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2024/05/12 (Sun) 18:03:17
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経済・相場関係投稿集
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ド素人でも損しない株式投資のノウハウ
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低金利の間に大量生産されたゾンビ企業は高金利にして一掃しないといけない
ドラッケンミラー氏: ソフトランディングのことは忘れろ
2024年5月11日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48578
引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューである。
パウエル議長はインフレを打倒できるか
Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が去年の終盤に利下げ予告をし、金利が下がってしまったためにインフレが再燃の気配を見せている。
サマーズ氏: 米国は利上げの可能性、市場に利下げを織り込ませたのは馬鹿げた間違い
パウエル議長が経済を失速させたくないためにインフレを打倒できないのではないかという意見は、ドラッケンミラー氏のものも含めかなり前から見られていた。
ドラッケンミラー氏: 経済が強い時に引き締めを続けるのは簡単だが
サマーズ氏: パウエル議長のインフレ退治が本気かどうか疑う理由
以下の記事で解説したように、マネタリーベースがむしろ増加していることも含め、やはりパウエル氏にはインフレを抑える気がないのだろうか。
5月FOMC会合結果、米国利下げはどうなるのか?
ソフトランディングへの固執
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
パウエル議長のソフトランディングへの固執を心配している。
インフレ抑制のために利上げを行い始めてから議論されているのが、インフレが抑制されても経済成長は抑制されないような都合の良い状況(ソフトランディング)があるのかどうかである。
デイビッド・ローゼンバーグ氏によれば、それはある。ソフトランディングとは経済加速から景気後退のちょうど間にある移行期間のことであり、その間は先行指標である原油価格や住宅価格が下落しながらも、遅行指標であるGDPや失業率などは悪化しない。
ローゼンバーグ氏: 今のソフトランディング期待はリーマンショック前のソフトランディング期待と同じ
だがその状態をそのまま続けると遅行指標であるGDPや失業率も悪化してくるので、結局景気後退になる。それは実際に今始まっている。
高金利が明らかに効いている第1四半期米国GDP、今後の金利上昇で更なる減速か
米国経済は景気後退に近づいた、4月雇用統計解説
そもそもソフトランディングは必要ない
だが、ドラッケンミラー氏の論点はソフトランディングが可能かどうかではない。そもそもソフトランディングを目指すこと自体が不要だということである。
彼は次のように述べている。
わたしが好きな中央銀行家はポール・ボルカー氏だが、彼はソフトランディングについて心配などしなかった。
彼はためらいなく経済を酷い景気後退に落とし込み、18ヶ月の痛みによってその後20年の繁栄を獲得した。
ボルカー氏は1970年代の物価高騰を1980年代初めに終わらせたFedの議長として有名である。当時のことについてはボルカー氏自身が以下の記事で語っている。
ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/27377
確かにボルカー氏が容赦なく金利を上げたためにアメリカ経済は酷い景気後退に陥った。
だが、実は金融緩和と株価上昇を喜ぶ人々でさえも、ボルカー氏に大いに助けられている。何故ならば、ボルカー氏の1980年は長期的な金利の天井であり、以来何十年も金利が下がり続けてしかもインフレが起きていないのは、ボルカー氏がインフレ退治をやり切ったからである。
つまり、その後数十年のあいだアメリカがインフレなしに金利低下による株高を享受できたのは、ボルカー氏が低金利の間に大量生産されたゾンビ企業を高金利で一掃したからなのである。
もしボルカー氏がいなければ、少しでも緩和に戻す度にインフレ再燃を心配するような今の状況がまだ続いていただろう。ボルカー氏が居たから緩和政策を何十年も続けられた。だがその効果ももう切れたのである。
インフレ退治は政治的に困難か?
だが景気後退になると分かっていてインフレ退治をやることは政治的に難しいのではないかという声があるかもしれない。
しかしそれは事実ではない。何故ならば、ボルカー議長にインフレ退治を許したレーガン大統領は、次の大統領選で再選しているからである。
ドラッケンミラー氏は次のように説明している。
ボルカー氏が正しいことをした結果、1982年に経済が酷い状態になった後、1984年にレーガン大統領は49の州で勝利した。
レーガン氏はインフレを退治した功績で選挙に勝っているのである。
だから、ドラッケンミラー氏は現代に話を戻して次のように言う。
パウエル氏が(去年の終盤に)ハト派に転換した時、ガソリン価格は2ドルだった。それが2ドル80セントまで上がり、今では2ドル55セントだ。
パウエル氏の利下げ宣言で原油価格が上がったことが原因である。
同時に株価も上がったので資産家や投資家をパウエル氏は確かに助けたのだろう。ドラッケンミラー氏は次のように言う。
一方で、この期間はわたしの会社にとって何年もなかったほど最高の年初めとなっている。多くの裕福な人々にとってやりやすい状況だろう。
だが、多くの日本人が気付いていないことだが、株価が上がってもほとんどの日本人の生活には何の関係もない。
同じようにドラッケンミラー氏は次のように言う。
だが中間層にとってはそんなことよりもガソリンの値段の方が重要だ。物価は2019年よりも21%も高くなっている。だから政治的にも株価を押し上げて景気後退のないソフトランディングを目指すよりは、インフレを抑えた方が良い結果になるはずだ。
事実、レーガン氏はそのようにして大統領選挙に勝ったのである。
日銀の植田総裁は同じことが出来るだろうか。
日銀の植田総裁が円安を止められない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48578
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2024/05/12 (Sun) 18:04:07
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ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
2022年8月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/27377
世間がようやく物価高騰について騒ぎ始める中、金融市場ではインフレ第1波収束の兆しが見られる。
マネーサプライ縮小でインフレ第1波は終了へ
それでインフレは何事もなく収まるのだろうか? 今こそ1970年代に始まり、1980年代の初めにようやく収まったアメリカの物価高騰時代について見直してみるべきだろう。
今回紹介するのは、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏による、当時の物価高騰時代にFed(連邦準備制度)の議長を務め、多大な犠牲とともにインフレを抑制したポール・ボルカー氏のインタビューである。
