777投稿集 2455348


「物価と失業率は逆相関の関係にある」というフィリップス曲線は疑似科学

1:777 :

2023/02/12 (Sun) 06:56:50

「物価と失業率は逆相関の関係にある」というフィリップス曲線は疑似科学


日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は2018年の記事で緩和政策の限界と副作用について語っており、彼がこれから日銀の低金利政策をどうするのかを予想する上でその内容は参考になるだろう。

植田氏はまず、日銀が量的緩和によってマネタリーベースを増やしてもインフレ率が上がっていなかった当時の状況を指摘している。

日本は失業率が低いにもかかわらずインフレ率が上がっていないとして、失業率とインフレ率が反相関になるはずだと(根拠なく)主張したフィリップス曲線に言及し、「フラットなフィリップスカーブの謎」と呼ばれていると指摘した上で、その原因についてはインフレ期待、ITなどの技術革新による価格低下などの通説をいくらか挙げるも、現代で数少ない本物のマクロ経済学者であるラリー・サマーズ氏のように独自の分析を披露することもなく、「十分な解明がなされるには至っていない」で済ませている。あなたは経済学者なのだから、解明はあなたの仕事だろう。何を言っているのか。

そもそも筆者に言わせればフィリップス曲線などは言及にも値しない疑似科学である。だが少なくとも、彼が通説を纏めることを好み、あまり自分で考えないタイプの研究者であることは見えてくる。それでも教授にはなれる。そういう世界である。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33440



Fedの経済予想と金融政策を、サマーズ氏は次のように評している。

Fedは彼らの経済モデルと組織的な判断プロセスに依存してきた。そして彼らの判断プロセスはインフレを非常に長い間非常に誤った形で判断してきた。

「経済モデル」と言うときに思い出されるのは、例えばフィリップス曲線だろうか。労働市場が強まればそれだけでインフレが起こると何の根拠もなく主張する、経済学の教科書に載っている考え方だが、Fedは前議長であるジャネット・イエレン氏の時代あたりまでこの根拠のない経済モデルに従って金融政策を決めてきた。

現在のFedはこのフィリップス曲線という骨董品を既にある程度捨て去っているが、最近日銀総裁に就任した植田氏はいまだにフィリップス曲線に言及しており、筆者は少し驚いたことを以下の記事で書いている。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
何故彼はいまだにフィリップス曲線などと言っているのか。植民地政策に遅れて参加してすべての責任を押し付けられた日本人のやることなのだから、何か独創的な考えがあるのだろう。

一方で、ここの読者ならば労働市場は単に物価の一部であるサービス価格に影響する要素でしかないことを理解するだろう。中央銀行総裁より深く経済を理解することは、残念ながらそれほど難しくない。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35636


▲△▽▼


フィリップス曲線
http://keizaigaku.jp/macro/macro4/macro404/

(学習の目的)
フィリップス曲線をつかって、物価上昇率と失業率の間のトレード・オフ関係を分析します。

失業率
AD-AS分析は、IS-LM分析を発展させて労働市場を分析する方法でした。

労働市場の分析については、このほかに、「フィリップス曲線」があります。

この分析では、「失業率」がポイントとなります。
一般的に、景気の良いときは、失業率は低くなります。
人手不足の状態ですから、賃金は上昇します。
この「失業率」と「賃金」(正確には名目賃金上昇率)の関係をあらわしたものが「フィリップス曲線」です。

フィリップス曲線
「フィリップス曲線」では、「名目賃金上昇率」と「失業率」の間の「トレード・オフ関係」をあらわします。

「トレード・オフ関係」とは、「負の相関関係」ともいいます。
これは、「名目賃金上昇率が高い」ときは、「失業率が低い」ことをあわらしております。

グラフを描くときは、横軸が「失業率」、縦軸が「名目賃金上昇率」になります。

この「名目賃金失業率」は、プラスの場合と、マイナスの場合と、ゼロの場合がありますので、これらが区別できるようにあらわしてください。

物価版フィリップス曲線
「名目賃金上昇率が高い」状態は、経済が過熱傾向にあるときです。

この場合、物価の上昇率も高くなると考えられます。
このように「物価上昇率」と「失業率」の間の「トレード・オフ関係」をあらわしたものが「物価版フィリップス曲線」です。

「フィリップス曲線」を「物価版フィリップス曲線」に変換するには、やや難しいプロセスが必要ですので、ここでは保留としておきます。

自然失業率仮説
横軸に「失業率」、縦軸に「物価上昇率」を記して「(物価版)フィリップス曲線」を描くと、右下がりの形であらわされます。
このフィリップス曲線は、人々の経済に対する「期待」(expectation:予想のことをあらわしますが、「期待」という訳語が一般的です)を受けて、シフトする場合があります。

これらのフィリップス曲線は「短期」での分析です。
このフィリップス曲線の形について、古典派は「長期」的には「垂直」になると考えます。

古典派は、労働市場は伸縮的であると考えますので、「失業」は存在せず、「完全雇用」が達成されことになります。
このように「完全雇用」が達成されているときの失業率を「自然失業率」といいます。

古典派は、長期的にはフィリップス曲線はこの「自然失業率」の水準で「垂直」の形となると考えます。
http://keizaigaku.jp/macro/macro4/macro404/


▲△▽▼


2016-09-18
経済学の大法則 フィリップス曲線を本質から理解する
https://studyeconoink.hatenablog.com/entry/2016/09/18/163327

私たちの身の回りのモノの値段、つまり「物価」は、マクロ経済学において重要なテーマの一つです。その理由として、経済学におけるもっとも大きな発見の一つ、フィリップス曲線があります。今回はフィリップス曲線についてみていきます。


フィリップス曲線とはフリップスが初めて公表した、「物価と失業率は逆相関の関係にある」という関係のことを指します。簡単に言い換えると、

 物価が上がる(インフレ)⇔失業率が下がる

 物価が下がる(デフレ) ⇔失業率が上がる

ということです。これは、どんな経済状態の国でも一般に成り立っています。


ですから、中央銀行を中心とする政策実務者は、国家の責務として、インフレになるように政策を決めます。なぜならインフレにすれば失業が減り、雇用が生まれるからですね。


このフィリップス曲線は、定量的にこの関係が正しいことがデータでしっかりと示されています。そこで次に、この関係の定性的な裏付け、つまりどういう仕組みでこの関係ができるのかについてもできる限り簡単に説明しておきます。

