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バロック美術

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2024/01/02 (Tue) 17:22:02

バロック美術
https://irohani.art/study/5538/

聖書の場面を忠実に描いていた時代が終わり、逆に「キリストより人間が大事だぜ」という現実主義かつ写実主義なルネサンスがやってきて終わりを迎えました。そこから巨匠・ミケランジェロが「現実よりも美しいものを作るべきよ」とマニエリスムをはじめ、特にフランスの画家たちの間でブームになり、だんだんとイタリアからフランスに中心地が移っていく……。というのが前回までのあらすじです。

ではバロック美術ではどのような表現が流行するのでしょうか。ヨーロッパ各地でめちゃめちゃ表現が多様化するこの時代をみていきましょう。


キリスト教の「カトリック」と「プロテスタント」がバチバチに

ルネサンスの終わりの回でも紹介しましたが、1500年代半ばにマルチン・ルターさんという大学の教授的な人が「なんかちょっと最近のキリスト教会(カトリック)っておかしいと思う」と宗教改革を起こしました。当時のローマ教皇が借金を返すために「贖宥状(しょくゆうじょう)」というお守りみたいなものを大量に発行したんですね。それに「異議あり」といったわけです。

そこでカトリックから一部のプロテスタントが「ルターについていくわ」と離脱。これでカトリックは力を失ってしまい、ルネサンスの終焉につながります。バロック美術の時代には、この「カトリックvsプロテスタント」が大きく影響します。


プロテスタントのスタンスは「聖書に忠実に。偶像崇拝は禁止」

プロテスタントのスタンスは「偶像崇拝禁止」です。偶像とは「キリストを模した何か」ということ、あの「海割り」で有名なモーセさんが「『キリストはただ一人の存在だから、像とか絵とか作っちゃだめよ』と神が言ってましたよ」と「十戒」に記したのがきっかけで、できたルールです。

プロテスタント側としては「忠実にキリスト教を守っていかなきゃ」ということで、この偶像崇拝禁止を守っていました。


カトリックのスタンスは「偶像崇拝OK!ダイナミックな美術で信者を集めよう」

いっぽうのカトリックは信者独占状態からプロテスタントという競合が生まれたわけです。かつての規模まで復興したい、と絵画や彫刻を“広告”として使います。広告なので、できるだけ「魅力的に見せたい」。そのためカトリック教会は画家や彫刻家に「ダイナミックな表現をしてくれ」と依頼をするんですね。

テレビ通販みたいな感じですかね。「初めて飲んだ日から、朝起きたときの気持ちよさが全然違うんですよ! もう、この枕以外は使えないです!」みたいな。ちょっと過度にキリスト教の素晴らしさをアピールするんです。


バロック美術の特徴

そんなカトリックの発注で生まれた「超ダイナミックな様式」がバロック美術です。バロックとはもともとドイツ語で「歪んだ真珠」といいます。

「あるがまま」を描いていたルネサンスに比べ、バロック美術はとにかくドラマチック。静でなく「動」。コントラスト(明暗)もはっきり意識しています。そのため最初「ちょっと派手過ぎない?下品っていうか……」と受け入れられていなかったんですね。

第6回でご紹介した「ゴシック美術」の「ゴシック」も、もともとは侮蔑的な意味合いでした。やはり急激に文化が変わるときは多くの人が受け入れられないもんですね。もちろん今ではゴシックもバロックも、素晴らしい文化として受け入れられています。

ただし「多様化」の時代でもあった
ただしバロック美術の時代はルネサンスのように「みんな同じ表現を目指した」というわけではないです。この時代はイタリア、フランス、スペイン、オランダ(ネーデルラント)と各国で美術文化が育ちますが、それぞれに特色があります。

ルネサンスの表現を継承したり、風景画や風俗画が育ったりするんです。そのなかでも特にバロックといえば「カトリック教会に関するダイナミックな表現がメインだった」という認識だと分かりやすいでしょう。

今回はバロック時代のダイナミックな絵について紹介しました。「見たままを描く」というルネサンスの真逆と言ってもいい、激しい動きが特徴のこの時代。観ている側としては「すごさ」が分かりやすいのが楽しみやすい部分ですね。まだ「美術の何にハマればいいか分からない」という方におすすめです。

たださっき書いた通り、バロック時代は多様性の時代でもあります。こうした表現だけじゃ終わらない。新しいモチーフ、様式が生まれていきます。
https://irohani.art/study/5538/


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オランダ・バロック美術
https://irohani.art/study/5696/

前回は、イタリア・フランス・スペインでカトリックの入信者を増やすための“広告”として用いられた、超ダイナミックな表現が特徴の美術作品について紹介しました。今回は主にオランダで始まる、西洋美術の新たな表現を面白おかしくみていきましょう。

バロック時代は多様化の時代

前回の第14回を超ざっくり振り返ってみましょう。バロック美術以前、ルネサンス期の最後のほうになると、重大な事件として「宗教改革」が起きました。それでカトリックの一部(プロテスタント)が「もう、キリスト教よりお金稼ぎのほうが大事になってんじゃん!やってらんねぇ!」と分離することになります。

その後、カトリックは「キリストとかマリアのかっこいいシーンをバンバン描いて、信者を集めようぜ」という手法で画家にダイナミックで荘厳な宗教画を描かせるわけです。一方で、プロテスタントは「ちょっとキリスト描くのとか、もうやめなよ。偶像崇拝禁止って言ってるじゃん」と反対するという、はめ外す男子とそれを止める女子みたいな、バチバチのバトルが始まったんですね。

