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ロマネスク・ゴシック美術

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2024/01/02 (Tue) 17:26:15

ロマネスク・ゴシック美術
https://irohani.art/study/4703/


キリスト教美術

今回はローマが弱くなった後にヨーロッパ全土に広がることになる「キリスト教」にまつわる美術作品を紹介します。

ローマ分裂とキリスト教の広がり

キリスト教は1世紀にユダヤ教から分派する形で独立します。その後、ローマ帝国内でスマホくらいの猛スピードで普及します。

キリスト教は「一神教」。つまり「キリスト最高!あなただけを崇拝します!」という考え。しかし1世紀から3世紀ごろまでのローマは強烈な帝政です。ローマとしては「皇帝すら神」くらいのテンションで帝国を愛してほしかったので、最初はキリスト教を禁止にしていました。

ただローマは4世紀に弱くなって東西に分裂。もはや国としてもキリスト教を認めざるをえなくなったんです。この4世紀末からローマ一強時代は終わり、堂々とキリスト教が広がりだします。ここから15世紀くらいまでを「中世」といいます。

偶像崇拝禁止により「シンボル」が誕生

さて、東西に分裂したローマのうち西は速攻でゲルマン民族に滅ぼされてしまいます。いっぽう東は15世紀まで隆盛します。両方とも最初は「偶像崇拝禁止」という約束事がありました。

例えばキリストの絵を描いて、毎朝「おはようございます」とか言うのは背信行為なんです。「キリスト」と「キリストの偶像」があると、存在として2つになります。一神教とはそれほどまでにリアルガチなんですね。

でも崇拝するキリストを描きたい。そこで西ローマでは「シンボル」として「魚」や「羊飼い」が描かれました。

ガッラ・プラキディア廟堂(びょうどう)にあるモザイク画『よき羊飼い』
Meister des Mausoleums der Galla Placidia in Ravenna


「魚」は「イエス」「キリスト」「主の子」「救い」の頭文字を並べると「イクティス(魚)」を意味することからシンボルとなり、「羊飼い」はキリストが福音書で羊飼いと自称していたことから描かれるようになったんです。

東ローマでは「イコン」が発達

東ローマ帝国はビュザンティオンに都を置いたので「ビザンティン」といわれます。西ローマと同様に東ローマでも偶像崇拝は禁止で「聖像破壊運動」まで起きていました。

キリスト教側としては「偶像崇拝やめろー!」と怒ってました。ただ絵画は当時としてはキリスト教布教に最も効果的なメディアだったのも確かです……。

だんだんと「『モーセの十戒』にはダメって書いてあるけど……別によくない?」とブレてきます。9世紀には「イコン(聖なる器)」とめっちゃ良いようにいわれ「う〜ん、個人で拝むならOK」となりました。

『ウラジーミルの生神女』(イコン)
Tretyakov Gallery


正当化された後も聖像破壊運動の対象になりましたが、だんだんと聖書の一場面のキリストを描けるようになります。

中世のサブカル・ケルト美術
ローマがめちゃめちゃ領土を広げていましたが、今のアイルランドなどにはケルト人という独自の文化を継承している民族がいました。彼らは4~5世紀ごろにキリスト教化するも、動植物や渦巻の文様などユニークな文化を誇っていました。

ケルト美術はギリシャやローマに比べて、テキスタイルっぽい、おしゃれな柄が特徴。今でいうところのサブカルチャーって感じで、ヴィレッジヴァンガードにひっそり置かれていてもいいくらいの作品なんです。

なかでも緻密すぎる装飾があしらわれた「写本」は真骨頂。十字架をかたどったうえでその周辺に幾何学模様を散りばめた作品は、今見てもキュートでおしゃれです。「レディ・メイド」なんていわれて大量生産のデザイナーズ工業品が出てくる遥か前から、人類はデザインパターンを知っていたんですね。

『リンディスファーン福音書』の『カーペット・ページ』
Meister des Book of Lindisfarne


今回は初期キリスト教の美術に関して紹介しました。偶像崇拝禁止の時代からだんだんと変化しキリスト自身を描けるようになった、とっても面白い時期ですね。なお、ここから長い間、キリストはモチーフとして描かれまくります。「キリスト像を見れば西洋絵画史が分かる」といわれるくらいです。
https://irohani.art/study/4703/


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ロマネスク・ゴシック美術
https://irohani.art/study/4792/