ボルカー氏は2019年に亡くなっており、このインタビューはそれ以前に収録されたものだが、今こそ彼の話を思い出すべき時だろう。
1980年の物価高騰
ダリオ氏はボルカー氏に次のように切り出す。
1980年3月、インフレ率は14.8%になった。だからあなたは金融政策を引き締め、M1(訳注:マネーサプライ)の目標値を5.5に定めた。
結果として、金利は20%まで上昇し、それほどまでに金融政策を引き締めた結果、失業率は10%まで上がり、世界恐慌以来最悪の景気後退が起きた。
金利が20%の時代を想像できるだろうか? リーマンショック以後、低金利が株価と経済を支え続けてきた15年間に住み続けてきた現代人が、それを想像できるだろうか。
ダリオ氏はこう続ける。
あなたは引き締めを続けた。抗議と怒りの声が上がった。あなたは引き締めを続けた。最後まで続けた。そして最終的にインフレの腰を折り、1983年にインフレ率は3%まで下がり、低いインフレ率と高い成長率の繁栄の10年が始まった。
当時のアメリカのインフレ率のチャートを掲載しよう。
この物価高騰の頂点でボルカー氏が中央銀行の議長を務め、金融引き締めを行ない、インフレを抑制した。
多くの人が知っている物語はこうである。だが、それが実際にどのような苦痛を伴ったかを知っている人はもうほとんどいない。
だからボルカー氏にそれを教えてもらおうではないか。ボルカー氏はダリオ氏に促されて次のように話し始める。
10年以上続いた物価高騰の時代、インフレ打倒の意志は弱かった。フォード政権(訳注:1974年から1977年)ではインフレを打倒するよう言っていたが、口だけだった。口ではそう言っていたが政策が伴っていなかった。
常に同じ抵抗があった。「金融政策を引き締め過ぎないでください、人々が失業してしまう!」
このように10年が過ぎ、結果としてより高いインフレ率とより高い失業率を得ることになった。
これが当時の状況である。
そして当時の状況は今の状況と違うところが1つある。それは何か? インフレは話題になっていても、失業は話題になっていない。そして筆者はそれこそが今の状況を理解する鍵だと思っている。
インフレと失業
ボルカー氏によれば、当時の物価高騰では失業が話題になっていた。金融引き締めを行うと人々が職を失うから金融引き締めは躊躇われた。そして物価は青天井に上がっていった。
しかし現在の状況では失業は話題になっていない。何故か? それはインフレを受けての金融引き締めが、今年ようやく始まったばかりだからである。
5月FOMC結果、2018年世界同時株安時の2倍の規模の量的引き締め開始
金融引き締めはインフレ率だけではなく経済成長率に対しても重しとなり、景気は冷え込み失業者が増える。
そして金融引き締めによって失業した人々が抗議の声を上げ、金融引き締めを撤回するよう政治的圧力がかかる。そして引き締めは撤回され、インフレが戻ってくる。それがインフレサイクルにおいて起こることである。
だが今は、1回目の引き締めが始まったばかりである。それは「まだ」失業を引き起こしていない。アメリカの失業率は次のように推移している。
コロナ以降、アメリカの失業率は下がり続けているのである。
失業率を諦めたボルカー氏
ボルカー氏の時代に話を戻そう。彼は次のように述べている。
わたしがカーター政権の終盤にFedの議長となったとき、カーター大統領は途方に暮れていた。もうどうしようもなかった。物価高騰のせいで財政支出もできず、エネルギー問題も深刻で、彼のやりたいことはすべてインフレの恐怖に阻まれた。
インフレのせいで財政支出ができない状況は既に起こっている。現金給付などの財政支出をもう一度やったら本当にインフレがどうしようもなくなってしまう。
この状況は今年と来年の企業利益を減らすだろう。減少した企業利益は株価を下落させるだろうが、それはまた別の話である。
米国株の今後の見通し: 企業利益激減で株価は再び暴落へ、空売り再開
現在、米国政府が経済対策をもはや何も出来なくなっている(まだ多くの人は気付いていない)のと同じように、当時の政権もインフレのせいで何も出来なくなっていた。
一方で、インフレ打倒のために強力な金融引き締めを行うと、今度は失業が増え始める。
それで政府の金融引き締めの意志も弱く、物価高騰は事実上野放しにされ、インフレ率は15%近くまで上がっていったのである。
ボルカー氏は次のように続ける。
これまでの政策が機能していないのは明らかだった。
だからわたしは違うやり方でやると決めた。失業について心配するのを止めるしかなかった。物価高騰に対処しなければならなかった。そうでなければインフレはひたすら悪化してしまう。
年率15%に近づいてもインフレは加速し続けていた。われわれがそのまま二の足を踏んでいたら20%に到達していただろう。
ボルカー氏はインフレを抑制した伝説的な中央銀行家である。だが彼のやったことは金融政策を引き締めたというよりは、実際には失業率を諦めたことなのである。
失業率上昇とインフレ低下
そして結局それが奏功した。労働市場にお金が行かず、人々が失業するということは、企業にとっては人件費が下がるということである。そうすればあらゆるものの価格がようやく下がり始める。
だから、失業率上昇は金融引き締めの副作用なのではなく、むしろ引き締めの目標である。失業率が上昇しなければインフレ率は下がらない。しかし人々が失業すれば消費も滞る。経済は不況に陥る。
それでも他に道はないとボルカー氏は判断した。彼はこう語っている。
だから金融引き締めを行なった。失業率の上昇には時間がかかった。(労働市場のブームは)頑固だった。インフレも頑固だった。
幸いにも、1982年の夏までにマネーサプライは下がり始め、インフレ率は下がり始め、景気後退に陥ったが年末にはピークとなった。
恐らくはそこまで金融引き締めを続けることが、インフレ打倒のために必要だったのだろう。
結論
これを読んで読者はどう思っただろうか。先ず第一には、経済学者のラリー・サマーズ氏が「失業率上昇なしにインフレ低下はない」と言っている理由が実感を持って分かったのではないか。
サマーズ氏: 経済へのダメージなしでインフレ抑制はできない
現在、筆者が感じているのは人々のインフレに対する楽観である。「これほど物価高騰が騒ぎになっているのに楽観」と思うかもしれないが、人々はまだ物価の上昇についてしか騒いでいない。
だがインフレの本当の恐ろしさは、引き締めサイクルが始まって失業と景気後退が起こってから始まる。
そして今は、まだ1回目の引き締めを行ない始めた段階である。つまり、まだ何も始まっていないのである。
ポジャール氏: 政策金利は5%以上に上がって景気後退ではなく恐慌を引き起こす
何度も言っているように、このインフレは1970年代のように何度もの波になって来るだろう。当時、株価が半値まで暴落したのは第2波の時である。
現在はまだ第1波であり、厳密に言えば株価暴落が起こるのは第1波の時とは限らない。だが企業利益の推移を考える限り、来年前半にかけての株価の行方は下落方向である。
米国株の今後の見通し: 企業利益激減で株価は再び暴落へ、空売り再開
1970年代にそうだったように、インフレ相場とは10年以上続く巨大トレンドである。筆者は年始から株価の空売りを初め、その後一度利益確定してから再開したが、この巨大トレンドに対応するためには、長期トレンドを意識しながら今後半年について逐次予想してゆくほかない。
だが明らかなことが1つある。株価はいずれかのタイミングで暴落しなければならない(そうでなければインフレは収まらない)し、インフレが収まるとすれば失業率上昇と景気後退は避けられないということである。
マネーサプライ縮小でインフレ第1波は終了へ
