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米国の長短金利差-1%の意味

1:777 :

2023/03/10 (Fri) 21:57:20

米国の長短金利差-1%の意味

債券市場はアメリカ経済のハードランディングを予想
2023年3月10日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34448

2023年の株式市場の動向については様々な専門家が様々な見通しを示している。

ジョージ・ソロス氏や、彼が設立したクォンタム・ファンドを長年率いていたスタンレー・ドラッケンミラー氏は、米国株を買い増しているようだ。

ジョージ・ソロス氏、米国株を大幅買い増し、株高を予想か
ドラッケンミラー氏も米国株買い増し、Amazon.comは全株売却
一方、リーマンショックを予想したジョン・ポールソン氏や去年末のインフレ率急落を予想したジェフリー・ガンドラック氏らは株価に弱気のようだ。

ポールソン氏の2023年株価予想: 倒産が急増し株価は下落する
ガンドラック氏: 年末年始の株価上昇は幻想だった
だがもう1人、意見を聞いていない重要人物がいる。債券市場である。

債券市場の景気見通し

個人投資家の多くには馴染みの薄い債券市場だが、Fed(連邦準備制度)の利上げが2022年の株価を下落させたように金利の水準が株価にとって非常に重要であるだけでなく、1ヶ月物から30年物の国債の金利を眺めるだけでもそれは投資家に多くのことを語ってくれる。

例えば以下は2年物国債の金利である。2年物国債の金利は基本的に今後2年間の政策金利の水準を織り込んで推移する。


現在の政策金利はおよそ4.5%であり、今後5.5%まで上がることが予想されている。

2年物国債の金利はインフレ全体の数字が急落したことから一時下がっていたが、サービスのインフレが止まっていないという最近のデータを受けて再び上昇している。

基本的に金利が上昇すれば株式市場は下落しているが、パニックになっている様子はなく、金利がこれだけ上がってもまだ持ちこたえていると言って良いだろう。

債券市場のソフトランディングに対する意見

金利上昇は大した問題にならないのだろうか? ソフトランディングは可能なのだろうか。こうした問題に対して、債券市場はかなり雄弁に語ってくれる。

例えば2年物国債を、より期間の長い10年物国債の金利と比べてみよう。10年物国債の金利(いわゆる長期金利)は次のように推移している。


2つのチャートを比べてみると、10年物国債の金利は2年物国債の金利ほど上がっていないことが分かる。

長短金利逆転の拡大

これは何を意味しているか。10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いたものを一般に長短金利差という。そして長短金利差は今後の景気見通しを占う上でよく用いられる指標である。

一般に長期金利が下がる場合、経済が弱まることを意味している。長期金利は理論的にはインフレ率と経済成長率を織り込んで推移する。経済が弱ければ一般に金利が低くなるからである。

だが一方で、今のように経済が弱くなってもインフレ退治のために金利を上げなければならない状況では、長期金利が高くても単に今後10年の金利が高くなることを意味しているかもしれない。

そこで用いられるのが長短金利差である。直近の政策金利が高くなることは2年物国債の金利に織り込まれる。だがその高金利によってより長期の経済が停滞する場合、10年物国債の金利は2年物国債の金利よりも低くなる。(つまり長短金利差がマイナスになる。)

2022年に大きな利益を出した筆者のトレードは、株価の下落を予想したことのほかに、この長短金利差がマイナスになることを予想した取引だった。

長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について
そしてその後長短金利差がどうなっているかと言えば、インフレ率急落も気にせず下がり続けている。


ほぼマイナス1%である。

長短金利差-1%の意味

長短金利差がここまで下がったことは40年前の物価高騰時代である1970年代以降例がない。

そして1970年代にはアメリカ経済はかなり厳しい景気後退に陥り、米国株はほとんど半値まで暴落している。

ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に
当時の利上げによるインフレ退治の結果が大量の失業者を生んだことは、それを断行したポール・ボルカー議長が以下の記事で語っている。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
長短金利の逆転は、今のアメリカの利上げがそういう事態を生むことを予想しているのである。

結論

現在市場が懸念しているサービスのインフレ(そしてそのコストとなっている賃金のインフレ)が止まるかどうかは、当たり前だが結局のところ賃金が下がってアメリカの消費者が苦しむかどうかにかかっている。

だからインフレが落ち着くとすれば、ソフトランディングはほとんど定義上あり得ない。サービスのインフレが落ち着くためには、賃金が下がらなければならない。これはほとんど同語反復である。

サービスのインフレだけひとりで上がり続けるのか
現在の株式市場の水準はソフトランディングにならなければ維持できない。S&P 500のチャートは以下のように推移している。


長短金利差のチャートとこの米国株のチャート、どちらかが完全に間違っている。そして株式市場と債券市場の意見が異なる場合、正しいのは大体の場合より理性的な債券市場である。

金利は今のところ高止まりしているが、株価が大きく下がるならば、結局金利も下がってゆくだろう。そうなればドルも下がることになる。

それが結局のところ筆者の2023年の相場予想である。読者はどう考えるだろうか。

2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34448

2:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/10 (Fri) 22:00:24


政策金利
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1603.html

長期金利を左右するもの
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1558.html

国債の長短金利差を見て景気後退を判断する
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1761.html



株価は長期金利と企業利益で決まる。
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035593

アメリカの政策金利はこれから 5%以上に上がって世界恐慌を引き起こす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793

40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513

3:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/15 (Wed) 12:04:13

米国の長短金利差-1%の意味
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14093815

ついに始まる世界金融恐慌
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793

アメリカの政策金利はこれから 5%以上に上がって世界恐慌を引き起こす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793

40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513

これから起きる超円高によるバブル崩壊と預金封鎖
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14091470




エリオット波動分析では米国株も日本株も今年から大暴落して最高値の1/10まで下がりそうですね。 1929年の大恐慌に匹敵する下がり方ですね:

日経平均1年間のカウントの振り返りとナスダック100とS&P500の進行想定/有川和幸さん 2022/12/19 にライブ配信
https://www.youtube.com/watch?v=MGFhLQnPOf4


日本エリオット波動研究所の相場予測は凄い、宮田直彦のエリオット波動分析はデタラメ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14081932
4:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/18 (Sat) 06:30:37

ガンドラック氏: シリコンバレー銀行破綻でアメリカの景気後退が近づいた
2023年3月17日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34713

筆者の他に金利低下を予想し続け、シリコンバレー銀行の破綻に伴う金利急落で利益を得た人物がいる。DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏である。

CNBCのインタビューからシリコンバレー銀行破綻に対する彼の反応を紹介しよう。

シリコンバレー銀行破綻

以下の記事で説明した通りだが、シリコンバレー銀行は顧客であったシリコンバレーのスタートアップたちがFed(連邦準備制度)の金融引き締めで窮地に追い込まれたことによって破綻した。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
それで少し前までソフトランディング期待まで出ていたアメリカ経済に途端に暗雲が立ち込めている。筆者やガンドラック氏は市場がどうなろうが景気後退に賭けてきたが、市場の方は喜んだり悲しんだり忙しそうである。

ガンドラック氏: 景気後退入りは保証されている
2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない
誰かが言っていたが、市場で勝つためには誰もが酔っ払っている時にしらふでいることである。

長短金利逆転が示唆する景気後退

さて、では実際アメリカ経済はどうなるのだろうか。シリコンバレー銀行破綻を経て見通しは何か変わっただろうか。

解説記事に書いたように、シリコンバレー銀行の破綻自体は、Fedによる未曾有の金融引き締めで既に経済に起こっていた大規模な損失の一部分に過ぎない。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
だがこのイベントを受けて金融市場では様々な動きがあった。そしてガンドラック氏はその中で長短金利差に注目している。

