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2024/01/02 (Tue) 19:28:12
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エコール・ド・パリ
西洋美術史を流れで学ぶ(第25回)~20世紀のパリ編~
https://irohani.art/study/7503/
今回の第25回は「20世紀のパリ」についてご紹介しましょう。
この時代、通称、エコール・ド・パリ(パリ派)といわれる「天才芸術家集団」がパリに集まる。パリにとっては奇跡の時代であり、凄まじい数の名作が生まれました。また同時に、のちに「素朴派」といわれる画家も誕生した時代です。
あらゆる表現が評価されるようになり、19世紀までの伝統的な手法は完全に見直されることになります。そんな「多様性バンザイ」なワクワクする時代をみていきましょう。
20世紀・パリは「芸術家の憧れの地」となった
今の日本人にとって、パリといえばなんてったって「芸術の都」です。
しかし、そもそも西洋美術史を振り返ってみると、17世紀までは芸術の中心地はフランスではありませんでした。14世紀のルネサンスだって、イタリア・ローマやフィレンツェが舞台です。その後のバロック美術もフランスが中心! って感じではなく、ヨーロッパ全体で起きた様式でした。
Norberto Kolus
フランスがアートの話題の中心になった背景には、1648年の「王立美術アカデミー設立」があります。その学校が決めたルールや、王立展覧会の「サロン・ド・パリ」という存在が生まれたことで、その制約に対するカウンターカルチャーが立ち上がっていった。これがロマン主義や印象派などだったんですね。
これは他の国には存在しない(もしくはむちゃくちゃ遅れて到来した)ことであり、フランスはだんだんと芸術の中心地になっていきました。
そんなフランスは20世紀になると、あらゆる芸術家にとってはもう憧れなんですよ。地方の売れないバンドマンとか役者が下北沢に集まる、みたいな感じです。それで西欧諸国から芸術家が集まってきます。
「エコール・ド・パリ」の形成
By Lapady
そんな芸術家たちの多くが集まったのはパリのなかでも18区の「モンマルトル」でした。なぜかというと、シンプルに家賃相場が安かったからです。芸術を志す若者の多くは「パリで芸術をやりたい」と強く思っていたものの、お金がなかったので、モンマルトルに住んだんですね。
そしてエコール・ド・パリの舞台となったのが、ここモンマルトルのなかでも「洗濯船」と呼ばれた集合アトリエ 兼 住宅でした。ここはもともと画家マクシム・モーフラさんがアトリエを構えていたことから、だんだんと画家や詩人、劇団主催者などが出入りするようになり、住むようになっていきます。当時から土曜の夜になると、みんなで集まって、芸術や哲学のことをあれこれ話していたそうです。
1904年にはピカソもアトリエも借りました。前回の記事でお伝えしたキュビスム発祥の作品「アビニヨンの娘たち」も洗濯船で描かれたものです。このあたりからは「洗濯船」自体が「芸術の聖地」みたいな感じで評判が高まっていき、あらゆるアーティストが住むんですね。
また「住んではいないけどよく出入りする人」も豪華です。アンリ・マティス、ジョルジュ・ブラック、ギョーム・アポリネール、ジャン・コクトーらの芸術家が出入りしていました。20世紀の画壇を語るうえで欠かせないスタープレイヤーばかりです。もうなんか、悟空とルフィと炭治郎が毎晩一緒に飯食ってるみたいな……。そんな豪華な場所だったんですね。
「共同生活」によってムーヴメントが起きることがある
そういえば、日本でもとても近い現象が昭和初期に起きています。それが東京都練馬区の「トキワ荘」というアパート。ここには手塚治虫をはじめ藤子.F.不二雄、藤子不二雄(A)、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、寺田ヒロオ、水野英子といった、マンガ界のレジェンドたちが住みました。
手塚治虫は当時から、一般的に知られている漫画家でしたが、他の面々はまだ代表作を描く前の「駆け出し」の時期でした。これから時代を作る芸術家やクリエイターが「1つ屋根の下で共同生活をすること」は「つくる力」を生み出します。
今ではSNSがあって、自分の作品を評価してくれる人が出てきました。だからロジカルにデータを分析しながら自分のつくったものが「大衆に受け入れられているか」を判断できます。また他の人が作った作品をみて「これ超いいじゃん、ちょっと真似しよーっと」と思えます。刺激を受け放題です。
でも当時は自分の作品が「売れるために正しいか」とか「おもしろいか」なんて分かりません。そんななかで駆け出しのクリエイターはみんなむちゃくちゃ不安だったことでしょう。休日の趣味ならまだしも、本業をやっておらず、金銭的な不安もバリバリにあります。当時の駆け出しの芸術家たちは「いつ売れるか分からない」というプレッシャーに蝕まれ続けていたわけです。
そんななか隣に同じ境遇でがんばっている人間がいて、常に芸術の話をいろいろとしながら、評価を受け、刺激をもらいながら作品と向き合える。これは超絶デカいアドバンテージです。
また洗濯船には画商も住んでいました。トキワ荘には編集者も頻繁に出入りしていたそうです。この「クライアントとの距離が近い」というのもメリットだったはずです。いくら才能がある芸術家でも「見つからない」ということは多々あります。
こんな感じで洗濯船もトキワ荘も、駆け出しの芸術家にとって桃源郷だったわけです。そして桃源郷だったからこそ梁山泊になった、といえるでしょう。
ただ、これ「住人がみんな本気だった」ってのがホントにイチバン大事です。まだ日本にもおそらく「夢追い人たちのシェアハウス」は存在すると思います。しかしなかには「毎日バイト帰りにSwitchしながら『明日からがんばろうぜ』と1年間呪文のように唱え続ける」という地獄になっている噂も聞きます。
エコール・ド・パリの画家たち
さて、話を戻しましょう。そんな洗濯船に住人をはじめ、エコール・ド・パリの主な画家は以下です。
● マリー・ローランサン
● モーリス・ユトリロ
● アメデオ・モディリアーニ
● レオナール・フジタ(藤田嗣治)
● マルク・シャガール
● モイズ・キスリング
● アリス・プラン
彼らに共通点はありません。ただ、全員が「これまでにない新しい表現」を目指していた。またヨーロッパ各国からそれぞれのお国の文化を持ちより、刺激を受けていため、自然と革新的な画風が誕生したともいわれます。
