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中央銀行が中央銀行自身を救済するという現金給付に次ぐ新たな緩和方法が既に始まっている

1:777 :

2023/08/08 (Tue) 00:59:18

世界最大のヘッジファンド、量的緩和と現金給付に続く新たな金融緩和を語る
2023年8月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで、世界的な物価高騰をもたらした現金給付に続く新たな金融緩和の方法について語っている。

過去40年の金融緩和

アメリカでは1970年代の物価高騰が終わって以来、金融市場の歴史は金融緩和の歴史である。

1970年代の物価高騰を止めるために20%以上に上がったアメリカの政策金利は、その後30年近くかけて低下してきた。以下はアメリカの政策金利のチャートである。


中央銀行は経済が弱るたびに利下げを行い、金融緩和によって実体経済を支えてきた。

だがその金利は2008年のリーマンショックでついにゼロに到達する。中央銀行はこれ以上金利を下げられなくなったが、それでも緩和をする方法が欲しかったので、紙幣を印刷して金融市場から国債などの証券を買い入れる量的緩和という方法に頼ることになった。

政策金利を操作する方法では国債の金利を直接下げることはできないが、紙幣印刷で中央銀行が有価証券を買い上げてしまえば、資産価格を人工的に押し上げ、国債の金利を押し下げることで更なる緩和を行うことができる。

だがこの方法では実体経済をコロナ危機から救うことは出来なかった。日本で実際にそうなっているように、資産価格を上げても得をするのは資産を持っている人々だけだという当たり前の事実に、アメリカも直面せざるを得なくなった。

そこで考案されたのが、国民の銀行口座に直接現金を注ぎ込む方法である。現金給付と呼ばれるこの方法は、家計の財政状況を見た目上改善した一方で、世界的な物価高騰を引き起こした。

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このように緩和の歴史を振り返ってみると、明らかに言えることは、緩和の副作用が強くなっていることである。利下げの副作用は、2000年にドットコムバブルを引き起こしたり、2008年のリーマンショックにつながる住宅バブルを引き起こしたりすることだった。

それだけも酷かったかもしれないが、利下げが量的緩和になり、量的緩和が現金給付になった今、緩和の副作用は雪だるま式に膨らみ、インフレという形で全国民に降り掛かっている。

だが緩和の極端化というこのトレンドは、もはや誰にも止められないだろう。人間にそれを止める頭があれば、そもそもインフレは起きていない。

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ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから投資家は現金給付に続く新たな緩和方法が何かということを、そろそろ考え始める必要がある。

中央銀行はまず利下げによって金利を低下させ、経済における最大の債務者、つまり政府を救済し続けてきた。その次には量的緩和によって、金融危機で資産を失った資産家を救済した。コロナ禍におけるはロックダウンで収入を失った家計を救済した。

もう救済するものはあと1つしか残っていない。中央銀行による中央銀行の救済である。

中央銀行が自分自身を救済する

政府が国債を中央銀行に押し付け、中央銀行はシリコンバレー銀行などの破綻処理にあたって価格が下落していた債券を額面で引き受けているので、もはや中央銀行はさながらゴミ箱のような様相である。

政府はこのまま中央銀行をゴミ箱のように扱い続けることができるのか? 現代人は誰もその実験を経験したことはないが、歴史上には同じような事例は存在する。こうした疑問を尋ねるのに最良の人物は、やはりダリオ氏だろう。

ダリオ氏は次のように述べている。

長期的には、歴史を振り返ってこれから何が起こるかを描いてみると、政府の財政赤字が増大するのは実質的に確実で、利払いや他の予算の費用が増加している以上、増加の加速度は上がる可能性が高い。

アメリカのGDP比財政赤字は次のように推移している。


短期的には上下しているが、長期的には赤字は増え続けている。そしてこれが少なくなる見通しのないことは、誰もが同意するところだろう。

緩和も財政も悪化し続ける。だが緩和が利下げから現金給付まで指数関数的に進化してインフレという限界にぶつかったように、政府の財政も同じように指数関数的に進化して人々が思っているよりも早く限界にぶつかるだろう。

このまま財政赤字が加速度的に増加すればどうなるか。ダリオ氏は次のように述べている。

そしてそうなれば、政府はより多くの国債を発行しなければならなくなり、自己強化的な債務スパイラルに陥ることになるだろう。

金融市場がそれ以上増やさないよう迫る一方で、中央銀行は紙幣印刷によってもっと多くの国債を買わなければならなくなる。そうしなければ損失が拡大し自分のバランスシートが毀損されることになる。

