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藤井聡 徹底解説・インボイス ~何がそんなにヤバイのか~

1:777 :

2022/11/06 (Sun) 20:59:51

2022年11月2日
徹底解説・インボイス ~何がそんなにヤバイのか~
From 藤井聡@京都大学大学院教授
https://38news.jp/economy/23123

岸田内閣は今、来年(2023年)10月に消費税についての「インボイス」制度を導入すべく、準備を進めています。この件について、当方のメルマガ『クライテリオン編集長日記』https://foomii.com/00178にて解説差し上げたところ、大きな反響がありましたので、より多くの皆様にご理解頂くべく以下にご紹介差し上げます。是非、ご一読下さい!

インボイス、と言えば、一般の国民にしてみれば、聞き慣れない、何のことだか分からない制度ですから、特に賛成も反対もないという方が大半だと思います。が、一言でいって、これは単なる「消費増税」。結果、中小零細企業の多くが倒産し、大企業においても収益が減少し、一般の消費者にとってはさらに物価が高くなる……という最悪の帰結をもたらします。

このインボイスなる制度によってなぜそんなことになってしまうのか、を、順をおって分かり易く、簡潔に解説いたしたいと思います。

【ステップ1:売り上げの1/11を業者が納税している】
消費税を納めているのは、「業者」です。「売り上げ」には、私達消費者が支払った10%分の消費税が含まれていますから、それを年に一回、まとめてその消費税分を税務署に納めているのです。具体的に言うなら、消費税率が10%ですから、売り上げの1/11(=9.1%)という事になります。例えば、1100万円の売り上げがある商店は、100万円もの消費税を納めているのです!

【ステップ2:ただし、仕入れ分の消費税は、払わなくてもいい】
ただし、そんな「業者」さんも「仕入れ」の時には、仕入れ業者さん(以下「下請け」さん、と呼びましょう)に消費税を払って癒える事になります。だから、仕入れ分の消費税は「下請け」さんに既に払っている、ということで、その分は税務署に払わなくてもいい、という事になっています。つまり、仕入れ分の消費税は、業者さんは払わなくてもいいのです。別の言い方をすると、業者さんは、

「売り上げから仕入れ分を差し引いた利益(一般に粗利、といいます)」の1/11

を税務署に払っているのです(つまり、消費税というのはこう考えると「粗利にかかる法人税」というのが真の姿なのです)。

【ステップ3:ただし、零細業者は、消費税が免税となっている】
しかし、この「粗利の1/11」を、売り上げ1000万円以下の零細業者(個人事業主含む)は、今、払わなくてもいいのです!零細業者さんと言えば、小さな商店や個人タクシー、フリーランスのデザイナーやタレントさんやエンジニアさん、一人親方さん達です。で、こうした「免税制度」は、そんな小さな零細業者さん達に対する「保護」の主旨で、諸外国でも頻繁に採用されている一般な制度です。

【ステップ4:インボイス制度が導入されれば、『仕入れ分差し引くには、インボイスが必要だ!』となる】
 以上が、インボイスとは何か、を理解するための基礎知識。
 以上の話が国民には全く浸透していないので、「インボイスの恐怖」が全く国民に伝わっていない……というのが実態です。
 ではいよいよ、インボイス制度とは何か、の説明に入りましょう。
 インボイス制度、というのは、次の様な仕組みです。

1)業者は「ステップ2」で解説した通り、「下請けに支払った消費税を免税できる」のですが、その「免税」を受けるには、「下請け」さんから、「インボイス」(=何円、消費税を祓ったか、の書類)もらわないといけない。
2)で、「下請け」さんは、インボイスを発行するには、「インボイス業者」として、税務署に登録しなければならない。
3)「インボイス業者」に登録されれば、インボイスを発行した分の消費税を、税務署に納税しなければならなくなる。

ややこしいですが、この制度は要するに、「下請けにきっちりと、消費税納めさせる制度」なわけです。
 そんなの「当たり前だよな」と思う方もいるかも知れませんが、これは当たり前でも何でも有りません。「ステップ3」で説明したように、零細の「下請け」さん達はこれまで消費税の納税義務がなかったのに、インボイスに登録したら、売り上げの1/11を納税する義務がでてしまうからです!
 だから、インボイスの導入は、零細な下請けの「救済」措置として導入されていた、ステップ3に説明した「免税」措置が受けられなくなる事を意味しているのです!つまり、インボイスに登録すれば、彼らは今まで消費税の納税が0円だったのに、売り上げの1/11ものオカネを税務署に払うことになるのです!
 つまり、インボイス導入は、事実上の「消費増税」を意味していることになる、第一の理由です。

【ステップ5:「業者」はインボイスに登録しない下請けからモノを買わなくなる】
 じゃぁ、「零細業者はインボイス登録なんてしなきゃいいじゃないか」と思う方もいるでしょう。しかし、そうはいかないのです……。
 「ステップ4」で説明したように、「業者」は、「下請けに払った消費税分は、税務署に納めなくて良い」ということにするためには、下請けさん達から「インボイス」をもらう必要があるのです。
 だから、インボイスが導入されれば、あらゆる業者が、インボイスに登録しない零細企業からはモノを買わなくなって、インボイス登録業者からだけモノを買うようになってしまうのです!
 そうなってしまえば、零細の下請けさん達は、売り上げを確保するために渋々、インボイスに登録せざるを得なくなってしまうのです。
 もちろん、インボイスに登録しなくてもいい、という事にはなっているのですが、登録しなければ、客が逃げてしまう……という事になります。
 つまり、零細の下請けさん達は、インボイス登録をして税務署に納税するようにするか、登録しないで客を減らすか……という最悪の選択を迫られることになるわけです。
 インボイスは要するに、零細にとっては、百害あって一利無しの最悪の制度なのです。
 その結果、零細企業の多くが業績悪化となり、倒産・廃業に追い込まれるケースが続発することは確実なのです。

【ステップ6:零細ではない「業者」の納税額も増えてしまう】
 このように、下請けさん達はインボイスで大打撃、ですが、「業者」のみなさんもまた、インボイスのダメージから免れることは出来ません。
 理由は二つ。
 第一に、「インボイス登録していない下請けからモノを買うケース」は、どうしても出てきます。その場合、納税額の控除が受けられなくなり、税務署に払う納税額が増えてしまうのです。
 しかも、インボイス登録している下請けからの購入金額も「値上げ」されるケースが続発することになるでしょう。そもそも、これまでは、零細の下請けさん達は納税義務ない、ということで、納税分を価格に上乗せしない価格を設定することが多くあったのです。ところが、これからはインボイス登録をすれば納税義務がでてくるわけですから、消費税分をしっかりと上乗せし、価格を引き上げる下請けさんも出てくるのです。
 その結果、あらゆる「業者」に、「仕入れ価格の値上げダメージ」のリスクが生ずる事になるのです。
 以上の二点故に、あらゆる業者にとって「減収」のリスクがもたらされるのです。

