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21歳女性を陵辱、遺体をバラバラに…「ルーシー事件」

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2022/12/10 (Sat) 07:57:50


ルーシー・ブラックマンさん事件 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%95%E3%82%93%E4%BA%8B%E4%BB%B6


ルーシー ブラックマン - YouTube
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC++%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3

織原城二 - YouTube
https://www.youtube.com/results?search_query=%E7%B9%94%E5%8E%9F%E5%9F%8E%E4%BA%8C


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21歳女性を陵辱、遺体をバラバラに…「ルーシー事件」犯人がビデオに記録した“卑劣な余罪の一部始終”――平成事件史

『刑事たちの挽歌〈増補改訂版〉 警視庁捜査一課「ルーシー事件」』
髙尾 昌司
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNN52ML5?tag=bunshun_online-22


 2000年、六本木で働いていた英国人女性ルーシー・ブラックマンさん(21歳、死亡当時)が行方不明に。のちに神奈川県三浦市内の海岸にある洞窟で発見された彼女の遺体は、陵辱のすえにバラバラに切断されていた。

 捜査一課の刑事らによる執念の捜査の結果、会社役員・織原城二(48歳、逮捕当時)が真犯人であること、ルーシーさんの他に織原による性犯罪の被害者は200人以上いることが判明。その手口は、アルコールや薬物によって女性を昏睡させ、暴行する様子を撮影するというものだった。押収したビデオテープに記録されていた卑劣極まりない行為の一部始終とは――?

 ここでは捜査に携わった刑事たちが事件の真相を語った『刑事たちの挽歌〈増補改訂版〉 警視庁捜査一課「ルーシー事件」』(髙尾昌司 著、文春文庫)を一部抜粋して紹介する。


◆◆◆

 ビデオテープの映像を解析していた阿部管理官は、内容があまりにも卑劣極まりなく、行為そのものが酷いことから、怒りを通り越して織原の人間性を疑った。

 撮影場所は逗子にあるマンションの一室で、自ら買ってきた果物や出前の寿司などをテーブルの上に置き、それらを女性と一緒にリビングルームで食べ、酒を飲み、冗談やたわいのない世間話をしている様子がビデオテープに録画されている。

 備え付けのカラオケでお互いに歌ったりした後で、女性がぐったりとすると、体を揺すったり、名前を呼んだりしているが、やがて女性を抱えて寝室に運び、ベッドに寝かせる。


卑劣すぎる犯行の一部始終
 織原の部屋の捜索では、女性を映すためのビデオカメラ3台が、それぞれ三脚に載せられ、手元のリモコンで操作できるようになっていたことがわかっている。

 頭からすっぽりと目だし帽を被った織原らしき男が映像に登場し、その男がハンドライトで女性の身体を怪しげに照らし出す。

 織原は被害者のバッグなどを漁り、戦果を誇るかのように免許証やパスポート、IDカード、健康保険証など、身元を証明できるものを映していた。相手が誰だかわかるようにしてから行為に移るのだ。

 ある女性への行為は6時間以上にも及んでいた。

 ビデオテープに収められた被害者は、ケティ・ブラウンも含め、外国人女性、日本人女性あわせて数十人に及ぶことがわかった。

 ビデオテープや写真には日付が記されており、犯行は古いもので1992年(平成4年)2月から始まり、2000年(平成12年)7月まで続く。しかし、ルーシーの映像だけは、どれだけ探しても発見することができない。阿部管理官は焦る思いで、織原とルーシーの接点を見出そうとしていた。


織原が取調室で語ったこと
 留置場から取調室に連行してきた織原を、捜査員は折り畳み椅子に座らせ、両手錠の鍵を外して、腰縄を椅子に括り付ける。

 捜査員と入れ替わりに山代と井ノ口が部屋に入った。

「コーヒーでも飲むか、と言いたいが、これも近頃うるさくなって、自白強要とかで裁判にならないのさ。だからお茶で我慢してくれや」


 と井ノ口が織原に言う。

「いただきます」

 織原は嬉しそうに頼んだ。

 井ノ口が織原の前に湯飲みを置く。

「喉でも湿してから話を聞こうか。夜はよく眠れたかい」

 山代が落ち着いた声で尋ねた。

「あまり寝られなかった、ですね」

 織原は他愛のない雑談には快活に応じる。

「昨日の検事調べ、まったく酷い。長野検事でしたっけ、私の話なんか取り上げてくれず、自分の想像したでっち上げを押し付ける。本当に気に食わない。腹の黒い嫌な検事ですよ」