「金融市場がそれ以上増やさないように迫る」というのは、国債の発行増加を市場の投資需要が支えきれなくなり、国債価格が暴落してゆく状況だろう。

そうした要因での米国債の価格下落は、今の市場参加者にはほとんど想像もできないはずだ。だが少し前の市場参加者には、インフレも想像できなかったことを思い出したい。

ダリオ氏の言う通り、国債の発行が指数関数的に増加してゆくならば、量的緩和なしには国債価格を維持できない状況はいずれ必ず訪れる。そして「指数関数的」な増加によってその水準に到達する日はそれほど遠くないということは、少しの数学的素養のある人ならば分かるはずだ。

ダリオ氏によれば、そうした問題の典型的な解決策は、政府が中央銀行の損失を補填することだという。だが政府は中央銀行の紙幣印刷によって資金供給されているので、中央銀行は結局は自分に資金供給することになる。この空中でジャンプして空に浮き続けるような末期的状況の典型的な帰結は、金利高騰か通貨暴落かインフレ、あるいはその組み合わせだろう。

結論

実際、イギリスはその状況に到達しかけた。1つ前のトラス政権がインフレの状況下で大規模な財政緩和を行おうとしたとき、金融市場では英国債とポンドが両方急落した。

サマーズ氏: 景気後退で財政支出する国はイギリスの二の舞になる
結局はトラス氏が辞任に追い込まれることによって緩和は撤回されたが、他の先進国はそうした瀬戸際にある。日本では円安とその結果としてのインフレが大きな問題になっている(が、自民党支持者はストックホルム症候群によって緩和の引き起こした円安とインフレの関連を頭から消し去っている。)

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アメリカは、基軸通貨ドルの恩恵によって今のところ日本やイギリスのような羽目にならないで済んでいる。だがスタンレー・ドラッケンミラー氏は、まさにそれが原因でアメリカはより大きな危機に陥ると予想している。

ドラッケンミラー氏: アメリカは基軸通貨ドルのお陰で致命傷を食らうまで緩和を続けられる
短期的な延命のために長期的な危機が許容される。いつものことである。しかし若者たちはそれで良いのだろうか。

ドラッケンミラー氏、高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616





世界最大のヘッジファンド: 中央銀行の損失に対する政府の資金注入は始まっている
2023年8月7日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38689

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで、中央銀行が中央銀行自身を救済するという現金給付に次ぐ新たな緩和方法が既に始まっていると説明している。

現金給付の次の緩和政策

以前の記事では、ダリオ氏は利下げと量的緩和からついに現金給付へと進化した緩和政策の次の進化を予想していた。利下げと量的緩和で経済最大の債務者である政府を救済し、現金給付でコロナ危機に苦しむ家計を救済した中央銀行の次の救済相手はもう1つしかない。中央銀行による中央銀行自身の救済である。

世界最大のヘッジファンド、量的緩和と現金給付に続く新たな金融緩和を語る

だが緩和がどんどん過激になるに従って、その副作用も過激になっている。インフレにならない限りいくらでも緩和で経済を支えられるというインフレ主義者の夢のようなプランは、量的緩和と現金給付によってインフレが起こったことで潰えた。

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ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
では次はどうなるのか。ダリオ氏は、アメリカの政府債務が加速度的に膨らんでいることを危惧している。アメリカの財政赤字は次のようになっている。


ダリオ氏の予想によれば、この財政赤字は今後ますます拡大してゆく。政治家が平気で赤字を拡大してパリに旅行に行く様子を見ていれば、その予想が当たらないことを想像する方が難しいだろう。

政府債務の末路

財政赤字がねずみ算式に膨らむとどうなるのか? 政府債務は無限に増やせるのか?

その質問の答えは、歴史上政府が借金を増やし続けた事例を研究しているダリオ氏に聞くのが一番だろう。ダリオ氏は長期的にはこうなると答えている。

中央銀行の損失と債務超過は金融政策に影響する水準に達するだろう。直接的(自身や政府の損失をマネタイズしなければならなくなる)であれ間接的(そうした損失が政治的な問題となる)であれ。

政府だけでは負債を増やし続けることは出来ない。中央銀行に紙幣を刷らせて国債を買わせる(量的緩和)からこそ政府は負債を増やし続けることができる。

だがそうすればどうなるかと言うと、中央銀行は損失を抱えることになる。

中央銀行の損失

何故か? 金利が上がったからである。まず中央銀行は量的緩和によって大量の有価証券を買い込んだわけだが、自分自身の量的緩和によって資産価格が上がった状態で買い込んでいるので、その後インフレが起こり自分で利上げをしなければならなくなると、自分で買い込んだ資産の価格が下がるのである。

シリコンバレー銀行は買い込んだ国債の値段が急落したことが一因で破綻した。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
だが中央銀行も同じ状況にある。量的緩和で大量の債券を抱えており、その値段が自分の引き起こしたインフレで下落しているからである。