長短金利差とは、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いたものである。

通常は期間が長いほど金利が高いので長短金利差はプラスだが、2年物国債は今後2年の政策金利を織り込む一方、10年物国債は金利とより長期の経済動向に左右されるので、中央銀行が無理に利上げをしてそれが景気後退をもたらすと市場が予想する場合、2年物国債の金利が上がる一方で10年物国債の金利はそれほど上がらず、長短金利が逆転することがある。

そして長短金利が逆転するとき、つまり市場が利上げのやり過ぎを警告するとき、ここ数十年ではほぼ間違いなくアメリカ経済は景気後退に陥ってきた。

以下は長短金利差のチャートである。グレーの部分が景気後退であり、長短金利差がマイナスになってからグレーの部分が現れていることに注目したい。


2022年には筆者は物価高騰がこの状態を引き起こすことを予想し、長短金利の逆転に賭けるトレードを行なって利益を上げたことは読者も知っての通りである。

長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について (2022/4/4)
シリコンバレー銀行破綻で長短金利差に異変

その長短金利差はその後もマイナス幅の拡大を続けたが、シリコンバレー銀行の破綻を受けてこの動きが少し変わっている。

ガンドラック氏は次のように説明している。

長期国債は今、2年物国債よりも価格上昇が小さい。だからイールドカーブは大きく急勾配になったというか、逆イールドの度合いが大きく減った。これはまさに景気後退の最後の兆しで、景気後退が比較的早く来ることを意味している。

過去何十年にわたるすべての景気後退では、長短金利差の逆転が縮小してから数ヶ月で経済は景気後退に陥っている。

長短金利の逆転は、利上げが行き過ぎているというサインである。だが2年物国債の金利が高い水準にある限り、市場はその高い短期金利が持続可能だと考えているということになる。

それはいずれ景気後退をもたらすが、当面は金利は高くなることを意味している。

だが長短金利差のチャートの最近の部分を見ると次のようになっている。


シリコンバレー銀行の破綻を受けて長短金利逆転が急激に戻している。

長短金利逆転が解消するとき

これは何を意味するのだろうか。長短金利が大きく逆転していたときは、2年物国債の金利は政策金利が当面高く保たれることを意味していた。だがシリコンバレー銀行の破綻で2年物国債の金利が大きく下がり、長短金利の逆転は緩和された。

つまり、長短金利差のチャートは元々「政策金利がこれから高くなり過ぎるので長期的には経済が沈む」ことを予想していたが、今や「政策金利を高く保てないほど景気後退が差し迫っている」ことを予想していることになる。

したがってガンドラック氏はシリコンバレー銀行の破綻によって景気後退がいよいよ近くなったと言いたいのである。彼は次のように述べている。

長短金利逆転がピークに達していた先週には、4ヶ月から6ヶ月以内に景気後退が起こる可能性は低かった。

だが逆転が解消され始めている今、4ヶ月から6ヶ月以内の景気後退が妥当に思えてくる。

インフレ政策の結末もいよいよ大詰めである。少し前までソフトランディング期待が囁かれていたことを考えると急展開ではないか。だが経済危機における相場とはそういうものである。短期的な市場の動きに惑わされないよう頑張ってもらいたい。

ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる
ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34713
5:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/08 (Sat) 20:40:13

アメリカ経済が縮小するという見方が強まっている
2023.04.08

アメリカには借金も不況も無いと言っているがあります


アメリカに迫る不況の包囲

アメリカ経済が今後失速しアメリカの景気も悪化するという見方が強まっていて、その影響で日本経済も悪化すると予想されています

政府やアナリスト、 評論家や著名投資家は1年くらいの間「アメリカに不況は無い」などと否定してきたが、23年3月10日のシリコンバレー銀行破綻をきっかけに労働市場も悪化している

シリコンバレー銀行破綻時もFRBや米財務省は「問題なく対処でき危機に発展しない」と言い続けたが、彼らの説得力は弱まりつつある

銀行破綻をきっかけに金融不安が高まり貸し渋り懸念から投資が減少し、株価が下がり経済を下押しするという負の連鎖が懸念されている

例としてアメリカの住宅ローン金利は22年初めに3%だったが利上げとともに上昇し米銀破綻頃に7%に達し、3月末に6.5%程度になっています

住宅ローン金利は低所得者や中間層に打撃を与えるが資産100億円の人はキャッシュで買うので関係なく、景気悪化で値下がりして買いやすくなっている


同様に米景気悪化は中低所得者には大打撃だが富裕層には無関係なので、今日も高級車やブランド品を買い物価を押し上げています

こうしてアメリカは成長率が低下(23年は1.4%予想:IMF)しているのに物価が上昇し、2月のインフレ率は6.0%と依然として高い

中央銀行FRBは0.25%だった政策金利を22年4月から急激に上げ始め現在5.0%になっているが、銀行破綻などを受けてもう1、2回で利上げを終えるという見方が強い

インフレ率を下げるには利上げが必要だが、不況下で利上げすると日本のように超不況を招くので舵取りが非常に難しくなっている

FRBは次第に打つ手がなくなってきていて、2月雇用動態調査では求人件数が63万2000件減の990万件と2年ぶりの低水準になった

米雇用統計として知られる非農業部門雇用者数は平常時でプラス40万人程度ですが3月は31万人、4月は7日発表なのでもう結果が出ているが大幅に下振れすれば波乱要因になる


アメリカの借金がいくらか誰も知らない
銀行の貸し渋りが顕在化してくると、信用度の低い企業から設備投資を減らし、その影響が米経済全体に波及していく

中でも、これまでの米経済の高成長を支えてきたIT分野における新興企業の資金調達が困難になると、成長分野にブレーキがかかる

米株価のダウ平均は史上最高値だった3万6000ドルから少し下げて3万3000ドルですが、これが大きく下げ始めたら本格的な不況になります

ダウ平均は2020年3月に新型コロナで2万ドルの大台を割り込んだが、その後米政府の数百兆円におよぶ経済対策で息を吹き返し21年末に3万6000ドルをつけた

だがこの超特大経済対策のせいでインフレ率が上がり米国の債務も拡大し、いずれ経済の足を引っ張ると予測できます

21年頃は給付金のおかげで働くより自宅で待機しているほうが収入が多くなった人が大勢いたが、そのお金は全額アメリカの借金になります

アメリカは国全体の債務を公表するのは重大機密として禁じられていて、公表されているのは連邦債務だけ、それも将来支払う年金などを除外してあります

日本政府が言っている日本の借金は、将来支払うお金も政府が直接支払わないお金も、一切合切を政府の借金にひっくるめています

米政府が隠している政府債務のひとつに学生ローンがあり、多くの社会人が学生時代の借金を背負っているが返済困難になっている

学生ローン残高は1兆ドル(130兆円)を超えているがバイデン政権は年収1700万円未満の返済免除を打ち出し、これも結局米政府の借金に付け替えられます

問題は米公的債務の総額を誰も知らない点で、 州や民間や証券化などの手法で付け替えられているのでおそらく大統領も把握していない

たとえばアメリカのどこかで新たな高速道路を建設しても、民間企業が建設した事にして公的債務ではない事にし、年金など社会保障でもこういう事をしています
https://www.thutmosev.com/archives/260384s.html
6:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/21 (Fri) 14:06:29

2025年にかけ商業用不動産ローンが危険 、 金融市場が悲観的な理由とは
つばめ投資顧問の長期投資大学
2023/04/20
https://www.youtube.com/watch?v=hrzM7l8sl-Q

