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地中海西部の島における青銅器時代の麻薬使用

1：保守や右翼には馬鹿しかいない :
2023/04/20 (Thu) 20:10:43: 雑記帳
2023年04月20日
地中海西部の島における青銅器時代の薬物使用
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_20.html

　地中海西部の島における青銅器時代の薬物使用を報告した研究（Guerra-Doce et al., 2023）が公表されました。これまでに発表された先史時代のヨーロッパにおける薬物使用を示す証拠は、青銅器時代の容器から検出されたアヘンアルカロイド、儀式的な状況での薬用植物の残骸の発見、芸術的描写における薬用植物の登場など、間接証拠に基づいていました。本論文は、バレアレス諸島のメノルカ島のエス・カリッチ（Es Càrritx）埋葬および祭儀洞窟で発見されたヒトの毛髪から、薬物使用の証拠を提示します。

　地中海西部沿岸では、先史時代後期のヒトの毛髪はきわめて稀です。3600年前頃の後期青銅器時代に人類が初めて移住したメノルカ島のエス・カリット洞窟では、考古学的発掘により、人類が初めて移住したとなる、風変わりな葬儀と関連する毛髪の房が発見されました。エス・カリット洞窟には、2800年前頃まで葬儀の場所として使用されていた部屋がありました。先行研究で、この部屋に約210個体が埋葬された、と示唆されています。しかし、特定の遺体の毛髪だけが赤く染められ、同心円で装飾された木製容器や動物の角でできた容器に入れられ、洞窟のさらに奥にある別の密封された部屋に移されていました。この毛髪の房は3000年前頃と推定されました。エス・カリット洞窟この発見は、後期青銅器時代の人々による薬草使用の可能性を調べる機会となりました。

　本論文は、超高性能液体色層分析・高分解能質量分析計（Ultra-High-Performance Liquid Chromatography-High Resolution Mass Spectrometry略して、UHPLC-HRMS）を用いて、こうした毛髪標本の化学的分析結果を示します。その結果、エフェドリンとアトロピンとスコポラミンというアルカロイドが検出され、その濃度が推定されました。アトロピンとスコポラミンはナス科の有毒植物に自然に含まれており、譫妄や幻覚や知覚変容を誘発することがあります。エフェドリンは低木や松の特定種に由来する刺激剤で、興奮や覚醒や身体活動を高める可能性があります。

　これらの結果は、紀元前千年紀初頭までに、地中海西部のメノルカ島の地域共同体がさまざまなアルカロイドのある植物を使用していた、と確証します。こうしたアルカロイドは、マンドレイク（Mandragora autumnalis）、ヒヨスアルブス（Hyoscyamus albus）、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ（Datura stramonium）などのナス科の有毒植物と、ジョイントパイン（Ephedra fragilis）を摂取していた結果ではないか、と推測されています。また、呪術者（シャーマン）がこれらの薬用植物を儀式の一部として使用した可能性も指摘されています。木製容器に描かれた同心円は、目を描いた可能性があり、薬物により変容した意識状態に関連した心眼の比喩的表現だったかもしれません。この研究は、2800年前頃に文化が変容したので、こうした古代の伝統を保存するために、木製容器が洞窟内の一室に封印されたのではないか、と推測しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。

考古学：青銅器時代の儀式での薬物使用を示す証拠

　スペインのメノルカ島の埋葬地で見つかったヒトの毛髪の房の分析により、古代の人類文明において植物由来の幻覚剤が使用されていたことが示された。この知見は、古代のヨーロッパにおける薬物使用を示す初めての直接証拠であり、薬物が儀式的式典の一環として使用されていた可能性がある。この研究について報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。

　これまでに発表された先史時代のヨーロッパにおける薬物使用を示す証拠は、青銅器時代の容器から検出されたアヘンアルカロイド、儀式的な状況での薬用植物の残骸の発見、芸術的描写における薬用植物の登場などの間接証拠に基づいていた。

　今回、Elisa Guerra-Doceたちは、約3600年前に人類が初めて移住したメノルカ島のEs Càrritx洞窟で見つかった毛髪の房を調べた。この洞窟には、約2800年前まで葬儀の場所として使用されていた部屋があった。これまでの研究で、この部屋に約210人が埋葬されたことが示唆されている。ところが、特定の遺体の髪の毛だけが赤く染められ、同心円で装飾された木製容器や動物の角でできた容器に入れられ、洞窟のさらに奥にある別の密封された部屋に移されていた。この毛髪の房は約3000年前のものとされた。

　Guerra-Doceたちは、超高速液体クロマトグラフィー・質量分析法を用いて、アルカロイド（アトロピン、スコポラミン、エフェドリン）が含まれているかどうかを調べた。アトロピンとスコポラミンは、ナス科の有毒植物に自然に含まれており、せん妄、幻覚や知覚変容を誘発することがある。エフェドリンは、低木や松の特定種に由来する刺激剤であり、興奮、覚醒、身体活動を高める可能性がある。この分析の結果、毛髪の複製試料（3点）からスコポラミン、エフェドリン、アトロピンが検出された。

　Guerra-Doceたちは、これらのアルカロイドが検出されたのは、当時の人々がマンドレイク（Mandragora autumnalis）、ヒヨスアルブス（Hyoscyamus albus）、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ（Datura stramonium）などのナス科の有毒植物とジョイントパイン（Ephedra fragilis）を摂取していた結果である可能性があるという見方を示し、これらの薬用植物はシャーマンが行う儀式の一部として使用された可能性があると考えている。木製容器に描かれた同心円は、目を描いたものである可能性があり、薬物によって変容した意識状態に関連した心眼の比喩的表現だったのかもしれない。Guerra-Doceたちは、約2800年前に文化が変化したため、こうした古代の伝統を保存するために、木製容器が洞窟内の一室に封印されたのではないかと推測している。

参考文献：
Guerra-Doce E. et al.(2023): Direct evidence of the use of multiple drugs in Bronze Age Menorca (Western Mediterranean) from human hair analysis. Scientific Reports, 13, 4782.
https://doi.org/10.1038/s41598-023-31064-2

https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_20.html