その意味では中央銀行は必ず損失を追う運命にある。自分で資産を買い込んで自分で下落させているのである。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
しかもアメリカの中央銀行は銀行危機の際に銀行の保有していた下落した債券を額面で引き受けているので、銀行の損失を肩代わりしてさえいる。中央銀行はさながら政府や民間のゴミ箱状態である。

だが、日銀のように株式を買ってしまったらどうにもならないが、国債であれば満期まで待てば下落分は返ってくるのではないかという議論もある。

しかし中央銀行が同時に市中銀行が中央銀行の口座に持っている資金に対して金利を払っていれば、その金利も上がるわけなので、中央銀行は赤字になる。こちらは保有国債のように満期まで待って解決というわけにはいかない。

また、将来的には満期まで待つという選択があるにしても、国によっては中央銀行の債務超過は政府が補填するという法律になっているところもあり、その場合は政府の財政赤字が拡大されることになる。

そして政府は国債を発行する。供給過剰で国債価格が下落する。

既に始まっている中央銀行のマネタイズ

中央銀行が中央銀行を救済するなどということは想像できない、と一部の読者は言うかもしれない。だが少し前まで人々は「インフレになるなんて想像もできない」と言っただろう。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
しかも中央銀行のマネタイズは実はもう始まっている。ダリオ氏は次のように述べている。

ドイツは1920年代と1940年代にこの債務サイクル終盤のシナリオを経験し、自国通貨の価値を破壊した。

結果としてドイツはインフレを警戒するようになり、より保守的な金融政策を好むようになったが、そのドイツは今や中央銀行の損失と債務超過を、政府の補填という伝統的な方法で解決すべきかどうかを議論している。だがその場合は政府の予算に影響し財政赤字を拡大することになる。

また、イギリスについてダリオ氏は次のように言っている。

イギリスでは中央銀行の損失はそのように処理されることになっているので、財務省はGDPの2%分を新たに借りてイングランド銀行の債務超過を補填することになっている。

イギリスは最近、先進国でありながら破綻しかけた。

サマーズ氏: 景気後退で財政支出する国はイギリスの二の舞になる
中央銀行のマネタイズは実はもう始まりつつある。それがある程度以下の規模であれば問題も目に見えにくいかもしれない。だが次に経済危機が起こったときに、例えば銀行危機の時に行ったような民間の損失の引き受けのようなことがコロナ後の現金給付のような規模で行われ、その大規模な中央銀行の損失を政府が補わなければならなくなったとすればどうだろう。

政府は結局中央銀行の紙幣印刷によってマネタイズされているので、もう誰が誰を救済しているのか分からない状態になる。政府がそれを資金調達するとすれば、その方法は増税である。

あるいは中央銀行の損失をそのままにしても、結局は民間の損を中央銀行が引き受けているわけなので、それは緩和であってインフレを引き起こす。

結論

行くも地獄、帰るも地獄である。だがコロナ後の現金給付がついにインフレを引き起こした以上、次の緩和がどういうものを引き起こすかということは、投資家でなくとも考えておかなければならないだろう。インフレか通貨暴落か金利高騰か増税か、恐らくはその組み合わせだろう。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
日本ではその組み合わせはもう起きているが。

ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り
日本政府の詐欺的な物価指数の計算方法がインフレを悪化させる
ダリオ氏はドイツやイギリスで始まりつつあるこの状況が、アメリカに来る可能性も考慮すべきだと言う。彼は次のように言っている。

アメリカでも中央銀行の巨額の損失や債務超過が中央銀行の独立性を脅かすような政治的反応を引き起こし、政治家が中央銀行のコントロールを取るような状況さえ有り得るだろう。

だがそれはまさに、凋落しつつあった大英帝国がイングランド銀行を扱ったやり方ではないか。

そして当時の基軸通貨ポンドは暴落した。何度も言うが、基軸通貨が暴落した。基軸通貨は暴落するのである。ドルが永遠に強いままだと思っている人は単に歴史を知らないに過ぎない。特に超長期投資の人がドルの永続性を信じているのは冗談か何かだろうと思う。

南海泡沫事件: バブル経済の語源となった近世イギリスの株式バブルを振り返る
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか

コロナ危機を経て、世界経済は確実に終わりに近づいている。それに気づいている人がどれだけいるだろうか。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38689
2:777 :

2023/08/08 (Tue) 01:21:54

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198

何故日銀はインフレに応じて金利を上げないのか?
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14052708

大西つねきがやろうとしていること(第49回衆議院選挙に向けて)
https://www.youtube.com/watch?v=Z0aesmYcl0U

「大西つねきはMMT派ではない」大西つねきのパイレーツラジオ2.0(Live配信2023/04/10)
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14108096