まだ失業率さえ上がっていない今、インフレの恐ろしさの片面しか表出していない。まだ株価も大して下がっていない。市場はまだインフレの恐ろしさを何も織り込んでいないのである。にもかかわらずこのままインフレが問題なく収まってくれるのではないかという楽観が感じられる。
投資家の仕事はその楽観を空売りすることである。間違った楽観がある限り、これから問題が生じることが証明できる。金融市場がこれから織り込むべきことがあるということだからである。
すべての楽観が正しく絶望に変わるまでは、何の問題も解決していないのである。
2022年インフレ株価暴落は個人投資家が全員退場するまで続く
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2024/05/12 (Sun) 18:13:25
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政府主導の経済は自由市場の経済に勝てない
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史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
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ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
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MMT論者はネズミの巣穴に帰ってもう出て来ない
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「賃金上がらず予想外」アベノミクス指南役・浜田宏一氏証言 トリクルダウン起こせず…
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政治とは税金を集めて政治家の裁量でそれをばら撒くこと
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低金利の間に大量生産されたゾンビ企業は高金利にして一掃しないといけない
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倒産する企業はそのまま倒産させるのが正しい
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政府が救済する弱者と言うのは中小企業や零細経営者の事で、 その会社の労働者は救済しない
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大企業が破綻すると、 一般社員は直ちに失業者となるが、経営陣は優雅な余生を過ごす。
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追い込まれた日銀!? 石原順チャンネル
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インフレを退治するというのは株価の下落と景気後退を受け入れるということ
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銀行を助けて物価高騰かインフレを退治して株価暴落か、どちらかしかない。
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紙幣をばら撒けばインフレになるという単純な事実が多くの人々には難しすぎて理解できない
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インフレが起これば金融緩和が出来ないので、低金利で資産価格バブルの時代は終わる。
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ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31597
ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11992
ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31421
ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31363
ハイエク: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564
ハイエク: インフレを引き起こすインフレ政策を止めさせるには民間企業が通貨を発行すべき
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35579
ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/12051
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2024/07/13 (Sat) 21:55:45
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ハイパーインフレのアルゼンチン大統領、紙幣印刷が経済を悪化させる理由を語る
2024年7月13日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51206
アルゼンチン大統領にしてオーストリア学派の経済学者であるハビエル・ミレイ氏がMilken Instituteにおけるインタビューでインフレと紙幣印刷について語っている。
転落したアルゼンチン経済
ミレイ氏が大統領を務めるアルゼンチンはかつて経済大国だった。ミレイ氏は次のように語っている。
アルゼンチンは、1860年に自由主義的な憲法を採用してからたった35年で世界に名だたる大国となった。
野蛮人の国からGDPがブラジル、メキシコ、パラグアイ、ペルーの合計よりも多い国となり、ラテンアメリカ諸国にある鉄道網の合計よりも巨大な鉄道網を有する国になった。
ブラジルはBRICSの一角であり、世界8位の経済大国だが、元々はアルゼンチンの方が大国だったのである。
しかし今やアルゼンチンはハイパーインフレと債務不履行の国として知られ、そうした社会的混乱のさなか経済学者のミレイ氏が大統領として選出された。
繁栄していたアルゼンチン経済に何が起きたのか。ミレイ氏は次のように説明している。
しかしこの絶頂の最中、アルゼンチンの指導者たちは手に入れた富をすべての人に分け与えるという善意の考えから、人々の限りない需要を政府が満たし続けるべきだという誤った社会正義の教義を実行し始めた。
アルゼンチンがハイパーインフレと通貨暴落を味わうようになったのは、際限のない政府支出と紙幣印刷が原因である。
政府支出は通常経済的に困っている人々を助けるという名目で行われる。だが日本でもガソリンへの補助金が消費者ではなく業者の懐に消えてゆくように、それはしばしば経済的に困っている人々のところへは届けられない。
だがミレイ氏はそもそも経済的に困っている人々を政府支出で助けるという考え方自体が国の経済に貧困をもたらすと主張する。
ミレイ氏は次のように述べている。
そうした考えに現実は味方していない。好む好まざるにかかわらず、人々の需要は無限で、資源は有限だ。
政府がいくらでも紙幣を印刷すれば経済問題は解決するという考え方がある。だが考えてほしいのだが、例えば国中のすべての人が紙幣を印刷する以外の仕事を辞めたらどうなるだろうか?