今回は11世紀から14世紀の中世まっただなかで隆盛したロマネスク美術、そしてゴシック美術についてご紹介しましょう。

ロマネスク美術とは

「ロマネスク」とはそのまま「ローマっぽい」という意味です。11世紀あたりから西ヨーロッパの広い地域で広まった文化を指します。


ロマネスク美術の背が低いガッシリ系建築物

名前の由来は特徴的な建築物。以前、ローマ美術でご紹介したようなデカい石を積み重ねて、土台をがっしりと作った背の低い建築物が目立ったため「ロマネスク」といわれるようになりました。

例えばスペインにある「サント・ドミンゴ・デ・シロスの修道院」を見てみましょう。以下の通り、大きな石で土台を作っているのがよく分かります。

サント・ドミンゴ・デ・シロスの修道院
I, Schweigen


壁の厚さが1mを超えるものも珍しくないというからびっくり。彫りの深い男たちがせっせと組んでいたのでしょう。ただとにかく作りがガッシリしていて重いので、高層にはできなかったんですね。全般的に背が低いのが特徴です。

また窓が小さいのも特徴的。これも素材が重く大きな窓にすると崩れてしまうからです。おそらく日当たり超悪いので内見にいったら絶対にNG出したくなると思います。


ロマネスク美術で花開いたフレスコ画

また建物内には「フレスコ画」が描かれています。これもロマネスク時代の発明です。

それまでの絵画作品は「モザイク画」が主流でした。これは漆喰に粗めの大理石やガラスを壁に埋め込んで作るものです。いまでいうモザイクアートですよね。だから微細な表現ができないので超ぎこちないんです。

「キリストと11世紀の東ローマ皇帝コンスタンティノス9世夫妻」(モザイク画)
Photographer: Myrabella


一方のフレスコ画は大理石やガラスをいったん粉状にして水溶性の顔料を作ってから漆喰の下地に描く手法です。モザイクがと違って筆を使うので緻密な表現が可能になったほか、コストも安く済みました。

「アテナイの学堂」(フレスコ画)
Raphael

ただでかめのデメリットもありまして、やり直しができないんですねこれ。漆喰が乾いてしまうと、表面が固まるので塗り直しができず、気付いたら「あ、終わった……」ってなるんです。

だから悠長に描いている暇もない。描いたそばから乾いていくので「やばい!コレやっばい間に合わないんすけど!」と独り言を呟きながら汗だくで描かなきゃなんです。その分、画家の技量が試されたのは間違いなく、絵としてのレベルもものすごく高まり始めました。


ゴシック美術とは

さて、そんなロマニズム美術が主流だった時代の後に、ゲルマン民族によって流行り始めるのが「ゴシック美術」です。ゴシックと聞くと「ゴシックロリータ」をはじめとするサブカル御用達系ホラーを思い出す方もいるでしょうが、こっちは19世紀から流行りはじめるゴシックブームが起因の言葉ですので、ちょびっと意味合いが違います。

もともとのゴシックは「ゴート族(ゲルマン族)っぽい」という意味。当時の高貴なイタリア人たちがゲルマン民族をちょっと見下して「田舎風情が、古き良きギリシャ・ローマ文化を無視してなんか美術やっとるぞおい」みたいに貶(けな)していたのが由来です。

3つの変化で建築に革命をおこしたゴシック様式
そんないじられてたゴシック美術ですが、ロマネスクのあの“質実剛健っ!”みたいな背の低いガッシリした建築を見事にアップデートしてみせます。

日本でもよく知られている「ノートルダム大聖堂」や「ケルン大聖堂」なんかが代表作です。

ノートルダム大聖堂
Peter Haas


パッと見て分かる通り、この背の高さ。そして窓のデカさ。なんかスタイリッシュでカッコよくなったのが分かるでしょう。窓が大きくなったことで「ステンドグラス」が誕生します。

ストラスブール大聖堂
Clostridium


なぜロマニズムの時代にできなかったことがゴシック期に可能になったのか。その背景には3つの革命があったんです。それが「尖塔アーチ」「リヴ・ヴォールト」「フライング・バットレス」の3つ。

尖塔アーチとはその名の通り、先を尖らせたアーチ構造のこと。これにより壁の体重を下だけでなく横に逃がせるようになりました。そこに足されたのが「リヴ・ヴォールト」です。天井を支えるためのアーチを交差させてつっかえ棒のように配置することで、より外に体重を逃がせるようになりました。

ウースター大聖堂
Mattana


この2つで石の重みを外に逃がすことに成功しましたが、これでは本末転倒で逆に外に崩れそうですよね。そこで生きるのが3つ目の「フライング・バットレス」。建物の外に柱を作り支えることで、外から建物を支えることに成功したんですね。

だいぶ足し算で作られた手法ですが、これによってゴシック様式が完成しました。

ケルン大聖堂
Velvet

https://irohani.art/study/4792/

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