単純化するとフィリップス曲線の成立プロセスはこうなります。

物価が上がる→企業は売上高が増える→従業員の賃金はすぐには上がらないので、企業は利潤が増える→企業が積極的に雇用を増やす→失業率が改善

物価が下がる→企業は売上高が減る→従業員の賃金は下げられないのでリストラなどで対応→失業率が悪化


このプロセスの本質は、①賃金の動きは物価よりも遅い、②企業は賃金を上げることはできても下げることはできない、という点にあります。実際、①は「賃金の遅効性」、②は「賃金の下方硬直性」として知られています。

物価と失業率は大きな関係があることがわかりました。事実日本でも、長く続くデフレの影響で、失業率は高い水準のままでした。アベノミクスで物価がプラスになってから、失業率は劇的に改善しています。これはまさにフィリップス曲線からわかることのであり、長く続くマクロ経済学の正しさを改めて証明しているものです。ですからこれからは物価と失業率という二つの指標も見て、経済を判断していきましょう。
https://studyeconoink.hatenablog.com/entry/2016/09/18/163327


▲△▽▼


フィリップス曲線( Phillips curve)は、経済学において物価と失業の関係を示したもの。アルバン・ウィリアム・フィリップスが1958年の論文の中で発表した。

縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となる。フィリップスが初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていたが、物価上昇率と密接な関係があるため、縦軸に物価上昇率を用いることが多い。

これは、短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味する(物価上昇と失業のトレードオフ関係)。つまりフィリップス曲線とは、短期において「失業率を低下させようとすればインフレーションが発生」し、「インフレーションを抑制しようとすれば失業率が高くなる」ということを表した曲線である。

理論的背景
期待インフレ率が上昇すると、名目賃金には硬直性があるため、実質賃金(=名目賃金/予想物価水準)が低下する。完全雇用が達成されていない短期においては、この労働力価格の低下を受けて雇用量が増加し、失業率が減少する。そのため、期待インフレ率と失業率の間には右下がりの関係が描ける。そして一般に、期待インフレ率が変化すると実現するインフレ率もそれに応じて変化するため、実現したインフレ率と失業率の間においても右下がりの関係が表れることとなる。その他にも、不完全情報モデル等様々に導かれる総供給曲線を、オークン法則と組み合わせることなどにより、フィリップス曲線を得ることが出来る[1][2]。

自然失業率と貨幣の中立性
ミルトン・フリードマンはフィリップス曲線に期待(予想)の概念を導入し、インフレ率の水準に関わらず長期的には一定の失業率に落ち着くとし、この失業率を自然失業率(natural rate of unemployment)と呼んだ。マネタリストは、長期のフィリップス曲線は垂直になると主張する[3]。つまり、インフレ率と失業率には逆相関の関係はないということになる。フリードマンに影響を受けた新古典派の経済学者たちは、景気の状況によって財政政策・金融政策を頻繁に動かすのは、逆に経済を不安定にするとしている[4]。

ジェームズ・トービン[5]、ジョージ・アカロフやポール・クルーグマンらによって、低インフレからデフレ領域においては長期においてもフィリップス曲線が右下がりとなることが指摘されている[6][7][8][9][10]。これは、名目賃金の硬直性により、インフレ率の低い領域では実質賃金の調整が一層困難となり失業が解消されにくいこと、またその失業が履歴効果などによって長期的に固定化・構造化してしまうことなどによる(低インフレからデフレ領域では「インフレの潤滑油効果(inflation's grease effect)」が機能しない)。長期においても右下がりなフィリップス曲線は、長期に渡っても貨幣数量説が成立せず、デフレーションが経済に悪影響を与え続け得ることを示唆している。


実際のフィリップス曲線

1960年代の米国のフィリップス曲線
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E6%9B%B2%E7%B7%9A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1960phillipsUSA.gif

1990年代の米国のフィリップス曲線
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E6%9B%B2%E7%B7%9A#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1990phillipsUSA.gif


右のグラフは、米国経済のフィリップス曲線である。縦軸が物価上昇率、横軸が失業率で、どちらも単位は100ベーシスポイント(1%)である。1960年代後半は、失業率の低下とインフレ率の上昇という典型的な短期における右下がりの関係が表れている。

1990年代はインフレ率の低下と失業率が低下する時代でニューエコノミーとも呼ばれた。期待インフレ率の低下によってフィリップス曲線が漸次、下方にシフトしていったと考えられ、単純にプロットするとむしろ左下がりの関係が見られることとなっている。

失業率に影響を与えるのは、主に、実現したインフレ率そのものではなく予想されたインフレとの乖離である。予想を上回ってインフレが進行した分が、失業率を低下させることになる。よって、実現したインフレ率と失業率のグラフにおいて、フィリップス曲線は期待インフレ率によって上下にシフトする。また、供給ショックなど、その他の要因によってもフィリップス曲線はシフトする[11]。たとえばオイルショックのような供給ショックは、失業率悪化と物価上昇を同時にもたらし、フィリップス曲線を右上方向へシフトさせる要因となる。

フィリップス曲線上の動きと、フィリップス曲線のシフトとの区別は重要である。たとえば景気悪化局面においては、失業率の悪化とともにインフレ率の低下が起きるが、そのインフレ率の低下を受けて人々のインフレ期待も低下していくことになり、フィリップス曲線の下方シフトが発生する。その結果、実現したインフレ率と失業率の間には時計回りのスパイラルが描かれることになり[12][13]、この時計回りの動きの中で左下がりの部分が観察される(右の1990年代のプロットはこの時計回りの動きの典型となっている)。

また、1980年代以降の先進諸国では、インフレ率を低位に安定させる金融政策が目指されたことにより、期待インフレ率が漸減していったため、フィリップス曲線は次第に下方にシフトしていった。その結果、実現したインフレ率と失業率の間にはきれいな右下がりの曲線が描けなくなっている。しかし、これらはフィリップス曲線のシフトの結果であり、物価上昇と失業のトレードオフ関係が無くなったことを意味していない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E6%9B%B2%E7%B7%9A