明らかに国民は紙幣以外のものを手にできなくなる。この程度の思考実験で明らかになる通り、経済の問題とは供給される商品とサービスの量の問題であり、流通する紙幣の量の問題ではないのである。
アルゼンチン経済の没落
このように、何でも政府が解決するという考え方を政治家と国民の両方が支持した結果、ミレイ氏によればアルゼンチンには次のようなことが起きた。
政府と経済に関するこうした考えの結果、政府支出は劇的に増加した。
だから政府はまずアルゼンチン国民を税金で窒息させようとした。それで十分でなければアルゼンチンの黄金時代に蓄えた外貨準備を取り崩し始めた。
アルゼンチンはデフォルトを繰り返し、誰もアルゼンチンにお金を貸してくれなくなった時、政府は無制限の紙幣印刷を開始した。
政府債務は何らかの形で返されなければならない。徴税か、紙幣印刷か、あるいはデフォルトである。
ガンドラック氏: 米国債が債務減免される可能性
アルゼンチンはそれらすべてを経験した。上記のうち紙幣印刷に問題がないと主張したのがインフレ主義者たちだが、アメリカでは物価が高騰し、日本では通貨暴落が起きた。
日銀の植田総裁が円安を止められない理由
日本では税率も有り得ないほど高い水準になっている。だが政府支出の恩恵は苦しむ国民とは別のところにだけ流れて行っている。
レイ・ダリオ氏: 日本経済は最悪だ、米国の政府債務は5年以内に破綻する
「先進的」なアルゼンチン経済
アルゼンチンは日本やアメリカの先を行っているという点で先進的である。そのアルゼンチンがどうなったかと言えば、ミレイ氏によれば次のようになった。
当然の結果として、アルゼンチン国民は構造的な貧困から逃れられなくなり、1人当たりGDPは世界140位にまで転落した。
税金の増加、通貨の下落、インフレ、そしてGDPの順位の凋落。まるで何処かの国のようではないか。これでも自分の国はアルゼンチンとは違うと主張できるだろうか。
だからこそアルゼンチンの大統領であるミレイ氏は、西側諸国に同じ失敗をしないように語りかけているのである。
そのために必要なことは政府支出に依存しない自由な経済である。どういう商品やサービスが必要かを政府ではなく消費者が決める自由主義経済である。
だが政府支出を支持する人々には自由主義経済は敵視される。貧しい人々を助けないのかということである。
だがミレイ氏がダボス会議で言っていたように、自由主義経済による経済成長こそが世界人口の大半を貧困から救い、政府支出がもたらすインフレや通貨下落が貧困を増やしているのである。
ミレイ大統領: 政府主導の経済が自由市場の経済に勝てない経済学的証拠
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815
自由主義経済を敵視する「倫理的な」人々
だからミレイ氏は、貧しい人々を助けるべきだと主張し、自由主義経済に反対する人々に次のように問いかける。
なぜ学者たちや国際機関、政治家たちは地球の人口の90%を酷い貧困から救った経済システムを敵視するのだろうか?
なぜ西側諸国は歴史的に何度も失敗している実験にこだわり続けるのだろうか?