次の金融市場の不安要素として、商業用不動産ローンが挙げられます。2025年にかけて1.5兆ドルの借り換えがある中で、オフィスの空室率は過去最高を記録しています。一方の融資を行う中小銀行は、シリコンバレー銀行の破綻に恐れをなし、手元資金を残そうとしています。金利の逆イールドが示すように、景気後退が訪れるのは時間の問題とも見られ、好調な株式市場もどこまで続くかわかりません。
7:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/02 (Tue) 04:56:23

サマーズ氏: スタグフレーションの危険あり、高確率で景気後退へ
2023年5月1日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36324

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、終盤に差し掛かっているアメリカの利上げと実体経済の先行きについて語っている。

サマーズ氏の注目する経済指標

最近はGDPなど大きな経済データの発表もあり、サマーズ氏は今どの経済指標に注目しているかを聞かれている。

ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
だがサマーズ氏にとっての最重要指標はGDPではないようだ。彼は次のように述べている。

自分はECI(訳注:雇用費用指数)に注目してきた。理由は、労働市場がインフレの進行に関して鍵となっていること、四半期ごとにしか発表されないこと、そしてボーナスや労働力の構成の変化などの調整も考慮する、賃金インフレに関する最良の数字だからだ。

ECIの上昇率は4.8%程度で、年間の上昇も四半期の上昇もかなり強かった。賃金インフレが減速している証拠はあまりない。

ECIは前期比年率で4.7%となっている。グラフは次のようになっており、一度減速してからやや持ち直した形だ。


賃金はサービス業の主なコストになるので、インフレにとって重要である。だが少なくとも賃金は高止まりしていることは間違いない。

高止まりするインフレと悪化する銀行危機

だが一方で、アメリカ経済は全面的に強いわけではない。シリコンバレー銀行の破綻に始まる銀行危機は確実に悪化している。

数日前にここでも株価の暴落を報じたファーストリパブリック銀行は、預金流出を止めることができず、5月1日に正式に破綻した。残存資産はJPモルガンに売られることになる。

ファーストリパブリック銀行の株価、2日で6割暴落、銀行危機は悪化へ
アメリカ経済は現在かなりいびつである。GDPが消費の大幅な増加と投資の大幅な減少の結果減速となったこともそうだが、利上げでダメージを受けている部門と「まだ」ダメージを受けていない部門の差が大きい。

ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
だが不動産価格が上昇に転じている問題も含め、物価の部分が減速しないのであれば中央銀行は高金利を継続する必要がある。

下落し続けていたアメリカの住宅価格が上昇に転じる、インフレ再燃か
しかしそうすれば、地方銀行のように既にかなりダメージを受けている部門は更に深刻な危機に陥ることになる。

サマーズ氏は次のように述べている。

スタグフレーションの問題が多少持ち上がってきているようだ。

インフレは基本的に目標を大幅に超えており、1年半のあいだわたしが言い続けているように、それ相応の経済の減速がなければインフレ率は目標まで戻らない。

どれだけ経済が痛んでもインフレ率だけ高止まりする状況がインフレのもっとも恐ろしいところである。アメリカ経済はそれに近づいている。

スタグフレーションに突入へ

だが物価上昇と景気後退が同時に来るスタグフレーションなど、ここの読者にとってはニュースでも何でもない。それは去年の始めの段階で筆者が予想していたことである。

2022年のスタグフレーションに投資する方法 (2022/1/20)
そして債券市場は筆者の予想通りそれを去年の春から織り込み始め、今なお長短金利を逆転させ続けている。

長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について (2022/4/4)
通常長期金利が短期金利よりも高くなる債券市場で、今のように短期のほうが金利が高くなるのは、短期的な利上げによって長期的には経済が減速すると債券市場が予想するからである。

10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いた長短金利差は以下のように推移している。


ちなみに歴史的には長短金利差の逆転が起こった後にはほとんど例外なく景気後退が起きている。

アメリカの金融政策見通し

この状況でFed(連邦準備制度)はどうするべきだろうか。米国時間で5月3日には金融政策決定会合であるFOMC会合を控えており、サマーズ氏は次のように言っている。

これはFedが経済の減速を目指すべきだということを意味するわけではない。だがFedがインフレ抑制のために必要なことをするならば、経済減速は起こりそうだ。

今後12ヶ月でそうなる可能性はかなり高い。恐らく70%ほどだろう。

また、3日のFOMC会合については次のように言っている。

Fedは5月には利上げをするべきだ。だが銀行の問題を考えれば6月にどうするかは議論があるだろう。

結論

このように、ほとんどの専門家がアメリカ経済について弱気な見方をしている。瀕死の銀行たちを引きずり回しながらも高金利を続けなければならないのだから当然である。

世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は世界経済全体に波及して物価高騰か倒産危機で終わる
ガンドラック氏: 銀行危機後に中小企業はお金が借りられなくなっている
だが株式市場を短期的な動きだけ見れば、そのようなことは気にしていないように見える。


だが経験のある投資家であれば筆者の言いたいことがあるだろう。見飽きた映画ではないか。中央銀行がアグレッシブな利上げを行ない、何処かで何かが破綻して、明らかに経済は景気後退に向かっているが、株式市場はそれを無視している。

あまりにも見飽きた映画ではないか。直近では2018年がそうだった。だがそんなことは歴史上何度でも起きている。

2018年当時の記事が残っているので、株式市場がダンスを楽しんでいる間に当時の利上げによる世界同時株安のことを思い出しておくのも良いだろう。

バブルの頂点で日経平均は上昇、空売りを淡々と継続 (2018/9/20)
世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36324
8:777 :

2023/06/04 (Sun) 16:04:50

「ドル崩壊は始まっている」大西つねきのパイレーツラジオ 2.0(Live配信2023/05/31)
https://www.youtube.com/watch?v=a2Q4JJhKaJo

「アメリカは財政破綻するか?」大西つねきのパイレーツラジオ2.0(Live配信2023/05/15)
https://www.youtube.com/watch?v=OOlq6TLur70&t=1373s

9:777 :

2023/06/18 (Sun) 08:26:42

ガンドラック氏: アメリカはもう利上げしない、米国経済は悪化している
2023年6月17日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37538

引き続き、CNBC による債券投資家ジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。またアメリカ経済に強気な向きが強まっている一方で、ガンドラック氏は弱気な見方を崩してはいないようだ。

アメリカ経済が弱いと考える理由

前回の記事では、ガンドラック氏は一般に強いと解釈されている労働市場が実際には弱いということを論じていた。

ガンドラック氏: パウエル議長は政策金利を予想できない
ガンドラック氏はそこから更にアメリカ経済が弱い証拠を突きつける。例えばマネーサプライ(市中に存在する現金と預金の総量)である。ガンドラック氏は次のように述べている。

M2(訳注:マネーサプライの1種)の下落率はもう何十年も見られなかった水準に達している。

マネーサプライは、下落率で見れば物凄い水準に達している。マネーサプライの変化率(前年同月比)のグラフを長期で見ると次のようになる。


現在のマネーサプライの減少スピードは、1970年代の物価高騰時代を終わらせた1980年のポール・ボルカー議長による金融引き締めよりも急激なのである。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
マネーサプライが重要だという意見には筆者も同意する。だが、個人的には変化率よりも絶対水準を見るべきだと思う。マネーサプライ(変化率ではない)のグラフは次のようになっている。