▲△▽▼


フィリップス曲線は当てにならない
続・超完全雇用時代の謎
2018/07/18
https://zuuonline.com/archives/188288

2018 年5 月に失業率は2.2%まで下がった。単純に計算すると、名目賃金上昇率は1.5%になってもおかしくない。しかし、フィリップス曲線と呼ばれる失業率と賃金の関係は、時期によってかなり変動する。経済学でも、そうした関係のシフトが起こることが論争になった歴史がある。
失業率で語れることは限られている
 最近、失業率がこれほど低下しているのに、物価・賃金が上昇しにくいことは不思議だ、とエコノミストの間で話題になっている。2018 年5 月の完全失業率は2.2%と1992 年10 月以来の低さである。この謎については、2018 年7 月6 日発行の拙稿「物価・賃金が上昇しにくい体質」で様々に論じた。

 ひとつだけ、その拙稿で十分に論じていないことがあることに気が付いた。失業率が低下すると、賃金(物価)が上がるメカニズムについてである。このメカニズムは、フィリップス曲線(フィリップス・カーブ)として有名であるが、その理論を巡っては、昔、経済学の世界で一大論争が起こった。その時の議論は、失業率と賃金・物価は必ずしも安定的なものではないというものだった。

 今、失業率が低下すると賃金・物価が上がるはずだと極めて強い先入観を多くの人が抱いているのは、フィリップス曲線の形状が安定しているはずだという認識を土台にしている。過去の論争を踏まえて、その形状がシフトし得ることをよく吟味してみる必要がある。そうした観点から、失業率と賃金の関係を中心にして、賃金が上がりにくい理由を再検討してみたい。

失業率2%前後で賃金上昇は1.7~2.0%

 フィリップス曲線は、過去3年(2015~2018 年)では明確に失業率低下によって賃金上昇する関係になっている(図表1)。今次景気拡大局面の後半になって、春闘交渉が活発化し、中小企業にも賃上げが波及してきたと理解できる。

フィリップス曲線は当てにならない
(画像=第一生命経済研究所)
 その関係においては、失業率が3.2%を下回ってくると、名目賃金がプラスに転じてくるという傾向が読み取れる。しかし、より厳密にこ の関係を軸に考えて、賃金上昇が起こるかどうかは少し幅を持ってみた方がよい。例えば、計算上、失業率が2.8%のとき、それに対応する 賃金上昇率は0.6%となる。2017 暦年の失業率は2.8%であり、年間の賃金上昇率は0.4%となる。理論値を△0.2%ポイントほど下回って いる。

 次に2018 年1~4 月は失業率が2.5%まで下がる。対応する名目賃金は1.5%となるが、実際のデータ(1~4 月平均)は1.2%であった。 もっとも、この1.2%のデータは厚生労働省「毎月勤労統計」の中で、サンプル替えが行われた影響によって高めに表われているとされる。厚生労働省が発表している旧サンプルのデータでは、前年比0.7%となる。旧サンプルが正しいとすると、理論値1.5%となり、実際の0.7%というデータは乖離が大きくなる。さらに、直近の失業2.2%(2018 年5 月)に対しては、理論値1.5%となり、実際の0.2%(旧サンプル、現行サンプル2.1%)とのずれはより大きくなる。

 要するに、失業率が2%前後になると計算上の賃金上昇率が1.5~2.0%まで上がってしまい、現実との乖離がどうしようもなく目立ってしまうのだ。少し冷静に考えると、フィリップス曲線の形状を確定したものだと理解することに無理がある。そうした心理が「現実のデータはおかしい」と思わせる。頭の中にあるフレームが、心理的にこうあるはずという予見をもたらすのである(フレーミング作用)。

反対に、人々の心理には、賃金上昇率が2%になるのは、きっと統計データが何か間違っていて、実際はもっと低いはずだという極めて強い先入観も出来上がっている。

 前述の旧サンプルの毎月勤労統計では、よりデータが安定している一般労働者の所定内給与が2018 年1~5 月平均の前年比0.7%(1 月0.6%→2 月0.8%→3 月0.8%→4 月1.0%→5 月1.0%)となっている。これは、現行サンプルの平均1.1%よりは低いとしても、多かれ少なかれ賃金上昇が起こっていることを示すものである。現状、全く賃上げが起きていないという先入観は正しくない。

自然失業率仮説

 フィリップス曲線を巡っては、かつて安定的な形状が描けないことへの説明が行われた。伝統的なケインジアンと呼ばれる経済学者は、失業率と賃金・物価上昇率の関係を仮想して、公共事業などの総需要対策を行えば、失業率を低下させることができると考えた。それに対して、自然失業率仮説を唱えるミルトン・フリードマンやエドモンド・フェルプスは一定の失業率(自然失業率、UN)を下回るまで総需要対策を打つと、失業率は下がらなくなり、賃金・物価上昇の方が進むとした(図表2、A→B)。

フィリップス曲線は当てにならない
(画像=第一生命経済研究所)
この状態では、総需要コントロールを信頼する政府が、あまりに雇用拡大・失業率低下を目指すと、インフレ加速だけを残して自然失業率よりも実際の失業率を下げられなくなる。そこの理屈は少し飲み込みにくく、インフレが加速すると、名目賃金から物価の伸びを差し引いた実質賃金の伸びは低下するというものだ。実質賃金が低下するのに気付いた労働者は、名目賃金が上昇しているのをみて一時的に雇用を増やしていたが、やがて雇用を減らすことになる(A→C→B)。名目賃金はプラスでも、実質賃金はマイナスだと知って、一旦は低下した失業率が再び自然失業率のところで下がらなくなり、名目賃金と物価だけが上昇していく。

 この自然失業率仮説は、1970 年前半と1980 年前後の二度のオイルショックの時に、失業率が下がりにくくなって、インフレ率だけが加速する状態をうまく説明していた。フィリップス曲線は、長期でみると、上方シフトして、その関係が不安定化することを多くの人に理解させた。

