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シリアに対する侵略戦争

1:777 :

2023/03/26 (Sun) 08:12:57

2023.03.26XML
シリアで不法占領を続けるアメリカ軍の基地に対する攻撃が続いている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202303260000/

 シリア北部にあるアメリカ軍の基地が3月23日に無人機で攻撃され、ひとりが死亡したと伝えられている。ジョー・バイデン米大統領は報復攻撃をロイド・オースチン国防長官に命令、アメリカ中央軍はシリア東部の施設を空爆したが、それに対する報復で24日にはアル・オマール近くにある別の基地がロケット攻撃を受けた。イランのネットワーク局アル・アラムによると、25日には20機以上のロケットでふたつのアメリカ軍基地が攻撃されたという。

 ジョージ・W・ブッシュ米大統領はネオコンの戦略に基づき、「大量破壊兵器」に関する偽情報を流して環境作りをした上でアメリカ主導軍にイラクを先制攻撃させ、サダム・フセイン体制を破壊した。2003年3月20日早朝のことだ。

 しかし、イラクに親イスラエル政権を築くことに失敗、アメリカ軍による占領は今も続いている。この軍事作戦で殺されたイラク人は100万人程度とも言われている。

 例えば、アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2003年の開戦から06年7月までに約65万人のイラク人が殺され、イギリスのORBによると、07年夏までに94万6000名から112万人が死亡、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたと推測している。

 正規軍の投入は機能しないと考えたのか、バラク・オバマ米大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団を使った体制転覆作戦を始動させる。そして始まるのが「アラブの春」だ。その流れの中で​アメリカ、イギリス、フランスを含む国々がリビアやシリアに対する軍事侵略を始めた​。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めたもので、​「アル・カイダ」の仕組み​はその時に作られた。


 リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ本人はその際に惨殺された。その際、アル・カイダ系武装集団とNATO軍の連携が明らかになり、​反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられている​。

 アル・カイダはCIAが訓練した戦闘員の登録リストで、戦闘員の募集活動をしていたのがオサマ・ビン・ラディンだと言われている。一般的にアル・カイダのリーダーだと言われ、イコンとして扱われていた人物だ。このビン・ラディンは2011年5月、アメリカ海軍の特殊部隊によって殺害されたとされている。イコンを消したとも言えるだろう。

 2012年からオバマ政権はシリア侵略に集中する。リビアから戦闘員や武器をNATO軍がシリアへ運び、軍事支援を強化するのだが、そうした行為を正当化するためにシリア政府を悪魔化するための偽情報を流した。

 例えば、シリア北部ホムスで2012年5月に住民が虐殺されると、西側の政府やメディアは政府軍が実行したと宣伝した。イギリスのBBCはシリアで殺された子どもの遺体だとする写真を掲載しているが、この写真は2003年3月にイラクで撮影されたもの。オーストリアのメディアは写真を改竄し、背景を普通の街中でなく廃墟に変えて掲載していた。

 こうした西側有力メディアの偽報道をローマ教皇庁の通信社が伝えている。例えば、メルキト東方典礼カトリック教会の修道院長を務めていたフィリップ・トルニョル・クロはホムスでの住民虐殺事件を調べるために現地へ入って調査、西側の宣伝が嘘だという結論に達し、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている」と2012年6月に報告している。

 西側の有力メディアは当初、現地の情報源としてシリア系イギリス人のダニー・デイエムなる人物を使っていた。ところがデイエムが撮影スタッフと演出の打ち合わせをしている場面が2013年3月にインターネット上へ流出、中継はフィクションだということが明らかになる。

 2012年8月にはアメリカ軍の情報機関​DIAが反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだと指摘されていた)であり、その中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だと指摘​、アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)の名前も報告書の中に出している。オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないということだ。

 オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していたが、これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になった。

 その2012年8月にオバマ政権は軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めた。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。シリア軍が予想外に強く、アメリカ軍、あるいはNATO軍が介入しなければならないと判断したようだ。

 2012年12月になると、ヒラリー・クリントン国務長官がシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールにシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述があるとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)

 そして2013年3月にアレッポで爆発があり、26名が死亡したのだが、そのときに化学兵器が使われたという話が流れる。シリア政府は侵略軍であるジハード傭兵が使用したとして国際的な調査を要請するが、イギリス、フランス、イスラエル、そしてアメリカは政府軍が使ったという宣伝を展開する。