【ステップ7:その結果、消費者にとっての物価も上がる】
 そうなれば、消費者が支払う価格そのものも値上がりする事になります。なんといっても、インボイスのせいで平均的な仕入れ価格が上がるのですから、その一部が価格転嫁することは必然なのです。つまり消費者にとっても、インボイスの導入は「消費増税」と同様の効果がもたらされる事になるのです。

……

以上、いろいろと細かいメカニズムについて説明しましたが、この問題は次の様に考えるとシンプルにご理解頂けるようになるのではないかと思います。

そもそも、売り上げ1000万円以下の零細業者には、消費税についての納税義務がなかったところ、インボイス制度が入れば、その分もガッツリ財務省が「巻き上げる」ことができるようになる。
 で、そうした財務省が吸い上げる「増税分」を、零細業者、業者、そして消費者の三者でそれぞれに負担する、という事になるのであり、したがって、あらゆる業者と消費者全員が、インボイスによってダメージを受けるのです。

「零細業者」は、これまで払っていなかった10%分の消費税を払う事を通して、
「業者」は、これまで減免されていた零細業者からの消費税分を(納税、あるいは、零細業者への支払いいて)負担する事を通して、
「消費者」は、これまで価格に上乗せされていなかった、零細業者が納税する消費税分の一部を負担する事を通して……。

こうして、インボイスが来年10月に導入されると、零細企業の経営が苦しくなり、その多くが倒産・廃業に追い込まれると同時に、あらゆる業者さん達の利益が損なわれ、挙げ句に消費者が支払う物価もさらに高騰するということになるのです。

すなわち、インボイス制度とは、インボイスという分かりにくい言葉でコーティングされた、特殊な形態の「消費増税」なのです。

そんなことを、岸田内閣は今、一年後に導入しようと、着々と準備を進めているのです。

これで日本経済がさらに傷付くことになるのは必至……だから今、求められているのは、インボイス導入の「中止」を国会の力で実現して頂くか、それともインボイスの弊害を限りなくゼロに近づける対策を実現するかのいずれかなのです。

そうした、インボイス導入を通した「岸田内閣による日本国民への経済政策」をなんとか辞めさせるためにも、まずは、本記事で解説した、インボイス制度のヤバさを、しっかりとご理解下さい。

https://38news.jp/economy/23123
2:777 :

2022/11/06 (Sun) 21:01:54

消費税を社会保障目的税にしているのは世界中で日本だけだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14017929

大失業社会へまっしぐら?最低賃金アップと消費税減税のどちらが責任ある政治なのか
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14028869
3:777 :

2023/07/02 (Sun) 08:33:17

2023年6月29日
【藤井聡】インボイス制度の導入によって、財務省が国民から吸い上げる税金が増える。それをあらゆる国民が負担する…しかしそれを知る国民はほぼ皆無である。
https://38news.jp/economy/25208

 今年10月から導入予定のインボイス。その内容を正確に知る国民は(政治家、経済学者は言うに及ばず、税理士さん達も含めて!)、事実上ほぼ「皆無」です。

 が…せめて本メルマガの読者の皆様だけでも、しっかりとご理解いただきたく、下記に簡潔にご紹介差し上げます。

(1)インボイス制度のデメリット

 まず、インボイス制度のデメリットについて、ですが、それを利用するには、インボイスとは一体どういう制度か、について理解する必要があります。

 一言で言うと今まで消費税を納税していなかった全ての(売り上げ1000万円以下の)零細業者の「粗利」(=総売上から仕入れ費用を差し引いた額)の9.1%(=1/11)に相当する金額を、誰かが負担しなければならなくなる、というものです。

ただし、それを負担するのは、零細業者だけではありません。彼らを含めて、負担者は以下の三種類があるのです。

1)零細業者
2)零細業者を下請け業者として取引している業者
3)消費者

この三者の負担割合がどうなるかは状況によって変化しますが、最も大きな負担を強いられるであろうと考えられるのはやはり、「1)零細業者」です。

 例えば、500万円の粗利を上げていた零細業者がインボイス登録したとすれば、彼はこれ以後、500万円の9.1%の45万円を納税しなくてはいけなくなります。この45万円は純然たる増税になりますから、耐えきれずに廃業する零細業者が続発することは確実です。

 ちなみに、「2)零細業者を下請け業者として取引している業者」が、この下請けにインボイス登録しないでもかまわないと言った場合には、上記の45万円を今度は、「2)零細業者を下請け業者として取引している業者」が、税務署に納税しなければならなくなります。

その場合は、この業者における納税額が45万円増える、というかたちの増税が生ずる事になります。

さらに、そうした業者が、その税負担増分を、最終的な消費者への販売において「価格転嫁」すれば、インボイス制度が導入されたことによって、物価が45万円高騰する事になります。

その場合、その45万円を負担するのは「3)消費者」という事になります。

実際は、特定主体だけが増税分を負担するのではなく、様々な割合で負担していくことになりますので、この三者が同時に負担することになると考えられます。

ただしその中でもやはり、「1)零細業者」が負担するという割合が一番高くなると想定されます。

そもそも、「インボイス登録しなくてもいいですよ」と、下請けに対して言う業者が多数を占めるとは考えがたいからです。

(2)税理士の事務量の肥大化、というデメリット

なお、以上に加えて、税理士における事務処理量が膨大になる点もデメリットです。

インボイス制度が導入されれば、税理士さん達は基本的に、

「全ての領収書のインボイス番号の入力と照合」

という、今までは全くやらなくても良かった仕事をやらなければならなくなります。

ちなみに「照合」というのは、入力したインボイス番号が、その領収書に書かれてあるその領収書発行者のものであるかどうかを、何らかのシステムを使って、逐一確認していく、という超絶に面倒な作業です。

領収書なんて、一つの個人でも法人でも、一日あたり数枚から数十枚あります。

したがって、インボイス制度が導入されれば、税理士さんにしてみれば、一つのクライアント(顧客)に対して、年間で数百から数千枚の領収書について「インボイス番号の入力と照合」というとんでもない仕事をすることが本来的に求められる事になるのです。

はっきり言って、その結果、税理士業は立派な「ブラック業」と化してしまうでしょう。

(もちろん、その分の対価をクライアントが払えばいいのでしょうが、払えないクライアントは多数に及ぶでしょう。その結果、税理士に仕事を頼むことを辞めて…その結果、顧客が大幅に減少する事になるでしょう。仮に、インボイス番号の入力、照合を顧客に依頼するとしても、そんなの無理だ、という顧客も続発し、結局、客離れ、が進む事になるでしょう。…税理士にしてみれば、インボイス制度なんて踏んだり蹴ったりの最悪の話なのです…)

(3)インボイス制度のメリットは?

 公益上のメリットは一切ありません。

 一方で、私益上のメリットとして考えられるのが、このインボイス制度の導入に貢献した役人が、財務省内で高い評価を得ることができ、より出世する可能性が高まるというものです。

ただしそんなこと、一般の国民にしてみりゃ、知ったこっちゃない、っていう話ですね。

(4)インボイス制度についての理解度は?