コロナ後に現金給付によって紙幣がばら撒かれ、マネーサプライが急増した。その紙幣が今回収されており、マネーサプライが縮小している。

ばら撒かれた紙幣によってアメリカ経済はコロナ危機を脱したが、紙幣回収によってばら撒きを無かったことにするならば、コロナ危機からの救済も無かったことになるだろう。

それが筆者の意見である。そして、現在の減少スピードで行っても、コロナ後にばら撒かれた紙幣がすべて回収され、マネーサプライが当時の水準に戻るまでに1年かかる。

ガンドラック氏の議論を聞いていると今すぐにでも利下げと景気後退が始まりそうな印象を受ける。だが筆者はまず利下げが始まりその後に景気後退が始まるまで、もう少し長い時間がかかると考えている。

長短金利差の現状

また、ガンドラック氏が景気後退が近いとする根拠に、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いた長短金利差を挙げている。彼はこう述べている。

長短金利差はもう長らくマイナスになっている。

通常、債券は期間が長いほど金利が高くなるが、債券市場が将来の景気後退を予想すると、長期の債券の方が短期の債券より金利が低くなる。

10年物国債と2年物国債の金利差が逆転することは一般に景気後退の前触れとして知られ、過去においてはほとんど例外なく景気後退になっている。

長短金利差の長期チャートは次のようになっている。


灰色の期間は景気後退なので、長短金利差がマイナスになった後に景気後退になっている様子は見ての通りだ。

だがマネーサプライのグラフと比べてこちらはどうだろう? 長短金利差のマイナスの深さは、1980年に比べるとまだまだだ。

筆者は長短金利差は、現在のインフレが収まるまでに少なくとも1度は当時の水準まで深く下がらなければならないと考えている。1970年台にはインフレは3度の波として来たので、今回の第1波である今、長短金利差がそこまで下がらなければならないわけではない。

だが、長短金利差は筆者には、ガンドラック氏の言うような経済の弱さよりもむしろ、状況がまだまだ悪くないことを示唆しているように見える。いや、十分悪いのだが、想定される最悪の状態にはまだ行っていないのである。

結論

ガンドラック氏は利上げが打ち止めだと考えている。

だが筆者は、金利がここから下がってゆくにせよ、必ずしも今が政策金利のピークであるとは断定しない。紙幣が回収されるまでにあと1年あるのである。勿論利上げがもうない可能性もあるが、あと1回や2回利上げがあっても別に驚かないだろう。

筆者にとって重要なのは、FOMC会合後の記事で書いた次のことである。

6月FOMC会合結果、利上げ継続を表明
銀行危機のような局所的な問題ではなく、経済全体が目に見えて悪くなるまでは、パウエル氏の強気の姿勢を疑う理由はない。

それまではまだ数ヶ月から半年前後はかかるだろう。

今後起きることの順番はこうだ。まず政策金利がピーク(それが今であれ、数ヶ月後であれ)となり、その後利下げに転じる。そして景気後退が来る。

この順番は決して変わらない。景気後退が来ない限りパウエル氏がハト派になることはないが、景気後退は利下げの後にしか来ない。だから、パウエル氏は少なくとも1度はインフレ打倒に成功する。

この意味では経済の強さをパウエル氏が気にしているのは意味がないのである。

彼がGDPや失業率をいくら気にしても、先行指標として経済の状況悪化を教えてくれるのはガンドラック氏の指摘するマネーサプライや長短金利差のような指標だけであって、パウエル氏が気にしているGDPや失業率のような遅行指標が実際に悪化してしまった時には、状況は既に手遅れになっているだろう。

いくらそれらの指標を見ていても、それが先に悪化してパウエル氏に事前に警告してくれることはない。GDPが悪化してからGDPの悪化に備えることはできない。彼は先行指標を見なければならないのだが、マクロ経済学の素人である彼はそれが理解できないのである。

この意味で、パウエル議長は2021年にインフレを無視し、インフレが実際に手遅れになってから金融引き締めを開始した過ちを繰り返していると言える。彼は絶対に状況が手遅れになってからでなければ動かなかった。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/12)
「インフレが悪化してから動く」それはインフレが悪化することを保証している。「景気後退になってから動く」だかそれは、景気後退になることを保証している。

ガンドラック氏は次のように述べている。

Fedが1年半前に犯したのと同じ失敗を、 今度は逆の方向に犯そうとしているのは理解できない。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37538
10:777 :

2023/07/07 (Fri) 19:07:32

アメリカの深い景気後退をなおも予想する金融市場
2023年7月5日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38060

アメリカでは利上げによる景気後退が不可避のものとされ、数ヶ月前には銀行の破綻も騒がれた一方、株式投資家は数ヶ月前の話を覚えておく記憶力がないので、市場にはアメリカ経済には何の問題もないかのような雰囲気が漂いつつある。

景気後退を予想し続ける債券市場

だがそれは株式市場に限った話である。もう1つの重要な市場である債券市場はまったく別のシグナルを発し続けている。

それが何かと言えば、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いた長短金利差である。

金利は通常、期間が長いほど高くなる。一般的にはお金を1週間貸すよりは10年貸す方が、期間内に倒産する可能性が上がると考えられるからである。

だがこの長短金利差が逆転する場合がある。例えば今のように、インフレでFed(連邦準備制度)が利上げを強いられ、政策金利の影響を受けやすい短期金利は鋭く上がる一方で、今の利上げによって将来の景気見通しが悪化し、長期金利が下がるか、短期金利ほど上がらない場合である。

長短金利が逆転するとき、歴史的にはほぼ確実に景気後退が起きている。だが今の状況はと言えば、以下のチャートのように長短金利差は単に逆転するだけではなくそのまま-1%まで行っている。


注目したいのは、3月に一度跳ね上がった長短金利差が再び下落して下値を更新していることである。

長短金利差の再下落

3月に跳ね上がったのは、シリコンバレー銀行の破綻に始まる銀行危機でFedが利下げするのではないかとの観測が強まり、短期金利が下がったからである。

世界最大のヘッジファンド: シリコンバレー銀行破綻はドミノ倒しのように伝染する
だがその後、住宅価格の上昇などで更なる利上げが必要なのではないかとの観測から、短期金利は再び上がり、しかし長期金利はそれほど上がらず、長短金利差は下落していったということである。

アメリカの4月住宅価格が再び上昇、インフレ継続で利上げ再開か
長短金利差が下落している以上、債券市場は現在の利上げによって将来景気が落ち込むとの見方を崩していない。むしろ、長短金利差が下値を更新したということは、今後の景気後退が更に深くなることを予想している。

これは一見してS&P 500などの主要株価指数の動きと矛盾している。S&P 500のチャートは以下のように推移している。


長短金利差は少数派ではない

だがここで思い出してほしいのが、先進国の主要株価指数が反発している一方で、各国の小型株指数や新興国株、ジャンク債など、よりリスクが高いと考えられている資産クラスは2022年の価格下落から回復していないという事実である。以下の記事で説明している。

米国株はいまだにダウントレンドの中にある
例えば上海総合指数のチャートの長期下落トレンドは、むしろアメリカの長短金利差のグラフに近いと言って良いだろう。


また、同じアメリカでも小型株指数Russell 2000は下落から回復していない。


むしろ2022年の下落から反発している先進国の主要指数は世界の金融市場で少数派であり、そこだけが生き残っている姿は2018年の世界同時株安を彷彿させる。

2023年の米国株は2018年世界同時株安のダブルトップに似ている
長短金利差は筆者のこの見方に同意しているようである。

結論

ちなみに2018年においても、先進国の主要株価指数は一時的に反発する一方で、新興国株式などと同様に長短金利差は下がり続けていた。以下は2018年の長短金利差のグラフである。


ただ、長短金利差は底値を打って反発を始めてからが本番であり、景気後退はその後に来る。ガンドラック氏が以下ように指摘していたことを思い出したい。

ガンドラック氏: シリコンバレー銀行破綻でアメリカの景気後退が近づいた
過去何十年にわたるすべての景気後退では、長短金利差の逆転が縮小してから数ヶ月で経済は景気後退に陥っている。

逆に言えば、長短金利差が下落を続けている限り景気後退はまだだということである。

筆者は来年前半だと予想しているが、どうなるだろうか。

世界最大のヘッジファンド: アメリカ経済は結局強いのか弱いのか?


