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英国鉄道労働者4万人がスト 物価高や低賃金への反撃

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2023/01/17 (Tue) 12:45:32

英国鉄道労働者4万人がスト 物価高や低賃金への反撃 あらゆる業種に波及しゼネストに発展する勢い
2023年1月17日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25536

 インフレ率が3カ月連続で10%をこえる記録的水準に達し、食料やエネルギー価格高騰に見舞われているイギリス国内では、昨年末から今年始めにかけて賃上げを求める鉄道労働者、郵便配達員、看護師、救急医療隊員、大学職員など、公共部門で大規模なストライキが断続的におこなわれている。全国民生活に影響を与えるストライキについて、スナク英政府は、労働者側への攻撃を強めているが、大手調査会社「ユーガブ」が1日に発表した世論調査では、政権支持率は13%(不支持率は65%)と記録的低迷を見せ、ストの波は自国民を厳しい生活苦に追い込む政権に対する国民的要求と結びついて広がっている。




駅前でピケを張る鉄道労働者たち(4日、英国リバプール)

 英国内の幹線鉄道、地下鉄、船舶、バス、トラックに至る交通運輸産業部門の労働者が加盟する鉄道海事運輸労組(RMT)は、昨年末に引き続き今月3日から1週間、全国4万人の労働者と14の鉄道運営会社がストライキに突入し、全国のほとんどの鉄道サービスを閉鎖した。



 インフレ率が年率11%をこえ、エネルギーや食料の価格上昇で生活苦が増すなかで、RMTは最低7%の賃上げを鉄道会社当局に求めてきたが、雇用者側は2~3%の賃上げ案を提示しただけで、昨年12月から始まったストを経ても正式な交渉に応じていないためだ。



 RMTは、「(鉄道部門の雇用主である)ネットワーク・レールとレール・デリバリー・グループの両方が、雇用の安定、賃金、労働条件に関して納得できる提案を作成することを、政府の閣僚が直接阻止している」と、背後から労使交渉を阻む政府を批判している。



 RMTのミック・リンチ書記長は、「1993年の(鉄道)民営化以来、私たちは鉄道業界と協力して交渉による解決を成功させてきた。だが、この紛争では前例のないレベルで大臣による干渉があり、鉄道雇用者がわれわれと労使交渉することを阻み、紛争を解決することができない」と訴え、雇用者が交渉に応じるまでストを継続する意志を固めている。各鉄道駅には労働者たちがピケを張り、そこに他業種の労働者や市民たちも合流して政府への抗議行動が全土でくり広げられている。



  RMTの調査によれば、鉄道会社はコロナ禍にあった2020年3月~22年9月の期間、公費投入によって3億1000㍀(約495億円)の利益をあげ、今年9月までに純利益は4億㍀(約639億円)をこえる見通しにある。だが、労働者の賃金水準は凍結され、会社はこれらの利益をすべて株主配当に回すことができる。加えて、ストライキによる損失補償のために推定3億㍀の税金が投入される予定だ。



 3億㍀の利益があれば、10・6%の賃上げを実現するのに十分であったにもかかわらず、鉄道会社レール・デリバリー・グループは4%程度の賃上げ案しか提示せず、逆にコストカットのために全車両で「運転手のみ」のワンマン運行を導入するなど労働条件やサービスを悪化させた。



 リンチ書記長は、「国務長官と企業側は、賃上げのための改革の必要性を説いてきたが、実際には、豊富な資金がありながら政府内の利潤追求者とその仲間によって労働者の賃上げは塩漬けにされてきた。労働者、乗客、納税者の利益が、一握りの民間輸送会社のために犠牲にされるのは言語道断だ。経営陣や富裕層が何百万㌦も稼ぐ一方で、われわれ労働者は、生活費危機が深刻化するなかで、基準以下の給与提示と、苦労して手に入れた条件の破棄を受け入れるよう求められている。今こそ労働者と乗客の利益を最優先するときだ。鉄道事業者とネットワーク・レール(鉄道網の管理業者)の双方と交渉による解決が必要であり、政府はこれらの交渉を阻害することをやめるべきだ」と主張している。



80年代以降最大のスト 他の公共部門でも




ストライキをたたかうバス労働者(昨年12月31 日、ロンドン)

 交通運輸部門では、外部発注となって低賃金労働が常態化している鉄道清掃員もストに加わり、バス会社でもストがおこなわれている。英国内では、過去40年で最速ペースで物価高が進む一方、労働者の賃金は据え置かれているため実質賃金は低下しており、国内では1980年代以降最大規模といわれるストのラッシュが起きている。



 昨年末からは、国民保険サービス(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会」(RCN)が、106年の歴史のなかで初となるストライキを決行。新型コロナ・パンデミックで現場は多忙を極めているものの、インフレ率を大きく下回る賃金レベルで離職者があいつぎ、現場の激務に拍車が掛かっている。国に対して19%の賃上げを求め、「看護師の声を聞け」「公的医療を守れ」をスローガンに英国全土で約10万人がストを決行した。



 これに呼応して、救急医療に携わる救急隊員や緊急電話の応答係などもストをおこない、「労働者の生活を守ることがNHS(国民保険)を救う」として賃上げを求めている。
 さらに、郵便業務を担当するロイヤルメールの労働者もストをおこない、150の大学など高等教育機関の教職員7万人以上が、年金制度改悪に抗議し、賃上げを求めるストを実施した。高速道路・国道労働者、運転免許試験官、航空会社の地上スタッフ、出入国管理局職員、手荷物受取人、国境警備隊員、港湾労働者たちも賃上げを求めてストを断続的におこなっている。



 英国内で教育、地方自治体、医療、警察、エネルギーなど公共サービスの現場で130万人をこえる組合員を擁する公務員組合(UNISON)が、これら一連のストを支持しており、さまざまな分野で相互に連帯しながら断続的におこなわれるストライキが広く社会現象化している。



 英オンラインメディア『インディペンデント』の世論調査(昨年12月16~18日)では、看護師ストへの支持率は63%にのぼり、鉄道労働者のストには43%、教師のストには49%、郵便労働者のストには48%と高い支持を集めている。英国全土を席巻する反政府世論や抗議行動にはじき出される形で、昨年7月には保守党のジョンソン首相が辞任に追い込まれ、その後「富裕層の減税」を主張した後任のトラス首相は就任わずか45日目でのスピード辞任となった。



反ストライキ法案提出 スナク政府



 英国政府や大手メディアは、ストへの反感を煽るキャンペーンに熱を上げており、政権の閣僚らは「この国の働く人々に最大の混乱を引き起こすことを意図したもの」「(RMT書記長は)あなたのクリスマスを殺す男(旅行や物資の輸送を妨げている)」などと非難を続けてきた。



 それでも全土を席巻するストライキの波にたまりかねた保守党スナク政府は昨年、交通機関、医療、消防、教育、国境警備などの公共部門のストライキを制限する法案を議会に提出し、強権的にストライキを抑えつける動きを見せている。



 反ストライキ法案(最低サービス水準法案)の主な内容は、次の通り。
 ・ストライキ中も、(交通機関や医療機関、学校などの)公共機関は最低限のサービス水準を確保しなければならない。水準に満たない場合、労働組合は損害(賠償)に対する法的保護を失う。
 ・雇用者は、ストライキ中に適切なサービス水準を満たすために必要な労働力を特定し、労働組合はストライキ中も適切な人数の労働者を確保する措置を講じなければならない。
 ・特定された(働くことを求められた)にもかかわらずストライキを継続する労働者は、不当解雇に対する保護を失う。



 英国では、ストライキをおこなうための特別な権利は存在しないが、そのかわり労働組合と労働者はスト(労働放棄)のさい、損害賠償について法的保護を受ける。新法案では、これらの保護をとり除くため、従わない労組は雇用主から損害賠償を請求されるようになり、従わない個々の労働者は解雇されることになる。その結果、労組はストを中断せざるを得なくなり、労働者はピケ(職場を封鎖してスト破りを防止する行動)を乗りこえることをよぎなくされるという筋書きだ。



 RMTのリンチ書記長は、「まるで徴兵制だ。ストライキをおこさなければならないほど過酷な労働環境を無視し、労働者の要求とは無関係に、ストを無効化する権利だけを政府や企業に与えるものだ。労働者個人にはストをおこなう権利がないにもかかわらず、企業側が出勤しなければならない人を指名し、個人がピケをこえなければ解雇される。これに異を唱えた組合には罰金を科す。それは人権を抑圧するものであり、もし私たちがこれに抵抗できなければ、労働者だけでなく、社会の市民としての私たちの未来が脅かされる。私たちは自由と権利が厳しく制限された社会で生きていくことになる」とのべ、業種の違いをこえた労働者の団結と一般市民も交えた運動で徹底抗戦を呼びかけている。



 英国社会では、ストライキは賃金や労働条件の改善を勝ちとるための不可欠な手段として根付いており、市民が生活に対する不当な攻撃から身を守るための最後の手段とみなされている。1980年代のサッチャー政権による新自由主義改革で吹き荒れたのが労働運動への攻撃であり、それが現在に続く低賃金と格差急拡大の主な要因となったからだ。それは、一般市民にとっても公共サービスを守るための「最後の砦」と認識されており、最後のカードを切ってきたスナク政権への反発は強まっている。



社会歪める労働者攻撃 劣化した公共サービス



 英国の労働運動を追ってきたフリーライターのタージ・アリ氏は、ストによる混乱の責任を労働者側に求めるメディアのキャンペーンについて、次の様に指摘している。



 「これらの攻撃は、鉄道混乱の責任を、その運営に真に責任を負っている政府や鉄道会社ではなく、鉄道労働者に突き付けることを目的としたものだ。ストライキによる混乱に焦点を当てるマスコミの報道は、これまで政府が平然とおこなってきた鉄道網縮小に対する報道とは対照的だ。英国では過去5年間で、67万4452本の列車が時刻表から削除され、ストライキの36日間以上に相当する運行本数が削減された。しかもストによる運行停止とは異なり、これらの減便は永久的なものだ」。