 しかし、​攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということをイスラエルのハーレツ紙が指摘​、​国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言​している。

 2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧される。ダーイッシュの登場だ。モスル制圧の際にトヨタ製小型トラック、ハイラックスの新車を連ねたパレードを行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられたのだが、こうした戦闘集団の動きをアメリカの軍や情報機関は偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで知っていたはず。そうしたパレードは格好の攻撃目標だが、アメリカ軍は動かなかった。

 アメリカのチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、クリントン国務長官らと対立していたが、ダーイッシュは残酷さをアピール、アメリカ/NATO軍の介入を誘う。

 オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとする報告を出したDIAの局長、マイケル・フリンは2014年8月に退役を強いられていたが、それだけでなくヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任を拒否されている。オバマ大統領は戦争体制を整えた。そこでロシアはシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。

 そこでアメリカはクルドと手を組むのだが、これによってアメリカとトルコの関係が悪化する。現在、アメリカ軍はシリア領内に900名程度の部隊を侵攻させ、10カ所とも20カ所とも言われる数の軍事基地をシリアに建設、不法占領を続けている。

 そうした基地のひとつであるアル・タンフではアメリカとイギリスの特殊部隊が反シリア政府軍を訓練、2018年9月にはアメリカ軍が軍事演習を実施、最近ではウクライナでロシア軍と戦わせるために戦闘員を訓練しているとも言われている。

 シリア領内のアメリカ軍は侵略者以外の何ものでもない。アメリカ軍に対する攻撃はシリア人の権利である。


https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202303260000/
2:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/26 (Sun) 08:14:03

アメリカ人による極悪非道の世界侵略の歴史
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007480

意図的な世論誘導報道で悪魔呼ばわりされているシリア アサド大統領
http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/816.html

シリアに対する侵略戦争
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/331.html

命を賭して悪の帝国と闘ったサダム・フセイン
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007184

ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007187

アメリカ軍のF-15が2019年3月18日にシリア東部にあるデリゾールで女性や子どもを含む約70名を無差別殺戮していた
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1288.html

カザフスタンのクーデターも背景はウクライナやシリアと同じで、西側の私的権力
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1431.html

イラン革命
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14094576

米国はイランで「カラー革命」を目論んでいる
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14049182
3:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/22 (Mon) 10:39:19

2023.05.22XML
急速にまとまりつつある中東はアメリカ離れも加速させている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305220000/

 アラブ連盟の首脳会議が5月19日にサウジアラビアのジッダで開かれた。22カ国が参加、ウクライナもゲストとして参加しているのだが、最も注目されたのはシリアの復帰だ。

 シリアが参加できなくなったのは2011年。中東の完全支配を目論んでいたアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟のほか、フランスとイギリスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、オスマントルコの復活を目論んでいたと言われるトルコなどがムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使い、この年の3月からシリアに対する軍事侵略を始めたのだ。

 当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ。彼も大多数のアメリカ大統領と同じように、国際問題についてはネオコンの戦略に従っていた。ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン政権を倒して新イスラエル体制を築き、シリアとイランを分断しようとしていた。

 当時、アメリカの支配層内にはフセイン政権をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と位置付ける勢力が存在、ネオコンと対立する。その勢力にはジョージ・H・W・ブッシュも含まれていた。この当時、イラン・コントラ事件やイラクゲート事件が浮上したが、その理由は支配層内部の対立にあった。ネオコンが実権を握ったのは2001年9月11日以降である。

 ジョージ・H・W・ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュはネオコンに担がれていた人物で、2003年3月にイラクを先制攻撃してフセイン政権を倒したが、新イスラエル体制を築くことには失敗した。

 そこでブッシュ・ジュニア政権は戦術を変更する。フセインの残党を含むスンニ派の戦闘集団を編成し、手先として使い始めたのだ。​シーモア・ハーシュが2007年3月にニューヨーカー誌で書いた記事​によると、ブッシュ政権はイスラエルやサウジアラビアと手を組み、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを叩き潰そうと考えた。そこでアル・カイダ系の武装集団、あるいはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)が生み出されるわけである。

 これはズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めた戦術。2009年にアメリカ大統領となったオバマの師はそのブレジンスキーだ。オバマ政権は2011年3月からアル・カイダ系の武装集団を傭兵として使ってシリアに対する侵略戦争をはじめたのである。なお、その前月にはリビアに対しても同じように侵略戦争を開始した。