まず、インボイスという言葉を聞いたことがない国民が大多数です。

次に、インボイスという言葉を聞いた事がある人でも、その中身を理解していない人が大半だと考えられます。

さらに、インボイスの中身を理解している人でも、以下の(a)~(c)の「三つの真実」を理解している人は極めて少数です。

(a)「消費税が預かり金ではない」
(b)「消費税の納税者は消費者でなく、事業者である」
(c)「消費税を含めた価格が、マーケットメカニズムの中で決定されるのであって、消費税を抜いた価格がマーケットメカニズムで決定されてその価格に税率10%が加算された金額が販売価格となっているのではない」

したがって、インボイスの中身を正確に理解している人は、一般国民においてはほぼ皆無であると同時に、政治家においても限定的で、あろうことか、税理士でさえ極めて少数派であるという状況です(例えば上記の(a)すら理解していない税理士が多くいると同時に、(c)を理解している税理士はほぼいないという状況にある)。

…ということで、インボイス制度は、政治家や学者は言うに及ばず、税理士さえも殆ど何も理解しないまま、導入されてしまい、カネを知らず知らずの内に財務省に吸い上げられるようになり、日本人の貧困化と日本国家の衰退が加速する事になるのです。

…以上が、インボイスについての真実なのですが…できるだけこうした「真実」を幅広く喧伝して、インボイス制度が延期、凍結、廃止される世論の形成にご貢献いただけると大変ありがたく存じます。

どうぞ、よろしくお願い致します。

追伸1:以上の記事は、「クライテリオン編集長日記」(https://foomii.com/00178)の記事からの抜粋です。より詳しくインボイスについて理解したい方は是非、下記、ご一読下さい。

財務省は「零細業者は消費税をネコババしてない」事を知っているのにあえて説明せず、「零細業者はネコババする悪い奴」という印象操作を行い、インボイス導入を目指しています。
https://foomii.com/00178/20230621103411110542

税理士業界は「インボイスになっても、何とかなるだろう…」という空気な様ですが、それは100パー間違い。政府は杓子定規に運用し、税理士業界・大打撃は必至中の必至です。
https://foomii.com/00178/20230626162634110747

【我が国の政府・国会に正義はないのか!?】この状況下で大消費増税である「インボイス」導入に反対しない政治家には、「正義」のかけらをすら見いだすことができない。
https://foomii.com/00178/20230618141026110422
4:777 :

2023/07/02 (Sun) 08:35:15

インボイス制度に税理士はいかに臨むべきか! インボイス制度の中止を求める税理士の会・菊池純
2023年6月13日
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/26850

 インボイス制度に一貫して反対の姿勢を示してきた日税連が一転して「賛成」の立場にまわり「円滑な実施」を求め始めたことで、税理士のなかで不満が顕在化しつつある。インボイスの導入には自民党の議連も延期を要望するなど、立場の壁をこえて反対の声が高まるなか、今あらためて税理士の立ち位置が問われている。



1.インボイス制度は消費税の大増税



 財務省はインボイス導入により、およそ161万の免税事業者が課税事業者になることにより2480億円増収になると述べているが、これを逆算すると一者当りの増税額は15万4000円になる。



 インボイス制度は、今までの免税事業者が課税事業者になって消費税を納めても、また免税事業者のままで、取引先の課税事業者が消費税分を負担しても、消費税額が増える、税率をいじらない増税である。すると、双方からとる増税額は、上記、15万4000円に500万の全免税事業者を掛ければ約7700億円にのぼる。免税事業者の数は1000万社ともいわれており、いずれは1兆5000億円規模の大増税となることが予想される。



 財務省としては、今までの免税事業者が課税事業者になって消費税を納めても、また免税事業者のままで、取引先の課税事業者が消費税分を負担しても、実はどちらでもよい。いずれにしても日本経済は大きな地殻変動を起こす。



 インボイスの実施にあたって「激変緩和措置」が実施されるが、これは世の中が激変してしまうことを財務省が十分に認識しているネーミングといえる。
 少なくとも税理士はこういう非常に厳しい将来が到来することについて、きちんと顧問先に説明する必要がある。



2.免税所業者に対して課税事業者になることを勧める税理士も増加



 課税事業者化をすすめる税理士の多くが、「仕事を切られたらどうしようもないじゃないか」というが、課税事業者になった後も本当に事業を継続できるのだろうか。今必要なことは、インボイスの中身をしっかり説明して、どれほど危険な制度なのかの理解を広めることである。



 インボイス発行事業者への登録は9月30日まである。当局の要請のままに安易に課税事業者化をすすめるのではなく、納税者の権利を擁護するために一人でも多くの納税者にインボイスの中身を広めていくべきだと思う。



 免税事業者の元には「インボイスに登録しない場合は取引を停止することがある」といった文章が取引先から届くようになっている。こうした状況の中で税理士は、「公取に相談してみましょう」とアドバイスもできるはずである。



 税理士のインボイスに対する危機感が希薄なのは本当に危惧するところだが、最近は免税事業者の税理士が課税事業者になる動きも出ている。先日お話をした方は「これまでも顧問料に消費税を乗せていたのに、インボイス後に免税事業者だったとわかると恥ずかしいから課税事業者になる」という。税理士でさえも、以前の政府がいうように「預り金をポケットに入れていた」という認識である。30年間「仮受消費税」「仮払消費税」と仕訳を切ってきた者として、間違った知識が国民の皆さんと同じくらいすりこまれている。



 インボイスの導入後は、多くの免税事業者が廃業を選択し、取引のあった多くの課税事業者が危機的な状況に陥る。そうなれば多くの税理士の廃業リスクも高まる。インボイスは本当に誰にとっても他人事ではない。



3.日税連や税理士会のインボイスに対する姿勢が見えづらい



 日税連の足達専務(現東京税理士会会長)は、2020年3月24日のMJS経理ドリブンのインタビューで次のようにのべている。



 「私たちは、そもそも軽減税率制度そのものが消費増税の『逆進性の緩和策』としては非効率で不十分だと考えています。にもかかわらず、多くのメディアが取り上げているように、税率区分経理による事務負担は大きく増加しました。その上でインボイス方式が導入されると、事業者はすべての取引において、取引先がインボイス発行事業者であるかを確認する作業が必要となり、負担はさらに増えることになります。
 また、免税事業者は適格請求書を発行できないため、取引先から不当な値下げを強いられる可能性もあります。そうなった場合の経営状態悪化を危惧しているのです。
 税理士は、全国に500万以上いるとされる免税事業者のうち相当数の経営に深く関わっており、私たちがインボイス方式導入の見直しを要求しなければならないと考えています。それだけでなく、インボイス方式は税務署の事務にも大きな負担が生じると考えられています。そのため税理士は、わが国唯一の税務の専門家という立場から見直しを強く主張せざるを得ないのです」。