大西つねきの世界
http://www.asyura2.com/21/reki7/msg/162.html

シルビオ・ゲゼルの世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/922.html

ミヒャエル・エンデの世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/846.html

大西つねき : 資本主義がダメな理由
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/766.html

大西つねき : 資本主義の仕組みは既に破綻している
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/658.html

「銀行が潰れる理由」大西つねきのパイレーツラジオ2.0(Live配信2023/03/20)
https://www.youtube.com/watch?v=9r5yYTN9yoY

大西つねき : MMTは詭弁、赤字国債大量発行は貧富の差を拡大し階級社会を完成させる
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/711.html

大西つねき : 政府通貨の疑問に答える
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/764.html

大西つねき :日本一まともな年金の話
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/712.html

大西つねき :正しいベーシックインカム
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/765.html

大西つねき : 日本の戦後について
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/767.html

大西つねきが三橋貴明の間違いを正確に指摘しています。政府がいくら財政出動しても絶対にデフレから脱却できません。
http://www.asyura2.com/21/reki6/msg/135.html

れいわ新選組 大西つねき
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/793.html

政府紙幣発行政策の誤解 経済コラムマガジン
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1106.html

政府紙幣 _ アメリカで1兆ドル硬貨案が問題に
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14083831
3:777 :

2023/08/09 (Wed) 16:53:24

ドイツの中央銀行、資金不足で政府の口座への利払い停止を決定
2023年8月8日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38743

Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が中央銀行の債務超過について警鐘を鳴らしたそばからこれである。ドイツの中央銀行であるドイツ連邦銀行は、ドイツ政府が自行に保有する預金への利払いを10月以降停止するとの決定を発表した。中央銀行の損失縮小が目的と推測される。

中央銀行の損失拡大

変な話だが、中央銀行にはお金がない。インフレ政策でインフレが起こってしまったために、世界中で利上げによって金利が上がったからである。

世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
何故中央銀行の利上げで中央銀行が損失を被るのか。まず第一の理由は、世界で多くの中央銀行が量的緩和によって大量の証券を保有しているが、その保有証券の価格が自分の利上げによって下がっているからである。

シリコンバレー銀行は保有国債の価格下落が一因で破綻した。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
だが多くの中央銀行も大量の国債を保有しており、そして自分の利下げによって国債の価格は下がっている。それが中央銀行の含み損を生んでいる。

もう1つの理由は、中央銀行内の口座に対する利払いが利上げによって増えたからである。今回のドイツ連邦銀行が食い止めたがっているのは、こちらの損失の方である。

そもそもドイツ連邦銀行の損失は以前から市場で話題になっていた。

レイ・ダリオ氏は次のように述べている。

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行の損失に対する政府の資金注入は始まっている
ドイツは今や中央銀行の損失と債務超過を、政府の補填という伝統的な方法で解決すべきかどうかを議論している。

6月には、ドイツ連邦銀行が保有する債券の価格下落によって政府による損失補填が必要になる可能性についてFinancial Timesが報じ、ドイツ連邦銀行が否定する騒ぎとなっていた。

ドイツ連邦銀行はそれを否定はしたものの、今回の利払い停止で実質的にそれを認めたようなものである。

ドイツ連邦銀行の利払い停止

政府は中央銀行内に口座を持っている。それが口座であるからには通常金利が支払われる。このドイツ連邦銀行の事例ではその金利は現在3.65%となっているが、これが0%になるということである。

現状では中央銀行が政府に対して払っている利払いを停止するのだから、実質的には政府から中央銀行への資本移転が行われたも同然である。

だが結局、赤字だらけの政府の資金源は中央銀行の紙幣印刷なのだから、政府と中央銀行の間のやり取りに何の意味があるのかと思った読者がいたとすれば、それは正しい。

これが例えばドイツ連邦銀行が市中銀行への利払いを停止するとなれば大問題である。今回それがそれほどには問題にならないのは、実質的に政府と中央銀行が同じようなものだからである。

利払い停止の金融市場への影響

ではこの利払い停止は意味のないニュースなのか? それがそうでもないのが金融市場の難しいところである。

何故かと言えば、この利払い停止のニュースでドイツ国債の金利が下がったからである。

7月末時点でこの政府の口座にはおよそ540億ユーロの預金があったが、この預金への利払いが停止された場合、この口座にあった資金は金利を求めて国債市場へ向かうだろう。国債には金利が付くからである。

