集荷し、需給バランスを考えて相場形成を図り、短時間で大量の生鮮品を販売。出荷者が取りはぐれないように代金決済を短期間に済ませている。

 生産者自らが営業活動して商品を小分けし販売するとなると、短時間で終えることができず、代金回収リスクが生じるうえ、高い価格で売れたとしてもコスト割れする。小売業者や外食事業者自らが生鮮品を必要に応じて、各産地から直接集荷するとなると時間を要し、仕入れコストは高くなる。 

 にもかかわらず市場流通は多段階で、生産者の売値が安いのに中間コストが高く、「消費者は高く買わされている」と主張する人がいる。流通の量や時間、コスト、リスクを踏まえると、それは的外れな話だ。むしろ市場流通は生産者にとっても実需者にとっても安上がりの仕組みなのである。

■鮮魚店が客に魚の知識を伝えていた

 だが水産物の卸売市場の経由率は落ち込み続けている。1980年には80%を超えていたが、落ち込み続けて近年、50%を下回るようになった。これはなぜなのか。

 水産物とは、いわゆる鮮魚(生魚)や加工品、冷凍品に分類される。中でも市場の流通機構に強く依存し、わが国の中で水産物消費を牽引してきたのは、鮮魚だった。しかし、この鮮魚流通がだんだん縮小してきたため、卸売市場の経由率が落ち込んでいった。

 実は「現代日本の魚食文化」は、もともとあったものではなく、市場流通とともに拡大してきた。その中で鮮魚の需要を喚起してきたのは鮮魚店であった。

 鮮魚店は毎日早朝に地元の消費地市場に出かけて、そこで地元の消費者のニーズに合う魚を、仲卸業者から仕入れている。旬でない魚や見慣れない魚は安い。そうしたものでも仕入れ、どうすれば美味しく食べることができるか、仲卸から聴いて研究する。このような蓄積があって、店舗では来客に魚の知識を伝えながら、鮮魚需要を喚起してきたのである。


家計の食材別消費動向と鮮魚店数の推移を見ると、1980年代前半の家庭内における魚介類の消費は肉類や野菜・海藻を上回り、最も高かった。鮮魚店の数も5万店超で大きく減っていなかった。市場流通の末端で鮮魚店が魚の需要を喚起し、現代の魚食文化を育てたのである。

■店に並ぶのは、切り身など加工品、定番の冷凍品

 ところが1990年代に入ると、鮮魚店が街中から消え、近年は1万店を切る。スーパーマーケットが台頭し、ショッピングモールの出店攻勢によって、ローカルな小売店の環境は激変。大型店に客を奪われてしまい、鮮魚を扱う専門小売店から消費者が離れていった。それでも大型店で鮮魚需要が喚起されればよかったが、鮮魚店のような対面販売は行われなかった。

 店頭で売れ残りリスクを回避するため、商品棚が埋められたのは、主として価格訴求力のあるマグロやサケ、サバなど定番の冷凍品や、バックヤードで調理された切り身や刺し身をパッケージ化した加工品だ。冷凍在庫が可能なこれらは消費地市場に頼らず、メーカーから安定的に直接仕入れればよい。こうして鮮魚売場に需要喚起の場はなくなり、卸売市場の経由率は落ち込んだのだった。

 世帯状況の変化も関係している。長引くデフレ不況で可処分所得が減り続け、消費志向もモノからコト、情報へと変わる。核家族化で単身世帯も増え、家族規模が小さくなって、料理の機会は減少。生鮮品の素材よりも総菜や調理済みの食材を買う機会が増えた。

 鮮魚においては生ゴミが出るし、消費者が求めるタンパク源として水産物にこだわる必要はない。魚と比べて非可食部がない肉のほうが、摂取カロリーとの関係で見ればコストパフォーマンスがよい。

 鮮魚店が街から消え、家計における魚の消費は大きく減り、最も消費金額が少ない食材になった。料理屋やすし屋など外食分野は魚の需要を喚起しているが、鮮魚市場の拡大を牽引するまでの力は持っていない。産地の魚価の形成力が弱まるのも無理がない。