例えばモディリアーニはアフリカやギリシャ彫刻をヒントにして、人物画を描きました。パッと見は「こ、怖いんですけど」と驚く方もいるかもしれません。首も顔も極端に細長く、瞳も描かれません。このあたりに彫刻っぽさを感じます。
アメデオ・モディリアーニ『座る裸婦』
また日本人にとって、レオナール・フジタはこの時代の英雄でしょう。日本画の手法をルーツにした女性の人物画が得意な方でその色合いは「乳白色の肌」と呼ばれ絶賛されました。最近になって、その色彩の秘密が分かっていす。硫酸バリウム、炭酸カルシウム、鉛白に加え、なんとシッカロールを使って色を調整していたそうです。
藤田嗣治
Deutsch: Jean Agélou (1878-1921), französischer FotografEnglish: Jean Agélou (1878–1921), French photographer
またマルク・シャガールもこの時代では巨匠の一人です。迫害対象だったユダヤ系の生まれで、地元の動物などをよく描いています。またキュビスムなどを根底にした平面の図式と、カラフルな色彩で妻・ベラとの「愛」を生涯にわたって描き続けた画家でした。
日曜画家による「素朴派」の誕生
さて、ここまでエコール・ド・パリについて紹介してきました。このように西洋美術は、もう完全に「多様な表現」を許す風潮に変わったわけです。そんななかで、より注目度を増したのが「アンデパンダン展」でした。
アンデパンダン展は1884年、ポスト印象派の時代にジョルジュ・スーラたちが初めて開催した展覧会です。ざっくりいうと「誰でも作品出せるよ~!」という展覧会でした。もちろん賞とかありませんが、ここで「発見」されて世に出る画家も出現するんですね。
そんななか「日曜画家」といわれるアーティストも出てきます。日曜画家とは平日は本業でフルタイム勤務をして休日にイーゼルとキャンバスを持ち出して絵を描く人たちです。私はコロナ前に訪仏しましたが、普通に街中で絵を描いている人たちがいました。日曜画家はフランスの伝統になっているんですね。
そんな日曜画家は本格的に絵を習っているわけではない。しかし習っていないからこその斬新さがあるわけです。画商や批評家によっては、そんな絵に「これはすげぇ斬新だ!」と魅力を発見したんですね。こうした何の影響も受けていない日曜画家たちは「素朴派」と呼ばれます。いうなれば「ヘタウマ」です。漫画家でいうと吉田戦車や和田ラヂヲのような、肩の力を抜いて見られるような魅力があります。
素朴派で最も有名な画家はアンリ・ルソーです。彼は税関職員として真面目に勤務しながら絵を描いていました。遠近感はまるでない。しかしセザンヌやピカソのように狙ってやったわけではない。人体のプロポーションもおかしい。陰影の距離感もちょっと不思議な感じ。「上手い」とはいえないのですが、今見てもなんか「クセになる魅力」があるんですね。
アンリ・ルソー『岩の上の子供』
また絵画ではないのですが、フェルディナン・シュヴァルは郵便配達をしながら、なんと宮殿をつくっちゃった人です。43歳で道端で拾った石をきっかけに33年間、周りから変人扱いをされながら「理想宮」という宮殿をつくりました。
シュヴァルの理想宮
https://irohani.art/study/7503/
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エコール・ド・パリの画家
アンリ・ルソー Henri Julien Félix Rousseau(フランス マイエンヌ県ラヴァル 1844年5月21日 - 1910年9月2日)
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パブロ・ピカソ Pablo Ruiz Picasso(スペイン南部アンダルシア地方マラガ 1881年10月25日 - 1973年4月8日)
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ジョルジュ・ブラック Georges Braque(フランス アルジャントゥイユ 1882年5月13日 - 1963年8月31日)
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マリー・ローランサン Marie Laurencin(フランス パリ 1883年10月31日 - 1956年6月8日)
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モーリス・ユトリロ Maurice Utrillo(フランス パリ モンマルトル 1883年12月26日 - 1955年11月5日)
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アメデオ・モディリアーニ Amedeo Clemente Modigliani(イタリア リヴォルノ 1884年7月12日 - 1920年1月24日)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16831648
藤田 嗣治 ふじた つぐはる(東京都新宿区 1886年11月27日 - 1968年1月29日)
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マルク・シャガール Marc Chagall(ロシア ヴィテブスク 1887年7月7日 - 1985年3月28日)
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蕗谷 虹児 ふきや こうじ(新潟県阿賀野市 1898年12月2日 - 1979年5月6日)
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岡本 太郎 おかもと たろう(神奈川県川崎市 1911年2月26日 - 1996年1月7日)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16832217
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2024/01/12 (Fri) 07:06:51
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