国債市場に資金が流れ込むことを予想した債券市場は、金利低下で反応したのである。

つまり、中央銀行から政府に対する資金移転という一見意味のなさそうな動きが、金融市場に対しては緩和として作用したのである。

よく考えれば当たり前のことである。預金口座の金利がゼロになったことで資金が国債や他の証券にシフトするというのは、通常の利下げや量的緩和の仕組みと同じである。そもそも3.65%あった金利が0%に下げられたのだから、それは利下げである。

結論

ヨーロッパはまだインフレを抑えられていない。そもそもユーロ圏は様々な国があり、ある国のインフレを抑えようとすれば別の国には過度な引き締めとなってしまうという共通通貨の致命的な問題がある。

筆者の予想では、ユーロ圏はインフレ問題を解決できない。

ユーロ圏内のインフレ率乖離でユーロ危機再発を予想、一部加盟国はハイパーインフレへ
今回の動きが予期せぬ緩和になったことは、ユーロ圏のインフレ抑制にとってマイナスである。

一方で、中央銀行の損失によって政府にお金が無くなれば、財政赤字は拡大し国債が発行されることになる。そうなれば逆に国債の金利上昇による不況が懸念される状況になる。

ダリオ氏が指摘した中央銀行の債務超過の問題は、過度な緩和にも過度な引き締めにもなり得る、今後5年ほどの世界経済にとってパンドラの箱となる可能性がある。

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行の損失に対する政府の資金注入は始まっている


特に危機が起きていない今の状態でも不測の事態を引き起こしているこの問題は、コロナ後の現金給付が物価高騰をもたらした以上の問題を次の経済危機において引き起こす可能性がある。中央銀行の動きに今後も注目したい。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38743
4:777 :

2023/10/01 (Sun) 11:08:58

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行でもインフレで破綻する可能性
2023年9月30日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40262

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の自社の動画配信におけるインタビューである。今回はインフレと中央銀行について語っている部分を紹介する。

インフレと銀行と中央銀行

インフレで銀行が破綻した。シリコンバレー銀行などのアメリカの銀行は、インフレによる金利高騰で倒産に追い込まれた。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
金利高騰で銀行が潰れた1つの理由は、保有する国債価格の下落である。金利上昇は債券にとって価格下落を意味するため、金利が上がれば債券は下落する。

銀行は預金者からお金を預かってその金で国債を買う。その国債の価格が下落し銀行が損失を被ったわけだが、ここで読者は気付くはずである。国債を大量に保有しているのは、普通の銀行だけではない。

ダリオ氏は次のように語っている。

中央銀行は皆、保有債券に大きな損失を抱えている。そしてそれがどのように処理されるかによって、財政上の問題が発生する。

中央銀行は、日本などの多くの先進国では国債の最大の保有者となっている。そして金利上昇によりその国債価格が下落するときに含み損が発生する。

中央銀行の損失は通常政府によって補填されなければならない。含み損を損失とみなすかどうかは財政というよりは法律の問題だが、例えば国債を売ることになれば含み損が確定損になり、また金利高騰で中央銀行が被る損失は債券価格下落だけではない。

金利上昇のもう1つの問題

アメリカで銀行危機が起こった原因はもう1つあった。銀行は預金者から預金を預かって国債を買っている。金利上昇で国債価格が下落した一方で、預金者には高い金利を払わなければならなかった。

つまり、金利上昇が銀行にとって2つの意味で打撃となったのである。

そして中央銀行といえどもお金を預かる業務を行なっている。預金者は市中銀行である。

だから金利、特に短期金利が上がれば、中央銀行は銀行に高い金利を払わなければならなくなる。銀行が苦しんでいる二重の問題が中央銀行にもそのまま襲いかかるわけである。

しかも、金利の支払いは、含み損のように会計上の問題ではない。金利を支払うためにはお金を何処からか持って来なければならない。そして実際にその問題に陥っている国が既に存在する。ダリオ氏はこう述べている。

例えばイギリスでは、イングランド銀行がGDPの2%に相当する損失を補填しなければならなかったので政府に補填を頼んだが、政府はお金を借りなければ補填できない。

だが政府の財政は中央銀行の紙幣印刷でもっているのではなかったか。中央銀行が政府の足を支え、その政府が中央銀行の足を支えることで空中浮遊をする世界が実現しつつある。オウム真理教か。

そしてドイツも同じ問題に直面していることは、以下の記事で報じておいた。ドイツでは中央銀行の財政問題で実際に利払いが停止されている。

ドイツの中央銀行、資金不足で政府の口座への利払い停止を決定
ダリオ氏は次のように纏めている。

だから、この状況における古典的な結末は、歴史上いつでも起こってきたように、中央銀行自身が財政上の困難に陥るということである。

だが読者はこう思うだろう。中央銀行には紙幣を印刷して利払いを行なうという選択肢もあるのではないか。

その通りである。だが紙幣印刷は要するに量的緩和である。そして今、中央銀行はインフレが起こったことによって量的緩和の撤回と、その逆回しである量的引き締めを強いられている。そうしなければ、インフレが収まらないからである。