 理論の説明は少し飲み込みにくいかもしれない。しかし、フリードマンが、実質的な賃金がどう変化するかを予想して、労働者たちが雇用量を決めると主張したところは興味深い。人々は低失業率の下で総需要対策がインフレ率を動かすことを予想して実質賃金に応じて雇用量を決めるのだ。人々の予想がマクロの経済指標を動かすという考え方は、現代のリフレ理論へとつながっていく。自然失業率仮説のポイントは人々の予想が経済行動を変化させることに明示的な説明を行ったところである。

変化しやすいフィリップス曲線
 フィリップス曲線を期間ごとに描いてみると、その関係は時期によってかなり大きく変化していることがわかる(図表3、4)。名目賃金上昇率が失業率だけの要因で動く訳ではないので、その時々に他の要因が大きく変化している可能性を暗示させる。

フィリップス曲線は当てにならない
(画像=第一生命経済研究所)
 インフレ予想が強いときは、フリードマンが分析したように短期でみられるフィリップス曲線が上方シフトする。名目賃金をインフレ予想が動かしているから、賃金と失業率の2つの関係がシフトするのだ。


 反対に、デフレ予想が強いときは、短期のフィリップス曲線は下方シフトする。リーマンショック後の数年間は、企業のデフレ予想が強まって、人手不足が進む以上に賃下げの要請が大きく影響したと考えられる。最近は、そのデフレ予想も改善してきて、フィリップス曲線を上方シフトさせているのだろう。その変化をさらに後押しすると、賃金は1~2%へと上昇ペースを高めるのだろうが、そこには上方硬直性があるように思える。春闘でベースアップ率を1%以上も引き上げると、先々では大きな経済ショックに見舞われたときに人件費負担が収益面での足枷になるという警戒感である。

フィリップス曲線は当てにならない
(画像=第一生命経済研究所)
 インフレ予想が強いときは、フリードマンが分析したように短期でみられるフィリップス曲線が上方シフトする。名目賃金をインフレ予想が動かしているから、賃金と失業率の2つの関係がシフトするのだ。

 反対に、デフレ予想が強いときは、短期のフィリップス曲線は下方シフトする。リーマンショック後の数年間は、企業のデフレ予想が強まって、人手不足が進む以上に賃下げの要請が大きく影響したと考えられる。最近は、そのデフレ予想も改善してきて、フィリップス曲線を上方シフトさせているのだろう。その変化をさらに後押しすると、賃金は1~2%へと上昇ペースを高めるのだろうが、そこには上方硬直性があるように思える。春闘でベースアップ率を1%以上も引き上げると、先々では大きな経済ショックに見舞われたときに人件費負担が収益面での足枷になるという警戒感である。

そうした賃金上昇率の天井が意識されるとすれば、失業率は低下しても、名目賃金上昇率は低いままで推移することになる。これは短期のフィリップス曲線が下方シフトを細かく繰り返しているのと同じことである(図表5)。ここではフィリップス曲線が2000~2004 年から、2008~2012 年へと下方シフトし、さらに2012~2015 年、2015~2018 年へと随時下方シフトしてきたことがわかる。この変化は、雇用拡大とともに失業率が下がるが、雇用がシフトする先がサービス産業などであるため、賃金上昇率が徐々に低下しているという構造変化を反映しているという見方もできる。2012 年から2017 年にかけて、就業者は全体で+261 万人増えているが、そのうち医療・福祉・介護には+108 万人の増加が起きている。賃金水準が高くないセクターへの労働移動は結果的に賃金上昇率を下押しさせたと考えられる。

4つの重石
 より具体的に、企業にとって賃金を上昇させると、それが収益悪化を招くのではないかと不安にさせる要因として何があるのだろうか。

 この点は議論が尽くされた感もあるが、改めて整理したい。第一はトランプ大統領の保護主義に対する不確実性である。今春も、3%の賃上げが叫ばれたが、明確にそれを上回るには至らなかった。

 第二は、定年延長・再雇用の拡大である。60 歳以上になって、1人当たりの賃金は下がるとしても、総人件費への重石になるという警戒感はある。今後も、年金支給開始年齢が引き上げられるとの観測があり、それが企業にさらなる高年齢の雇用確保を要請されるのではないかと思わせている。

 第三は、サービスの生産性が低く、賃金上昇分を価格転嫁する不安が根強いことである。この点は、過去数年間で随分改善したが、それでもトラウマのように抵抗感が残っている。

 第四は、日本経済の期待成長率の低さである。リーマンショックが再来すると思わせるのは、そもそもベースラインの成長見通しが弱いことと微妙に関係している。そして、一旦人件費が上昇すると、リストラや賃下げがなかなか難しいという見方も、間接的に低い成長見通しの中で、高い賃上げ率を許容できない心理をつくっている。

 筆者は、賃上げ率が高まらないことに対する見解として、主に上記4つが大きいと考える。そうした要因の存在感が大きいということは、その一方でフィリップス曲線に沿って失業率の低下を通じて賃上げが進むという流れを制約する結果を生み出す。

 失業率が5月に2.2%になっても依然として賃金上昇が鈍い背景には、企業の心理として賃金上昇率を高めることへの抵抗感が根強いことがある。そうした点で、日本経済が構造改革に取り組む必要性は今も大きいのである。(提供:第一生命経済研究所)

第一生命経済研究所 経済調査部
担当 熊野英生
https://zuuonline.com/archives/188288
2:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/27 (Mon) 08:18:45

低金利政策や量的緩和政策は貧困層から富裕層へと富を移転させる政策

サマーズ氏: インフレは有権者が紙幣印刷を支持したせい
2023年3月26日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35011

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がジョン・スチュアート氏によるインタビューでインフレについて語っている。

インフレの原因

インフレは2022年にようやく食卓の話題になった。ファンドマネージャーや経済学者たちの話題になったのは2021年だった。ここで初めてインフレ危機について取り上げたのは2020年10月である。

金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
インフレはウクライナ情勢ではなくコロナ後の現金給付が引き起こした。それは3度の現金給付で急増したアメリカ国民の可処分所得とインフレ率のチャートを並べてみれば分かる。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/10/2022-aug-us-disposable-personal-income-and-cpi-growth-chart.png