 英国政府は、コロナ禍で危機に陥った鉄道網維持のために投じた160億㍀(約2兆5000億円)の財政支出を、労働者の搾取やサービス削減によって償還させるため、今年度と来年度の両方で20億㍀(約3200億円)削減することを目的とした鉄道分野の緊縮政策をうち出し、コロナ禍でおこなわれた運行ダイヤ廃止や乗務員減などのサービス削減を恒久化し、運賃も値上げした。



 アリ氏は、「切符売り場を閉鎖し、列車から職員を排除する当局の提案は、鉄道職員の雇用の安定を脅かすだけではない。安全で利用しやすい鉄道そのものに対する脅威だ。同時に鉄道事業者は、人員不足、削減、民営化の機能不全から生じる鉄道の問題を、職員のせいにしている。たとえば、経営破綻したフランチャイズでは、その所有者がその原因を非公式の労働運動のせいだとする誤った判断をしている。政府は、鉄道の問題を労働者と乗客の対立にすり替えたいようだが、実際には鉄道労働者は乗客の側にいる。鉄道労働者は、運行や乗客のサポートによって重要な公共サービスの機能を維持しており、緊縮財政によってサービスを低下させ、鉄道を破壊しようとする動きに対抗しているのは彼らだ。鉄道労働者と乗客は、利益追求のために鉄道を破壊しようとする政府によって同じく不当な扱いを受けてきた。鉄道労働者は全国民のために反撃しているのだ」と強調している。



 また、英リベラル誌『トリビュート』編集者のカール・ハンセン氏は、「効果的なストライキの脅威がなければ、団体交渉は集団的な物乞いに過ぎない。労働組合はロビー団体と化し、労働者は上司の提案を何でも受け入れなければならなくなる。労働を放棄する権利が制限されれば、結果として国民の生活危機が深まり、不平等が急増し、私たちが依存している重要な公共サービスが破壊される。右派政権は、生活水準を破壊し、国家を破壊する自由裁量権を持つことになるだろう」と警鐘を鳴らし、続けて次の様に訴えている。



 「ストライキの権利は、民主主義社会に不可欠な自由だ。それは長年にわたる集団的闘争によって懸命に勝ちとられたものだ。もしこれらの法律(反ストライキ法案)の成立が許されるなら、すべての労働者の権利を脅かす前例が作られることになる。ほんの数カ月前までは、鉄道労働者だけが法案の対象とされていたが、生活費危機が深刻化し、賃金や労働条件をめぐってより多くの労働者が職場を離れるようになると、今度は膨大な数の公共部門労働者が攻撃されることになった。この先には、民間・公共部門を問わず、すべての労働者の権利が射程に入ることを想定すべきだ」。



 「政府が何をいおうとも、ストライキの権利に対する彼らの攻撃は、混乱を防ぐためのものではない。鉄道の機能不全、NHS(公的医療)の致命的な待ち時間、きしむような教育制度は、現在の政府に公共サービスを守る意志がないことを裏付けている。そのかわりに、労働者の賃金を抑制し、富裕層にのみ有利に働く経済秩序を脅かそうとする労働運動を打ちのめすことを目的としている。労働組合運動の発展は、人々を貧しくする政府に自分たちの力で抵抗できるという希望を労働者に与えてきた。労働組合は全力で抵抗するだろうが、彼らだけで成功することはできない。この権威主義的な法案を阻止するためには、職場、街頭、裁判所、そして市民社会全体でたたかわなければならない。エリート層は自分たちの階級のために必死でたたかっている。私たちも自分たちの階級のために同じことをする時が到来している」。



「いい加減にしろ!」 全国民の連帯へ




「いい加減にしろ!」キャンペーンによる抗議デモ(昨年10月、ロンドン)

 政府やメディアによる分断攻撃にもかかわらず、昨年末からおこなわれてきた公共部門の大規模ストでは、バス運転手、外部発注の医療従業員、消防士、港湾労働者、国立大学や高等教育部門の職員、通信労働者などが賃上げや年金改定などの一定の権利を勝ちとってきた。それは個々バラバラの労働者や市民を繋ぐネットワークが構築され、個別要求を全社会的な要求と結びつけてたたかってきたことと無関係ではない。



 英国内では昨年から、生活費危機とたたかうための広範な国民運動として「Enough is Enough!(いい加減にしろ!)」キャンペーンが始まり、ここに交通運輸分野のRMT、通信労働者組合(CWU)、消防・救急隊員労働組合(FBU)などの労組や独立メディア、フードバンクなどの地域団体も合流している。



 同キャンペーンは、「公正な賃金、手頃な請求書(生活費)、十分な食事、そしてまともな住まい。これらは贅沢品ではなく、あなたの権利だ!」と訴え、英国全土の地域や職場、街頭での抗議集会を展開し、地域グループを結成し、各職場のスト(ピケ)の連帯を組織している。反ストライキ法案に対しても、「国民が生活費の圧迫に反撃しているまさにその瞬間に、この権利が攻撃されていることは偶然ではない。現政府は、エリートの強欲によって引き起こされた危機の代償を、またしても労働者に支払わせようとしている。私たちはそれを受け入れない!」として反対署名活動を開始した。



 「実質的な賃金上昇」「光熱費の削減」「食料貧困の終焉」「すべての人に適切な住居の確保」「富裕層への課税」を要求し、「私たちの問題を解決するために体制(権力組織)に頼ることはできない。すべての職場、すべてのコミュニティで、私たち自身にかかっている。だから、もしあなたが生活苦で給料が生活費をカバーできないのなら、もしあなたが低賃金で一生懸命働くことにうんざりしていて将来が心配なら、あるいは私たちの国に起こっていることを黙って見ていることに耐えられないなら、私たちに加わってください。いい加減にしろ!――今こそ、怒りを行動に移すときです」と呼びかけている。



 このうねりはイギリス国内だけでなく、新自由主義で社会が荒廃し、同じく生活費危機に見舞われている欧州全体に波及する趨勢にあり、ゼネスト(全業種によるストライキ)に発展する勢いをともなって共鳴を広げている。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25536


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英国で看護師10万人が一斉スト“公的医療守るために賃上げを” インフレで生活苦、人手不足で現場激務「働く者が生きられぬ」
2023年1月5日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25450

イギリス国内でストライキをおこなう看護師たち(昨年12月15日)

 イギリスでは現在、医療、鉄道、高速道路、空港、港湾、郵便、バスなどさまざまな公共サービス労働者が国内全土でストライキをおこなっている。2年以上もの間続いている新型コロナウイルスによる経済的疲弊、ウクライナ戦争の下でロシアからのガス供給ひっ迫によるエネルギー価格の暴騰、高インフレなどにより国民の生活費負担が急増している。こうしたなか、王立看護協会(RCN)は昨年12月から、106年の歴史上初めてストライキを実施している。医療現場では人手不足、物価高騰に賃上げが追いついておらず、実質賃金は2010年に比べ20%も下落している。こうした状況を変えるため、10万人をこえる看護師が行動し、国と直接対峙してインフレ率に対応した19%の賃上げや医療現場の救済を求めている。これに呼応するようにあらゆる公共サービス職員によるストが全国に急拡大している。



◇     ◇



 記録的な物価の上昇が続くイギリスで昨年12月15日、国営の国民保険サービス(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会」(RCN)が、106年の歴史のなかで初となるストライキを決行した。看護師たちはそれぞれの病院前にピケを張り、国による公正な賃金の確保と、国民にストライキ支持を訴えている。こうした姿に道行くバスやタクシー労働者がクラクションを鳴らして応える姿も珍しくない。ピケに加わるNHS看護師も日に日に増えているという。



 RCNは、世界最大の看護組合であり専門家団体だ。50万人近くの看護師、助産師、看護支援従事者、学生が協力して専門職の向上にとりくんでいる。今回のストについてRCNは、看護師たちが直面する「生活費の危機」がさらに悪化するなか、インフレ率を5%上回る19%の賃上げを政府に求めている。



 NHSに所属している看護師たちは、低い給与を理由にその多くが離職しており、現場では深刻な人手不足と過重労働が続いている。昨年9月末時点で、英国内では常勤相当の看護師4万7496人が欠員し、欠員率は11・9%となっている。



 新型コロナウイルス感染拡大のなか、英国内の医療従事者は人手不足による激務のなかで医療に貢献してきた。英国政府は医療従事者への感謝とねぎらいのため国民に拍手を呼びかけるなどしてきたが、賃金自体は一貫してインフレ率を下回っている。看護師たちの給料は現在、昨年と比べて実質約5000㍀(約83万円)も減少している。また、実質賃金は2010年以降20%も低下している。



 エネルギー価格をはじめとした物価高騰が深刻化するなかで「1カ月分の給料がすべて家賃で消える」という看護師も少なくない。さらに職員の3人に1人が自宅の暖房代や家族の食費をまかなえていないという。



 複数の国民保健サービスの病院を運営する国内各地の「NHSトラスト」は現在、その4分の1以上が、職員たちを飢えさせないためにフードバンクを運営している。また、自宅の光熱費を抑えるために職場に寝泊まりする看護師もいるという。





 こうした状況を改善するべく昨年12月12日、RCN書記長兼最高経営責任者のパット・カレンは、スティーブ・バークレー保健長官と会談し、正式な賃金交渉の開始を求めた。だが保健長官は報酬について話し合うことを拒否したため、RCNは予定通り12月15日、ストに突入した。



 RCNは今回のスト実施の理由について、「看護師や職員が燃え尽きてしまえば、患者の看護と安全に対する懸念が生じるため」だと説明している。RCNは、106年の歴史のなかで初めて踏み切った今回のストをめぐり「看護師は、ヘルスケアのなかでもっとも安全性を重視する職業であり、患者ケアにおいて重要な役割を担っている。にもかかわらず、国による投資不足が長年続き、看護師は依然として人手不足で、過小評価されている。政府は看護職を守り、患者ケアを守るために早急に行動する必要がある」と訴えている。