 オバマ政権は公然とアル・カイダ系武装集団を支援。それに対し、​マイケル・フリンが局長を務めていたDIA(国防情報局)は2012年8月、オバマ政権が支援している武装勢力の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告​していた。

 その警告が2014年にダーイッシュという形で現実になるとオバマ政権ないで対立が激しくなったようで、フリンは2014年8月に退役を強いられている。

 しかし、シリア軍は潰れない。そこでリビアと同じようにアメリカ/NATO軍を投入しようと考えたようで、2015年2月に国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させる。

 ヘーゲル国防長官やデンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、好戦派のヒラリー・クリントン国務長官らと対立していた。

 デンプシーが退任した数日後にロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させた。軍事介入した直後にロシア軍はカスピ海に浮かべた艦船から26基の巡航ミサイルを発射、全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。保有する兵器の優秀さを世界に示したのだ。

 ドナルド・トランプは大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍の2隻の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したものの、6割が無力化されてしまう。ロシア軍の防空システムはアメリカ軍より優秀だということだ。

 そのためか、2017年10月5日にサウジアラビアのサルマン・ビン・アブドル・アジズ国王はロシアを訪問、ロシアの防空システムS-400を含む兵器/武器の購入を持ちかけたようだ。これはアメリカ政府の圧力で実現しなかったが、これは始まりにすぎなかった。

 トランプ大統領は翌年、リベンジを図る。2018年4月にイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したのだ。ところが今度は7割が無力化されてしまう。前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったと言われている。

 シリアでの戦闘で世界はロシア軍の強さを認識したが、それはウクライナでの戦闘でも再確認されている。各国政府は西側有力メディアの宣伝に騙されない。

 今年3月10日、中国、サウジアラビア、イランは共同声明を発表、​中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交を正常化させ、それぞれ大使館を再開させることを明らかにした​。そしてシリアがアラブ連盟首脳会議へ復帰した。中東はひとつにまとまり、アメリカ離れを始めた。

 アメリカ/NATOがウクライナへ供給した武器弾薬の相当部分は闇市場を通じて中東へ流れていると言われている。イスラム世界がまとまらないよう戦乱を引き起こそうとしているのかもしれない。

 ウクライナにしろ中東にしろ東アジアにしろ、 アメリカは戦争を引き起こそうとしている。そのアメリカに従属している国が「平和国家」であるはずがない。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305220000/
4:777 :

2023/06/30 (Fri) 11:44:55

『ロシアとシリア』 著・青山弘之
2023年6月29日
https://www.chosyu-journal.jp/review/26975

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%A8%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%A2-%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E4%BE%B5%E6%94%BB%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%90%86-%E9%9D%92%E5%B1%B1-%E5%BC%98%E4%B9%8B/dp/4000026089


 ロシアのウクライナ侵攻後、「ウクライナは第二のシリア」という言葉が飛びかうようになった。欧米と日本の政府・メディアは、ウクライナ危機の経緯を顧みることなく、「ロシアは悪、ウクライナは正義」の図式で、ロシア軍による無辜の市民、とくに子どもや母親、病院への無差別攻撃、さらには生物・化学兵器、核攻撃、クラスター爆弾、白燐弾などの使用をためらわない残忍さを喧伝してきた。そして、ロシアのこうしたやり方は、シリアの内戦時とまったく同じだと吹聴している。



 東アラブ地域研究、シリア問題の専門家として知られる著者(東京外国語大学大学院教授)は、ロシアの侵攻を「暴挙」ととらえウクライナの惨状に胸を痛めつつ、こうした西側の一方的で排他的な宣伝こそがシリア内戦当時と酷似していると断じている。シリア内戦も、事実はより複雑で流動的であったにもかかわらず、「勧善懲悪と予定調和の物語」として語られた。「独裁者、独裁体制、拷問、弾圧、無差別攻撃、化学兵器、虐殺」といった紋切り型の言葉が、アサド大統領やシリア政府に浴びせられた。



 そして、アサド独裁政権の打倒をめざす反体制派を、か弱い幼子や女性、罪のない市民を守る「革命家」「自由の戦士」として美化する一方で、これと異なる情報や見解は「フェイク・ニュース」「プロパガンダ」と一蹴され、排除されていった。しかし、欧米諸国がおこなってきたシリア内戦での干渉こそ、ウソと誤認にまみれたものであった。シリアの「化学兵器使用」がねつ造であることが機密文書から発覚したように。