 日税連も全国15の単位会もインボイスについては明確に反対もしくは延期という姿勢を貫いてきた。



 ターニングポイントとなったのは2021年6月23日の日税連理事会で、その日は日税連の税理士法改正要望案が決まった。改正案では、同法2条に「3」として、納税者の利便性向上のためにデジタル化を推進しなければならないといった旨の新設が盛り込まれた。これは誰が見てもデジタルインボイスに税理士が関わっていくという内容だ。現行法でも電子申告が税理士業務ということは書かれているのに、わざわざ「3」を追加して、電子インボイスに前のめりの姿勢を示したわけである。



 そうした布石があり、22年5月にホームページで「インボイス制度の円滑な導入・実施について」を発表する。その後はインボイスに反対する意見は一切なくなり、23年度の与党税制改正大綱には日税連の提案したインボイスに関する経過措置の延長が盛り込まれていないにもかかわらず、これを喜ぶ全面広告を日経新聞に掲載する。そして今年1月に開かれた税理士会の大会では、日税連の神津会長が「インボイスに賛成」と明確に述べるに至っている。



神津会長のインボイス「賛成」発言
 (略)インボイス制度についてですね、わが日税連は中小企業者に受け入れやすい制度を構築してくださいというお願い一点に絞ってやってまいりました。インボイスについては賛成するし、この国のデジタルトランスフォーメーション改革については必要なことだという認識のもとに行った提言でございます。最初は大変困難な状況で一時は四面楚歌のような状況もありましたが、大綱に入れて基準年度の売上高1億円基準、それからひとつの支出1万円基準ということで一応原則的な現行のインボイスにしようと決まった。(略)大変でかい成果を勝ち取った。
 (2023年1月11日、東京税理士会新年賀詞交歓会)



4.日税連の方向転換をどう考えるか



 税理士会のある幹部の方は、「もうここまで来てしまったのだから、中小企業向けの対策が全く進まないよりは一歩でも前進したほうがいいだろう」と話していた。苦肉の選択だが、インボイスの中止や大幅な見直しが難しい状況では「円滑な導入」という方向でひとつでも実を取ろうというのだ。もっともらしい意見ではあるが、それで世間は納得するだろうか。



 それまで日税連も税理士会も明確にインボイスに反対し、ホームページなどでも表明してきた。そうした姿勢を支持する納税者もたくさんいたはずである。税務の専門家団体がわれわれ弱い立場の中小企業にかわって反対してくれているのだと。それが今回のような変容で、税理士という職業が尊敬されるだろうか。



 もうひとつ付け加えると、「インボイスが入れば現場は大混乱を起こすので、結局は廃止なり見直しなりするようになるよ」という人もいる。だから財務省の顔を立てて1回は導入させてやればいいというのだ。でも、それでは駄目だと思う。社会がおかしくなるのがわかっているなら職能団体としては絶対に止めるべきである。



5.法律が通った以上は反対しても無駄だという意見に対して




6月14日の「STOP!インボイス」全国一揆を呼びかけるチラシ

 インボイスの導入は決定事項ではある。ただ、決まったことであっても、多くの国民や中小企業、そしてわれわれ税理士自身も不幸になる制度を前に「仕方がない」と諦めるわけにはいかない。それに、インボイスに反対する意見は大きくなりつつあるのが現状だ。



 国政でも、良識ある野党に加え、与党サイドからも税制を勉強している議員からはインボイスの中止を求める声が上がっている。今年3月には自民党の議連が要望書を萩生田政調会長に提出し、中小事業者を直撃するインボイスを延期せよと求めた。この議連は衆参で八四人が参加するもので、自民党のなかでも一大勢力だ。こうした動きも出てきているのだから、希望はあると思う。



自民党「責任ある積極財政を推進する議員連盟」
物価高騰、賃上げ対策としての経世済民を求める決議
 あまねく国民の負担軽減支援目下の経済状況の中で、民間企業に賃金アップを要請することは限界がある。可処分所得が毀損されている状況下において、国民に確かな賃金アップを実感して頂くためにも(略)消費税減税の効果を真摯に検討し、一定期間、国民の消費税負担を軽減すること。更に、中小・小規模事業者、フリーランスの経済活動を直撃するインボイス制度導入を延期すること。



6.中小企業庁のオンライン相談に応募する税理士はご注意を



 10月に始まる消費税のインボイス制度について、国税庁は事業者の登録申請状況(3月末時点)を公表した。消費税の納税義務がある約300万の「課税事業者」のうち、9割近い約268万の事業者が申請を済ませたが、小規模経営の「免税事業者」の申請は約52万にとどまる。国税庁は、「税の申告義務がない免税事業者の全体数は把握していない」として登録するかどうか悩んでいる免税事業者が多いとみて、個別の相談会を全国の税務署で開く。



 この流れを受けて、日税連の会員専用「お知らせ」に、中小企業庁・インボイス相談窓口に係る相談員募集【※注】が載り、税理士が登録するように促されている。



 しかし、委嘱条件を見るとトランス・コスモス株式会社が間に入っており、「(1)専門家の相談謝金は、日額2万5000円(税込)とする。(2)1コマあたり最大60分とし、原則として、1日あたり6コマの相談対応を実施する」としている。



 さらに、「損害賠償及び責任の所在」の項目で、「専門家が『専門家向け相談対応マニュアル(仮)』において禁止された行為及び明らかな税法解釈の誤り等の重大な過誤により、相談をした事業者等に対し損害を生じさせた場合は、その範囲内で専門家は賠償の責任を負う。ただし、相談をした事業者等がインボイス発行事業者の登録を行うか否か、インボイス制度への対応をどうするか等は、最終的に事業者自らの判断に基づくものであるため、本事業の専門家は、事業者等のその判断に責任は負わない」となっている。



 いくら任意とはいえ、賠償責任のある税務相談というのは初めてではないだろうか。おまけに、日税連を通じて税理士だけが相談員に登録するサイトにおいての説明である。また、ネットで行う相談なので、支援内容をトランス・コスモス株式会社に報告する義務があるのだが、「支援内容の報告等に虚偽があった場合、刑事責任等に問われる可能性があることを理解した上で報告等を行うこと」と、相談員になったら大変で、なんで間に入っている会社にここまでいわせるのだろう、という内容になっている。



 加えて、「登録の取消し」として「本事業の目的又は内容から逸脱した行為を行ったと認められる場合」は、本事業の専門家としての登録を取り消すことができるものとする。なお、本事業の専門家としての登録を取り消した場合には、氏名及び取り消し理由を公表する場合がある、とされている。



 インボイス制度は登録をするとずっと申告義務、納税義務が課される。激変緩和措置で課税売上に係る消費税の2割の納税で済むといっても3年間だ。将来の事業者のことを考えれば免税事業者のままでいることをすすめるが、そういう相談は、「本事業の目的又は内容から逸脱した行為を行ったと認められる場合」に当てはまってしまうかもしれない。



 それを誰が判断するのか、それも会ったこともない免税事業者とのネットでの個別相談で、下手をすると氏名及び取り消し理由を公表される。こんなことになったら本業の税理士業務もできなくなってしまうのではないか。