インフレ主義者たちはデフレが問題だと言う。だがなぜデフレになったのか? デフレとはものが売れない状態である。なぜ売れないのか? 政府支出によって消費者が欲しくもないものが大量に作られたからである。
海外の左派のように、政府支出によって貧しい人々を助けようとする人々に対して、ミレイ氏は次のように言っている。
自由市場では資本主義者が絶え間ない利益追求によってより良い商品やサービスをより安い価格で提供するようになっている。
政府の介入を好む人々は、この市場の大切な役割を阻害するだけに留まらず、互いに自画自賛して社会正義のメダルを与え合い、最終的には共産主義に通じる価値観を推進して経済を酷い状態にする。
自由主義経済ならば、消費者が欲しくもないものは作られない。だがインフレ主義者たちは政府支出によって不要なものを経済にばら撒き、デフレを引き起こし、デフレを是正するために紙幣をばら撒いてインフレを引き起こす。
そういうことをしながら海外の左派たちは自分たちは財政支出で貧困層を救ったと主張する。日本はやや特殊である。日本では口実などなくとも政治家が好き放題やることを国民が認めるからである。
結論
いずれにしてもそのようにして経済は沈んでゆく。それはまさに共産主義の最期と同じである。インフレ主義が本質的には共産主義と同じものであることは、インフレになるよりも前にレイ・ダリオ氏が指摘していた。
世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる (2020/5/17)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831
このプロセスで得をするのは政治家だけである。政治家(とそのばら撒きを受ける業者)だけは利益だけを得て罰せられることなく颯爽と去ってゆく。
ミレイ氏と同じオーストリア学派の経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣論集』において次のように言っていたことが思い出される。
しかし、 短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51206
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2024/07/14 (Sun) 07:43:36
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ミレイ大統領: 政府主導の経済が自由市場の経済に勝てない経済学的証拠
2024年5月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815
2024年1月の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)から、アルゼンチンの大統領でありオーストリア学派の経済学者でもあるハビエル・ミレイ氏の演説を紹介したい。
アルゼンチンのミレイ大統領
前回の記事では、政府による補助金や寄付金が国民に対する不当な資本移動になっていると批判するファンドマネージャーのスタンレー・ドラッケンミラー氏がアルゼンチンのミレイ大統領を賞賛していた。
ドラッケンミラー氏、やはりアルゼンチンのミレイ大統領が好きだった
何故ならば、ミレイ氏は過去の緩和政策によって100%を越えるインフレとなったアルゼンチンで、政治家による勝手な政府債務の増加と財政支出を止めるために選ばれた大統領だからである。
新アルゼンチン大統領のミレイ氏、経費削減のため閣僚の半分を削減する
ミレイ氏はオーストリア学派の経済学者だが、オーストリア学派では財政支出は無駄な公共事業を積み上げるだけで国民の幸福には繋がらず、生産性向上のためには民間セクターにおけるイノベーションと努力が必要だと考える。
ハイエク氏: 金融緩和でデフレを防ごうとすれば経済は悪化する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48045
ミレイ氏の経済学的論証
ミレイ氏はそれを論証するために経済統計を持ち出す。
彼は次のように述べている。
西暦元年から1800年ほどまでの間、世界の1人当たりGDPは期間を通して変化しませんでした。
人類の経済成長のグラフを振り返れば、それはホッケーのスティックのような指数関数的なグラフで、期間の90%はほとんど変わらないまま留まり、19世紀になって初めて指数関数的な上昇を見せ始めるのです。
停滞の期間における唯一の例外は15世紀後半のアメリカ大陸発見です。
ミレイ氏が語るのは世界の1人当たりGDPの成長の歴史である。指数関数的なグラフとは、最初はほとんど上昇を見せないが、途中から物凄い勢いで上がってゆくグラフのことである。
驚くべきことだが、19世紀になるまで世界の経済成長は極めて緩慢だった。より詳しくは次の通りである。
西暦元年から1800年までの1人当たりGDP成長率は0.02%ほどで安定しています。ほぼ無成長だということです。
厳密には今の成長率と比べると無成長に見えると言うべきなのだろう。昔にも多少のイノベーションは積み重ねられてきたのだろうが、今のイノベーションと比べると僅かということになってしまう。
産業革命と1人当たりGDP
だが19世紀にはそれが変わる。19世紀に何が起こったか。産業革命である。
ミレイ氏は次のように続ける。
19世紀の産業革命からは成長率が年率で0.66%になります。
1900年から1950年までの期間では、成長率は年率1.66%に加速しました。
ここから現代的な成長率へと変わってゆく。
産業革命以降は大量生産の時代である。大量生産ということは、単に金銭的に豊かになるというだけの話ではなく、より多くの人にものが届けられるということである。
そしてそのトレンドはまだ加速している。ミレイ氏は次のように続ける。
1950年から2000年では、成長率は2.1%になっています。
このトレンドは止まるどころか今でも続いています。2000年から2023年までの期間では、成長率は年率3%に更に加速しました。
結論
だからミレイ氏は、特に政府が支出を増やすべきだと主張し、自由市場を批判し政府の経済介入を支持する左派の人々の向けて次のように言う。
結論は明らかです。自由市場と資本主義という経済システムは、社会の問題の原因であるどころか、地球上の飢餓と貧困を終わらせるための唯一の手段なのです。
これは政府が大きく徴税し大きく支出する「大きな政府」と、それを最小限にする「小さな政府」の問題である。
「大きな政府」は日本の自民党やアメリカの民主党であり、小さな政府はほとんど存在しないが今のアルゼンチン政府か、あるいはスイス政府くらいだろうか。