 RCNは今回のキャンペーンで以下のことを目的としている。



 ▼看護専門職の給与は一貫してインフレ率を下回っており、生活費の危機によってその事実が悪化していることを認識するとともに、それを反映させ大幅に引き上げること。
 ▼看護職員が日々発揮している訓練、資格、技能、責任、経験を大切にすること。
 ▼看護師が魅力的でやりがいがある職業とみなされるようにし、何万もの未充足の看護師ポストの確保に取り組むこと。
 ▼インフレ率よりも5%高い賃上げを確保すること。



 RCN側は、「この要求に対する政府の対応は、NHS以外で働く看護職員にも当然与えられるべきものである。看護職員が職場や部門に関係なく、同じように公平な賃金を受ける資格がある」としている。また、看護師の賃上げと患者の安全のために、自身の1日分の賃金をも顧みずストに立ち上がった看護師たちを支援するための「ストライキ基金」への寄付を呼びかけている。 こうした看護師たちの要求に対し、スコットランドでは、政府が平均7・5%の賃上げを提案し妥結を図った。しかしRCN側はこれを「圧倒的多数」で拒否しており、組合は新年にストライキの日程を発表する予定だ。



 イギリスでは昨年12月20日、スコットランドを除くイングランド、北アイルランド、ウェールズで再びRCNのストライキがおこなわれた。最大10万人の看護スタッフが、何年にもわたって実質賃金が減り続けていることや、NHSにおける患者の安全が脅かされていることに抗議した。



 RCN側は「首相は、看護スタッフが病院の外に立つ動機は何なのかを自問する必要がある。彼らは自分たちの懸念を聞いてもらうために、1日分の給料を犠牲にしている。彼らの決意は、個人的な苦難よりも、患者の安全とNHSの将来に対する懸念から生じている」と訴えた。



 さらに「英国政府がストライキ終了から48時間以内に対応しない場合、2023年1月のさらなるストライキの日程を発表せざるを得なくなる」と警告。これに対し英国政府はまたも交渉に応じることはなかった。



 ストライキに対しスナク首相は12月23日の声明で「本当に悲しいし、特にクリスマスの時期に、非常に多くの人々の生活に混乱が生じていることに失望している」とし、労働現場の要求に応じない構えを示した。



 政府の姿勢を受けRCN側は、1月にも18日と19日にストライキを実施することを発表。今後の政府の対応次第では5月まで続くことを予告している。



 看護師たちに呼応するように、昨年12月21日にはイングランドとウェールズで、1万人以上の救急隊が少なくとも9カ所でストをおこなった。救急隊は職場を離れてピケの列に加わり、賃金の引き上げとより良い労働条件、人員配置を要求した。



 こうした現場の抗議に対し、政府は賃上げに対応せず、代わりに軍を救急現場動員するなど対応に追われている。運転手などの救急業務の一部を代行するため、事前の訓練などもおこない750人の軍人を待機させた。



 政府が賃上げを拒否したことを受け、救急隊員たちは今年1月にも11日と23日にストを予告している。生命を脅かす「999番通報」や、もっとも重大な緊急電話には、引き続き対応する。



 救急隊のストに関わっている労組の一つ「UNITE」の書記長は「このストライキは厳しい警告だ。私たちは政府から国民保険サービス(NHS)を救うために立ち上がっている。患者の命はすでに危険にさらされているが、政府は傍観者として座ったままで、危機を救う責任から逃げている」「閣僚たちは、膨大な数のNHS労働者の生活を守るという切実な必要性に対処できていない」と批判している。救急隊員によるストは28日にも予定されており、英国政府は軍の派遣を1200人に増員した。



 NHSイングランドの最新データ(昨年12月20日現在)によると、昨年12月から看護師や救急隊員によるストライキが始まって以来、約3万5000件の手術と外来予約がキャンセルされているという。



空港や鉄道、郵便局でも ストの波が急拡大





 公務員組合(UNISON)のクリスティーナ・マカネア書記長は組織のホームページで「NHS全域のストライキに政府は真剣に耳を傾けるべきだ。パンデミック時に国を救った勇敢なNHSスタッフが、現在のNHSの深刻な危機に注意を喚起するために、この困難な労働運動を起こしている。政府は我々と建設的な交渉をせずに責任を押しつけてくるだろう。しかし、給与や人員配置、そして最終的には患者のケアを改善するという私たちの目標をあきらめるつもりはない」とコメントした。



 さらに全国でストライキをたたかう職員に対して「NHSの現状と、その結果引き起こされた今回の労働争議は、あなたたちのせいではない。今日の政府は、過去12年間の自身の行動に対する責任から目をそらしている。国民に安全で信頼できる一流の医療サービスを提供できなかっただけでなく、衰退させた。給与について話すことを拒否するだけでなく、まともで建設的な労使関係を築くことができないことも証明している。今は、私たちの行動が合法的で正しいものであることを忘れないでほしい。NHSの未来は、私たち全員のたたかいにかかっているし、たくさんの個人や組織から支援のメッセージが届いている。多くの国民が私たちを応援している」と訴えている。



 UNISONは、教育、地方自治体、NHS、警察サービス、エネルギーの分野で公共サービスを提供する現場で130万人をこえるメンバーを擁する英国最大の組合だ。



 英国全土のあらゆる公共サービスで連帯してたたかわれているストには、UNISONや、看護専門職の組合「RCN」、鉄道・海事・運輸組合「RMT」など、国内の大きな組織が一致し、インフレ率上昇に合わせた公正な賃金を支払うこと、職場環境改善や人員配置を国に求めている。



 医療現場以外の公共サービス現場でも、年末年始にかけてストの波が急速に広がっている。



 現在、ロンドンのヒースロー空港では、昨年12月23日から26日までと、同28日から31日までの期間に、英国出入国管理局のストライキが実施されている。日本にも影響があるため、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、この期間中に英国に入国する場合、入国審査カウンターでの待ち時間が通常よりも長くなる可能性があるとの注意喚起をおこなっている。



 ヒースロー空港では入国審査官の約75%が組合員であるため、ストによって入国ゲートは大混雑が予想される。冬の休暇は空港が混雑する時期で、影響は数十万人に及ぶ見込みだ。政府は軍人600人以上を投入し、パスポート審査を代行するために訓練をおこなっている。



 イギリス国内の空港や港湾で働いている国境警備隊職員、空港の手荷物取り扱い職員もストをたたかっている。公共商業サービス組合(PCS)は昨年12月23日、政府が賃金交渉を拒否し続ければ、争議行為がさらに激化すると警告した。PCSは、政府が今年国境警備隊職員に2%アップの給与を提示したがこれを拒否し、賃上げ10%を要求している。



 クリスマスシーズンを通して鉄道労働者によるストライキも実施されている。その結果、車で移動する人が増えており、道路が通常よりもはるかに混雑する事態となっている。しかし同時に高速道路のメンテナンスや保安職員なども連帯してストライキをたたかっているため、今後かつてない混乱状況を招くことが予想されている。交通事故や道路の落下物などに対応する職員や、管制センターの職員が少なくなれば、交通規制や通行の再開を円滑におこなえなくなり、さらなる混乱を招くこととなる。



 現在国内では道路の渋滞を避けるために、のべ何百マイルもの道路工事がストップし撤去されている。ストの影響はこうした他業種にも及んでいる。それでも大幅な渋滞は避けられず、すでに一部地域の道路では深刻な渋滞が発生している。



 これらのストを組織している全国鉄道・海運・運輸労組(RMT)は、生活費の上昇に合わせて値上げを要求している。今月のストライキは、何百万人もの人々が家族や友人に会いに旅行したり、観光目的でイギリスを訪れたりする時期に実施される。鉄道会社は、イギリス全土のサービスが縮小され、一部の地域では完全に停止すると警告している。



 郵便業務を担う「ロイヤルメール」もクリスマスイブからストに突入しており、クリスマスカードが届かない事態となっている。また、運転免許試験官たちも年末から年始にかけ毎週5日間ストをおこなう。そのため国内の運転免許試験場では試験や指導が受けられなくなるなどの影響が予想されている。



 英「フィナンシャル・タイムズ」によると、多業種にわたるストの影響で、12月の労働損失日数は100万日をこえる見通しとなっている。サッチャー政権時の1989年以来33年ぶりの高水準だという。



300万人が光熱費払えず ウォームバンク設立も



 英国内でこれほど公共サービス労働者の賃上げ要求が高まっている背景には、大幅な物価上昇による生活苦がある。英国内のインフレ率(前年同月比)は、昨年10月に市場予想(10・7%)を上回る11・1%をつけ、1981年10月以来、41年ぶりの高水準となった。エネルギーおよび食品価格の高騰が主因とされ、先進国でも最悪の事態となっている。英中央銀行・イングランド銀行は昨年11月末、統計開始以降最長の景気後退に直面していると指摘。「経済は非常に困難な2年間に見舞われる可能性がある」と警告した。



 英国内の消費者物価は昨年1月から11月までで8・9%上昇したが、エネルギー価格においては46・3%も上昇している。うち電気は62・4%、ガスは73・5%、液体燃料(ガソリン・灯油など)は実に110・9%も価格が上昇している。こうした負担増に対しては、政府補助がもうけられているものの、電気ガス代が月に400㍀(約7万円)をこえる家庭も珍しくないという。



 昨年10月1日には、政府がエネルギー価格の上限を80%引き上げ、平均エネルギー料金は年間3549㍀(約57万円)と暴騰している。さらに日常生活に必要な牛乳や植物油、パンやパスタなどの食品価格もじりじり上昇している。家計への圧迫を理由に、光熱費を滞納している人は、英国内で少なくとも300万人いるといわれる。