だからサマーズ氏はこう説明する。

これまで起こったことはこうだ。未曾有の景気刺激があった一方で、経済は生産量を上げられなかった。需要は急増し、急増した需要が物価と賃金を押し上げ続けた。

簡単に言えばこうだ。お風呂にお湯を入れ過ぎればお湯はあふれる。需要が急増し過ぎれば物価は上がる。

ここまではまともな経済学者や著名ファンドマネージャーならば誰もがするような当たり前の議論である。

だが今回のインタビューが少し違うのは、インタビューしているのがリベラル派のコメディアンであるスチュアート氏だということである。

リベラルと保守

スチュアート氏はコメディアンで経済の素人だが、政治的にリベラルでアメリカのリベラル派の有権者が好きそうな論説を好きに喋っている。

例えば最近の物価の急激な高騰は企業が強欲なせいだと主張してサマーズ氏に次のようにたしなめられている。

企業が最近急に強欲になったという議論は無理があると思う。

だがリベラル派を代表するアメリカ民主党の政治家、例えばエリザベス・ウォーレン氏などは平気でこういうことを言う。

しかしこのインタビューでスチュアート氏が的を射ていることが1つある。緩和政策が企業利益ばかりを押し上げて有権者を豊かにしないということである。

企業や株主が儲かれば労働者もいずれ儲かると何の根拠もなく考え、アベノミクスを支持したイェール大学名誉教授の浜田宏一氏は、結局労働者の得にはならなかったことについて東京新聞に次のように述べている。

予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。

筆者は知らなかったのだが、経済学者の仕事とは漠然と考えることらしい。

更に酷いことには彼は次のように続けている。

普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくはずだと書いてある。

教科書に書いてあったのでそうなると思ったそうである。

出来る限り控え目に言えば、彼のコメントはあまりにも酷すぎる。筆者の意見では、間違った通説(そんなものはいくらでもある)を正せる人間でなければ専門家と呼ぶことはできない。彼は素人である。だがそれでもイェール大学の教授にはなれる。そういうものである。

低金利政策の意味

話をサマーズ氏に戻そう。こういう偽物ばかりが世の中にいるなかで、サマーズ氏は自分で考える頭を持った本物の経済学者である。

彼はスチュアート氏にこう言っている。

例えばリーマンショック後の景気後退に利下げで対応するべきではなかったという議論は出来るかもしれない。

だがそれは当時リベラルたちが主張していたことではない。リベラルたちが当時言っていたことはこうだ。「低金利が必要だ、そうすればローンを組んで家を買える、車を買える、求人が増える」

だが低金利は労働者を豊かにはしなかったし、現金給付は酷いインフレをもたらした。緩和政策は人々をリッチになった気にさせる。だがそれだけである。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
何故か。そもそも低金利政策や量的緩和政策がどういうものかを考えてほしい。

債券にとって金利低下は価格上昇を意味するので、低金利政策とは債券価格を上昇させる政策である。量的緩和政策はもっと直接的に中央銀行が債券を買い入れる政策なので、債券価格が上がる。

債券が割高になれば資金は株式市場に流れる。そうすれば株価は上がる。よって低金利政策とは資産価格を上昇させる政策である。その受益者は、当然ながら資産を持っている人間である。

そうして元々資産を持っている人間は低金利政策によってより豊かになる。だが実際には経済の中に存在する商品やサービスの量が変わったわけではないので、低金利政策で富裕層が豊かになった分は実際には貧困層の取り分から来ている。

つまり低金利政策や量的緩和政策はほとんど直接的に貧困層から富裕層へと富を移転させる政策なのであり、筆者にまったく分からないのは、何故そんな政策を株式などほとんどまったく持っていなかった中間層や貧困層が支持したのかということである。

結論

低金利政策や量的緩和政策は資産価格を上昇させる政策であり、それ以外の何ものでもない。それで豊かになるのは当然ながら資産を持っている人間であって、資産を持っていない人間ではない。

何故こんなことが多くの人には分からないのだろう。 彼らは何故インフレ政策を支持したのだろう。筆者には永遠の謎である。インフレが物価上昇だという意味さえ彼らは理解していなかったのに、何故インフレ政策を支持することが出来たのだろうか。彼らは超能力者なのだろうか。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11992

ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31597

そしてもう1つ付け加えれば、現在行われている利上げと量的引き締めは資産価格を下げる政策である。緩和政策が終わり、引き締めが行われる時期になってようやく株式を買い始めたつみたてNISA詐欺の被害者たちは真正のマゾなのだろう。

株式投資ブームに乗った時点で個人投資家の損失はほぼ確定している

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35011
3:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/12 (Wed) 11:30:59

サマーズ氏: 経済予想を間違い続けている中央銀行は自分探しの旅に出るべき
2023年4月11日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35636

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、Fed(連邦準備制度)の金融政策が次は誤らないためには何をすれば良いかについて語っている。

中央銀行の骨董品的な経済モデル

アメリカの中央銀行であるFedは、2021年には既に生じていた物価高騰を長い間「インフレは一時的」と言い張ることで放置し、金融緩和を続けてインフレを悪化させた。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
サマーズ氏は債券投資家ジェフリー・ガンドラック氏らと共に、2021年からインフレの脅威を警告し続けてきた専門家の1人である。

こうしたFedの経済予想と金融政策を、サマーズ氏は次のように評している。

Fedは彼らの経済モデルと組織的な判断プロセスに依存してきた。そして彼らの判断プロセスはインフレを非常に長い間非常に誤った形で判断してきた。

「経済モデル」と言うときに思い出されるのは、例えばフィリップス曲線だろうか。労働市場が強まればそれだけでインフレが起こると何の根拠もなく主張する、経済学の教科書に載っている考え方だが、Fedは前議長であるジャネット・イエレン氏の時代あたりまでこの根拠のない経済モデルに従って金融政策を決めてきた。

現在のFedはこのフィリップス曲線という骨董品を既にある程度捨て去っているが、最近日銀総裁に就任した植田氏はいまだにフィリップス曲線に言及しており、筆者は少し驚いたことを以下の記事で書いている。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
何故彼はいまだにフィリップス曲線などと言っているのか。植民地政策に遅れて参加してすべての責任を押し付けられた日本人のやることなのだから、何か独創的な考えがあるのだろう。