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38060
11:777 :

2023/08/01 (Tue) 00:44:27

ガンドラック氏、アメリカの景気後退について語る
2023年7月31日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38522

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が、CNBCのインタビューでアメリカ経済と景気後退について語っている。

景気後退と長短金利逆転

前回の記事ではガンドラック氏のインフレ率に関する予想を紹介した。

ガンドラック氏: インフレ率が下がり過ぎてデフレになる可能性
去年からのアメリカのインフレ率下落予想を的中させたガンドラック氏は、引き続きインフレ率を下落方向で予想している。

だが経済成長率はどうだろうか。債券市場のエキスパートであるガンドラック氏が注目するのは、やはり景気後退の前触れとされる長短金利差の逆転である。

長短金利差とは10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いたものである。債券の金利は通常期間が長いものほど高くなるが、利上げの行き過ぎで景気後退に陥ると債券市場が予想する場合、短期金利は政策金利に釣られて高くなる一方で、長期金利は景気減速を織り込んで低くなる。

これが長期金利が短期金利を下回るところまで進んだ(つまり長短金利差がマイナスになった)場合、過去の相場ではほとんど確実に景気後退が起こっている。

アメリカでは2022年からの利上げによって長短金利差は既にマイナスになっているが、長短金利差についてガンドラック氏は次のように述べている。

長短金利はいまだに逆転したままだ。シリコンバレー銀行などの地方銀行危機のあと逆転は解消されかかった。逆転の解消は景気後退の兆候で、金融市場は懸念を表明していた。

長短金利差のチャートは次のようになっている。


長短金利の逆転は、今年一度戻りかけた。だがガンドラック氏はこの起こりかけた長短金利逆転の解消こそが景気後退のサインだと言っている。

何故ならば、歴史的には景気後退は長短金利がまず逆転し、その後それが解消に向かった後のタイミングで起こるからである。

逆に言えば、景気後退は長短金利逆転が解消されるまで来ない。

ガンドラック氏は次のように続けている。

だが銀行危機が落ち着くとそれは元に戻った。長短金利逆転の解消は注目しておくべきサインだが、それはまだ起きていない。

いまだ残っているコロナ後の現金給付

だが、それは何故なのか。ガンドラック氏はコロナ後に行われ、物価高騰を引き起こした現金給付の影響がまだ残っていると指摘する。彼はM2(市中に存在する現金と預金の総量、マネーサプライ)を取り上げて次のように言っている。

多くのエコノミストが正当にも言及しているが、M2が前年比でマイナスになっている。だからそれを見れば、インフレ率は大きく下落してくると考える。

だがもう1つ注意を払わなければならないのは、2020年と2021年の現金給付の影響がいまだに残っているということだ。

利上げと量的引き締めによってマネーサプライが下落してきていることは確かである。実質マネーサプライのグラフは次のようになっている。


コロナ後の現金給付によって急騰し、世界的なインフレを引き起こしたマネーサプライは同じ速さで急減少しているものの、コロナ前の水準と比べるとまだまだ多い。

スタンレー・ドラッケンミラー氏が次のように言っていたことを思い出したい。

ドラッケンミラー氏: それでも米国経済はハードランディングする
エド・ハイマン氏はマネーサプライが史上最速の速さで縮小していることを指摘した。

だが話はそれほど簡単じゃない。マネーサプライは数年前と比べると30%後半から40%ほど拡大している。だから積み上がっているお金の量はそれでも極めて多いということだ。

実は増加しているマネタリーベース

更に、ガンドラック氏が指摘するのは企業や個人の銀行口座にある預金の状況を現すマネーサプライではなく、銀行が中央銀行の口座に保有する預金の量を表すマネタリーベースである。

彼はこう述べている。

M2は前年比でマイナスだが、マネタリーベースはいまだに膨大だ。当時の緩和の資金はいまだに残っている。

アメリカのマネタリーベースのチャートは次のようになっている。


マネタリーベースは量的緩和や量的引き締めで操作される。アメリカは利上げとともに量的引き締めをやっているので、マネタリーベースは下がっているはずなのだが、今年の3月から上昇に転じている。

今年の3月に何があったか? シリコンバレー銀行の破綻に始まる銀行危機である。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
銀行を救うためにFed(連邦準備制度)が銀行に資金を注入したことから、量的引き締めの効果は打ち消されている。

パウエル議長は、銀行危機を受けて実質的に量的引き締めを撤回したわけである。

やはりこれは緩和再開によるインフレ第2波を示唆しているのではないか?

サマーズ氏: パウエル議長のインフレ退治が本気かどうか疑う理由
ポジャール氏: アメリカは量的緩和を再開しドルは暴落する


そしてドルはどうなるだろうか。 ガンドラック氏はドルの動向にも言及しているので、そちらもまた新しい記事で取り上げたい。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38522
12:777 :

2023/08/08 (Tue) 19:30:16

【アナリスト解説】景気後退は起きる?日銀YCC修正の解説も
つばめ投資顧問の長期投資大学
2023/07/29
https://www.youtube.com/watch?v=1I4bcA3O83w
13:777 :

2023/08/11 (Fri) 02:36:59

今のところアメリカのソフトランディングを織り込む金融市場
2023年8月10日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38805

コロナ後の現金給付によってインフレが起こり、アメリカは利上げで対抗することとなった。リーマンショック前以来の高金利にアメリカ経済は耐えられないと思われたが、今のところアメリカ経済はそれほどの減速にはなっていない。

ソフトランディング期待

特に最近、金融市場はそれを織り込んでいるように見える。

先月のGDP統計とFOMC会合の前に筆者は次のように書いておいた。

アメリカの金融引き締め、7月の利上げが最後になるか (2023/7/19)
仮にパウエル氏とGDP統計の両方が「インフレは減速したが経済は減速していない」相場を止めない場合、あと数ヶ月ほどこの相場が続く可能性はある。

実際にFOMC会合とGDP統計の両方がこの見通しを妨害しなかったため、実際に金融市場はそのように反応している。一番良い例は以下のように推移している市場の期待インフレ率である。


期待インフレ率はまさに上記の記事のすぐ後に急反発した。リーマンショック時の例を挙げるまでもなく、市場がハードランディングを予想するときには期待インフレ率は下がることになるので、期待インフレ率の上昇はまさにソフトランディングを織り込む動きと言える。

長短金利差の上昇

期待インフレ率と長期金利の上昇という最近の動きは、利上げが収まって長期的には経済が回復してゆくというソフトランディング期待に相応しい動きである。

一方で、長期金利の上昇にともなう当然の結果として起こることがもう1つある。長短金利差の上昇である。

10年物国債から2年物国債の金利を引いた長短金利差のチャートは次のように推移している。


長短金利差は今年の前半に急反発した後再び下落していたが、最近になってやや上昇している。

現在長短金利差はマイナスになっているが、これは通常のことではない。債券の金利は通常期間が長いほど高くなるので、長短金利差はプラスになるのが普通である。

だが例外がある。中央銀行の利上げが強すぎ、短期的には利上げのために金利が上がるが、長期的には高金利によって経済が死んでゆくと市場が予想する場合、長期金利の方が低くなり長短金利が逆転する。