 1990年代からの円高やデフレによる内需縮小が決定的となり、食品市場は輸入食品が氾濫して過剰供給状態となった。魚価への下げ圧力も強まり、漁業者だけでなく、卸売業者の廃業も加速した。ただ、近年では円安基調が強まり、インバウンドにも日本食ブームが広がっている。皮肉にも日本の消費地市場から鮮魚、それも高級魚が海外へ輸出される時代だ。

 市場流通は鮮魚が生命線。それが多様な魚種を供給する日本漁業を支えてきた。鮮魚流通の復興があれば、漁業の未来は明るいが、残念ながら予兆はまだ見えない。

濱田 武士 :北海学園大学経済学部教授

https://news.yahoo.co.jp/articles/93df8fb068e105951e098630eabb6f421f8d24ec?page=3
2:777 :

2024/06/07 (Fri) 18:00:39

水産物に異変!日本の食文化は……
2024年6月6日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014471611000.html

焼き魚に、わかめの味噌汁、ご飯のおともの焼き海苔……日本の食卓に欠かせないのが、これら水産物です。

しかしここ数年、水産物の異変を伝えるニュースが増えています。

何が起きているのか。日本の食文化は守れるのか。現場を取材しました。

(経済部 川瀬直子記者/松山局 伊藤瑞希記者)

豊洲でも異変
水産物の現状を取材しようと、まず訪れたのは東京・豊洲市場。全国から水産物が集まり、世界最大の水産物の卸売市場とも呼ばれています。

しかし、豊洲の卸売市場での水産物の取引量は、減少傾向が続いています。去年1年間では29万トンと、4年前に比べて1割以上減りました。
日本人の魚離れなども挙げられていますが、大きな要因として指摘されるのが、不漁による漁獲量の減少です。

スーパーなどに水産物を卸している、仲卸業者の亀谷直秀さんに話を聞くと、不漁の影響で秋の味覚のサンマなどの価格高騰が目立つほか、魚の旬の時期や主な産地も、これまでと変わってきていると言います。
仲卸業者 亀谷直秀さん
「魚種によっては魚の住む場所が変わり、『いいもの』が入りにくくなっている。漁獲量が減り、価格が高くなると、消費者からも敬遠されてしまうので、またたくさん獲れるといいなと思う」
「呼子のイカ」も不漁!?
漁業の現場では何が起きているのか。次に訪れたのは、「呼子(よぶこ)のイカ」で有名な佐賀県唐津市の呼子町です。
町内には「活造り」や天ぷら、シューマイなど、さまざまなイカ料理を提供する飲食店が多く軒を連ね、市はイカを観光の柱と位置づけPRしていますが……。
5月下旬のある日、10時間ほどの漁を終えて、港に戻ってきたイカ釣り漁船から水揚げされたのは、シーズンのケンサキイカが10匹ほど。

重さにして5キロ余りで、例年と比較すると4分の1ほどに落ち込んでいると言います。
漁協の青年部長 浪口太さん
「近ごろは燃料費も高く、この漁獲量だと釣り合いがとれない。『呼子のイカ』を目当てに食べに来てくれた観光客が食べることができないケースもあり、心苦しい。本当に厳しい状況だ」
10年前から約100万トン減
漁獲量の減少は、さまざまな水産物におよびます。

農林水産省がまとめた「漁業・養殖業生産統計」によると、去年1年間の日本の漁獲量は、能登半島地震の影響で調査が遅れている石川県を除いた速報値で372万トン余り。

今後、石川県の分が加わっても、去年に続いて過去最低を更新する見通しで、10年前からは、およそ100万トン減った形です。
種類ごとにみると、前年に比べ、
▼サバが18%減、▼カツオが20%減、▼スケトウダラが23%減、▼スルメイカが36%減と、身近な魚の減少が目立っています。