一方で、ここの読者ならば労働市場は単に物価の一部であるサービス価格に影響する要素でしかないことを理解するだろう。中央銀行総裁より深く経済を理解することは、残念ながらそれほど難しくない。

永遠に間違い続けるFed

しかし1回の間違いでFedを責めるのは可愛そうではないか。誰にでも間違いはある。彼らは今回たまたま間違っていただけかもしれない。

だがサマーズ氏は無慈悲にも次のように言う。

そして彼らの判断プロセスはシリコンバレー銀行などいくつかの銀行で起こっていたことを見逃した。

以下の記事で説明したように、シリコンバレー銀行の破綻は、主に彼らの顧客だったシリコンバレーのスタートアップが高金利によって資金調達できなくなったこと、そしてシリコンバレー銀行自身が保有していた債券の価格が金利上昇によって下落したことが原因である。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
つまりはシリコンバレー銀行の破綻はFedの利上げの結果なのである。にもかかわらずFedは3月のFOMCで次のように言い放った。

3月FOMC会合結果、パウエル議長に2018年世界同時株安の影が見え始める
アメリカの銀行システムは健全で強靭だ。

自分の行動の結果として起こっていることを黙殺するこの姿勢は、コロナ以前の金融引き締めによって起きた2018年の世界同時株安のことを思い出させる。当時、株価の下落と量的引き締め(バランスシート縮小)についてパウエル議長は次のように言っていた。

12月FOMC会合結果は空売り派への満額回答 (2018/12/20)
現在の短期的な混乱は多くのファクターが原因となっており、バランスシートの縮小が原因だとは思っていない。

バランスシートの縮小は大した問題を起こしていない。

だが結局株価は下落を続け、Fedは引き締めの撤回を余儀なくされた。

更に言えば、Fedは2008年のリーマンショックの直前、サブプライムローンの問題は不動産業界に限られた問題であり、アメリカ経済全体とは関係がないと主張していた。

年末のスコット・マイナード氏の以下の言葉が思い出される。

エビデンスに基づけば、Fedの予想は常に間違っていると言える。

サマーズ氏は次のように述べる。

Fedは真面目な自分探しの旅に出る必要があるだろう。

結論

サマーズ氏がそれが特に今必要だと考える理由は、Fedがもう一度間違いを犯しそうな局面が近づいてきているからである。

彼はインフレ後の経済がこれまでの経済とまったく異なる世界であることを指摘している。何故ならば、これまでの世界は金融緩和と低金利を前提としてきた一方で、コロナ以後はインフレによって高金利が長期間続くと予想されるからである。

高金利によって何が変わるか? まずこれまでゼロ金利によって延命されてきたゾンビ企業が淘汰されている。それで利益を出していなかったシリコンバレーのスタートアップに金がなくなったのである。

他には預金者の行動の変化が挙げられる。サマーズ氏は次のように述べる。

これまでの金融システムは、多くの家計が自分たちの貯金に対して金利がほとんど付かないことを許容していたことに依存してきた。

これまで銀行は預金に金利を払わなくとも良い世界に慣れてきた。だが利上げの後、人々はただでお金を預けようとはしなくなりつつある。

銀行はこれまで無コストで調達した資金を債券などに投資していればそれで商売になった。だがそうはいかなくなる。それが今既に苦しんでいる銀行を更に苦しめる。

高金利の影響はそれだけではない。不動産業界は不動産ローンの金利が上がって苦しんでいる。そして低金利によって40年間上昇トレンドを続けてきた米国株も、これからはそうはいかなくなる。

「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
世界は低金利に慣れすぎている。だから高金利の影響はまだまだこれからである。

サマーズ氏はそれを警告している。専門家が言うことは皆同じである。

ドラッケンミラー氏: インフレを引き起こした政府の間違いは長期にわたって貧困層を苦しめる

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/35636
4:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/19 (Wed) 12:33:48

22年に続き高インフレで実質収入は減少している
2023.04.19
政府が自慢した満額春闘は労働者の1割の大企業だけだった


「満額春闘」、9割の労働者に関係なし

2022年の前年比消費者物価上昇率は4.0%だったので1年間で4%上昇し、21年12月の0.5%から跳ね上がり国民生活に打撃を与えている

植田日銀総裁は「今年度半ばに2%を下回る」と述べていて、日本のインフレは長続きせず沈静化するとの見通しを示している

インフレは生産に対して需要が大きいために起きるが今回はウクライナ侵攻などで原油や天然ガスの供給が減ったのが原因で、日本の景気が良くなったわけでは無かった

アメリカの場合は利上げしても6%以上のインフレが続いていますが、向こうは富裕層の爆買いが止まらず景気が良すぎてインフレになっています

アメリカは上下の所得の差が非常に大きいので、富裕層は毎日フェラーリを買える一方で平均以下の層は高騰する家賃を払えずホームレスが増えている

アメリカでは高収入な人ほどより所得が増えているのに対し低所得な人は物価上昇に賃金上昇が追い付かず、特に家賃は大都市だとワンルーム(2人用)30万円から50万円になっています



日本では23年1月の全国実質賃金が前年比マイナス4.1%になり、物価上昇率のプラス4.0%を丸ごと労働者が負担しているのが分かった

従業員5人以上のすべての事業所平均で、物価が4%上がったのに賃金上昇はゼロか微減だった

春闘などで大幅増が報道されていたが安倍首相時代から疑問に思っていたのは、政府は大企業正社員の賃金だけを上げようとし、ボーナスが出ないような労働者は「人間ではない」とでも思っているらしい