 また、金利の急上昇がくり返されたことにより、住宅ローンの支払いが大幅に増加している人も急増している。さらに、家主が住宅ローンの請求額を増やしているため、賃貸料は過去最高の割合まで上昇している。



 そのため英国内ではこの冬、「Heat or Eat」(食うか暖をとるか)といわれており、全国各地にフードバンクならぬ「Warm Bank(ウォームバンク)」の設立が急増している。ウォームバンクとは、電気代高騰のなかで自宅の暖房を使用する余裕がない場合に、無料で暖をとることができるスペースのことだ。現在、英国内の慈善団体や教会、コミュニティセンター、図書館、美術館、企業などが、計約3700ものウォームバンクを開設している。多くの施設が食事や温かい飲み物、インターネットアクセスを提供しており、ウェブサイトにマップを掲載して利用を呼びかけている。



 英国内における物価高騰の主な原因は、ウクライナ戦争により、ガス価格が記録的な水準にまで上昇したことだ。



 イギリスだけでなく、EUの平均家庭用電気料金も急激に上昇した。ヨーロッパはエネルギーの約34%をガスから得ており、ロシアはウクライナとの戦争が始まる前に、EUのガス輸入のうち40%を提供していた。しかしウクライナ侵攻後、ロシアは最大の輸出先である欧州への天然ガス輸出を大幅に削減した。主要パイプラインであるノルドストリームを通じた供給停止も加わり、今年秋時点で欧州への供給量は9割減少した。昨年1年で見ても前年比7割減となる見通しだ。



 欧州全土でエネルギー価格が高騰し物価高が深刻化するなか、フランスでもストライキがたたかわれている。クリスマスの週末には、国内の列車の車掌の半数近くがストライキをおこなった。国立鉄道当局によると、昨年12月23日には予定されていた列車サービスの30%がキャンセルされ、週末にはさらに40%がキャンセルされた。



 他にも、EU圏内ではイタリア、オーストリア、オランダなどの鉄道労働者が賃上げを求めたストライキをおこなっており、来年以降も断続的におこなわれる。ドイツでは昨年11月末から12月にかけて、医療従事者が生活費に見合った賃上げを求めたストをおこなっている。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25450


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電気代5倍になった英国 自国民への制裁ではないか? ガソリンも食料も高騰 「武器支援やめ停戦合意を促せ」
2022年4月20日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/23322

 深刻なエネルギー危機が欧州を襲っている。新型コロナ・パンデミックを契機にして、原油や天然ガスの国際取引価格が高騰していた矢先にウクライナ危機が勃発。ロシアへの対抗措置としてアメリカが主導する西側諸国は対ロ制裁を強化したが、エネルギー輸出大国であるロシアに依存していた欧州各国では燃料費や電気料金の高騰に拍車がかかっている。制裁の代償は各国の人々の生活を圧迫し、飢餓や社会不安を生み出しており、世界各地で「ロシア制裁やウクライナへの武器支援をやめ、財政を国民生活のために回せ」「早期停戦させ、無益な代理戦争を長期化させるな」というデモや抗議行動が頻発している。エネルギーの大部分を海外に依存する日本にとっても対岸の火事ではない。



 生産、加工、供給までグローバル化が進行した世界経済において、一つの国や地域の混乱や孤立が、世界全体の供給システムを麻痺させることを新型コロナ・パンデミックは教えた。ワクチンや医薬品の普及によって消費地である先進国の経済活動が再開しても、生産拠点であるアジアなどの途上国がパンデミックから復興しなければ、食料、エネルギー、機械、自動車、建築資材、医薬品に至るまで供給が滞り、価格が高騰する。限られた資源をめぐって各国の奪い合いが激化し、競争力の乏しい国ほど甚大な打撃を被っている。



 対ロ制裁をめぐっても必然的に同じことが起きている。とくにロシアは世界有数のエネルギー供給国であり、その恩恵を受けてきた欧州にとって影響は甚大だ。



 アメリカと並んで強硬に対ロ制裁の旗を振るイギリスのジョンソン政権は、EUから離脱しているため欧州各国に先行する形でロシアへの制裁措置をうち出した。イギリスは、ロシアの富豪が資産を蓄財する中心地でもあったため、英政府はロシアのプーチン政権に親しい120の企業や個人を対象にした資産凍結や渡航禁止を勧告し、ロシア国営エアロフロート航空の英国領空通過の拒否も決定。さらにロシアを国際決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出したほか、ロシア産原油や天然ガスの禁輸措置に踏み切った。



 企業レベルでは、石油大手シェルがロシア産原油の購入停止を含む同国事業からの全面撤退を発表し、同社がコンソーシアムの一員として融資をおこなっていた、ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」への関与も停止。サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引いた。





 ところが、コロナ禍で停滞していた各国需要の回復によって原油・ガス価格が高騰していたところに、ロシア産原油や天然ガスの供給が滞ることへの懸念が価格をさらに押し上げ、英国における電力卸売り価格は1㍋㍗時当り250㍀(約4万円)以上に急騰【グラフ参照】。ガス価格も同様に1年前に比べて5倍以上の値上がりとなっている。これまで一般家庭で月額58㍀(当時のレートで9000円弱)程度だった電気代が、3月分から370㍀(約5万6000円)となった例もあるというから凄まじい負担増だ。



 天然ガス価格の高騰によって、イギリスでは2021年以降、約30社の電力供給業者が廃業に追い込まれており、英ガス電力市場監督局(Ofgem)は3日、最も多くの世帯が利用する電気料金プランの上限価格を4月から54%引き上げ、年間1971㍀(32万4000円)にすることを発表した。上限が1277㍀であった前回(2021年10月~2022年3月)から約700㍀(11万500円)の増加である。



 さらに10月の上限改定では再び50%引き上げることになっており、これによって平均的な世帯の電気料金は年間3000㍀(約49万円)にも達するとの見方もある。



 年間49万円といえば、単純計算で1カ月の電気料金は4万円にのぼる。そのため政府は供給業者への融資でコスト増を5年間にわたって分散させるとともに、各世帯に地方税の150㍀(2万4000円)を払い戻す措置などを迫られている。





 イギリス現地の報道によれば、ガソリン価格も、昨年3月中旬に1㍑当り1・24㍀(当時レートで186円)だったレギュラーガソリンが、同1・55㍀(240円)へと一気に15%も値上がりした。今後は2㍀(330円)をこえるとの予測も出ている。



 燃料・光熱費だけでなく、一般的なスーパーに並ぶ食品価格も、食パンが約1・8倍、牛乳が1・3倍、チーズが1・2倍、オレンジジュースが1・2倍、インスタントコーヒーが1・4倍、コーンフレークが1・3倍と上昇(3月時点)。ウクライナ危機による小麦などの穀物類の高騰に加え、エネルギーはすべての製品製造や物流に不可欠であるため、食品を含む全分野での急速なインフレが避けられない事態となっている。



 このためイギリス国内では急激な物価上昇に対する抗議デモがあいついでいる。ロンドンのダウニング・ストリートでは2日、「トーリー党(与党)は退陣せよ」「貧困をつくるな。電力価格を凍結せよ」などのプラカードを掲げて数千人が集まり、「月々の電気代が3倍になっている。私たちは暖房を消して生活しなければいけない」「賃金以外はすべて上昇しており、政府は早急な財政支援をすべきだ」「国民生活を守るために公的資金を使え」と要求した。燃料高騰によってコストが増大する宅配サービスの労働者のストライキなども起きており、ロシア制裁といいながら自国民の首を締め上げる政策への批判とともに、「求心力を失った政権の支持率回復のためにウクライナ危機を利用するな」という世論が増している。




ロンドンでは燃料や生活費高騰に抗議して数千人がデモ(2日)

 イギリスではウクライナ危機以前からエネルギー高騰が続いていた。世界に先んじて1990年代から電力自由化に舵を切り、1999年以降には完全自由化して、家庭用を含めたすべての電力の購入先を自由に選択できるようになった。それまで独占的に電力供給をおこなっていた国営の中央電力公社を民営化し、市場原理を導入した結果、「ビッグ6」とよばれる電力大手6社の寡占状態がつくられ、これらの大手が市場価格の主導権を握ったため、燃料価格は民営化以前と比べて2倍以上も値上がりした。



 さらに近年は、「脱炭素」を掲げて再エネ拡大を推進したことも電力価格を押し上げた。天候に左右される風力や太陽光発電には、悪天候時に備えるバックアップ電源として火力発電施設を維持しなければならない。コストのかかる再エネを導入しながら、これらのバックアップ電源や蓄電・送電システムを民間で維持管理するのは困難であるため、国家財政による補助と消費者への価格転嫁に頼らざるを得なくなって価格は上昇。また自国(北海)での化石燃料(天然ガスや原油)の生産量が年々減少するなかで、ロシアを含む他国からの輸入エネルギーに依存せざるを得なくなっていた。



 イギリスは原油・天然ガスの10%をロシアに依存している程度だが、アメリカのバイデン政権とともに「ロシア経済の大動脈を断ち切る」(ジョンソン首相)と大見得を切って独自制裁に踏み切ったとたん、国内経済は史上かつてない甚大な打撃に見舞われている。
 EUから離脱したことで周辺国との調整もなく、政治的思惑で独自制裁に突っ走ったことがかえって徒(あだ)となった格好だ。



全欧州にパイプライン 歴史的にロシアと相互依存





 ロシアのガスの輸出量は世界1位(2020年の全世界輸出量の25%)、原油は2位(同12%)、石炭の輸出量は3位(同18%)となっている。さらに原子力産業においても国営ロスアトム社と子会社を合わせると、全世界の濃縮ウランの35%以上を供給しているエネルギー大国だ。