長短金利差の意味するもの

この長短金利の逆転は市場参加者にはほとんど確実な景気後退の前触れとして知られている。少なくとも歴史上は長短金利逆転の後はほぼ確実に景気後退が起こっている。

だがこれまでそうなっているからといって、これからもそうなるとは限らない。長短金利差が意味するものをしっかり考えてみる必要があるだろう。

まず考えるべきはジェフリー・ガンドラック氏が指摘していたように、景気後退は長短金利差がマイナスまで落ち込み、その後上昇を始めた後に来るということである。2000年のドットコムバブル崩壊および2008年のリーマンショック前後の長短金利差の動きに注目したい。灰色部分が景気後退の期間である。


何故こうなるかと言えば、中央銀行が景気後退を察知し、利下げを始めて短期金利が下がり始めるが、結局危機を救うには間に合わず景気後退に陥るというシナリオが、これら2回の危機においては踏襲されているからである。

市場が織り込む夢のようなシナリオ

だから現在の長短金利差の上昇と、当時の長短金利差の上昇は意味合いが違う。現状では大幅な利下げは織り込まれておらず、短期金利はまだそれほど下落していないからである。2年物国債の金利は以下のように推移している。


現在の市場が織り込むシナリオはハッピーエンドである。Fed(連邦準備制度)は現在の金利水準をほぼ維持する(2年物国債金利の高止まりがそれを示唆している)が、経済はそのまま回復してゆく(期待インフレ率と長期金利の上昇)。

だがFedの利上げが本当にインフレを抑えられているのであれば、今後数ヶ月のインフレ統計がこの状況に一石を投じるはずである。

インフレ率がこのまま2%まで下がってそこで止まるという予想に対するジェフリー・ガンドラック氏の言葉を思い出したい。

ガンドラック氏: インフレ率が下がり過ぎてデフレになる可能性
何故2%で止まるのか? そこに何か魔法でもあるのか?

インフレ率が去年の9%から2%まで急降下するのであれば、インフレ率はそのままマイナスまで行ってしまうだろう。

本当にインフレ対策が作用しているのであれば、そのシナリオが今後数ヶ月のコアインフレ率と賃金インフレに表れる可能性が高い。

そして何度も言ったように、賃金が減速するのであればいずれ個人消費が減速し、最終的にはGDPが減速してくる。

インフレかハードランディングか

今後数ヶ月のデータでインフレのダウントレンドが確定すれば、市場は利下げを織り込み始めるだろう。

だが賃金が消費に影響を与え、消費がGDPに影響を与えるまでにはまだ時間がある。それが来る前に利下げが織り込まれ始めた場合、ハードランディングよりもむしろインフレ第2波に繋がる可能性がある。

ジョン・ポールソン氏、インフレ第2波で金価格高騰を予想
長短金利差の再上昇は普通ならばハードランディングに備えるべき状況である。だが今の状況から考えれば、少なくとも賃金および消費の減速が来るまでは金利低下からインフレ再来のシナリオを警戒すべきだろう。

新たなGDPの発表はあと3ヶ月ほど無いので、少なくともそれまでハードランディングが織り込まれる可能性は限られている。しかし消費の減速が来たときには、ハードランディングを懸念すべき状況が始まる。

ドラッケンミラー氏: それでも米国経済はハードランディングする
結論

前回の記事では低金利とドル安と言ったが、「金利」の意味するところは考える必要がある。

米国の金利低下・ドル安トレンドが数ヶ月以内に確定する可能性
利下げ織り込みなら真っ先に低下するのは短期金利だが、その時長期金利が同じだけ下がるかどうかは分からない。長短金利差は再上昇で動くだろうからである。ドルについてはそのように動く長期金利から、期待インフレ率を引いた実質金利期待に左右されることになる。

そして消費の減速が来るまでは、金利とドルの他にコモディティにも注目すべきだろう。市場がハードランディングを織り込み始めるまでは、コモディティには追い風である。

ガンドラック氏: ドル安は始まった、金利は下がり、コモディティは上がる
ウラン投資のポテンシャル: 気候変動と原子力発電

いずれにせよ各回のインフレデータを厳密に予想することは出来ないが、インフレ抑制トレンドが本物であれば、これから数ヶ月金利とドルとコモディティに注意すべきである。どれに一番恩恵が行くかは要検討だろう。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38805
14:777 :

2023/08/22 (Tue) 23:15:47

金利高騰による株価下落で米国経済ハードランディングの確率高まる
2023年8月22日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/39134

アメリカでは長期金利が上昇し、それが原因で株価が下落している。だが問題はそれだけではなく、この動きがアメリカ経済のハードランディングが近づいていることを示しているということである。

コロナインフレ後の長期金利

コロナ後の現金給付によって発生した物価高騰により、Fed(連邦準備制度)は2022年から大幅な利上げを強いられてきた。だが政策金利がゼロから5.25%まで上がり、ようやく利上げ停止から利下げ観測も出てきたタイミングで、長期金利が再び上がり始めている。

ガンドラック氏: アメリカの利下げはいつあるか
アメリカの長期金利は次のように推移している。


だが長期金利、つまり10年物国債の金利は上がっているものの、2年物国債の金利は今後の利下げを織り込んでピークを下回っていることを指摘しておいた。

米国株下落の原因: 利下げ織り込みでも止まらない長期金利急騰
この状況で懸念すべきことは何か、ここの読者ならば分かるだろう。長短金利差の上昇である。

長短金利差の上昇

長短金利差とは、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いたものである。債券は通常、期間が長いほど金利が高くなるので、長短金利差はプラスになるのが普通である。

だが急激な利上げが行われ、経済がそれに耐えられないと市場が判断するとき、政策金利に影響される短期金利の方が将来の景気に影響される長期金利より高くなる。この時に長短金利は逆転し金利差はマイナスになるのだが、アメリカの長短金利差は去年からずっと逆転している。

経験ある投資家なら知っていることだが、長短金利差の逆転は歴史上ほとんど例外なく景気後退の前触れである。

だがもう少し詳しく言えば、債券投資家ジェフリー・ガンドラック氏が指摘していたように、景気後退になるのは長短金利差が一度マイナスまで下落し、そこから再び上昇に向かっていった後のことである。

だから景気後退を警戒すべきタイミングは、長短金利差の再上昇があった後だということになる。

長短金利差の再上昇と景気後退

だが何故そうなるのか。長短金利差が再上昇するシナリオには大まかに言って2パターンがある。当たり前だが、短期金利が下落する場合と、長期金利が上昇する場合である。

それぞれの場合を考えたい。まず短期金利の下落によって長短金利差が再上昇してから景気後退が起こる場合だが、短期金利は今後の政策金利の市場予想を反映して動くので、経済状況の悪化によって市場が利下げを予想しなければならない状況になっているということである。

この場合は長期金利も下がるだろうが、それよりも短期金利の下落が速い場合、それほど急激に利下げをしなければならないほど経済の状況が悪いことを示している。だからその後に景気後退が起きるのである。

次に長期金利の上昇によって長短金利差が再上昇する場合だが、長短金利差が逆転した時点で金融引き締めがやり過ぎなのだから、その状況から更に金利が上がれば勿論経済は死ぬだろう。

これがまさに今の状況であり、だから以下の記事に書いたように、期待インフレ率低下(デフレの織り込み)と長期金利上昇が組み合わさっている現状が良くないのである。

米国株下落の原因: 米国債から資金流出の兆候
結論

ただ、長期金利が上がる後者の場合の方が実際に景気後退入りするまでの時間はかかるだろう。短期金利がそれほど下がっていない時点で、金融市場はまだ余裕をかましている。だがそこからいずれ短期金利も下落し、上記の2つのシナリオのうち前者にシフトする時が来る。だからこれから注目すべきは2年物国債の金利である。