大企業の正社員は日本の全労働者の10%しかおらず、この人達のボーナスをどうしようが9割の労働者には何の関係もない話です

牛丼屋や回転ずしが給料やボーナスを引き上げても、店で働いているのはパートやバイトや個人事業主扱いなので、これも無関係な話です

そうした会社の給料引き上げて収入が増えるのは本社に所属している正社員の人達だけです



日本政府はインフレで債務圧縮
帝国データバンクによると23年の食品値上げが4月18日時点で2万品目になり、前年より3カ月早い2万品目突破になりました

同社では23年秋には値上げが3万品目を超えると予想しているが、植田総裁が正しければ夏をピークにインフレは沈静化する筈です

日銀はインフレ率が上がってもなるべく利上げしない方針を示しているが、その理由の一つは今回のインフレが需要が強まったのではなく原油価格上昇に過ぎないからです

景気が良すぎて物価が上がるなら良いですが景気は悪いまま賃金が上がらないのに物価だけが上昇しているので、今アメリカのように利上げしたらハイパー不況になるでしょう

もう一つは借金に苦しむ日本政府に低金利は都合が良いからで、インフレ率より国債金利が低ければ日本政府の債務は実質でインフレ分だけ圧縮されます

日本政府は防衛費倍増で5兆円、子育て支援でも数兆円を必要としているので、既存債務1000兆円を年数パーセント圧縮できるのは助かる筈です

毎年1%でも政府債務がGDPに対して圧縮されると10年で10%減るので侮れない数字になり、年10兆円も公的債務が実質目減りします

政府債務が減る分はインフレで苦しむ国民に押し付けられる訳で、何のことはない「政府債務の民間債務への付け替え」に過ぎません

GDP成長率予想は相変わらず 実質1%前後(IMF予想は1.8%)に留まっていて、他の主要国より低い状態が今後も続く
https://www.thutmosev.com/archives/47654345j.html
5:777 :

2023/06/04 (Sun) 21:40:23

5月雇用統計は失業率上昇、アメリカ経済減速へ
2023年6月3日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37202

5月分のアメリカの雇用統計が発表された。労働市場が強いか弱いかは賃金のインフレにかかわり、賃金は特にサービス業などのコストとなって経済全体のインフレがどうなるかにかかわるので、雇用統計は現在非常に重要な指標となっているが、結論から言うと今回の結果はデフレ的だった。

低下した失業率

失業率は3.7%となり、前月の3.4%から上昇した。予想の3.5%も上回る結果であり、そこそこ上がった失業率だったと言える。


チャートで見ると去年から横ばいなのだが、金融引き締めでアメリカ経済が弱くなっていることも考えると、やはりこのチャートは失業率が底打ちしていることを意味すると取るべきだろう。長期的には失業率は上がってゆくことになる。

今後の失業の増加はインフレ政策の当然の結果である。まずインフレが起こり、失業率は短期的には低下するが、インフレ抑制のために金利を上昇させなければならなくなると、失業率は上がるのである。そして長期的には経済にマイナスとなるのだが、その辺りの話は以下の記事で説明している。

ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31421


平均時給も減速

次に平均時給だが、平均時給は前月比年率で4.0%の上昇となり、前月の4.8%から減速した。


時給は特にサービス業にとっては直接的なコストとなるが、こちらも減速した。チャートで見ても、中期的な減速トレンドとなっている。

平均時給に関しても特にここからインフレ加速になる理由がなく、経済全体としては中央銀行が政策金利を5%に保つ限り減速していくほかないので、このまま減速トレンドが続くのだろう。

結論

ということで、アメリカ経済は順当に減速への道を進んでいる。市場では労働者数自体が増えたことに反応してドル高となっているが、インフレに関して一番重要なのは平均時給であり、アメリカが利上げから利下げに転じるのもそれほど遠くないと見るべきだろう。

世界最大のヘッジファンド: 経済クラッシュで量的緩和再開まであと1年以内
ドル円は次のように推移している。


ドル円の見通しについては以下の記事に書いているので、参考にしてもらいたい。

最近のドル高の理由とドル円の今後1年の推移予想

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37202
6:777 :

2023/06/04 (Sun) 21:41:50

ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
2022年12月6日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31421

アメリカではインフレが減速し始めており、インフレ減速とともに失業率上昇などの景気減速が懸念されている。

そこで今回は、20世紀最大のマクロ経済学者、フリードリヒ・フォン・ハイエク氏の『貨幣論集』に収録されている論文から、インフレ減速後の失業増加について語っている部分を紹介したい。

インフレ抑制のための金融引き締め

2021年には既に始まっていたインフレの脅威は、多くの著名投資家らが警告していたにもかかわらず、Fed(連邦準備制度)のパウエル氏など中央銀行家には無視されていた。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
そして物価高騰は手遅れとなった。パウエル氏が過ちに気付いた時点でアメリカのインフレ率は既に7%近くまで上がっていた。

パウエル議長、ついに「一時的」を撤回しテーパリング加速を示唆 (2021/12/1)
インフレとは供給に対して需要が多過ぎることであり、つまりは需要に対してものが不足している状況だが、ものの供給を急に増やすことは出来ない。

だからFedはそこからこれまでの低金利政策を撤回し、金融引き締めを行なってこれまでばら撒かれた紙幣を回収することでインフレを抑えようとしている。

インフレ減速と雇用

ここで問題になるのが、雇用である。これまで緩和政策は雇用を支えてきた。お金がばら撒かれているからこそ、企業は従業員を従来よりも多く雇い、その結果コロナ後に高騰していたアメリカの失業率はかなり急速に押し下げられた。


コロナ後のGDPの急回復もそうだが、この勾配がかなり急であることに着目してもらいたい。それは未曾有の財政支出によって実現された。このような政策に副作用はないのか。ないわけがないのである。

現代最高のマクロ経済学者であるラリー・サマーズ氏は、サービス業における物価高騰を抑えるためには賃金の減速が必要であり、失業率上昇は不可避であると言っている。

サマーズ氏: 経済へのダメージなしでインフレ抑制はできない
それは正しい。事実、1970年代の物価高騰を止めるためには、大量の失業が発生しても金融引き締めを続けるしかなかった。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
しかしサマーズ氏の言い方では、物価高騰を止めるために故意に失業率を上昇させなければならないと言っているように聞こえる。

だがハイエク氏の論理はそうではない。彼は次のように述べている。

失業はインフレが加速をやめたときに、過去の誤った政策の帰結として、非常に残念だが不可避の結果として出現せざるをえない。

ここで彼が「過去の誤った政策の帰結として」と言っていることが重要である。つまり、インフレ減速後(今の話では2023年以降)に起こる大量の失業は、引き締め政策が引き起こすものではなく、過去のインフレ政策が原因だとハイエク氏は指摘している。