また▼サンマは前年よりは増えたものの、ピーク時の昭和33年(1958年)の4%程度にとどまりました。

さらに、養殖の▼のりも13%減と、鮮魚以外も減っています。
不漁の背景には何が?
漁獲量の減少が続く背景には何があるのか。

国内外の漁業に詳しい、東京大学大学院の八木信行教授は、日本人の魚離れや漁業者の減少といった要因があるものの、資源量そのものの減少も大きいと指摘しています。

気候変動の影響で生息域が移動してしまったり、成長しにくくなったりしている中で、これまでどおりに漁を続けた結果、資源量自体が減っているのではないかというのです。

ただ、そのほかにも海洋汚染やエサの状況など、魚ごとにさまざまな要因が複雑に絡み合っているため、対策に向けてはより詳細な調査が必要としています。
東京大学大学院 八木信行教授
「漁獲量の減少の背景にはたくさんの要因があり、魚種ごとに調査して一つ一つ対応を取る必要がある。韓国やヨーロッパの各国なども、日本と同じかそれ以上、漁獲量が減っているので、そうした国とも連携をしながら、国際的な協力体制を構築していくことが重要だ」
料理人の危機感
水産物の漁獲量の減少に、強く危機感を抱いているのが料理人たちです。

5月下旬、有名レストランのシェフなど、およそ40人の料理人たちで作る団体のメンバーが水産庁を訪れました。
森健水産庁長官(左)に、提言を手渡す団体のメンバー
「このまま水産資源の減少が続けば、日本の食文化を守れないかもしれない」

そんな思いから、国が水産資源の保護にさらに取り組むよう求める提言を、水産庁長官に手渡しました。
「未利用魚」活用の取り組みも
林亮平さん
水産物の漁獲量が減る中、料理人たちの間では、独自の取り組みも始まっています。

提言をした一人、東京都内で和食店を経営する林亮平さんは、毎日の仕入れの中で年々、水産物が手に入りにくくなっていると感じてきました。
林亮平さん
「感じ始めたのは、店を自分でやるようになってからだが、毎日の水産物の仕入れをしていると『ことしは少ないですね』という話になり、また次の年になったら『やっぱりないですね』という話が、いろいろな魚で聞くようになった」
こうした中で林さんが目をつけたのが、広く流通することの少ない、いわゆる「未利用魚」です。

人気の魚ばかりを使うことが、魚の捕りすぎにもつながると考え、今まであまり利用されてこなかった魚を料理に使おうと考えたのです。

今は毎日、各地の卸業者などに直接連絡を取り、あまりなじみのない魚も仕入れるようにしていると言います。
ヒラ
取材に訪れた日、林さんが仕入れていたのは、岡山県で水揚げされた「ヒラ」という魚です。

地元では知られているものの、ほかの地域ではあまりなじみがない地魚で、小骨が多く調理が難しいと言います。
林さんは、同じように骨が多い「ハモ」を調理する道具や技術を使って、骨を切って食べやすくし、寿司や皮を軽く火であぶる「焼き霜造り」などにしていました。
林亮平さん
「魚が減っていく中で、いろいろな魚をおいしく食べるということは必要だと思うし、私たち料理人は、一般の方より調理技術の引き出しや経験もあるので、新しい調理方法を作り出しやすい。魚食文化を将来につなげていくということは、私たち料理人の使命でもあるし、義務ではないかと思う」
国は資源管理を強化
一方で、国は、さまざまな水産物の漁獲量に制限を設けるなどして、資源の回復を目指しています。

クロマグロやサンマ、スケトウダラ、スルメイカ、ズワイガニなど、漁獲量の多い魚を中心に制限を設け、捕りすぎを防ぐことにしています。

このうち太平洋のクロマグロは、一時、資源量が落ち込みましたが、各国が漁獲制限を強化した結果、このところ資源量は回復傾向にあります。

国は、こうした取り組みによって、令和12年度(2030年度)までに、養殖などを除く漁獲量を444万トンまで回復させたいとしています。
まとめ
水産物は一度減ってしまうと、回復に長い時間がかかります。

資源管理によって、資源量の回復が見られる魚はあるものの、それはまだごく一部です。

今一度、豊かな食文化を支えてきた水産資源に目を向け、どうすれば次世代につなげていけるのか。われわれ消費者も含めて、考えるときが来ていると感じます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240606/k10014471611000.html

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