 欧州におけるロシアからのエネルギー輸入量は、天然ガスが57%、原油が29%、石炭は50%(いずれも2020年)と依存度が高く、アメリカが叫ぶ「対ロ制裁」に呼応して禁輸すればたちまち燃料が枯渇してしまう関係にある。



 とくにロシア産天然ガスへの依存度(2020年)では、ハンガリー、ラトビア、北マケドニア、モルドバは100%、チェコ85%、スロバキア75%、ブルガリア73%、フィンランド67%、セルビア55%、リトアニア50%、エストニア49%、ポーランド43%、イタリア40%、ギリシャ40%、オランダ36%、トルコ34%と高い。最大の輸入国であるドイツが30%、フランスは13%、イギリス12%をロシアに依存している。



 欧州への天然ガス供給のためのパイプラインが敷設され始めたのは旧ソ連時代の1960年代からで、米ソ冷戦期にもかかわらずロシア(ソ連)と欧州各国はこの分野での相互依存関係を深めてきた。輸送が簡単な石油に比べ、天然ガスの輸送は難しく、液化天然ガス(LNG)を除いてほとんどは輸送コストが低いパイプラインで供給される。これに反対し続けたのがアメリカで、1981年当時レーガン政権はソ連と欧州西側諸国とのエネルギー依存関係を批判し、一貫してパイプラインの建設に反対した。



 だが、冷戦後もパイプラインは網の目のように張り巡らされ、ロシアでの西シベリアの石油、ガス開発の進展と歩調をあわせるように輸出量は右肩上がりに増加【地図参照】。欧州に輸出される天然ガスの80%以上は、ソ連の一部であったウクライナを経由するルートで供給されていたが、ソ連崩壊とともにはじまるウクライナのあいつぐ政変によってそれが不安定化し、2008年の「オレンジ革命」や2014年にアメリカが関与したクーデター「マイダン革命」で親米政権が発足すると、ウクライナはNATO加盟へと傾斜するとともに、パイプラインの管理権(使用料決定権)をめぐってロシアとの対立が激化した。



 それまでウクライナに対して格安で天然ガスを供給してきたロシアの天然ガス価格を市場価格にまで上昇させ、ウクライナからの輸入品への低関税措置を撤廃するなどの対抗措置をとった。最終的にウクライナへのロシア産天然ガスの供給は停止され、ウクライナは西側から天然ガスを逆輸入し、そのためにハンガリーへの供給量は40%減、フランス、イタリアも25%減となるなど欧州全体に大きな影響を与えた。



 そこで進んだのが、ウクライナを介さずにロシアから欧州へ天然ガスを送るパイプラインの建設だった。その典型が、ドイツとロシアをバルト海を通じて直結する「ノルドストリーム」や黒海の海底パイプライン「サウスストリーム」だ。2011年11月8日に開通したノルドストリームの第1ラインは、西シベリアのガスを欧州に送る最短ルートであり、ウクライナやポーランド経由に比べて半分以下のコストで運搬できる。「脱原発」「脱炭素」を進めるドイツにとっては、安定的エネルギー源として天然ガスに依存せざるを得ず、工業大国ドイツの根底を支える不可欠な動力源となっている。



 アメリカが強く建設に反対してきた第2ライン「ノルドストリーム2」は、ロシア制裁の圧力を受けて稼働直前に頓挫したが、すでに施設は完成しており、ドイツをはじめ欧州側としては将来的な稼働を諦めたわけではない。



自己矛盾に陥る米日欧 ルーブルは回復



 「対ロ制裁」を声高に叫ぶ米国やEUだが、エネルギー分野においてはロシアへの依存度が高く、制裁の対象外としている。



 ドイツのハーベック経済気候保護大臣は、「EUが直ちにロシアの天然ガス、原油、石炭の輸入禁止に踏み切った場合の影響は、自宅での肌寒さを我慢する程度では収まらない。次の冬(2022~2023年)の暖房用ガスが不足する他、経済活動が落ち込み、インフレがさらに悪化する。数十万人が失業し、多くの市民が通勤に使う車の燃料代、暖房費、電力料金などを払えなくなる」として、ガスや石油などの基幹エネルギーを制裁対象とすることに強く反対してきた。



 フランスやイタリアなど天然ガスの対ロ依存度の高い国もエネルギー制裁には消極的で、バイデン政権やその代理人として振る舞うウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアを利する行為だ」と激しく非難している。




食料・燃料の値上げ、汚職の増加に抗議する数千人規模のデモ(3月15日、アルバニア・ティラナ)

 だが、これまで「自国ファースト」で突っ走ってきたのは米国自身であり、それは今回のウクライナ危機においても、ミサイルなどの膨大な兵器や軍事資金の供与、さらには民間軍事会社や軍事顧問団まで派遣して対ロシア関係の緊張を煽り、早期停戦合意ではなく戦闘の長期化を図っていることにもあらわれている。



 米国は各国に対して「踏み絵」を迫るように対ロ制裁への参加を呼びかけ、原油や天然ガスの輸入を全面的に禁じる一方、ガス価格が高騰する趨勢を見て自国のシェールガスの増産に踏み切って売り込みを開始。燃料不足にあえぐ欧州各国に対して高値で売りつける「ショック・ドクトリン」ビジネスに勤しんでいる。



 欧州側からすれば安いロシア産を遮断し、高いシェールガスをアメリカから買わされる関係であり、ここに米欧の矛盾がある。



 また、米エネルギー産業大手は、アジア向けの液化天然ガス(LNG)の輸出を、より高く売れる欧州向けに切り換えており、関係者の間では「米国から欧州にLNG船を一隻販売すれば100億~200億円規模の利益が稼げる」と語られるほど、ビジネスチャンスに抜け目がない。この火事場で誰がもうけているのかを見れば、このウクライナ危機の要因が見えてくる。



 ところがアメリカ国内でもガスやガソリン価格は高騰しており、不足分を埋め合わせるために、これまで「ならず者国家」などといって制裁対象としてきたベネズエラやイランへの制裁措置を緩和して石油輸入に踏み切ることも俎上にのぼっており、背後からウクライナ危機を煽ってきたバイデン政権も、国内世論との間で自己矛盾に陥っている。



 「ロシア許すまじ」の掛け声も虚しく、ルーブルの為替相場はすでにウクライナ戦争以前の水準まで回復しており、その影響はロシアというよりも、欧州をはじめ世界的な食料危機、エネルギー危機となって各国の人々の生活を圧迫しているのが実態だ。



 とくに日本では、制裁を受けたルーブル以上の勢いで円安が進行し、すでに1㌦=129円台に突入した。だが、コロナ禍でインバウンドも消滅しているなかで、輸出産業でも半導体をはじめ部品の調達難、ガソリンをはじめとした燃料価格の高騰で生産力が落ち込んでいるため外貨は稼げず、デフレから脱却できていないため国内需要も回復していない。



 原材料費や製造コストが高騰する一方で、価格転嫁できない「川上インフレ、川下デフレ」といわれる状態に陥り、中小企業の経営や労働者の生活を圧迫している。アメリカ主導の出口のない「対ロ制裁」の熱狂に身を委ねている場合ではなく、一刻も早く停戦交渉を前に進めることを呼びかけるとともに、近隣国との友好関係を再構築し、国内においては早急な減税措置や生活支援などの財政政策の転換が求められている。

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/23322

2:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/01/17 (Tue) 12:50:59

マルクスがイギリスで共産主義を考えた理由
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/891.html

階級社会イギリスは、オーウェルの「1984年」監視社会を実現した、最初の国だった
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/889.html

欧州で増える貧困層 イギリスではフードバンク難民が100万人以上
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/803.html
3:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/02/14 (Tue) 12:25:57

イギリス 教員や公務員等50万人がスト 医療、鉄道、救急、郵便、消防の動きに呼応 「賃金上げ、生活と公共サービスを守れ!」
2023年2月13日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25791

ロンドン市内でおこなわれたストライキ参加者や市民数万にによる抗議デモ(1日)

 光熱費や食料価格高騰など深刻なインフレに襲われ、医療機関や交通機関などで大規模ストライキが続いているイギリスで1日、過去10年で最大となる50万人規模のストライキが実施された。イギリス国内では、経済の低迷、コロナ禍、ウクライナ戦争、ロシア制裁の副作用などの複合的な要素が加わるなかで物価高騰と貧困化が急拡大し、貧困層(所得中央値の60%未満)は1600万人をこえるといわれる。それでも新自由主義的な緊縮政策を継続するスナク政府への激しい抗議とともに、あらゆる業種で同時多発的にストライキがおこなわれており、今回のストでは教職員や公務員労組なども加わった。労組の枠をこえ、広範な国民世論が下から突き動かしており、多国籍資本の代理人となって迷走する政府を追い詰めるゼネストへと発展しつつある。



政府の強硬策にゼネストで対抗



 イギリス国内では昨年から、医療、鉄道、高速道路、空港、港湾、郵便、バス、入国管理当局などの公共部門の労働者が一斉にストライキをおこなっている。とくに昨年末には、コロナ禍で医療を支えた公共医療(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会(RCN)」が史上初のストに踏み切り、全国で10万人の看護師が賃上げを求めて断続的にストライキを実行してきた。



 イギリス国内のインフレ率は3カ月連続で10%(日本は3~4%)をこえており、過去四五年間で最高となった。とくに電気代(燃料費)は家庭によっては3~5倍に高騰。イギリスでは定額前払い式メーターを利用している世帯も少なくないが、昨年10月からの電気代8割値上げ発表により、年額59㍀(約9700円)の追加料金支払いが義務付けられ、年間費用は3608㍀(約59万円)にまで跳ね上がった。