それでバロック時代の美術の大きな特徴は、カトリック主導によるとにかく劇的で激しい表現となっていきます。

とはいえ、バロック美術は一概にそれだけじゃないのが面白いところ。他のモチーフ、表現も育った「多様化の時代」なんですね。

オランダで「市民階級の玄関に飾りやすい絵画」が流行った背景

「ジプシー女」
Frans Hals


「多様化」のなかでも特筆すべきなのが「風景画」「風俗画」「静物画」が誕生したこと。よくよく考えると、この時代までの美術作品は基本的に「宗教画(歴史画)」か「人物画」しかないんですね。パトロンが「教会」「君主(王様)」「金持ち市民」しかいないので「キリスト教の名シーン集」か「王・金持ち市民のモデル立ち」しかお金にならなかったんです。

そんななかで「その辺の風景」や「一般市民の何でもない日常」を描いた絵が流行ります。その舞台となるのが、当時の北部ネーデルラント、今のオランダです。オランダはイタリア、フランス、スペインとはまったく違う作品がブームになりました。

その理由が「カトリックでなくプロテスタント傘下に入ったこと」と「市民階級が力を付けたこと」です。

まず偶像崇拝禁止のプロテスタントを信仰していたので、カトリックのダイナミックな表現は生まれなかったんですね。「ちょっと!偶像崇拝禁止でしょ!」派が多数だったので、周りの国に比べて宗教画は制作されませんでした。

また「市民が力をつけたこと」。この背景にあるのが「貿易」です。当時はいわゆる大航海時代。ヨーロッパとアメリカやアジア大陸との貿易が始まりました。海沿いのオランダにいとっては、もう千載一遇の大チャンスです。これを完全にモノにして、もうぶっちゃけすんごい儲かります。

すると、国全体が裕福になるので、市民でも家に飾る用に絵を買うんですね。オランダは教会が偶像崇拝禁止だし、国王制でもない。なので、画家のパトロンは主に市民となったわけです。

「似てないじゃん!書き直してよ」を避けるための写実性

「テュルプ博士の解剖学講義」
Rembrandt


そんなオランダでまず出てくるのが「集団の肖像画」。ざっくりいうと集合写真です。というのも、国王みたいに「1人が圧倒的に強い」というものではなく、商人グループで儲かったので「みんなで描いてもらおうよ」となったんですね。

すると、1枚の絵のなかにいろんな人を描く必要がるので、顔の特徴を精密に描く必要があります。みんな同じ顔見たいに描いたら「ん~これは髭があるから1丁目の田中さんだろうけど……。これは誰? 俺かこれ……? ちょっとこれ分かんないから描き直してもらおうぜ」となるんですね。なので当時のオランダ人画家は「写実性」が発達するんです。

風景画、風俗画、静物画という「玄関に飾りやすい絵」

「真珠の耳飾りの少女」
Johannes Vermeer


そしてそんな見たものをちゃんと描くという写実主義から発展して出てきたのが風景画、風俗画、静物画でした。

当時少なかったオランダの宗教画(歴史画)は、基本的にイタリアから影響を受けたダイナミックな絵が主流です。それはもう写実性ブームのオランダで「盛りすぎじゃね?」と嫌われちゃうんですね。ハリウッドザコシショウのネタを見て「いや、似てねぇよ……」とか言っちゃう感じです。

しかもサイズがデカくて高級でした。というのも当時「ジャンルのヒエラルキー」というものがあって「1.歴史画(宗教画)、2.肖像画、3.風俗画(日常生活)、4.風景画、5.静物画」という明確なランク付けがあったんです。今考えたらモチーフで順位付けするなんて、ちょっと衝撃ですよね。

その点、ヒエラルキーは下位でも市民にとっては「リアリティがあっていいわね」となり、サイズ的にも飾りやすい「風俗画」や「風景画」「静物画」が流行ります。玄関に巨大なキリストの磔刑像があったら、友だちに「え?病んでんの?」と言われちゃいますもんね。それよりは雄大な自然の絵があるほうが受けたわけです。


ようやく画家の自由が認められてきたオランダ・バロック美術

オランダ・バロック美術の面白いところは「画家が自分の表現をしやすくなったこと」でしょう。それまでは「こんなのを描いてくれ」と発注がきて、その通りに描いて納品するのが通常でした。それまでの画家は今のような「表現者」という感じではなく「職人」というイメージのほうが近かったといえます。

しかしこの時代からは、発注者の肖像や宗教画といった、明確な目的がなくても、自分が興味をもった作品を描けば売れるシステムができたのです。これはようやく美術作品が「自己表現」という意味をおびてきた証ともいえるでしょう。
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バロック美術の画家・彫刻家

カラヴァッジオ Michelangelo Merisi da Caravaggio(イタリア ミラノ 1571年9月29日 - 1610年7月18日)
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ピーテル・パウル・ルーベンス Petrus Paulus Rubens(ドイツ ジーゲン 1577年6月28日 - 1640年5月30日)
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アンソニー・ヴァン・ダイク Anthony van Dyck(ベルギー アントウェルペン 1599年3月22日 - 1641年12月9日)
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ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ Gian Lorenzo Bernini(イタリア ナポリ 1598年12月7日 - 1680年11月28日)
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ディエゴ・ベラスケス Diego Rodríguez de Silva y Velázquez( スペイン セビーリャ 1599年6月6日 - 1660年8月6日)
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レンブラント・ファン・レイン Rembrandt Harmenszoon van Rijn(オランダ ライデン 1606年7月15日 - 1669年10月4日)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16831573

ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer(オランダ デルフト 1632年10月31日 - 1675年12月15日)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16831574

フランシスコ・デ・ゴヤ Francisco José de Goya y Lucientes(スペイン北東部サラゴサ近郊 1746年3月30日 - 1828年4月16日)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16831578

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