何故そう言えるのか。彼は著書では当時の例を挙げており、それについては以下の記事で取り上げている。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
だが今回は彼の考えに従って現在のインフレの事例で考えてみたい。

2023年に起きる失業の本質

コロナ後には世界中で現金給付などの形で大量の紙幣がばら撒かれた。その結果として上記のように多くの人が雇用され、失業率は急速に低下した。

紙幣のばら撒きは同時に人工的な需要の急増をもたらしたので、需要が供給を大幅に上回り、インフレが起きた。

ここでハイエク氏が指摘しているのは、まず政府によって人工的に引き起こされた雇用とインフレは分離できないコインの表裏であり、片方だけを除去することはできないということである。

例えば日本でいまだに行われているインフレ政策で考えてみよう。全国旅行支援は旅行をする人に旅行代金の40%の補助金を出す政策だが、この政策によってホテルなどの需要が急増、インフレが起こっている。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
この政策はただのジョークに過ぎないが、この例はインフレとは何かを説明する際に便利なのでよく使っている。この時にホテル側に何が起こっているかを考えてもらいたい。

通常、多くのビジネスは需要の急増にすぐに対応できるようには出来ていない。特に問題になるのは雇用である。従業員は簡単に増やしたり減らしたりすることができないからである。特に日本の法律では、一度雇った従業員は簡単に解雇することができない。

ホテル側は2つの選択肢を強いられる。1つは既存の従業員に無理をさせて需要の急増に対応することである。結果として経営者と従業員の関係は悪くなり、実際に全国旅行支援で激務になったために従業員が辞めた宿泊施設についての報道がなされている。

もう1つの選択肢は需要の急増に新たな従業員を雇うことで対応することだが、問題は需要増が終わったからといって従業員を辞めさせることができないことである。そしてその次には逆に供給過剰によるデフレが起こる。無理に増やされた分の従業員は、通常の需要量に戻った後には、本来不要な労働力だからである。

どちらにしても酷い結果である。そしてこの酷い結果は、ホテル業界に贔屓をした分、経済の別の部分で増税が行われるという生贄を捧げることで実現されている。

インフレ政策が害悪である理由

人工的なインフレは将来のデフレという犠牲によって実現され、ホテル業界の売上増加は別の業界からの(場合によっては別の世代からの)搾取によって実現される。

ドラッケンミラー氏、高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判
だがトータルで差し引きゼロかと言えば、そうではない。ハイエク氏は次のように述べている。

すべての世代の経済学者は、政府は短期的には貨幣数量を迅速に増加させることによって、とくに失業のようなあらゆる経済的悪から人びとを救済する力を持っていると教え続けてきた。

残念ながらこれは短期において妥当するにすぎない。短期的には有利な効果をもつように見えるそのような貨幣数量の拡大は、長期的にはさらに大きな失業の原因となる。

何故か。まずホテルの例における経営者と従業員の関係悪化が害悪でしかないことに異論はないだろう。経営者は通常、従業員が無理をすることのないように事前に計画しているものだが、いきなり決まった全国旅行支援ですべて台無しである。

一方で人工的な需要増のために新たに従業員を雇った場合、その従業員は全国旅行支援がなければ別の仕事についていたはずである。その人は全国旅行支援のためにホテルの従業員としての経験を強いられたわけだが、その経験が活かせる需要は、全国旅行支援による需要が引いた後の世界には残されていない。

一方で全国旅行支援がなければ、もともと自然に存在する需要に従事する労働者として別の業界で経験を積み、その経験は将来にわたって活かされることになるだろう。それがばら撒きで失われた本当の価値である。

より酷い例は全国旅行支援のために税金で行われているコロナ無料検査で、東京都の資料によればPCR検査1件あたり最大9,500円、抗原検査の場合4,000円の補助金が出されるとあり、本来何の需要もない事業が経済的に成り立つ構図になってしまっている。しかし本来需要のない事業に従事する経験を積んでしまった従業員の将来はどうなるのか。

このようにして人工的な雇用の増加は、インフレが終了する時、増加させた分以上の失業を吐き出すことになる。公共事業がなければ本来存在しないような仕事の経験が大量に生産されるからである。

政治家がこうした状況に疑問を感じない理由の1つは、彼ら自身が自然の需要では本来必要とされない仕事に就いているからである。

もう1つの理由については、ハイエク氏の言葉を引用しよう。

しかし、短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。

結論

人為的に引き起こされたインフレは、例えそれが僅かであろうともすべて害悪である。

しかし何度も言っていることだが、人々が豊かになるためには紙幣をばらまくのではなく生産を増やさなければならない。レイ・ダリオ氏の言葉を何度でも引用しよう。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

しかしリフレ派の馬鹿たちにはこの理屈は難しすぎる。

厄介なのは、大量失業というインフレ政策の真の弊害はインフレが起こっている限りは起こらないということである。

ハイエク氏は次のように述べている。

将来の失業について責められる政治家は、インフレーションを誘導した人びとではなくそれを止めようとしている人びとである。

1970年代の例で言えば、インフレ減速後に発生した大量失業の責任を取らされたのは、1971年に紙幣印刷をしたニクソン大統領ではなく、1980年にインフレを退治し大量失業を表面化させざるを得なかったボルカー氏だった。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
アメリカでは今ちょうどインフレ減速からの失業増加が始まろうとしている。インフレは失業が始まってからが本番である。これから大量失業と大恐慌(そうでなければインフレ第2波)がアメリカ経済を待っている。

ポジャール氏: 政策金利は5%以上に上がって景気後退ではなく恐慌を引き起こす
そして日本でも日銀の黒田氏が、長年の緩和の弊害がちょうど出始めたタイミングで職を離れるらしい。彼は内心ほっとしているだろう。彼の作り出した害悪のために非難されるのは、彼ではないからである。

政府というあまりに酷い仕組みを廃止すべきである。そうでなければ日本国民はいずれ大損することになる。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31421

  • 名前: E-mail(省略可):

Copyright © 1999- FC2, inc All Rights Reserved.