その状況下で利払いのために中央銀行が紙幣印刷を強いられるようなことになればどうなるか? 物価上昇はもはや止まらなくなるだろう。

結論

インフレを良いものだと何の根拠もなく主張したアベノミクス以来のリフレ論者は、まだ絶滅していないのかどうかは知らないが、それでも中央銀行が破綻することなど有り得ないと考えている。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
しかしもはやそれさえも間違っている。ダリオ氏はこう述べている。

われわれは中央銀行の財政が問題になるわけがないと思っているが、それは間違いだ。損失が発生すれば何処からか補填しなければならない。そして中央銀行は更にお金を印刷する必要に迫られるが、それが更に問題を悪化させる。

そしてダリオ氏によれば、インフレと現金給付の時代となった現代、歴史上何度も起こってきた中央銀行の破綻という問題が近づきつつある。

ダリオ氏はこう説明している。

注意して見なければならないのは、中央銀行が再び量的緩和を再開する時だろう。 それはレッドフラグだ。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40262
5:777 :

2023/10/16 (Mon) 11:16:39

チューダー・ジョーンズ氏: 大統領選挙のアメリカ経済への影響
2023年10月15日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40639

引き続き、CNBCによるポール・チューダー・ジョーンズ氏のインタビューである。今回は来年のアメリカ大統領選挙と米国株およびインフレについて語っている部分を紹介したい。

米国株と政府債務

前回の記事では、ジョーンズ氏は今米国株に投資するのは難しいと語った。その理由は、莫大な国債の発行残高に対する利払いが金利上昇によって急増しており、その支払いのためにこれまで株価を支えてきた財政支出が不可能になるからである。

チューダー・ジョーンズ氏: 今は米国株に投資をするのが非常に困難
ジョーンズ氏はこう語っていた。

このままでは、 あなたたちが支払う税金の恐らく20%近くがただ国債の利払いのために消えてしまうだろう。

GDPの100%を超える政府債務に対する金利が、ほとんどゼロに近かった状態から5%まで上がろうというのだから、それがどれだけの利払い増加になるのかはすぐに想像できる。

それがジョーンズ氏が米国株に弱気な理由である。そしてだからこそ彼はこう続ける。

だから政府債務は来年の大統領選挙の主な論点になるべきだ。

大統領選挙と政府債務

しかし来年の大統領選挙と、政府債務の問題について少し考えてほしい。筆者の言いたいことが、分かった人はもう分かったのではないか。大統領選挙の結果にはどういう可能性があり、その結果政府債務はどうなるだろうか。

ジョーンズ氏は半笑いで次のように言う。

だが、問題なのは、大統領としてわれわれが選ぶ選択肢が、まさにわれわれをこの状況に追い込んだ張本人2人だということだ。

債券市場は予備選挙が近づくほどにそれを織り込んでゆくと思う。

高金利はインフレ抑制のための措置であり、ではインフレを引き起こしたのが誰かといえば、まさにバイデン大統領とトランプ前大統領である。

彼らの行った莫大な現金給付がインフレを引き起こした。2022年のウクライナ情勢が2021年から始まっていたインフレの原因であるというマスコミによる完全なデマを信じている人でも、現金給付によって急増した可処分所得のグラフをインフレ率と並べて表示すれば、誰がインフレを引き起こしたのか一目で分かるだろう。


2020年初頭の所得急増と、2020年末の比較的小幅な所得増加がトランプ政権によるもの、その真横の2021年初頭の大幅な所得増加がバイデン政権によるものである。

結論

だからジョーンズ氏はこう述べる。

アインシュタインはこう言った。問題を生み出した人物は、それを解決する人物ではない。

だがこのまま行くと、バイデン氏とトランプ氏が両党の候補者になりそうだ。

それは金融市場にとってどういう意味を持つのか。大方の予想通り2024年に景気後退になれば、中央銀行のトップであるパウエル議長がどう対応するかについては複数の専門家が予想を出している。

サマーズ氏: パウエル議長のインフレ退治が本気かどうか疑う理由
ドラッケンミラー氏: 経済が強い時に引き締めを続けるのは簡単だが
だが投資家が考えなければならないことがもう1つある。来年の大統領選挙の結果、財政政策がどうなるかである。

そしてそれは、景気後退後のパウエル氏の対応よりもむしろ読みやすいのではないか。

ドラッケンミラー氏、アメリカ経済のハードランディングとインフレ第2波を予想
景気後退になれば様々なものが下落するだろうが、その後の財政・金融政策がどうなるかによって、その時に底値買いすべきものが決まる。楽しみに待ちたいものである。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40639
6:777 :