更に実体経済側の指標で言えば、個人消費とGDPに注意すべきだろう。賃金が減速し、個人消費が減速して来るならば、個人消費に頼っているGDPがようやく減速してくる。

景気後退懸念のなか加速した第2四半期アメリカGDP成長率
だがやはり金融引き締めの影響が回り回って実体経済に来るまでにはまだ時間がかかっている。2021年の恒大集団のデフォルトの問題が2023年に佳境となっているのと同じことである。

サマーズ氏: 中国がアメリカを追い抜く話はバブル期の日本神話と同じ
巨大なバブルは崩壊に時間がかかる。中国の2021年からから2023年を見て、 アメリカの2023年から2025年を考えるべきである。

今の中国経済のバブル崩壊は2年後の米国経済の姿を表している

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/39134
15:777 :

2023/08/23 (Wed) 21:48:56

世界最大のヘッジファンド、株価下落の直前から米国株に弱気
2023年8月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/39167

レイ・ダリオ氏が創業した世界最大のヘッジファンドBridgewaterが、株価の下落が始まる直前の7月後半に米国株に弱気な見方を示していたとReutersが報じている。

米国株と米国債とドルに弱気

Bridgewaterは7月25日の投資家向けの会合で、旗艦ファンドであるPure Alphaファンドが米国株と米国債の両方に対して「程々に弱気」であると明かしたらしい。また、ReutersによればBridgewaterはドルに対しても弱気だったという。なかなかの米国売りではないか。

その後どうなったかと言えば、米国株については言うまでもないだろう。S&P 500のチャートは次のようになっている。


そして長期金利、つまり10年物国債の金利は上がっている。以下の通りである。


国債にとって金利上昇は価格下落を意味するので、アメリカでは株式と国債の両方がダリオ氏の相場観通り下がっていることになる。

ダリオ氏の相場観

ダリオ氏は今何を考えているだろうか。恐らく彼の考えの中心にあるのは米国債である。

ダリオ氏は少し前に、アメリカ経済の短期的なソフトランディングの可能性を指摘しながらも、米国債に買い手が見つからない可能性、そしてそうならなかった場合にはインフレと低成長が同居するスタグフレーションを予想していた。

ダリオ氏は次のように述べている。

世界最大のヘッジファンド、米国経済のソフトランディングを予想
短期的には、もし国債の供給が需要を圧倒的に上回るような需給問題が起こらなければ、許容できる範囲の低成長と許容できる範囲の高インフレ(つまりはマイルドなスタグフレーション)が起きるだろう。

だが国債に買い手が見つからず価格が下がるにしても、インフレになるにしても、どちらにしても金利が上がるシナリオである。

だから当然ダリオ氏は金利上昇(つまり国債価格下落)に賭けたのだろう。以下の記事で説明した通り、実際には期待インフレ率が低下しながらの金利上昇が起こったので、インフレ懸念ではなく国債の需要不足の方のシナリオが実現したわけである。

米国株下落の原因: 米国債から資金流出の兆候
長期金利上昇の影響

そこまで考えれば、ダリオ氏の株価への予想も想像がつく。金利上昇による株価下落である。そしてそれも実際にそうなっている。

何度も言っているが、金利に比べた株価水準はもともと市場稀に見るレベルで高かった。長期金利は2022年に株安を引き起こした水準まで上がっているのに、株価の方は市場最高値に近い。そしてそれを誰も気にしない。それがそもそもバブルなのである。個人投資家は金利と株価の比較さえやらないのだろうが。

そしてダリオ氏はドルに対しても弱気らしい。ドルは長期金利上昇の影響を受けてやや上がっている。だがアメリカの実質金利上昇の割にはドルは上がっていないと言える。実質金利とドル円を比べると次のようになる。


これは日銀の植田総裁の利上げ努力が効いているとも言えるが、ユーロドルで見てもドルはそれほど上がっていないので、実質金利の上昇の割にドル高の勢いが弱まりつつあるとも言える。

結論

それはもしかすれば、ゾルタン・ポジャール氏の言うような長期ドル安のトレンドが効き始めているのかもしれない。

金利市場の天才ゾルタン・ポジャール氏、ドルの崩壊を予想するためのリサーチ企業を創業
だが米国債の下落といい、日本円の下落といい、国家の凋落を象徴するようなトレンドがいくつも始まり始めているのは不気味である。

米国株下落の原因: 米国債から資金流出の兆候
アメリカのように利上げをすれば通貨の強さは維持できるが国債は下落する。日本のように緩和を続ければ国債は買い支えられるが通貨が下落しインフレが起こる。

結局、インフレのないまともな生活をしたければ、行なうべきは紙幣印刷のようなインフレ政策ではなく生産性の向上だということを、自分の頭で考えずにインフレ主義という出鱈目に騙された人々に対して金融市場は痛みをもって教えようとしている。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である

人々は紙幣印刷と現金給付を好む。日本ではインフレに放火するようなガソリン補助金の継続を望むような声がいまだに存在している。

政府から紙幣が降ってきてそれで暮らせたら楽な生活ではないか。だが金融市場はインフレと金利上昇によって彼らに現実を呈示している。自民党におんぶにだっこされることを夢見ながら、実際にはエッフェル塔の下敷きにされている自民党支持者には、紙幣印刷で食べ物は作れないという簡単なことさえ恐らく永遠に分からないだろう。

その裏ではインフレで人々の貯金は目減りし、政府債務という名の自民党の借金は戦後のドイツの借金のように紙切れになってゆく。政治家にとって彼らは非常に優秀な家畜である。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
夢というのは意外に高価なのであって、夢を見る人間は対価を払わなければならない。彼らを待つのは彼らにふさわしい未来であって、物価高騰か通貨下落か国債暴落か、あるいはそのすべてである。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/39167
16:777 :

2023/09/27 (Wed) 02:17:33

ガンドラック氏、長短金利差から米国の景気後退入りのタイミングを予想
2023年9月26日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40195

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社のウェブキャストでアメリカ経済の景気後退とインフレについて語っているので紹介したい。

長短金利の逆転

ガンドラック氏が注目しているのは、10年物国債の金利から2年物国債の金利を引いた長短金利差である。

長短金利差はここの読者にはお馴染みだろうが、景気後退を予想するための確度の高い指標である。

金利は通常期間が長いほど高くなるが、債券市場が利上げの行き過ぎによる景気後退を予想すると、政策金利に影響されやすい短期金利が上がり、景気見通しに影響されやすい長期金利が下がることで、長短金利差が逆転する。

そしてその長短金利差が今どうなっているかと言えば、ガンドラック氏は次のように述べている。

長短金利はしばらくの間逆転し続けている。

歴史的には、長短金利が逆転した後、ほとんど例外なく景気後退が起きている。それは金融関係者には良く知られた事実である。

だが問題は景気後退入りのタイミングである。ガンドラック氏は次のように述べている。

長短金利が逆転し、金利差がゼロを下回った時には、警告としては受け取るべきだが数週間や数ヶ月で景気後退になるという短期的な警告ではない。長短金利はそのまましばらくの間逆転し続ける。

そして景気後退はまだ起こらない。

だがその瞬間はいずれ訪れる。歴史的にはどうなっているのか。長短金利差の長期チャートは次のようになっている。灰色の期間が景気後退である。


これを踏まえてガンドラック氏は次のように説明している。

だが本当にシグナルを発するのは、長短金利差が数ヶ月か数四半期逆転し続けたあと急速に逆転が解消され、金利差がゼロ以上に戻る時だ。

上のチャートを見ると、大抵の場合長短金利差がマイナスになり、その後プラスに戻ってから景気後退入りしていることが分かる。

それは中央銀行が利下げを考え始め、短期金利が下がり始めるタイミングである。景気後退入りがほとんど明らかになり、中央銀行は慌てて利下げを検討するがもう手遅れだという状態に毎回なるわけである。