「大きな政府」はお金が費やされる先を消費者ではなく政治家が決定するという意味で本質的には共産主義である。レイ・ダリオ氏なども、先進国のほとんどが多額の財政支出をしている状況を共産主義的と呼んでいた。
世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831
「大きな政府」の問題を指摘するには共産主義国の失敗を指摘するだけで十分である。だが経済学者のミレイ氏は経済の歴史を振り返り、資本主義の時代とそれ以外では経済成長がまったく違うことを示した。
日本の自民党やアメリカの民主党のような、ムラの権力者が財政を勝手に決めるようなムラ社会は太古の昔からあったはずだ。だがそれでは経済成長は0.02%のままだった。「大きな政府」も共産主義も、その時代の経済成長に戻すことを意味しているのである。
それは人々に貧困で しねと言っているのと同じである。だが日本の自民党やアメリカの民主党のような左派(誤植ではない)の人々は、人々を経済停滞から救うためには財政支出しかないと言う。
面白い冗談ではないか。東京五輪や大阪万博がインフレと円安で苦しむ市民をどう助けるのか見てみたいものである。
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35564
だがミレイ氏の 議論は本当に政治家のものとは思えない。本職の経済学者なのだから当たり前なのだが。米国の財務長官を務めた経済学者ラリー・サマーズ氏(彼は左派である)の他に、政治の世界に関われるまともな経済学者という稀有な人材が出てしまった。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/48815
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6:777
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2024/07/16 (Tue) 02:06:05
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ミレイ大統領: 多様性やSDGSは強要の文化である
2024年7月15日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51312
引き続き、アルゼンチン大統領でありオーストリア学派の経済学者であるハビエル・ミレイ氏のMilken Instituteにおける講演である。
自由主義者ハビエル・ミレイ氏
ミレイ氏は財政支出と紙幣印刷のやり過ぎでハイパーインフレと通貨暴落を経験したアルゼンチンの大統領に選出された経済学者である。
そのミレイ氏は前回の記事で政府による無節操な支出を批判していた。
ハイパーインフレのアルゼンチン大統領、紙幣印刷が経済を悪化させる理由を語る
その理屈は、どういう商品やサービスにお金が支払われるのかは政府ではなく消費者が決めるべきだというものだった。そうでなければ消費者が見向きもしない不要なものが山積みになってしまう。
それはいわば、経済にどのような商品やサービスが存在するべきかを政府が決める社会制度であり、それは程度の違いはあれ共産主義の一種である。
現代西洋における共産主義の文化
共産主義の本質は国民ではなく政府が決めるということである。そしてミレイ氏によれば、その共産主義的なイデオロギーはインフレ主義的な経済政策だけではなく、西洋諸国の文化や教育にまで及んでいる。
それは多様性や環境問題などにおける左派的なイデオロギーである。ミレイ氏は次のように説明している。
企業やマスコミ、教育、そしてエンターテイメントの世界にまで浸透している自己抑圧的な文化が存在する。
それは直接的であれ間接的であれ、様々な形を取った強要の文化であり、政府によって強制され、ジェンダーや人種問題や環境問題などの倫理的問題とされる問題について服従しない個人は迫害される。
特に欧米諸国では、こうした問題に対して多数と同じ反応を返さない個人は迫害される。
最近ではそういう左派のイデオロギーに嫌気が差した人が増えてきて、そうでない人の人権もある程度戻ってはいるのだが、少し前までドイツなどでは二酸化炭素のために風呂に入らないなどということが真面目に議論されていた。
ドイツの政治家、カーボンニュートラルのために風呂に入らないことを推奨
また、人種問題に関して言えば、ハーバード大学などが黒人学生などを優先するために人種ごとに入学者の人数を決めていた件で、優秀なアジア人学生が人数制限のために他の人種の学生よりも不利な状況に立たされるという人種差別的な状況が発生していた。
人種差別に反対する人々のせいで学生が人種差別に遭うというほとんどジョークのような状況だったのだが、ミレイ氏は次のように述べている。
こうした考えは多様性のために人間の長所を罰し、政治的に過敏な一部の人々に気を遣うために自由なアイデアの交流を妨げる愚かさに繋がっている。
結論
日本人はアメリカやヨーロッパでは同調圧力が少ないと思っている人が多いが、とんでもない間違いである。政治的に同調しなければ迫害されるようなことは日本では起こらない。
だが欧米諸国ではそういう状況が長らく続いている。 ウクライナなどの問題も同じような立ち位置にあるが、ハマスとイスラエルの問題が勃発してからは西側が支持する側が必ずしも正義ではないことがようやく明らかになりつつある。
ハマス・イスラエル戦争でメッキが剥がれかけている欧米諸国のメディア戦略
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51312
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7:777
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2024/10/22 (Tue) 18:25:28
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「ゾンビ企業」の淘汰加速か、日銀利上げで耐えきれなくなる公算大
高橋ニコラス 2024年10月22日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-22/SLQ7LET0AFB400
昨年の企業倒産件数は約8500件、2015年以降で最多
既に困難な状況下の企業、金利上昇で債務返済負担さらに増加
30年にわたって日本銀行の超金融緩和政策が続いた後、わずかな利上げでも、支払い不能に陥る「ゾンビ企業」が急増し、淘汰が加速しかねない状況にある。
東京商工リサーチが今月発表した全国企業倒産状況によれば、2024年度上期(4ー9月)の倒産件数は5095件と10年ぶりに5000件を突破。負債総額は約1兆3800億円で、産業別ではサービス業が最多だった。