 織原は長野検事の鋭い追及に、辟易した様子でこぼした。

 山代は織原の愚痴を笑いながら聞いていた。

「それはそうと、慶應高校を卒業して、大学までのエスカレーターに乗らないで、アメリカのさ、ハワイだっけ、大学に行ったのは、お金持ちの気紛れかな」

 山代は揺さぶった。

「違いますよ。父親が死んで、ちょっと考えることがあったからですよ」

「それで帰国して、慶應大学経済学部の通信教育課程を受験したのか」

「ええ、そうです。学生でありながら事業をしていたので、通信教育を選択したのです」

「だがあんたはその受験に替え玉を雇った。謝礼は20万円だったとか。それが本当の話なら問題じゃないのか」

「噓です。誰がそんないい加減な話をしているんですか。冗談じゃない」

「噓か本当かは、あんたが一番知っているはずさ。20年以上前の話だ。誰も覚えていないと思っていても、その誰かが重要な手掛かりを覚えていれば、我々はどこまでも調べるのさ」

「誰が何を知っているんですか。そんな話、でたらめだ」

 織原は気色ばんで言い返した。


それでも山代はたじろがない。織原を茶化すように「学歴詐称、虚偽申告……冗談だけどな」と呟いた。

「そんな馬鹿な」

 捜査本部ではすでに替え玉受験を請け負った人物とも接触できていた。


 その人物は受験番号や当時の状況等を記憶していた。大学側に確認すると、すべてが一致した。

「ハワイの大学で勉強していたんじゃ、英語は喋れるよなあ」

「ええ、まあ、人並みにですが……」

「その英語力を生かして、外国人女性を口説いていたのか」

 織原は無言で抵抗の意思を示した。

「英語だとノーコメントって言うのかい」

 山代は独り言のように呟いた。

弁護士たちの「異常な攻撃」
 刑事訴訟法では、逮捕してから48時間後までに被疑者の身柄を地検に送致しなければならず、勾留期間を延長するには、裁判所の勾留決定を受けなければならない。期日10日の区切りを一勾留という。

 厳しい取り調べは、連日に亘って繰り広げられた。織原も取り調べに対し、苦しい言い訳に終始する。

 この頃から捜査本部には、織原の弁護を引き受けた弁護士らが、日替わりで接見を求めて押しかけるようになってきていた。さらに自称受任したという弁護士からは、ファクスや電話による「不当逮捕」の抗議が殺到し、新妻は苦々しく思っていた。


 雇った弁護士の横面を金で張り飛ばすような卑しい行為。その金を平伏してもらい、事件を力で捻じ伏せようとする弁護士。いろんな人種がいるものだ、と思う。確かに被疑者の権利は理解するし、尊重もする。だが、このやり方は尋常ではない。