 ガソリンも昨年6月、1㍑当り平均価格が310円台となり、平均的な乗用車を満タンにするのに必要な55㍑の価格が100㍀(約1万7000円)の大台をこえた。



 食料品価格も平均で18%高騰し、牛乳やバター、チーズ、肉、パンなどの家庭の必需食料品価格は最大42%上昇した。1980年以来の最高値といわれ、平均的世帯がスーパーなどで食材を購入する年間費用は、1年前に比べて380㍀(約6万3000円)増加したといわれる。人々の善意に依存したフードバンク(食料寄付)などの支援策も、急速なインフレに追いつかない。これらにともなって航空運賃、飲食店、ホテル宿泊料に至るまで軒並み高騰している。



 人々の間では「heat or eat(暖房をとるか、食べるのをとるか)」と語り合われ、暖房費を払うために食事を抜いたり、減らしたりすることが一般的になっているといわれる。地元紙では、食材を買う余裕がないため、ペットフードを食べたり、燃料費を節約するために電子レンジやオーブンではなく、キャンドルやラジエーターで食べ物を温めたりするなどの記事まで見受けられる。



 こうしたなか、コロナ禍で過重な負担が押し寄せた医療現場では、長年の低賃金に加え、慢性的な看護師不足で生じる基準の配置人数以下での勤務が続き、サービス残業が押しつけられ、医療を受けられない患者からクレームが殺到するなど矛盾が顕在化した。看護師たちは適正な医療が継続できる体制と待遇改善を求めてきたが、当局からの回答が「3%の賃上げ」であったことが現場の怒りに火を付け、史上初の10万人ストへと発展した。



 看護師たちの要求は目先の待遇改善に止まらず、「公から民へ」を押し進めたサッチャーから始まる新自由主義政治による公的医療破壊に対する抗議を含んでいる。



 かつて看護師の育成・確保が国策だった時代には、予算が優先的に確保されていたため、看護学生は授業料無料、無償の奨学金を毎月5万円支給されるなどの政策もあって、看護師は倍率の高い人気職業だった。ところがリーマン・ショック後の2010年に公共部門の賃上げが凍結され、インフレが進むたびに所得は目減りし、看護職の志願者は次第に減少。2014年ごろからはEU各国から看護師を大量に受け入れて人手不足をしのいでいたが、2016年のEU離脱によってそれも難しくなった。



 そして2017年、英政府は「看護師育成の礎」といわれた看護学生の授業料無償化と奨学金を完全に廃止した。もはや看護職は、主婦や低所得家庭の学生に進学と就職のチャンスを与える魅力的な仕事ではなくなり、看護師離れは一層加速した。コロナ医療従事者に対する「危険手当、ボーナスの支給なし」の政府決定も、多くの看護師を退職に追いやった。これ以降、英政府は待遇を改善して看護師を増やすことよりも、この劣悪な待遇でも志願してくる外国人看護師のリクルートに舵を切っている。



 コロナ以降、NHS(公的医療システム)の待機手術の待ち期間は2~3カ月と長くなり、プライベート病院(民間)に通えない貧困層が医療へアクセスすることは厳しくなり、公的医療は崩壊寸前に追い込まれている。



 約50万人の看護師、助産師、看護支援従事者、学生が所属するRCNは、「看護師や職員が燃え尽きてしまえば、患者の看護と安全に対する懸念が生じる」「看護師は、ヘルスケアのなかでもっとも安全性を重視する職業であり、患者ケアにおいて重要な役割を担っている。にもかかわらず、国による投資不足が長年続き、看護師は依然として人手不足で、過小評価されている。政府は看護職を守り、患者ケアを守るために早急に行動する必要がある」と訴えてストに突入し、インフレ率を5%上回る賃上げを求めている。



 看護師のストに呼応して、救急隊員2万5000人もストに合流した。隊員たちは、救急現場で働くスタッフがみな疲弊して士気を失っていることや、超過勤務が常態化して優秀な救急隊員が過労で次々と辞めていくこと、「通報を受けても隊員も救急車両も足りず、すぐに出動できない。ようやく搬送できても病院側も人手不足で、患者を担架に乗せたまま何時間も受け入れ手続きを待つ毎日だ」「患者にしわ寄せが行く悪循環が続いている」などと訴え、低賃金と重労働による人手不足、政府による救急車使用対象の制限によって人々の生命を救うことができない劣悪な医療体制の改善を求めている。



 政府当局は、組合側との交渉に応じておらず、逆に「ストは人々を危険にさらしている」と攻撃している。医療の現場を支えてきた労働者側は「ストのために人々が死んでいるのではなく、国の政策で人々が死んでいるからこそストをしているのだ」と断固として譲らず、医療現場の全国ストは2月も断続的に実施されている。



 1月からは、英国内の幹線鉄道、地下鉄、船舶、バス、トラックに至る交通運輸産業部門の労働者が加盟する鉄道海事運輸労組(RMT)が呼びかけ、全国4万人の労働者と14の鉄道運営会社労働者が一斉にストライキに突入し、全国のほとんどの鉄道サービスを閉鎖した。郵便労働者もクリスマス前にストを決行した。



反スト法案に怒り爆発 全国的にスト拡大




ロンドンのホワイトホールで開催された抗議集会に押し寄せたストライキ参加者と市民(1日)


反ストライキ法案に反対するデモに参加した消防士たち(1日、シェフィールド)

 スナク英政府は、医療や交通など基幹部門のストライキを制限する「反ストライキ法案」を提出して弾圧に乗り出したが、この動きが人々の怒りに油を注ぎ、ストライキの波は全産業に波及している。2月も輸送、医療、郵便、公務員などの複数の部門でストライキが同時に実施される予定となっている。



 2月1日には、国内5つの主要労組が呼びかけ、あらゆる業種の労働者50万人が一斉にストライキを実施した。2011年に200万人が保守連立内閣の年金削減政策に対する抗議ストライキを実施して以降、最大のストライキとなった。



 全国教員組合(NEU)が呼びかけたストでは、全国2万3000校(全国の8割)の学校で、約30万人の教員が参加した。政府の統計によると、公立学校の51・7%が閉鎖された。大学教員7万人もストに参加したため、全国150の大学すべてが閉鎖。大学でのストは、今後2カ月間に18回予定されている。



 教員たちは、「私たちの学校を守れ!」をスローガンにして、教育予算の削減や教員不足を放置する政府に抗議し、賃上げや教育スタッフの増員を求めている。



 また、公共・商業サービス組合(PCS)の組合員である10万人の公務員もストライキをおこなった。ホワイトホール(政府機関が集中する地域)の各省庁、規制当局、博物館、雇用センターで業務が停止した他、国境警備隊も業務を停止したため、パスポートチェックには政府が徴集した軍人が出動した。



 鉄道運転手の組合(ASLFE)と、鉄道、海運、運輸労働者の組合(RMT)の1万2500人の鉄道運転手が共同でストを決行し、鉄道ネットワーク全体の3分の2の便が停止した。



 今回のストライキは、1月30日に英国議会で「反ストライキ法」が可決されたことに合わせて実施された。反ストライキ法案(最低サービス水準)法案は、経済の主要部門におけるストライキのさい最低水準のサービスを提供する義務を課し、雇用主がスト参加者や組合に損害賠償請求することを認めている。最初の取締対象を鉄道、救急隊員、消防・レスキュー隊員のストライキに絞り、その後、運輸、医療、教育部門のすべてのストライキに適用する筋書きとなっている。



 労働組合会議(TUC)が呼びかけたロンドンでのデモでは、4万人が賃上げや緊縮財政への批判とともに「ストライキの権利を守れ!」と訴えながらポートランド・プレイスからホワイトホールまで行進し、ダウニング街付近で集会を開いた。またバーミンガム、シェフィールド、リーズ、ブリストル、マンチェスターなどの地方都市でも同時に集会が開かれた。



 これらのストやデモは、反ストライキ法の成立を目論む保守党政府と、交渉を拒む資本側と対峙する何百万人もの労働者の決意を表明するものであり、賃上げを求めるストライキ実施を決定したばかりの消防士らもデモ行進に参加した。



 労働者の要求をはね付け、ストへの強硬姿勢を見せるスナク政権に対して全国的な批判が高まっており、政権支持率は10%台に落ち込んでいる。



子どもの3人に1人が貧困  教員一斉ストの背景




ストライキを決行中の教員たち(1日、ロンドン)


子どもたちも教員たちとともにデモ行進に参加(1日、ノリッジ)

 全国教員組合(NEU)の前会長で現全国役員のダニエル・ケベデ氏は、教員一斉ストに踏み切った背景を次の様にのべている。



*      *



 私たちの学校は危機に瀕している。政府は、中等教育機関の教員採用目標をまたもや達成できなかった。中等教育で必要とされる教員の59%しか採用されず、校長協会も「破滅的としかいいようがない」と表現した。



 このことは、子どもたちの教育に直接影響を及ぼし、数学や物理といった教科を専門家ではない者が教えるケースが多くなっている。教師がまったく確保できないクラスも増え、子どもたちは代用教員や無資格の職員に教えられている。政府が教員に適切な報酬を払おうとしないために、子どもたちの教育が損なわれることは許されない。



 政府が手を抜いているのは、教師の給与だけではない。教師やサポートスタッフの給与の削減に加えて、2023年には国内の学校の90%が予算削減に直面し、教室でのリソースが減り、教育アシスタントが減り、朝食クラブや宿題サポートなどのサービスも削減せざるを得なくなった。



 これらはすべて、子どもの貧困が大幅に増加し、家計のやりくりに苦労する家庭が増えるなかで起きている。英国では3分の1以上の子どもたちが貧困状態にあり、特に2015年以降、劇的に増加している。



 低賃金と給付金の凍結によって、家族が苦境に追い込まれている。賃金水準がインフレに大きく遅れているため、大半の人が実質的な収入減に陥っている。



 学校は、教育危機や子どもの貧困化の進行に対処するための資源がないまま対応を迫られている。



 このような状況を変えなければならない。私たちは、給与カットに反対し、予算カットに反対し、子どもたちにふさわしい教育のために立ち上がっている。そのために30万人の教職員と支援スタッフがストライキを実施することに圧倒的な票を投じており、私たちは政府に耳を傾けさせなければならない。私たちは、大学労働者、公務員、鉄道労働者、郵便労働者、看護師、その他の人々とともにたたかう。低賃金の惨劇を終わらせるために政府が行動することを要求する。保健、教育、公共サービスへの投資を要求する。市場ではなく、人々の利益のために働く経済を要求する。