 また、欧米諸国が直接干渉したにもかかわらず、シリア内戦への西側メディアの迫り方は「中東の内部問題」としてなすがままにするなど冷淡を極めた。それは「ウクライナは可哀想だ」と感情移入をまじえた連日の過剰なウクライナ報道とはまったく対照的だった。ここで浮かび上がるのは「青い目をしたウクライナの人々が戦争で悲惨な目にあっている」というヨーロッパ、白人中心のレイシズムと二重基準である。



 事実、シリアでの諸外国の軍事的威嚇はそのほとんどが国際法にふれる違法行為であったが、西側諸国はそれを問題にしなかった。ウクライナ侵攻を前後したシリアで起こったさまざまな爆撃や住民虐殺についても報じないでいる。そして、シリア・中東の難民を煙たがり、無関心と抑圧で対応する一方で、ウクライナの難民には手厚く保護するという具合である。こうした二重基準への反発が、アジア、中東、アフリカ、中南米の多くの国々が西側のロシア制裁、ウクライナ支援になびかない重要な要因となっている。



 そのような制約のもとで、「今世紀最悪の人道的危機」といわれたにもかかわらず、シリア内戦の内実は覆い隠されてきたといえる。また、そのことがロシアのウクライナ侵攻についてありのままに見ることを妨げてきたことがわかる。著者はウクライナへの軍事支援やロシアへの制裁が「集団ヒステリー」のように進められてきたのは、あまり知らないシリアよりも身近に接するウクライナへの感情移入が容易であったこと、さらにシリアへの無知がそれを支えることになったと指摘する。



諸外国の干渉で重層的混乱 シリア内戦の経緯



 本書はシリアが古くから中国とヨーロッパを結ぶ東西交易路(シルクロード)の要衝にあり、多くの国から侵略を受けてきたこと、19世紀の「東方問題」からシオニズムによるイスラエルのゴラン高原占領、ロシア・ソ連との関係などを歴史的にたどっている。そこから、シリア内戦が2,011年の「アラブの春」と呼ばれる一連の政変の波及であったことを浮き彫りにしている。



 シリア内戦では、反体制派を支援する形で「人権」「テロとの戦い」を掲げた欧米諸国が干渉し、それに対抗するアサド政府の支援要請を受けて「主権尊重」「内政不干渉」を掲げたロシアとイランが加わった。本書では、さらにアルカイダ系やイスラム国などのテロ組織、外国の活動家が大挙して押しかけることで、重層的に混乱を極めていった事情をくわしく展開している。



 19世紀半ばのクリミア戦争の発端がシリアでの「聖地管理権問題」であったように、シリアとウクライナは歴史的にイギリス、フランス、アメリカ、そしてロシアの勢力争いや代理戦争の主戦場となってきた。イスラエルの建国をめぐる「パレスチナ問題」や「中東和平」も、西側は中東の内部問題のように扱っているが、欧米列強が引き起こした「力による現状変更」に起因している。



 著者は「ウクライナ侵攻が二国間の戦争というよりはむしろ代理戦争として推移しているという事実は、10年以上におよぶ紛争と混乱の末に、分断と占領を特徴とする“膠着という終わり”を迎えたシリアがたどった悲劇の再来を想起させる」とのべている。西側諸国がウクライナでの戦闘を和平に向けた交渉に向かわせず、意図的に長引かせているのは、「“燃えるがままにせよ”戦略」で火種を残したまま「分断と占領(駐留)という二重苦」を強いたシリアの前例を踏まえたものだという。



 欧米諸国と日本の為政者の言動が示すことはとどのつまり、ウクライナでの戦闘でウクライナの人命がどれだけ奪われ、国土が廃墟と化そうがかまわないというものだ。そのもとで、欧米諸国に直接的な被害が及ばないまま、ロシアを消耗させ弱体化できれば良いのである。



 著者は、ウクライナの「徹底抗戦」 を煽り破滅に追いやる狂乱的な風潮は、第二次大戦で日本を覆った「一億玉砕」の空気と酷似していると指摘している。その意味からも、アメリカと中国の狭間に位置する日本を「第二のウクライナ」にする策動がうごめく今、国民が肌身で体験した戦時の苦難と怒りを共有する意義を、本書からくみとることができる。


 (岩波書店発行、四六判・214ページ、2,000円+税)
https://www.chosyu-journal.jp/review/26975

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