 それなのに日税連は、「積極的な登録のお願い」を掲載している。それも、税務相談で税理士しか行えないのは申告を前提としたものに限られるのを、税理士法を拡大解釈して、「税務相談業務は税理士にしか行えないことから」などと宣伝文句をつけてまでである。



 税理士は、納税者の権利、国民の財産権を公権力から擁護する職責があり、業務の相手方が常に公権力であるという税理士業務の特殊性を考えると、税理士は、公権力と対峙する姿勢が常に求められる職業と自覚する必要がある。このことを日税連は忘れてしまったのだろうか。



【※注】 中小企業庁・インボイス相談窓口に係る相談員募集について 2023年4月17日お知らせ
 中小企業庁では現在、インボイス制度に関するワンストップ相談窓口の設置に向け準備を進めています。
 これは、インボイス制度の円滑な導入に向け、消費税の免税事業者からのさまざまな相談に対応するために設置されるもので、インボイス発行に伴う税負担についての個別相談等に応じる専門家として税理士を募集しています。
 税務相談業務は税理士にしか行えないことから、税理士会員各位におかれては、積極的なご登録をお願いいたします。ただし、相談に当たっては真摯な対応を心がけ、直前キャンセルや顧客への強引な勧誘等の不適切な行為は厳に慎んでください。



7.インボイス制度に税理士はいかに臨むべきか



 2023(令和5)年度税制改正法が3月28日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決・成立した。



 そして、「所得税法等の一部を改正する法律案に対する付帯決議」では、「政府は、次の事項について、十分配慮すべきである」として、「7 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施に当たっては、同制度に対してなお慎重な意見があることを踏まえ、免税事業者の取引からの排除や廃業という深刻な事態が生じないよう最大限の配慮を行うとともに、免税事業者が課税事業者に転換する場合の事務負担を軽減するよう努めること」とされた。



 税理士は難しい立場に追い込まれている。得意先をはじめ納税者からはインボイスの説明を求められその対応によっては損害賠償の対象になる。



 今は免税事業者に目がいっているが、取引先に免税事業者が多い事業者も経営の大きな危機である。例えば取引相手が免税事業者のお医者さんが多い医師会なども、10月以降の納税額が多大に増える。そのことに対して、「なんでこんな税制を通したんだ、税理士はどうして止めないんだ」との声が今さらながら高まっている。



 中には絵本を作っている「童心社」のように取引先の8割が免税事業者で、インボイス導入で納税額が数千万円上がるのがわかっていても、「一緒に仕事をしている作家さんやデザイナーさんの顔がちらつくわけですよ。すると『消費税をお願いします』『だめなら原稿料から引きます』とは、とても言えない。その人の作品や原稿、デザインが欲しくて仕事をお願いしているので、『登録事業者』でかわりを探せばいいというわけではないわけですよ」「免税事業者の方に『番号登録』をお願いすることは致しません。その場合も従来通りのお取引の条件の継続を基本とさせていただきます」(『全国商工新聞』5月29日)と取引先に伝えている企業もある。



 インボイスは納税者同士の断絶を狙った制度だ。今まで取引してきた同士、いがみ合わず団結して仕事を続けていく方法を探る、その手助けも税理士の役目だと思う。



 新型コロナ禍や円安、物価の高騰など、生活を脅かす課題が山積する状況で、世界では消費税の減税が進められている。そんな中、インボイスを導入して大増税を行い、何万人も失業者を出すような日本の対応は改めるべきだ。



 今問題になっているのは税制に関することだ。税制が社会を壊そうとしているときに声を上げるのは、やはり税理士だと強く思う。

https://www.chosyu-journal.jp/shakai/26850
5:777 :

2023/07/03 (Mon) 17:30:18

インボイス制度の問題点と消費税の欺瞞――ウソにまみれた消費税の闇―― 前衆議院議員・税理士 安藤裕
2023年6月29日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/26948


はじめに

 インボイス制度の導入が10月から予定されている。インボイス制度の問題点は、最近多くの有識者が指摘し、かなり理解が広がってきた。インボイス制度とは、消費税の計算方法が一部変更になる制度変更である。その実態は「単なる増税」であり、しかも力の弱いもの、所得の少ないものを狙い撃ちにした増税だ。



 しかし、インボイスの話をする前に、そもそも消費税という税金がどれほど欺瞞に満ちているかを知る必要がある。政府は消費税の本質やその使途についても国民にウソを拡散し、だまし続けている。



 私は、インボイス導入をきっかけにして欺瞞に満ちた消費税の本質を多くの国民に知ってもらいたいと思い、インボイス反対の広報活動を行っている。



そもそも消費税とはどういう税か



 そもそも消費税とはどういう税金なのか。



 財務省のホームページによると
 「消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します」(国税庁ホームページ消費税のしくみ)
 と書いてあり、子ども向けの税のパンフレットでも
 「消費税 商品の販売やサービスの提供にかかる税金で、消費者が負担します。」(国税庁税の学習コーナー租税教育用教材小学生用)
 と記載してある。



 政府からこのように教えられているので、広く国民も「消費税は消費者が買い物をするたびに負担している。事業者はその消費税を預かって税務署に納税している」と考えている。



 「商品などの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。(消費税のしくみ)」とあるとおり、消費税は、税の負担者と納税者が異なる「間接税」の一種であると財務省は分類している。



消費税は間接税ではない



 ところで、消費税は本当に税の負担者と納税者が異なる「間接税」なのだろうか。



 消費税法の条文では税の負担者や納税義務者は下記のとおり規定されている。


 第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(中略)には、この法律により、消費税を課する。
 第五条 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(中略)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。



 法律を読む限り、税の負担者は事業者であり納税義務者も事業者である。消費税法の条文には、消費者が納税義務者であるとは書いていない。そもそも消費税法には、消費者という言葉自体が出てこないのだ。



 これを同じく間接税と分類されている入湯税と比較してみよう。


 入湯税は温泉に入る時に課税される税金である。入湯税の規定は下記のようになっている。


 地方税法第七百一条 鉱泉浴場所在の市町村は、(中略)鉱泉浴場における入湯に対し、入湯客に入湯税を課するものとする。
 地方税法第七百一条の三 入湯税の徴収については、特別徴収の方法によらなければならない。
 (特別徴収とは、役所に代わって事業者が税を徴収することをいう。役所の徴税事務を事業者が代行するのだ。)



 この条文を見ても明らかな通り、入湯税は税の負担者は入湯客であり、納税義務者は事業者。つまり間接税である。



 しかし、消費税は法律を読むと直接税であるとしか読み取れない。消費税は事業者の行う課税資産の譲渡等(要するに売上)に課税され、事業者が納税義務を負う。負担者は消費者であるとは一言も書いていないのだ。



消費税の課税の実態は付加価値税



 では、消費税の本質は何なのかを検討してみよう。






 消費税の計算方法は、単純化すると下記の通りとなる。



 課税売上とは、土地取引など非課税と規定されているものを除き基本的には事業者の売上高のことである。



 一方で課税仕入とは、事業者の支払いのうち、非課税や不課税とされるもの(人件費や固定資産税などの税、減価償却費など。以下「非課税仕入」)を除いたほとんどの仕入れや経費が該当する。