 世の中、金で支配できるものではないはずだ。多くの弁護士を見てきたし、知っている弁護士もいるが、新妻の知っている大方の弁護士は常識を持っている。

 それに比べ、多額の報酬を受け取り、織原に加担する100人近い弁護士にモラルは感じられない。

 頻繁に接見を求める弁護士は後を絶たず、長野検事の権限で時間を指定し、1日に1回、最大1時間以内で認めることとした。

 新妻は100人近い弁護士たちが織原に接見を求め、いらぬ知恵をつけていることを山代に伝えなかった。取り調べに予断があってはならないと心配したからだった。

 織原と接見した弁護士は、一様にすべて否認を貫き通せとアドバイスしたのだろう。織原の態度は、さらに頑なさを増していく。

薬物の入手経路をめぐる言い訳
 薬品について、山代と織原の間ではこんなやり取りがあった。

「あんたの部屋から大量の薬品類が出てきたが、どこから買ったんだい」

 突然本題に触れられ、織原は準備ができなかったのだろう。口をモゴモゴしながら考えている様子だった。


 山代は、織原がどう言い繕うのか興味があった。

「……私は不眠症なんです。大学時代からずっと続いているんです。それで友達に買ってもらったんです」

「ほう、誰にだい」

「慶應大学医学部の友達で、鈴木という人に頼んだ」

「いつ頃だ」

「私が慶應大学法学部3年の頃だったと思う」

「どうやって買ってもらったんだ」

「医学部の鈴木君が、研究材料として大阪の製薬会社から段ボール箱単位で買って、それをもらった」

「エーテルやクロロホルムは何に使った?」

「不眠症治療研究のためです」


 何をいても言い訳は子供じみていて、明らかな事実であっても、すべてにおいて言を左右にして認めようとしない。例えば、赤色の物を見せると、赤ではあるが黒ずんでいるので赤とは言えない、といったような言い訳を繰り返す。山代は、織原がどうしたらそんな言い訳を考えつくのかと呆れてしまうほどだった。

 少し織原をからかってやろう。山代は攻め方を変えた。

「慶應大学法学部と医学部では余り交流がないんじゃないのか」

「そんなことはありません。同じキャンパスで部活やコンパもあるんで、知り合うきっかけは幾らでもあるんです」

 薬品類の購入経過は捜査ですべて判明していた。織原の噓はとっくにバレていた。

 押収した薬品類のエーテルやクロロホルムなどは、2つの段ボール箱に入っていたが、底のほうに荷札があり、送り先として「慶應医学研究会 御中」と記載されていた。

 調べてみると、送り主は大阪市東区道修町にある製薬会社。昭和60年11月以前に発送したものであり、織原は、吸入麻酔剤などで知られる薬品を、事件発覚以前から所持していたことが認められた。

 これらの捜査結果を、取り調べ連絡室で聞いた山代は、織原に再度詰問してみた。

織原は言い訳を試みるが、山代が荷札のことに触れると、医学部出入りの製薬会社に研究で使うと噓をつき、自分が偽名を使って注文したことを自供した。

「その吸入麻酔薬を何に使うんだ。女性に使ったんだろう」

 と山代は追い込んだ。


 織原は態度で認めはするが、「何もしていない」と否定を繰り返す。

 調書を取る段階で、薬品の購入については認めたものの、強姦に使ったという事実は絶対に認めない。

 弁護士の入れ知恵は、「取り調べには応じても調書は拒否しろ」というものだった。

「被害女性はバイシュン婦で、すべて金を払っている」
 二勾留目に入った頃、山代は送検のため、押収したケティのビデオテープを取調室に持ち込み、織原に確認させた。

 ビデオの画面には、織原自身が覆面を被って撮ったケティの強姦シーンがえんえんと続く。織原は恥ずかしがる素振りを見せ、顔を背けながらもチラチラと画面を見る。

 山代が、「なんでここまでやるんだ?」とくと、織原は嫌がる態度で「そんな話いいじゃないですか」と、極力話を避けようとする。

 さらにテープは、心神喪失状態で寝ている女性の全裸姿を映し出す。覆面の男が女性の性器に膣内鏡を挿入している場面になると、取調室の織原はじっと見入ってピクリとも動かない。

「お前、病気じゃないのか」と、織原に水を向けると、「女が同意したからなんだ」と返してくる。

「騙して連れ込んだんじゃないのか」

 と追及すると、織原は、「男と女がこういう場所に来て、2人だけで酒を飲めば、どういう結果になるかわかるでしょう」などと嘯く。

 さらに、被害女性はバイシュン婦で、すべて金を払っている、と早口で強調し、脂汗をかきながらも織原は普通の神経では想像もつかない弁解を繰り返し、女性とは合意であるとの言い訳に終始し、罪状を否認した。

 毎日、織原との厳しい戦いに明け暮れ、一進一退を繰り返しつつ、追い詰めていった。

2:777 :

2022/12/10 (Sat) 08:09:33

「こりゃ、死んでしまう」21歳女性に性的暴行の限りを尽くし…「ルーシー事件」犯人を追い詰めた“刑事たちの執念”
https://bunshun.jp/articles/-/59178

『刑事たちの挽歌〈増補改訂版〉 警視庁捜査一課「ルーシー事件」』#2
髙尾 昌司

 2000年、六本木で働いていた英国人女性ルーシー・ブラックマンさん(21歳、死亡当時)が行方不明に。のちに神奈川県三浦市内の海岸にある洞窟で発見された彼女の遺体は、陵辱のすえにバラバラに切断されていた。