 私たちの争議は給与をめぐるものだ。なぜなら、それが子どもたちの教育に大きな損害を与えるものであり、これを続けることは許されないからだ。だが、これは私たちが望む教育制度のあり方を求める、より広範なキャンペーンの一部でもある。私たちの学校と大学では、より多くの予算確保と、サポートや供給スタッフを含むスタッフに対する適切な給与が必要なのだ。



 あまりにも長い間、私たちはカリキュラムや教育法について政府からの干渉を受けてきた。プロの教育者は信頼され、支援されるどころか、教育の専門知識をまったく持たない政治家によって、専門的な判断に反する方法で教えるよう圧力をかけられている。教育は政治的な道具となり、どんなに根拠が薄弱な研究でも、最新のトレンドが閣議決定で強制されるようになった。



 このすべては、懲罰的な検査制度によって支えられている。教員や上級指導者の大多数は、Obsted(教育水準監査局)が教育上何の役にも立っていないことに同意している。むしろ、自分たちの考えを持つ学校や教師を脅す道具として利用されている。貧困層の多い学校は「良好」や「優秀」の評価を受ける可能性が非常に低く、より豊かな学校は「優秀」判定を受ける可能性が3倍も高い。このような検査制度は明らかに破綻しており、最も不利な立場にある子どもたちを支援することには何の役にも立っていない。このような制度は廃止し、根本的に見直す必要がある。



 市場の要求よりも、子どもにとっての必要性が優先され、不正なデータやアルゴリズムではなく、教育の成功が評価されるような教育システムのための大胆なビジョンを持つべきときが来ている。今こそ、学校と教育システムの主導権をとり戻すときだ。



 今日、教師が街頭に立つとき、彼らは給与の改善と助成金の増額を求めてストライキをおこなうだろう。彼らはまた、私たちの教育制度の未来のためのキャンペーンをおこなうだろう。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25791
4:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/24 (Mon) 17:47:57


英国の危機、EU離脱後の不振で貧困化進む
2023.04.24
難民を拒否してEUから離脱したら混乱の末にインド人が首相になった


画像引用:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-11/ROAOYGT0AFB401 日英、自衛隊と英軍の往来円滑化で合意へ-首相とスナク氏が首脳会談 – Bloomberg
EU離脱は今のところ裏目

イギリスは2020年にEU離脱してから良いことが無く新型コロナで打撃を受けたのもあってGDP世界5位の座をフランスに明け渡しインドにも抜かれ世界7位になった(22年は6位に戻ったもよう)

最初に影響を受けたのはイギリスに工場を持っていた外国企業でホンダは速攻で撤退し、多くの外国企業がイギリスを後にした

イギリスがEUに加盟していた時は大陸の欧州諸国に関税なしで輸出できたが離脱後は日本やアメリカから輸出するのと同じになりうま味がなくなった

ロンドンは『シティ』として世界最大の金融街だったがEU離脱と同時に多くの国際金融企業がニューヨークや欧州の他の都市に拠点を移し衰退した

2022年に火を噴いたインフレは欧州全体を襲ったがEU離脱したイギリスはドイツやフランスより明らかに影響が大きかった

ドイツはロシアからパイプラインで天然ガスや石油を輸入しフランスは原発で多くの電力を発電していたが、イギリスにはパイプラインも多くの原発もなかったのが影響していた



イギリスがEU離脱した直接の原因は2015年に発生した難民騒動で、シリアなど中東から数百万人の難民が押し寄せ、ドイツのメルケル首相は「欧州は無制限に何人でも難民を受け入れる」と他の国に無断で発表した

そしてドイツは「フランスは何人、イギリスは何人」と難民受け入れノルマを一方的に発表し、実行を渋った国を罵りすぐに”ノルマ”を実行するよう命令した

EUで決定権を持っているのはドイツでありEUに加盟する限りイギリスはメルケルの「命令」やノルマを拒否できない仕組みだった

当時のイギリス首相キャメロンは国民の反発を軽く見て国民投票を実施したが、英国民の怒りは激しくEU離脱が決定された

移民受け入れを拒否したイギリスだったが皮肉にもEU離脱で外国人労働者が出て行ってしまい、労働者不足に陥っています

イギリスには100万人以上の外国人労働者が働いているがEU離脱後はEU域内の労働者が減少し、EU以外からの労働者が増えた



高齢化で病人が増え診察待ちが数か月
EU時代にはパスポートやビザ不要でイギリスに入国できたのだが離脱によって労働ビザ取得が必要になり、不足する労働者を欧州以外から受け入れている

イギリスの新首相スナク氏はインド移民系だが、このようにイギリス人ではなく欧州人ですら無い人達が急速にイギリスの「支配層」になってきている

EU離脱以前からイギリスではホームレスが増加していて、支援を申請したのが30万人でそのうち政府がホームレスと認定したのは13万人だが日本とは定義が違います

イギリスでは「支援しないとホームレスになる可能性が高い人」をホームレスに認定していて、日本でいう生活困窮世帯に近い

路上生活者は全土で数百人だが車上生活者はもっと多い筈で、低家賃宿舎を定宿にしている人や、知人の家で生活している人も多い

イギリス人の平均寿命は81歳で頭打ちになり減少しているが、高齢者福祉政策の破綻が大きく影響しています

イギリスの公共医療サービス(NHS)は原則無償だが、病院の数は同じなのに高齢者が増えて新型コロナもあったので診療待ち時間が数か月になっている

北欧など医療費無料の国の多くで同じ問題が起きていて、無料対応する病院は限られているのに患者が増えた結果、風邪薬を貰うのに数か月待つような状況になっている

こうした国では有料治療をする病院もあるが、そこでは高額医療費を請求されるので平均以下や貧困層の高齢者は「診察の順番が来る前になくなった」という笑い話にもならない話が多い

日本では本人や家族が治療を辞めてほしいと懇願しても国と医者が強制的に「生きさせる」が、欧州では自力で歩けなかったり自分で食べれなければ延命しないのが一般的です

フランスや中国も最近高齢者の福祉や医療支援を縮小して反対デモが起きたが、イギリスも高齢化によって十分な医療ができなくなり寿命が短くなった
https://www.thutmosev.com/archives/26366.html
5:777 :

2023/06/19 (Mon) 10:53:55

イギリス国民の57%がEU離脱を後悔し復帰を希望している
2023.06.18
https://www.thutmosev.com/archives/279333fr.html

EU離脱後のイギリスはうまくいっていない


関連動画が記事下にあります

こんな筈ではなかった?

イギリスでEU離脱国民投票が実施されたのは2016年6月23日で実際に離脱したのは2020年12月31日、離脱したイギリスは晴れ晴れとした気分で、もうEUに指図されず自由になったと思っていました

だが自由の代償も大きくそれまで非課税だったEUへの輸出に関税がかかり書類も必要になり、人の往来にもパスポートが必要など20世紀に戻ってしまいました

22年11月の世論調査によればEU離脱に反対する人は英国民の57%で賛成は43%、離脱投票に賛成票を投じた人の約19%が今はは後悔していると回答しました

離脱前の独仏伊とイギリスは同じ国の地方のような感覚で輸出に関税がかからず国境には検問所すらなかったので何もかも簡単でした

ブレグジット以前は他のEU諸国と同じように世界的な企業が存在していたが製造業のほとんどが撤退し金融サービス業でも他の国に拠点を移す企業が目立った

日産やホンダや他の多くのグルーバル企業がイギリスから出て行ってしまい、イギリスに残ったのはイギリス国内のローカル企業だけという寂しい状況になった

良い点もありロシアのウクライナ侵攻では欧州でイギリスだけが独自の立場をとり、ロシア制裁やウクライナ支援を主導していました

離脱前はドイツなどEUの他の国が受け入れた移民や難民が好き放題に入国していたが、今はイギリスが独自に入国させるかの判断をしています


年初のIMF予想で23年の成長率はG7でイギリスだけがマイナスで、最近の予想ではG20最下位のマイナス0.3%になっています

離脱された方のドイツはIMF予想でゼロ%、フランス0.7%と予測しているのでEUと比較してイギリス経済は好調ではない

ロンドンの金融街”シティ”は大英帝国時代から世界最大の金融市場だったが、国民投票以降ニューヨークやパリに抜かれてしまった

多くの投資会社や世界的な金融会社は大陸側のEU諸国やアメリカやアジアに移転し、イギリスの金融業は空洞化しました

そこに22年から23年にかけてインフレが襲いかかり23年1月ののインフレ率は10%超、食料品価格は1年間で18%も上昇しました

23年3月頃には病院や公務員が賃上げを求める大規模ストライキをやってより一層混乱し、経済低迷に拍車をかけた印象でした


イギリス経済不振の原因はEUではない?
実際のイギリスの物価はスーパーで売られている食品に関してはそれほど高くなく、肉は日本の半額くらいであらゆる物価がニューヨークよりは安い(現地取材の動画参考)

食料品に関しては今まで激安価格だったのがインフレで諸外国レベルになったという方が合っているかも知れないです

高騰したのは電気代でイギリスでは変動相場制みたいな料金体系で2020年に20(単位不明)だったのが22年最大時に556と28倍に上昇しました

イギリスは今まで電気も安くて月1万円程度だったが冬場は暖房に使って月5万になった例もあり、平均でも2倍から3倍になったようです

ロンドン名物のパブは夜間の電気代を払えない為に閉店する店があいつぎ、去年から500軒以上が閉店しロンドン最古の店も閉店しました


イギリスではリストラされたり待遇や収入を不満に思って離職する人が多いが、離職後に満足できる職場や収入を得る人は少ない

50代以上では早期退職してリタイア生活に入る人が多く、労働人口が減少し人手不足やインフレに拍車をかけています

イギリスはEUから離脱したのでEUから押し付けられた「移民ノルマ」を受け入れなくて良くなったが、そのせいで労働者が不足して新たに多くの外国人労働者を募集する変なことになっている