 上記の計算式をカッコでくくると下記の計算式に変形できる。



 上記計算式の、(課税売上-課税仕入)とは何を意味するのか。 これは実は、



 利益+非課税仕入



と同じである。そうすると、消費税の納税額は



でも算出できる。つまり消費税とは、「利益+非課税仕入」に課税するのと同じなのである。利益とは文字通り利益であり、非課税仕入の代表的なものは人件費(給料および社会保険料)である。これらは「付加価値」と呼ばれるものだ。



 つまり、消費税の本質とは、企業がその活動によって加えている付加価値に対して課税する「付加価値税」なのである【図2】。





消費税は預かり金ではない



 この消費税の本質がわかると、いかに財務省の説明が欺瞞に満ちているかがわかる。消費税とは消費者から預かったものではなく、事業者に課せられた直接税なのだ。



 ではなぜ、財務省は「消費税は消費者が負担する税である」という間違った言説を拡散するのだろうか。



 これは、消費税が導入された1989年から、事業者の負担ではなく消費者が負担する税である、というキャンペーンを張り、事業者が価格転嫁しやすいような環境を整備したことにその原因がある。



 当時はバブル経済で非常に景気がよく、3%程度の値上げは現在に比べれば格段にやりやすかったであろう。消費税は増税されるたびに物価を上昇させる効果があるが、それは消費税増税分を価格転嫁する企業が多いことによる。



 しかし、価格転嫁するかどうかは、実は事業者の自由である。この「自由」が曲者なのだ。先に紹介した入湯税の場合には、事業者は納税義務のある入湯客から入湯税を徴収しなくてはならない。徴収義務があるので自由ではない。



 一方で、消費税は消費者には納税義務はない。事業者に徴収義務もない。事業者にあるのは、国内で事業を行ったときに発生する納税義務だけである。したがって、価格転嫁できなければ自ら利益を削って納税しなくてはならない。それも自由なのである。



消費税はファンタジーの世界で成り立つ税である





 しかも、消費税にはなんとなく多くの国民が抱いている幻想がある。消費税はこの幻想、ファンタジーの世界でなくては成り立たない税である。それはどういうことか。一般的には消費税のイメージは上記のようになっている【図3】。



 つまり、すべての取引は、適正な経費・原価に適正な利益が上乗せされて適正な売価がまず設定される。その適正な売価にさらに消費税が上乗せされて販売価格が形成されている。



 消費税は事業者が消費者から預かっているもの。事業者の損益には全く影響がなく、ただ単に消費者から預かっているだけ、というイメージなのだ。



 しかし、ちょっと考えてほしい。このイメージが現実であれば、世の中に赤字企業は存在しない。低賃金労働者も存在しない。すべての企業が適正な経費を支払ったうえでさらに利益が出ている。そして消費税は適正な売価に10%上乗せできている。素晴らしい世界である。



 しかし、現実には赤字企業が存在し、低賃金労働者は世の中にあふれている。



 そして消費税は、赤字企業であっても納税させられる。価格に転嫁できているのか、いないのかは関係ない。価格は十分な利益を上乗せして事業者が自由に決められるものではなく、「自由市場」の相場や発注者と受注者の力関係で決まる。



 消費税は価格転嫁の可否を問わず、とにかく売上の10%を基準として納税額を算出させられ、納税を強いられる。赤字であっても納税額は算出されるのだ。



 税の理屈から言えば、赤字企業であれば、税を負担する能力=担税力がない。普通に考えて当たり前である。だから法人税も所得税も課税されない。



 ところが消費税は赤字であっても上記計算式で



 利益(あるいは損失)+非課税仕入



が正の数、つまりプラスになってしまえば納税額が算出されるので納税しなくてはならない。こんな税金は支払えるはずがないのだ。



 ところが、「消費税は預り金である」というイメージが定着しているので、赤字企業も納税するのが当然だ、ということになっている。事業者に対してこれほど過酷な税はないのに、国民の間でその理解が広がらない。「預かったものを納税しないなんて、とんでもない」と批判の対象にすらなってしまう。しかも、会計の専門家ですら「消費税は預り金である。だから納税して当然だ」と説明する人が圧倒的多数である。これには次のような理由がある。



消費税を預かり金であると誤認させる仕掛け



 消費税が預り金である、と会計の専門家ですら誤認させる大きな仕掛けが二つある。一つは企業会計における税抜き経理方式、もう一つはレシート問題である。



 企業会計における税抜き経理方式とは、売上も仕入れも消費税相当分をそれぞれ仮受消費税、仮払消費税として区分経理し、損益計算には反映させない経理方式である。消費税の会計処理としては、税込み経理方式と税抜き経理方式の2種類が存在し、どちらも適切な経理方法として認められているが、「税抜き経理方式のほうが優れている」として広く採用されている。しかし、税抜き経理方式には、次の2点で問題がある。



■会計の専門家ですら「消費税は預り金」と誤認させる「税抜き経理方式」



 ひとつは、実際は直接税なのに間接税のような印象を与えることである。消費税を純粋に法律論で解釈すれば間接税ではなく直接税であることに疑問の余地はない。



 消費税が間接税であれば企業の損益には関係ないので、顧客から受け取った税額は売上には計上せずに預り金処理するのが適切である。つまり税抜き経理方式のほうが適切である。

 しかし、直接税であれば預り金処理をしたらおかしい。経費処理をするのが適切である。直接税である法人税は損益計算書に費用として計上されている。



 ところが、消費税は直接税であるにもかかわらず、経費として計上されていない。これにより、会計の専門家も消費税が預り金であり、事業者の損益には影響しない税であると誤認してしまうのだ。ましてや企業経営者はその説明を受けるのでそのように誤認してしまう。



 もう一つは、企業会計原則における総額表示の原則に違反することである。



 損益計算書には売上や経費はその総額を表示しなければならない、とされるが、税抜き経理方式を採用すると、顧客から収受した金額全額を売上に計上せず、一部を貸借対照表に計上して売り上げから除外することとなる。経費も同様に総額が経費計上されず、過少表示されることになる。(実際、財務省も裁判においては消費税相当額は対価の一部である、と主張している。)



 そして消費税は仮受消費税と仮払消費税の差額の一部が損益計算書に計上され、総額は計上されない。つまり企業の売上や経費が正確に報告されないのである。これでは正確な企業の業績判断をすることは不可能である。



 これら税抜き経理方式を採用することにより、会計の専門家自体が消費税は預り金であると誤認し、企業経営に重大な影響を与えている消費税の費用性を認識できないのである。



■消費税を預り金と誤認させる「レシート問題」



 消費税を預り金と誤認させるもう一つの仕掛けは、レシートや請求書に消費税を別書きすることである。



 買い物をするたびに受け取るレシートには「うち消費税〇〇円」と書いてある。そのため、消費者は買い物するたびに「消費税を納税した」と思い込まされる。



 しかし、消費者が支払った金額の内訳には、当然消費税の納税の原資となる部分も入っているが、仕入れ代も従業員の給料も家賃も電気代も固定資産税も、さらには事業者の利益も法人税もすべて入っている。これらをすべて明細として添付するのであれば消費税を別書きしても構わないが、その明細を記載することは現実問題として不可能である。