 捜査一課の刑事たちは丹念な捜査の結果、会社役員・織原城二(48歳、逮捕当時)の犯行であることを突き止める。織原はオーストラリア人女性カリタ・リジウェイさん(21歳、死亡当時)をも殺害したとみられ、それを糸口にルーシーさん殺害事件の真相を究明しようとするのだが――。

 ここでは捜査に携わった刑事たちが事件の真相を語った『刑事たちの挽歌〈増補改訂版〉 警視庁捜査一課「ルーシー事件」』(髙尾昌司 著、文春文庫)を一部抜粋して紹介する。


◆◆◆

「これは、殺しだ。織原に殺意がなかったとしても、準強姦致死事件であることは間違いない」

 新妻管理官から報告を受けた有働理事官も、直感的にそう思った。

 織原がカリタに陵辱の限りを尽くしているビデオテープがあることを知った有働は、その映像を何度も見つめながら捜査のプランを練った。

ビデオテープに記録された「犯行」
 カリタは着衣を剝がされた状態で映り込み、両手両足が紐でベッドの四隅に括りつけられている。ときどき手足をバタつかせているのは、抵抗を試みているからなのだろうか。顔色は蒼白で表情というものがない。


 部屋の3か所に設置されたカメラの画角などは、リモコンでコントロールできる。照明が獲物の白い肌を照らし出す。

 黒の目だし帽を被った小柄な織原が、画面の端から素っ裸で現れた。このシーンだけを見れば滑稽な状況だが、あとに続く卑劣な行為が想像できるだけに、カリタが哀れでならない。

 織原が、褐色の薬瓶からタオルに染み込ませている液体はなんだろう。ベッドの上で横向きに寝かされたカリタの顔近くにそのタオルを置く。速乾性の液体だからなのか、織原は何度もその液体をタオルに染み込ませた。



「こりゃ、死んでしまう……」

 有働は思わず呟いた。

 カリタ・シモン・リジウェイという21歳の女性が、織原からの陵辱によって死亡させられたのだとすると、その死因は何か。


 有働は、被害女性を映したビデオテープの存在が明らかになった早い段階で、科学捜査官の服藤警部に相談を持ちかけていた。

「服さん。この映像で使用されている薬物を特定できないかなあ」

「映像からですか?」


 服藤は一瞬躊躇った。映像だけで使用薬物を特定したなどという話は今まで聞いたことがなかったからだ。使用薬物の特定は通常、被害者の代謝物や胃の内容物を分析して行う。

 しかし、相手は有働理事官であり、服藤はこれまで有働からの申し出を断ったことがなかった。もちろん、結果は必ず出してきた。

「やってみましょう」

 困り果てているらしい有働からの依頼を受けた服藤は、大量のビデオテープとデッキを借りて早速映像の解析に着手した。

執念の捜査によってつかんだ「証拠」
 ビデオテープの内容をひと通り見た後で、考えをある程度まとめ、知人でもあり、有働もよく知っている昭和大学医学部麻酔科学教室助教授である増田豊医学博士のところへ意見を聞きに行った。その後も公判対策のための議論を重ねていき、結論としては、睡眠剤、鎮静剤、麻酔薬などを投与された可能性を映像から導き出した。

 一方で服藤は、ビデオテープに映し出されていた褐色瓶にも注目していた。映像の中で織原が手にしていたあの瓶だ。カリタの様子などからして、使用された薬物はおそらくクロロホルムであろうことは想像できたが、画像解析してもラベルは剝がされていて確認ができなかった。

「これ、押収されていないかなあ……」


捜査本部による家宅捜索では、褐色瓶を数多く押収している。ラベルが剝がされているものも、その中にあったはずだ。立会いを求められた家宅捜索で目にした記憶が確かにある。