外国人の中には日本人もいて、ワーキングホリデーやイギリスに移住して就労した人の動画がユーチューブなどで見れる

最近のイギリスの若者には公共心や忍耐力がなく嫌ならすぐ仕事を辞めるが、これは世界的に同じ傾向かもしれません

多くの若者が自分の手を汚さずに指図だけする「良い仕事」以外拒否した結果、イギリスはどんどん空洞化し首相とロンドン市長すらインド人に交代した

結局イギリスの現在の苦境はEU離脱と関係なく、イギリス人が怠け者になったからだという指摘もでています

動画 :ロンドンのスーパーを探索する在住日本人
https://www.youtube.com/watch?v=ED6BnmSfVNI

https://www.thutmosev.com/archives/279333fr.html
6:777 :

2023/07/11 (Tue) 18:15:26

イギリスの不況とインフレ、フランスは移民をめぐる暴動
2023.07.11
https://www.thutmosev.com/archives/285226cm.html

ロンドンの街角


画像引用:https://www.reuters.com/world/uk/uk-consumer-price-inflation-101-september-ons-2022-10-19/

関連動画が記事下にあります

イギリスのインフレ収まらず

欧州主要国の英仏独はインフレや社会不安などで経済状況が思わしくなく、23年はマイナス成長か低成長が予想されています

まずイギリスは戦後最悪だったインフレ率は低下しているものの、5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比8.7%と他のEU諸国よりも高い

インフレ率の高さは食料品価格の高騰、雇用の逼迫、天然ガスへの依存度の高さと言われていてEU離脱と関係があります

イギリスは島国で多くの食料を輸入しているがEUから離脱した事で関税がかかり手続きが煩雑になり、食品価格が上昇しやすくなりました

雇用のひっ迫もEU離脱と関係があり、従来は移民や外国人労働者を「押し付けられていた」が離脱して外国人労働者を拒否したら労働者不足になり、また外国人労働者を連れて来るというチグハグな事をしています

イギリスは北海油田を持っているが天然ガスの多くはロシアから輸入していて、ウクライナ侵攻によってエネルギー価格が上昇した

フランスには原発がありドイツにはパイプライン、日本には世界最強の商社があるがイギリスにはそのどれも無いので低価格なエネルギーが無い


インフレ率程労働賃金が上がらない上に賃金が上がらない職種もあったり、失業率も3.7%あるので苦しい生活を強いられている人は多い

イギリスの車の平均寿命は日本よりやや短く10年以上で古い車が多いが、経済事情によって定期検査を「パス」したりメンテナンスを先送りしている

イギリスでは毎年車検(MOT)だが文字通り検査だけで日本のように検査前に法定項目を事前整備せず、問題がなければなにもせず検査だけ通します

この制度だと整備しない車はいつかぶっ壊れる訳で多くの人は状態が悪化する車を騙し騙し乗っていて、中古車として売られる車の状態も悪化しています

イギリスでは中古車店も買い取った後乗れる状態にして買い手に売るだけで、売り手も買い手も自己責任のようなシステムになっています

10年以上経過し整備が不十分な車に乗る人が増えていて、右ハンドル規制もあって故障が少ない日本車は人気があるが程度の良い中古車の入手は困難になっています


イギリスの1均とフランス社会の分断
日本の100円(ではなくなったが)ショップのようにイギリスには1ポンド(約170円)ショップがあり、多くの日用品やお菓子が1ポンドか2ポンドで売られています

動画を見ると無理やり100円に抑えた日本の100均よりお菓子の容量が大きく、100円で売れない商品もあったりして利用しやすいようです

イギリスのインフレ率は依然として高いものの多くの商品がもともと日本よりも安かったので、値上がりしても肉は100g100円程度でアメリカなどより安い

フランスは23年に入ってから年金負担増加と給付額削減を巡ってデモが起き、6月に車で検問を突破した少年を警官が撃ってデモが暴徒化した

撃たれたのはアフリカ系少年だったので移民を中心に大規模デモが続き、経済活動にも打撃を与えています

フランスの23年6月のインフレ率は5.3%と1年ぶりの低さで23年成長率予想は0.7%とほぼゼロ、失業率は7.1%でした


フランスは失業率7.1%でも1982年以来の低水準で、移民の半分は若いのに働かずに手厚い失業手当で生活している

フランスは移民1世が人口の10%で2世以降を含めると15%以上、新生児の20%が移民の子供でドイツ程ではないが移民が急増している

ドイツは民間団体の発表で子供の40%が移民で新生児の50%が移民、全住民の30%近くが移民系になっています

警官による移民少年射撃への反発でパリで暴動が起きたが、一方で警官への寄付も150万ユーロ集まり社会の分断が深刻化している

マクロン大統領は暴動発生時にSNSやインターネットを遮断できる法律を議会承認を経ず成立させたが、「習近平と仲が良いわけだ」と独裁者として批判されている

フランスでは国民生活に必要な法律は議会の承認を経ず、国会議員全員が反対したとしても成立し施行する事ができる

動画:イギリスの日用品や食料はむしろ安いが、エネルギーなどが高く物価を押し上げている
https://www.youtube.com/watch?v=ynl1kxrIPtA


https://www.thutmosev.com/archives/285226cm.html
7:777 :

2024/01/05 (Fri) 10:38:06

ロンドンクライシス、平均家賃47万円で家をなくす人達
2024.01.05
https://www.thutmosev.com/archives/32317.html

とあるロンドンのルームシェア


https://knowyourmeme.com/photos/2615400-starter-packs
ロンドンの平均家賃47万円?

英国立統計局(ONS)が23年4月に発表した統計では民間賃貸住宅に新規入居した国民が支払った家賃は収入の平均26.8%だった

別の調査によるとイングランド(イギリス本島の大半)の大学生の家賃は年間7566ポンド(約136万円)で月11万円だったが、これは田舎の地方都市も含んでいる

それに今時1人で1部屋を借りている学生は少ないので、1部屋分の家賃は11万円の数倍になっている場合もあります

生活維持のために借りた学生ローンの大半が家賃の支払いで使い切り、1週間平均50ペンス(約92円)相当しか手元に残らない

学生が借りる部屋の45%が大学提供のもので残りの55%は民間の部屋、西部のブリストルでは平均年間賃料は9200ポンド(約170万円)だった

学生が生活費として借りられる年間の上限額は9978ポンド(約184万円、ロンドンでは1万3022ポンド=約241万円)なので借りた金の7割以上が家賃だけで消えるのです

東京の平均家賃が9万円でロンドンは15万円、日本の平均は5万円台でイングランド平均は11万円なので比較すると1.5倍から2倍の差に思えるがそうではないのです

東京や日本の家賃は「1部屋丸ごとの家賃」でロンドンやイングランドは「一部屋や1軒を数人でシェアする家賃」なので数倍違います

東京で10万円の部屋を借りて2人でシェアすると家賃5万円ですが、ロンドンは40万円以上を4人でシェアして10万円以上になっています

NHKで紹介されたロンドン中心部の例では6.5畳の部屋の家賃が47万円で4人でシェアしてそれぞれが14万円なので、合計家賃56万円になっていました

4人のうち1人は1人で住む部屋を探したが1500ポンド(日本円でおよそ27万円)以下の物件は、まったく見つからなかったという

2023年10月時点で賃貸が可能な空き物件の数はコロナ禍前と比べて3割以上減少、これはコロナ後の都心回帰現象が影響しているという

間違った政策でホームレスが急増
NHKによるとロンドンの平均家賃は47万円で部屋数が不足していて、さらに契約期間中であっても家主の都合だけで契約解除し立ち退かせる事ができるためホームレスが増加している

イングランドでホームレスの子どもは13万1370人も居て、定住する安定した住居がなければ一時収容施設の人もホームレスにカウントされる

ホームレスになったきっかけで最も多いのは家賃の値上げや大家の立ち退き要求で、イギリスでは何の理由もなくても大家が「出て行け」と言えば立ち退かなくてはならない

その代わり入居時の審査は緩いのだがこれほど家賃が高騰してしまったために、立ち退き要求され家を無くした人は平均4か月次の部屋を借りれていない

英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロンドンの賃借人は収入の35%を家賃の支払いに充てていて、これはイギリス平均の26.8%よりかなり高い

イギリスで賃貸住宅が不足しているのは公的賃貸住宅がないからだが、その原因は1980年代にサッチャー首相が行った経済政策にあった

サッチャーは景気対策として公的賃貸に住んでいる人に格安でその住居の所有権を払い下げ、その後住宅価格は数十倍に高騰した

公営住宅がなくなったので全てを民間賃貸住宅で引き受ける事になったが、需給バランスが崩壊してしまい平均家賃40万円という事になった

東京の場合は国営団地URの他に都営や区営住宅がかなりあり、民業圧迫と言われながらも家賃相場を下げる効果をもたらしている

イギリスのオンライン新聞インディペンデントは22年のロンドンでは8855人が住む家がないことが原因で路上生活者となっていた」と報じました

インディペンデント紙によれば、この数字はロンドンのホームレス人口が、過去1年間で20%増加している

こうした中でイギリスのスエラ・ブラヴァマン内相がホームレスへの罰則を科すと表明し「ホームレスは自分が望んだライフスタイル」と発言し国民の反発を受けて辞任に追い込まれた

ブラヴァマン内相はパキスタン系の女性政治家で、 インド人のスナク首相が任命した「南アジアチーム」の1人だったが人々を大いに失望させた

https://www.thutmosev.com/archives/32317.html

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