9月FOMC会合結果はタカ派、引き締めを止めるべきタイミングを理解していないパウエル議長
ガンドラック氏は次のように続ける。

長短金利差がゼロ以上に戻る時、経済は本当に景気後退寸前だ。

アメリカ経済の景気後退入り

問題はこれからどうなるかである。ガンドラック氏は長短金利差が長らく逆転していることを考え、次のように述べている。

アメリカ経済は2024年前半に景気後退に陥ると予想している。

今は2023年の第4四半期に入りつつあり、今の経済の強さを考えれば今年中に景気後退になることは考えづらいが、来年の第2四半期までには景気後退になるだろう。

筆者も逆転解消がそろそろだろうと思う。最近、市場では長期金利の上昇が話題になっている。以下の記事で説明した通り、筆者はこれを米国債からの資金流出の兆候であると考えている。

米国株下落の原因: 利下げ織り込みでも止まらない長期金利急騰
逆に政策金利に影響される短期金利の方はあくまでも政策金利の見通しに固定されているので、長期金利ほどは上がらない。

この状況は長短金利差をプラスに押し戻しやすい。

また、それは同時に景気後退で長期金利低下よりも短期金利低下に賭ける方が合理的であることも意味している。

ガンドラック氏は長期金利低下を予想し続けているが、景気後退に賭けるならば短期金利だろうというのが筆者の見方である。

いずれにせよ来年までにはまだ3ヶ月もある。その間はエネルギー価格上昇などで稼ぐほかないのである。

ガンドラック氏: 原油価格上昇はインフレを押し上げる

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40195
17:777 :

2023/10/06 (Fri) 00:08:18

ガンドラック氏: 景気後退が急激に近づいたことを警告する長短金利差の急変化
2023年10月5日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40384

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が最近の金融市場の動向がアメリカ経済の景気後退の到来を示唆しているとTwitterで指摘している。

長短金利の逆転

ガンドラック氏は次のように言っている。

長短金利の逆転が急激に解消されつつある。

長短金利の逆転とは、アメリカで2年物国債の金利が10年物国債の金利よりも高くなっていることを指す。

通常、債券は期間が長いほど金利が高くなる。だから長期金利から短期金利を引いた長短金利差はプラスになっているのが普通である。

だが強すぎる利上げにより将来的に景気後退が来ると債券市場が織り込むと、政策金利に左右されやすい短期金利は高いままだが、将来の景気に左右されやすい長期の金利がそれよりも低くなる。そして長短金利差がマイナスになる。

長短金利の逆転は、歴史上ほとんど例外なく景気後退の前触れとなってきた。そして今どうなっているかと言えば、アメリカで長短金利は逆転している。ガンドラック氏は次のように述べている。

長短金利差は数ヶ月前まで-1.08%だった。今は-0.35%だ。

長短金利逆転の解消

ガンドラック氏が今指摘しているのは、長らくマイナスとなっていた長短金利差が上昇に転じていることである。長短金利差のチャートは次のようになっている。


長短金利差がマイナスになれば、その後ほぼ例外なく景気後退が起きる。だが実際には、過去の例では景気後退が起きるのは長短金利差がマイナスになり、そしてプラスに戻った後である。

例えば2008年のリーマンショックにおいては長短金利差のチャートは次のようになっている。灰色の期間が景気後退である。


以下は2001年のインターネットバブル崩壊時の長短金利差である。


両方とも長短金利差がマイナスである間は景気後退にならず、それが解消された後に景気後退になっている。

結論

ということで、長らくマイナスになっていた長短金利差がプラスに近付きつつあることは、景気後退が本当に近づいたサインなのである。ガンドラック氏は次のように述べている。

これは景気後退に気をつけ始めるシグナルどころか、景気後退に向けての直接的な警告だ。

もうすぐ雇用統計も発表される。遂に上昇トレンドに乗りつつある失業率について、ガンドラック氏は次のように述べている。

失業率があと0.2%か0.3%ほどでも上がれば、それも景気後退の警告だ。

シートベルトを締めておくことだ。

失業率のチャートは次のようになっている。


だが、長短金利差については筆者は最近、1970年代の物価高騰時代において長短金利差がマイナスのまま景気後退に突入していることが気にかかっている。

それは当時、景気後退に突入してもなおインフレ退治のために政策金利を高く保たなければならなかった(だから連動する短期金利が長期金利に比べて高いままとなった)ことを意味している。

そうなれば、最近下落している株式市場にとっては更に悪いニュースである。

2024年の米国株予想: 株価は最大で50%下落する
株式市場の方の予想はそれほど難しくない。だが債券市場の方はガンドラック氏が言うよりも複雑なことになるかもしれない。

インフレ政策が引き起こした40年来のインフレ相場であり、中央銀行も破綻しかねない状況なのだから、より多くの可能性に備えておくべきだろう。

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行でもインフレで破綻する可能性

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/40384
18:777 :

2023/12/19 (Tue) 20:58:58

ガンドラック氏、米国株の下落タイミングを予想
2023年12月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42636

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回は現在盛り上がっている株式市場が下落に転じるタイミングについて予想している箇所を取り上げたい。

株高は続くのか

Fed(連邦準備制度)がFOMC会合で来年3回の利下げを示唆して以来、株式市場は調子がいい。

12月FOMC会合結果でドル円が急落した理由
ガンドラック氏はそれが年末まで続くのではないかと予想している。

ガンドラック氏: 米国の利下げは株価にプラス
だが一方で、ガンドラック氏は来年第2四半期までの景気後退をメインシナリオとしている。

ガンドラック氏: インフレが下がる限り景気後退は絶対に起きる
景気後退になれば1株当たり利益が下がり、株価は下がらざるを得ない。だからガンドラック氏は株価がここから反転して下落することを予想している。

ガンドラック氏の予想する下落タイミング

だが投資家にとっての問題は下落のタイミングである。それを予想するためにガンドラック氏が持ち出すのは、長期金利から短期金利を引いた長短金利差である。

金利は通常長期の方が短期より高くなるが、債券市場が政策金利の高過ぎで将来の景気後退を見込む場合に長期金利が短期金利より低くなり、長短金利差がマイナスになる。

アメリカでは長短金利が長らく逆転したままとなっているが、これについてガンドラック氏は次のように言っている。

長短金利の逆転が解消され、投資家が反射的に債券を買い始めると、それは通常リスク資産の天井だ。

長短金利差は現在どうなっているのか? チャートを見てみよう。


長短金利差は長らくマイナスのままである。

ガンドラック氏はこの長短金利差が再びプラスに転じるときが株式市場の最期だと言っている。

景気後退と株価下落

それは何故だろうか? 長短金利の逆転が解消されるのは、例えば中央銀行が再び利下げをしなければならないほど経済が悪くなり、短期金利が長期金利よりも急激に下がってゆくような状況である。

そのような状況においては金利が下落するにもかかわらず株価は下がってゆく。リーマンショックの時が良い例である。

リーマンショック時における米国株、政策金利、住宅価格の推移
ガンドラック氏はそういう状況を予想しているのだろう。彼は次のように予想している。

株式を持ち続けるのも良いが、いつかは方向転換しなければならない。しかもかなり急激に方向転換しなければならなくなるだろう。

インフレは上に行き過ぎ、そして下に行き過ぎる。経済も下に行き過ぎるだろう。失業率は上がらなければならない。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42636

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