 科捜研に問い合わせてみると、鑑定中の瓶にそれは混ざっていた。内容物はクロロホルム。

 現物を手に取った服藤は、ラベルを剝がす際、ガラス瓶に残る糊の跡に目を奪われた。


「指紋と同じかも……」

 糊の跡を画像としてコンピュータに取り込んで解析してみると、特徴が映像の瓶に一致した。点と点が線になった。これらを科捜研に回して詳細な鑑定を依頼する。

 服藤の“発見”は、科捜研の鑑定でも裏付けられた。

ついに判明した、カリタさんの死因
 織原が被害女性たちに用いていた薬物はこれでほぼ特定できた。次の課題は死因の解明だ。服藤はまた有働に呼ばれた。

「カリタの件なんだけど、彼女はどうやら劇症肝炎で死んでいるらしいんだよ。服さん、どう思う?」

「確か、クロロホルムには急性、慢性を含めて肝臓毒性がありますよ」

「ほっ、本当か?」

「クロロホルムの肝臓毒性は、毒物の勉強をしている者なら常識的に知っていますよ。劇症化するかどうかは調べてみますが、たぶん間違いないと思います」

「ありがとう。これでいける。逮捕状が取れる」

 椅子から立ち上がって服藤の手を握り、喜びをあらわにした有働だったが、その目には涙が光っていた。

服藤は文献を調べていくうちに、クロロホルムの急性暴露が肝障害を引き起こし、それが時に劇症肝炎に移行することや、劇症肝炎罹患後に肝性脳症に移行することがあること、また、劇症肝炎罹患の初期の段階で、「羽ばたき振戦」と呼ばれる症状が見られることを突き止めた。

 ビデオテープに映し込まれたカリタは昏睡状態であることが窺われるにもかかわらず、ベッドで手足をバタつかせていた。これが医学用語でいうところの「羽ばたき振戦」なのだろう。

裏付け捜査を任された「敏腕刑事」
 織原がクロロホルムを用いて陵辱に及び、カリタを死に至らしめたことは、服藤の報告で説明できるようになった。問題は、この裏付け捜査を誰に任せるかだ。


 特別捜査本部の捜査員たちは、ルーシー失踪事件にかかりきりになっている。カリタの件については別班を編成しなければ人手が足りない。科学的なアプローチとアドバイスは引き続き服藤に頼んだ。

「カリタ事件を解明せずしてルーシー事件には到達せず」

 こう判断した有働の脳裏には、第二強行犯捜査殺人犯捜査二係の笹川保警部の顔が浮かんだ。

「これは笹やんにしか任せられない」

 笹川は捜査二課から一課に移って15年余り経っていたが、汚職事件捜査担当から殺人捜査への配置換えは異例のことだった。

 二課の捜査では証拠の緻密な積み重ねが求められる。笹川の持ち味はそこにあった。

 事実、1991年に発覚した「東京大学医学部技官酢酸タリウム毒殺事件」の捜査でも、笹川の持ち味は十分に発揮された。


「職場で飲むコーヒーに毒を入れられた」と訴えながら死亡
 事件の端緒は、ある都立病院からの通報だった。当時入院していた東大技官の内田賢二が、「職場で飲むコーヒーに毒を入れられた」と訴えながら死亡したのだという。

 司法解剖の結果、内田の死因は酢酸タリウム中毒であることが判明し、内田が職場で使用していたコーヒーポットからも酢酸タリウムが検出された。

 本富士署に設けられた特別捜査本部では、同大医学部附属動物実験施設で毒劇薬物を保管担当する内田の同僚に当初から疑いの目を向けたが、その一方で、逮捕までには922日もの日数をかけた。


 犯行に使われたと見られる酢酸タリウムについては、同一ロットはもとより、その前後に製造されたタリウム計127本(瓶詰め換算)を特定し、これらが納品された全国50か所の研究機関などに捜査員を派遣。

 回収したタリウムは、一般企業も含む複数の研究機関に提出して鑑定を依頼し、このことによって、同僚が保管を担当していたタリウムとコーヒーポットのタリウムが成分的に同一であることを証明したのだ。


 問題は犯行の動機だが、科学捜査と併せて同僚の谷本靖男(仮名)を追及したところ、「内田とはふだんから人間関係がうまくいっておらず、仕事上のことで注意しても無視され、目障りだった」などとの供述を得た。

 谷本靖男は、2000年6月に最高裁で懲役11年の実刑判決が確定している。

 有働は、カリタ事件の解明や犯罪性の立証には、笹川警部のこうした経験が不可欠であると考え、赤羽警察署の特別捜査本部にいた笹川に携帯電話をかけたのだ。


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