ゾンビ企業とは、営業利益だけでは借入金の利払いが困難な状況にある企業と定義され、日本の低金利と政府支援のおかげで長年生き延びてきた。投資も人材採用もできないゾンビ企業は、新規企業の誕生を阻害し、雇用の流動性を妨げている。CLSA証券のストラテジスト、ニコラス・スミス氏によると、ゾンビ企業を一掃することはそれほど悪いことではなく、より健全な新規企業が参入する余地を与え得る。
ゾンビ企業はどれも倒産しても「悲しまれることはないだろう」と話すスミス氏は「日本では失業を心配する必要がなく、むしろ深刻な労働力不足が最も懸念される状況になっている」と指摘した。
Bankruptcies Are Picking Up in Japan
Easy money helped until the pandemic, rate hikes
Source: Tokyo Shoko Research
東京商工リサーチの3月のリポートによると、金利が0.1ポイント上昇すると、利益のほとんどを負債返済に充てているゾンビ企業の数は、約56万5000社から約63万2000社に増加する可能性がある。
そのうちの1社は、国内最大の旅行代理店の一つであるエイチ・アイ・エス(HIS)だ。2023年10月期に14億円の営業利益を計上したが、純支払利息は15億円に上った。
低価格パッケージツアーで知られるHISは、新型コロナウイルス禍後の日本からの海外旅行の低迷で苦戦を強いられている。日本に海外から観光客が殺到しているのとは対照的だ。数十年にわたる低金利政策のもう一つの遺産である円安が一因。ブルームバーグが集計したデータによると、HISは20年以降、負債をさらに増やし、現在は300億円の債務を抱えている。
同社はコメントを控えた。
Views of Kyoto Ahead of Government Statistics on Foreign Visitors
京都の「三年坂」を歩く観光客Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg
「ゾンビ企業」という用語は、2008年に星岳雄・東京大学教授を含む3人の教授が作り出した。星教授はゾンビ企業を経営課題に対処せず、政府や債権者からの金融支援で破綻を免れている企業と定義している。
一方、国際決済銀行(BIS)は、設立から10年超で3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(年間の事業利益が金融費用の何倍かを示す指標)が1を下回る企業をゾンビ企業と定義している。
今年最大の倒産案件の一つは、三菱航空機の後継会社MSJ資産管理の特別清算で、負債総額は6413億円に上った。その他に環境経営総合研究所、ホクシンメディカル、アサヒフードクリエイトなどがある。
銀行・保険だけでなく、日本のあらゆるセクターや地域でこの6カ月間に倒産件数が増加している。金利が上昇し、運輸や人工知能(AI)、ソフトウエアなどの産業がグローバルプレーヤーとの熾烈(しれつ)な競争にさらされる中、この数字は今後も増え続ける見通しだ。
日本の大企業でさえ、もはや倒産の可能性から免れることはできない。2023年、パナソニック液晶ディスプレイが国内の倒産企業の中で負債総額トップとなった。競争により、液晶ディスプレーパネル事業は自動車および産業分野に重点を移したが、米中貿易摩擦による打撃を受けた。
Inside The Panasonic Corp. Technics Factory
栃木県のパナソニック製造施設の液晶テレビ生産ライン(2016年)Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
親会社のパナソニックホールディングスはパナソニック液晶ディスプレイの清算を決定。負債総額は5836億円だった。パナソニックが21年に持ち株会社体制に移行したのは、各部門の説明責任と収益性の改善が狙いだった。経営最高責任者(CEO)の楠見雄規氏は今年5月、「最適な所有者」を見つけることで業績不振部門の改善を図ると述べている。
日本では負債を抱えた企業数が急増しており、そのペースはバブル崩壊後の1992年より速いとのデータもある。東京商工リサーチによると、ゾンビ企業は日本の上場企業の14%を占めている。
またゾンビ企業はレストランやホテル、運輸、観光など国内で労働力不足が最も深刻な業界に集中しているという。
生産性の低い企業は雇用や競争力を維持できず、買収や身売りもできず、利益を生み出すこともできない。特に大都市の人口密集地以外では、経営難が続く企業への投資は難しくなる。
しかし、数十年にわたる低金利の融資や手厚い補助金が破綻寸前のバランスシートを抱える非生産的な企業を次々と生み出してきた。日本政府は新型コロナウイルス禍にこうした企業に巨額の資金を注ぎ込んだ。一部の専門家はこうした「無利子・無担保」の融資が最近の倒産急増の主因になった可能性があると指摘している。
中小企業が倒産するとその従業員が解雇され、別の企業、願わくば収益性や生産性がより高く、収支のバランスが良好な企業に転職できる可能性が出てくる。どちらかといえば、これは日銀の利上げによる自然ながらも意図せざる副産物であり、高齢化と人口減少に伴う労働力不足の進行に歯止めをかけるのに役立つかもしれない。
みずほリサーチ&テクノロジーズの主席エコノミスト、服部直樹氏は「日本は経済環境の大きな転換点を迎えつつある状態で、企業もそのデフレ環境からのマインドチェンジなど意識転換を図っていくことが求められる」と指摘。倒産件数の増加は避けられないが、だからといってこれらの企業全てを倒産に追い込むべきではなく、どの企業をどのように支援できるかを決めることが課題だとした。
各企業は独自の事業を展開しており、それぞれに合わせたアプローチが必要だ。一部の専門家は地元の金融機関がこのようなアプローチに最適な立場にあると主張している。
東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長は「目指すのは倒産増加ではなく、債務の減少だ」とし、これがわれわれの暮らし方を守ることにつながるとの見方を示した。
今のところ、日銀が利上げを急ぐ可能性は低いもようだ。日銀は先月、金融政策の据え置きを決定したが、服部氏は日銀が来年1-3月に金利を最大0.5%まで引き上げると予想している。これは1990年代初頭以来の高水準で、負債を抱えたり倒産したりする企業がさらに増えるかもしれない。
CLSAのスミス氏は、金利が上昇すると円高が進み、インフレが低下し、消費者に一息つく機会をもたらすと指摘。「もちろんストレスは大きいが、世界が金利上昇に対応しなければならない。経済全体としては金利が上昇した方がはるかに良い」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-22/SLQ7LET0AFB400