 ところが、レシートに「うち消費税〇〇円」と記載することによって、消費者の中には少なからずの人が「この〇〇円がそのまま税務署に納められている」と考えている。しかし、実際は納められていない。これは単に支払った金額の110分の10ないしは108分の8が記載されているだけで、この数字自体には実は何の意味もない。



消費税は弱者に厳しく強者に優しい税



 このように消費税の本質を考えていくと、次のことがわかる。



 まず、価格を決定するのは事業者ではなく市場であり、発注者と受注者の力関係である。そのためブランド力があったり、優れた技術を持っているなど価格交渉力のある事業者は十分な利益を計上したうえにさらに消費税を価格転嫁して販売することが可能である。消費税の納税に何の痛みも感じないだろう。まさに「損益計算に影響はない」のである。



 そのうえ、消費税の増税はたいてい法人税の引き下げとセットで行われている。消費税増税分を価格転嫁して自ら負担せず、法人税の税率引き下げの利益を享受できる。強い事業者にとっては素晴らしい税制改正である。



 しかし、価格交渉力の弱い事業者は十分な利益を上げられる価格設定もできず、そこに消費税を転嫁できるはずもない。しかし消費税は計算式にあてはめて納税額が算出されてしまえば、なけなしの利益を削って、場合によっては赤字幅を拡大させても納税しなくてはならない。損益には多大な影響が出ている。消費税率5%の時代に比べたら納税額は2倍になっているのだ。力の弱い事業者にとっては非常に過酷な税である。当然法人税減税のメリットなどない。



 本稿では輸出免税については割愛するが、輸出大企業は消費税の還付という更なる利益も享受している。消費税5%の時代に比べたら還付額は2倍になっているだろう。



 また、消費者は少なからず物価が上がるので生活が苦しくなる。生活必需品も食料品以外は軽減制度がないので低所得者にはより厳しい生活が強いられる。



 今年は過去最高の税収が見込まれているが、最も多い税収が見込まれるのは消費税である。物価高により消費税収は自動的に増収になる。輸入物価の上昇による物価高が発生しているが、消費税は存在するだけで、物価高をさらに10%上乗せして消費者の生活を直撃する。物価を引き下げるべきときに、物価をさらに引き上げ過去最高の税収をもたらす。こんな税はあり得ないのである。



インボイス制度の問題点



 これらの消費税の本質を語った後でなければ、インボイス制度の問題点はなかなか理解することが難しい。これがインボイス制度反対の声が広がらない理由でもある。



 消費税は事業者に課せられた直接税である。そして消費税に設けられた免税制度は、小規模事業者に対して、事務負担と過酷な税負担を課すのは無理がある、という小規模事業者保護の観点から設けられている制度だ。



 岸田内閣ではスタートアップを政策目標に掲げているが、まさに消費税の免税制度こそがスタートアップ支援制度なのだ。



 ところがインボイス制度はこの免税制度を事実上なくそうとしている。



 こういうと政府は「インボイス制度が導入されても免税制度は存続する」と主張するだろう。インボイス制度の登録は任意だからだ。



 しかし、インボイス制度に登録しなければ登録事業者番号の記載された「適格請求書」(これが、いわゆるインボイスである)を発行できない。インボイスを発行するにはインボイス発行事業者として登録しなくてはならず、発行事業者として登録すれば自動的に消費税の課税事業者となる。免税事業者は登録事業者番号をもらえないのだ。免税事業者がインボイス登録すると消費税の納税義務者となるため増税になるのである。



 ただでさえ十分な利益を上乗せした価格を自ら決定することができない小規模事業者が、消費税相当額をさらに上乗せできるとは考えにくい。税負担を自らの利益を削って納税しなくてはならなくなる。生活を直撃するため廃業を考えざるを得ない小規模事業者が増えている。



 かといって、免税事業者がインボイス発行事業者登録をせずに免税事業者のままでいるとこれまで通りなのかというと、そうではない。



 インボイス制度導入後の消費税の課税対象は【図4】のようになる。





 経費がインボイスの有る経費とインボイスの無い経費の2種類に分類され、インボイスのない経費と利益部分が消費税の課税対象となる。



 免税事業者はインボイスを発行できないので、取引先が免税事業者へ発注した部分は消費税計算上、経費にすることができない。取引先はその分が増税となってしまうのだ。そのため、発注側は発注先にインボイス登録を求め、あるいはインボイス登録をしていない免税事業者に対して対価の支払いの減額を行う可能性がある。この場合は結果的に免税事業者が増税分を負担することとなる。つまり、減額しなければ増税を発注側が負担し、減額すれば受注側が負担するという、負担の押し付け合いが始まるのだ。



この増税によって、小規模事業者が廃業すればそこに発注していた発注側の事業者も仕事を行うことができなくなる。受注を減らしたり、場合によっては倒産するところも出てくるだろう。



 最近の倒産理由で増えてきているのは人手不足である。建設業など、ただでさえ人不足倒産が増えているところに、さらに人手不足を加速させるのがインボイス制度である。



 農家の多くは免税事業者であり、負担増を懸念して廃業するところも出てくるだろう。そうなれば野菜など農産物は品薄となり、値段が上がる。



 漫画家のアシスタントも個人事業主が多い。アシスタントが廃業したら、漫画家も廃業せざるを得ない。日本の漫画文化はなくなっていく。このようなエンターテイメント業界にも影響は甚大である。



 また、インボイス制度が導入されることによって電気料金の値上げも予定されている。電力会社が家庭などの太陽光パネルから購入する電気は、これまでは課税仕入として消費税の課税対象から外れていたが、インボイス制度が導入されると家庭からインボイスを受け取ることはできないので、その分消費税負担が増えてしまう。その部分を電力料金に上乗せして消費者に負担させようとしているのだ。



 インボイス制度は単に小規模事業者に増税を課すだけではなく、広く国民に大きな影響を与えるのである。



政府の赤字はみんなの黒字



 これまで述べてきたように、消費税自体に大きな問題がある。



 そしてコロナ禍も癒えぬ日本経済の現状において、単なる増税であるインボイス制度導入を強行しようとしているのが政府である。



 本来、政府の役割とは、国民経済を活性化させ、経済を成長させることのはずである。ところが、いまの政府はプライマリーバランス黒字化目標を目標に掲げ、財政健全化が至上命題になっている。



 しかし、誰かの赤字は必ず別の誰かの黒字となる。実は政府の赤字は国民の黒字、みんなの黒字となっている。裏を返せば、政府が黒字を目指せば国民は赤字化し貧困化する。最近の政府の政策目標は財政健全化、財政黒字化であったが、これは実は国民赤字化、国民貧困化政策なのだ。国民を貧困化させることを目標に政策決定をしてきたのだから、国民が貧困化するのは当然である。これが失われた30年をもたらした元凶である。