2023/11/11 (Sat) 06:17:35

ガンドラック氏: 米国は既に債務超過に陥りかけている
2023年11月10日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/41463#more-41463

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回はアメリカの負債と資産を比較している箇所を紹介したい。

アメリカの負債と資産

アメリカの政府債務は元々高かったが、コロナ後の現金給付などの支出により更に増加した。政府債務を増やして得られたものが物価高騰なのだから、インフレ主義者のやることは分からない。よほどインフレが好きなのだろう。

世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
結果、現金給付によってアメリカ経済には莫大な政府債務とインフレが残った。だが、莫大な政府債務についてはよく言及されるが、資産の方はあまり注目されない。

資産がたくさんあれば、負債が多くとも問題ないはずである。アメリカ政府には負債しかないが、家計や企業は資産を持っている。アメリカは金持ちが多いから、きっと資産も多いことだろう。

実際にアメリカの負債と資産を比べてみるとどうなるのか? ガンドラック氏は次のように言っている。

usdebtclock.orgによれば、アメリカには211兆ドルの負債があり、それと同時に219兆ドルの企業資産と家計資産、個人事業者などの資産がある。

つまり、アメリカの負債はアメリカのすべての資産とほとんど等しいということになる。

債務は増加しており、ほとんど資産の額を上回りかけている。ほとんど債務超過である。最近債務超過になった企業はと言えば、恒大集団が挙げられるだろうか。

恒大集団の倒産危機と中国不動産バブル崩壊懸念まとめ
ガンドラック氏はこう続けている。

もし負債が資産より大きくなれば、いわばヘッジファンドが追証を要求されるような状況だ。つまり、すべての資産を時価で売り払っても負債すべてをほとんど返しきれない。

投資家は資産を上回るような赤字を出した時に追加で資金を要求される。冗談のようだが、これが世界トップの経済大国アメリカが陥りかけている状況である。あるいは恒大集団に近づいているとも言える。どちらにしても不名誉極まりない。

だがそれは事実である。アメリカはもうすぐ資産をすべて売り払っても負債を返しきれなくなる。そしてこれからも負債が増えるのであれば、その状況は悪化するばかりである。

更に言えば、負債は政府のもの、資産は民間のものなので、資産を売り払って借金を返すというのは、政府が民間の資産をすべて徴収して自分の借金返済に当てるということである。そしてそれでも負債の全額は返せない状況まであと一歩である。

債務超過の問題に陥るアメリカ

アメリカは債務超過の瀬戸際にある。そうなれば、アメリカは物理的にもはや借金を返すことができない。つまり、アメリカ政府には倒産リスクがある。最近の金利高騰を単に国債の需給の問題と言ってもいられなくなったのではないか。

チューダー・ジョーンズ氏: 米国債の大量発行で金利はまだまだ上がる
この問題は金利上昇による利払い増加によって悪化を続けている。それが前回の記事のテーマである。

ガンドラック氏: 米国の高金利が絶対に持続不可能である理由
だからガンドラック氏はこう言う。

金利が下がらなければならない。あるいは財政赤字が下がらなければならない。だがFedが「金利をより長くより高く」と言っている間は、そのどちらも起こらない。しかもそれに加えてアメリカの出費を呼ぶ戦争が起こっている。

結局、債務超過に陥った国家が借金の問題を解決する方法は、紙幣印刷しかない。だが紙幣印刷は通貨の価値を暴落させる。だが紙幣印刷で国債を買い支えないと国債が暴落する。レイ・ダリオ氏が日本に関して的中させた予想が今度はアメリカを襲っている。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
あるいは、ガンドラック氏は以前、政府債務を何とかするための最後の手段について語っていた。

ガンドラック氏、現金給付の次の緩和政策を語る
日本では、日本には資産があるので政府債務は問題ないと誰かが言っていた。だがアメリカと同じく政府にはそれだけの資産がないので、それは国民の資産を徴収して政府の借金を返すから問題ないという意味である。そしてそれはもう行われているではないか。

経済に関して他人の意見を鵜呑みにする人は本当に酷い目に遭う。自分の頭で考えることである。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/41463#more-41463
7:777 :

2023/12/05 (Tue) 13:54:07

レイ・ダリオ氏: 国債の暴落トレンドが始まりつつある
2023年12月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がFortune Magazineのインタビューで国債と金利の見通しについて語っている。