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8:777
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2024/11/04 (Mon) 14:14:55
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ガンドラック氏: 景気後退が起きればアメリカは資金調達できなくなる
2024年11月3日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/55934
DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がオルブライト・ノックス美術館で世界的な金利動向と財政赤字の問題、そして金価格について語っている。
1921年世界恐慌の事例
アメリカや日本ではこれまで、景気後退が起きる度に緩和を行い、景気後退から脱出してきた。コロナ禍においても莫大な現金給付を行い、酷い景気後退を避けた代わりに世界中がインフレになった。
トランプ氏: 現金給付でインフレを引き起こしたのはバイデン氏だ
今の人々はそれを当たり前のように思っている。だが違う時代には違う対応があった。例えばガンドラック氏は1921年の世界恐慌の事例について次のように述べている。
1921年の世界恐慌は途方もない経済問題だった。アメリカのGDPは1/3減少した。
1/3だ。だが当時の人々はその景気後退を受け入れた。すべての不良債権と間違った投資が精算された。金利を上げて政府支出を削減し、そして経済は崩壊した。
この世界恐慌について誰も知らないことは、それこそが行なうべきことだったということだ。痛みを受け入れる必要があったのだ。そして1923年にはすべてが順調に戻っていた。
ガンドラック氏のような機関投資家がしばしば言うことは、景気後退は必要だということである。金利の下げ過ぎや不要な補助金によってゾンビ企業が延命され、誰も買わないような製品が作られ続け、売れなかったことこそが景気後退の原因なのだから、そういう企業を潰してしまわなければ問題は解決されないということである。
例えばスタンレー・ドラッケンミラー氏も、中央銀行がソフトランディングを目指すこと自体が間違いだと主張している。
ドラッケンミラー氏: ソフトランディングのことは忘れろ
インフレ政策の未来
だが今の時代では低金利と現金給付で景気後退を避けようとする。
それで景気後退が避けられるなら何が悪いのか? それを続けてゆくとどうなるのか? ガンドラック氏は次のように続けている。
それは今の時代への教訓のように思える。わたしの40年のキャリアの中で、経済問題が起きる度に問題は増幅している。
景気後退は起きる度に前のものよりも酷くなっている。それは偶然ではない。景気後退を遠ざけようとするからだ。そして永遠の缶蹴りが続いてゆく。
2008年の景気後退でわれわれがやったのは、恒常的なゼロ金利やマイナス金利だ。あれは酷い政策だ。
そして今では景気が悪くないとされているのに2兆ドルの財政赤字を垂れ流している。景気後退になれば財政赤字はもっと上がるだろう。
景気後退が起きる度に緩和政策は過激になっている。2008年のリーマンショックではゼロ金利と量的緩和だった。2020年のコロナショックではそれが現金給付に代わり、そして世界中にインフレを引き起こしている。
アメリカの財政赤字は際限なく増え続けている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2024/08/2023-us-budget-deficit-to-gdp-chart.png
インフレ政策の行きつく先
これからもそれが続くとすれば、インフレ政策の副作用もまた過激化してゆくということである。
現金給付の副作用がインフレなら、財政赤字の副作用は金利上昇である。政府は赤字になった分を国債発行で補わなければならないので、赤字が増えれば国債発行が増える。
国債市場で国債の供給が増えれば、需要と供給の関係から国債の価格は下落する。そして債券の価格下落は金利上昇を意味する。
今、金融市場ではアメリカ大統領選挙に向けて金利が上がっている。ガンドラック氏は次のように述べている。
金利が上昇を開始している。ヨーロッパでもアメリカでも上がっている。
金利上昇の理由について、債務が懸念され始めているのだと人々は話し始めている。
トランプ氏もハリス氏も財政赤字を気にしているようには見えないからである。金融市場は国債の供給過多を気にしている。
それを早くも今年の2月には懸念していたのがポール・チューダー・ジョーンズ氏である。
チューダー・ジョーンズ氏: 今年中に米国債暴落、金利急上昇の可能性 (2024/2/24)
ジョーンズ氏の予想通り、新大統領のばら撒きが財政赤字とインフレを悪化させるだろう。一方でアメリカ経済は減速しているのだが、金利はそれを気にしていないようにも見える。
景気が減速しても金利は下がらないのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
これまでの経験は役に立たない。
2021年までの40年間、金利は下がり続けた。短期的には上がった時もあったが、長期的には15%から0.2%まで下落した。
だがそのような金利低下はもう起こらない。
ガンドラック氏が特に懸念するのは、次の景気後退時のことである。
リーマンショックでもコロナショックでも、景気後退になれば中央銀行は金利を下げてきた。
次の景気後退でも、政策金利は無理矢理にでも下げられるかもしれない。だが国債の需給とインフレに反応して動く長期国債の金利はどうだろうか。
大量の国債発行とインフレの懸念に耐えられるのだろうか。債券の専門家であるガンドラック氏は、次の景気後退への政府の対応について恐ろしいことを予想している。
人々はインフレ政策に懸念を抱いている。次に景気後退が来たとき、いつものやり方以外の何が起きるだろうか? いつものやり方とは金利を下げて借金を大量に増やすことだ。
だが次に景気後退が来たとき、人々は資金を調達できないことに気づくだろう。
ガンドラック氏は米国債の需給が破綻することを懸念している。
実際に国債の下落に既に賭けている機関投資家も多い。運命の大統領選挙が近づいている。
ポール・チューダー・ジョーンズ氏、大統領選挙でインフレ再加速を予想、 米国債を空売り
ドラッケンミラー氏: 米国が0.5%利下げをした日に米国債を空売りした
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/55934