リーマンショック後の金融緩和

ダリオ氏はコロナ前までの金融政策を振り返っている。アメリカではリーマンショック時にゼロ金利と量的緩和が始まった。ダリオ氏は次のように述べている。

金融市場はこれまで金利がゼロになるような、資金の溢れている馬鹿げた状況になっていた。

この流れのなかでGDP比の負債は増加した。

政府が中央銀行に命じて金利をゼロにしたかったのは、国の借金を増やして支出を増やしたかったからだ。

政治家の商売は税金を集めてそれを票田に流し込むことで成り立っている。他人が正当に稼いだ金を無許可で徴収して自分の裁量で選んだ誰かにばら撒くことの本質はそこにしかない。

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから政治家は国の借金を増やすことを好んだ。国の借金は政治家が返すわけではないからである。そしてそのためにはゼロ金利が必要だった。国債に大きな金利が付いてしまえば、政府はばら撒くのではなく借金返済にお金を使わなければならなくなるからである。

国債の需要と供給

だがその低金利を実現するために中央銀行が買い支えをしなければならなかったということは、その低金利では普通の投資家は国債を買いたがらなかったということである。ダリオ氏はこう述べている。

債券の需要と供給がマッチしなかったので、中央銀行が債券を買い支えた。債券に十分な買い手がいなかったということだ。だから中央銀行が来て買い支えた。そしてそれは自由な市場を捻じ曲げながら金利を低位に抑え続けた。

それでも米国債を買ったのは、国債を買わなければならなかった中央銀行や銀行と、ダリオ氏はあと1つ買い手のカテゴリーを挙げている。

だから今、中央銀行は大量の米国債を抱えている。市中の銀行も大量の米国債を抱えている。日本人も大量の米国債を抱えている。

そして今やどうなったか? コロナ後の現金給付によってインフレが起こり、インフレ抑制のために金利を上げなければならなくなり、更には量的緩和で国債を買い入れていた中央銀行が量的引き締めによって保有量をむしろ減らすようになった。

元々中央銀行の他にはほとんど買い手が見つからなかった国債市場で、アメリカ政府はむしろ国債発行を増やしているにもかかわらず、一番大きな買い手だった中央銀行が保有量を減らしている。

それが国債市場の状況である。それで国債価格が下落し、金利が上がっている。

チューダー・ジョーンズ氏: 米国債の大量発行で金利はまだまだ上がる
そしていまだ残っている買い手、つまり銀行と日本人はどうなっているか? ダリオ氏はこう言っている。

そして彼らは米国債の値下がりで損失を出している。

日本人とドル

だが米国債を保有している日本人にとっては、これまでドル高が国債下落の損失を補填してくれていたかもしれない。だが来年予想されている景気後退が来ればドルは下がることになる。

ガンドラック氏: アメリカの景気後退でドルは暴落する
このタイミングで筆者の周りの日本人でドル預金の話をする人が増えてきている。彼らはいつもナイスタイミングである。彼らがNISAの話をし始めた時がまさに米国株の天井だったように。

ジム・ロジャーズ氏: 他人の意見で投資をするとほぼ間違いなく失敗する
それでも米国債は米国株よりはマシな投資なのだろうが。

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国債下落のスパイラル

さて、国債に話を戻そう。デフレと低金利の時代が、インフレと高金利の時代に置き換わった。低金利の時代に増やし続けた莫大な政府債務に大きな金利が付き、アメリカ政府も日本政府もそれを支払わなければならなくなっている。

高い金利が大きな利払いを呼び、政府の利払いは国債発行で賄われるだろうから、金利が高くなるほど国債発行が増えてゆく。そして更に金利が高くなる。

ダリオ氏によれば、そのサイクルに入った時の典型的な兆候が最近の世界経済で見られるという。ダリオ氏は次のように述べている。

典型的なサインは、中央銀行が大きな損失を計上することだ。

最近、日本でも日銀の損失が報じられた。ドイツやイギリスでは中央銀行の損失をどう補填するかが問題となっている。

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人々は紙幣を刷ることのできる中央銀行は破綻しないと思っているが、歴史的に見ればそうではないことをダリオ氏は以下の記事で説明していた。

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行でもインフレで破綻する可能性
結論

国債の利払い増加と高金利の負のスパイラルは一度突入すると止まらなくなり、どんどん加速してゆく。

ダリオ氏はこう述べている。

今、経済はそういう加速に非常に近い状況にある。そうなれば状況は悪化してゆく。

アメリカでは実際に金利上昇によって政府債務の問題が大きく議論されるようになっている。

だが日本も似た立場にある。むしろ政府債務は日本の方が大きいので、日本の方が大きな問題なのである。

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ドラッケンミラー氏、 日本のインフレで日本国債を空売り (2023/5/2)

筆者やスタンレー・ドラッケンミラー氏など、日本国債の下落トレンドに賭けている投資家のポジションは今のところ成功している。これからどうなるだろうか。楽しみに待ちたい。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178

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