 現在のような経済状態のときに増税は行うべきではない。ましてや小規模事業者を狙い撃ちにしたインボイス増税は絶対に実行してはならない。



 政府が10月のインボイス増税を思いとどまり、経済を立て直すために真に必要な政策を実行してくれることを願ってやまない。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/26948
6:777 :

2023/07/04 (Tue) 15:53:21

【安藤裕】消費税+インボイスという庶民を殺すシステム、最高税収でも国民はクーラーを控える夏が来る![桜R5/7/4]
2023/07/04
https://www.youtube.com/watch?v=BffuDupVmWw

国を想う国会議員達が、国会中継だけでは伝えられない政治の動きを、ビデオレターで国民の皆様にお伝えするシリーズ。今回は安藤裕前衆議院議員より、最高税収を記録しながらも、さらなる増税を企む岸田政権を批判していただきます。
7:777 :

2023/07/05 (Wed) 19:35:32

エリートのルサンチマン ナチス式の進化論・自己責任論を食い止めろ![三橋TV第725回]三橋貴明・高家望愛
2023/07/05
https://www.youtube.com/watch?v=Urb--Be79j4
8:777 :

2023/09/09 (Sat) 17:08:04

2023年09月09日
インボイス制度の正体 / 阿漕な役人のマジック
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68940192.html

財務省による増税が可能になる理由

tax 662Middle Class 992

  いよいよ、10月から免税事業者を潰す「インボイス制度」が導入されるそうだ。今まで、課税売上高が1千万円以下の個人事業者や法人は、消費税を納めなくてもいい小規模事業者となっていたが、税収増加を狙う財務省は、“お目こぼし”の恩恵を受けていた庶民に目を附けた。財務官僚曰く、「こいつらは“ずっと”消費税を“ネコババ”していた奴らだ! 不届き千万、けしからん! お前ら、覚悟しろよ! キッチリ、消費税を取ってやる!」と。

  プライマリー・バランスの黒字化を大義名分とする高級官僚は、一般国民が困窮化してもお構いなし。ホント、米国のATMとなった日本からは、どんどんお金が流れてゆく。日本政府は、いったい何兆円をウクライナに献上するつもりなのか? アメリカ国民は軍事支援を継続するバイデン政権に激怒し、「俺達の生活を考えろ!」とわめいているが、属州民の日本人は言われたままの金額を差し出している。(まさか、復興支援の総額58兆円の半分を負担する、なんてことはないよねぇ~。)

  インボイスの導入が契機となり、今頃になって消費税の“正体”が議論されているが、こんなことは導入前から判っていたことだ。高学歴の一般国民は大蔵官僚の言葉を鵜呑みにするが、日本の“常識”を備えた日本国民なら、消費税の“胡散臭さ”は見抜けたはずだ。これは後智慧じゃない。令和の高校生や大学生は「まさか、そんな!!」と疑ってしまうが、喫茶店や床屋、飲食店といった商売人なら判る。なぜなら、政治家や高級官僚は不都合な事情を隠すため、別の議論を持ち出してヤバい事を“はぐらかす”陽動作戦を用いるし、言葉を変えてイメージを良くしたりするからだ。

  例えば、大東亜戦争の「敗北」を「終戦」と言い換えたり、「マッカーサー憲法(占領軍が押しつけた詫び状)」を「日本国憲法」と呼んで誤魔化したりする。安倍内閣は平成25年(2013年)に「主権回復の日(4月28日)」を提案し、公的な休日にはならなかったものの、保守派言論人は好意的に捉えていた。井尻千男や入江隆則、小堀桂一郎は2008年に『主権回復』(近代出版社)という本を出版し、日本の独立回復を祝う集会を開いていたが、本当に我が国が「独立主権国」なのかどうかは疑わしい。日本独自の方針で動かせる「国軍」がない上に、防諜組織すら持てない国が、本当の「独立国」なのか? 日本の自衛隊なんてコスタ・リカの警察防衛隊と同じだ。コスタ・リカは1948年に軍隊を廃止し、憲法に書き込んでいる。つまり、宗主国のアメリカに守ってもらう属州という訳だ。

  普段の生活でも言葉の書き換えは珍しくない。平成時代、NHKや民放は「外国人参政権」を報道したが、日本の参政権を求めていたのは、主に在日朝鮮人であった。本来なら、「在日鮮人参政権」と呼ぶべきなのに、実態を隠したいマスコミは在日アメリカ人や在日フランス人、在日ドイツ人までもが参政権を求めているような煙幕を張っていた。国際経済の話題でも、役所や主流メディアは実態を誤魔化そうとする。例えば、1989年から1990年にかけて「日米構造協議」の話題が新聞を賑わせたが、英語で言うと「Structual Impediments Initiative」という名称だった。これは米国が“主導権”を取って、日本の邪魔(奇妙奇天烈)な構造”を解体し、米国にとって都合のいい仕組みに“改造”するということだ。マスコミは「協議」と呼んで本質を隠したが、実質的には米国の通商代表部(USTR)が、宇野宗佑や海部俊樹に要求を突きつける、というものだった。日本国民としては悔しいが、宗主国の代官(特使)には勝てない。

  社会問題の話題でも同じで、マスコミは「刺青」という昔ながらの言葉を用いず、なぜか「タトゥー」と呼んでいる。筆者がTBSの職員に訊いたところ、「タトゥーだと、“ポップな感じ”がするから」という理由だった。以前、筆者がある銀行に赴いた時、女性の行員から「ローン・カード」の作成を勧められたが、「“借金カード”は必要ないので遠慮します」と答えたことがある。勧誘した行員は、筆者の返答に驚き、笑って誤魔化していた。おそらく、露骨な名称を口にして拒絶する客に会ったことがなかったんじゃないか? 確かに、普通の銀行員は客に向かって、「このカードを使って借金してください」とは言えないだろう。

  旅客機の安い席を呼ぶときも、婉曲表現が用いられる。昔の列車のように、一等席とか三等席と呼べばいいのに、一等席を「ファースト・クラス」、二等席を「ビジネス・クラス」、三等席を「エコノミー・クラス」と呼んだりする。この三等席(coach class)というのは、駅馬車の名残で、これといったサービスの無い車輌というのは、荷物や郵便物と一緒に乗客を運ぶ貨車であるからだ。令和では何と呼ぶのか知らないけど、平成時代、マスコミは少女バイシュンを「援助交際」と呼んでいた。渋谷とか新宿でオッさんを相手にする女子高生なら、遠慮なく「パンパン」とか「淫売」と呼べばいいのに、「援交」とかの略語を使うなんて奇妙だ。


Nakasone
(左 / 中曾根康弘)
  話を戻す。最初に頭に入れておくべき点は、高級官僚というのは非常に狡猾で、論点を逸らしたり、言葉を変えて庶民を騙そうとする手口だ。中曾根康弘が総理大臣だった時、「大型間接税」の導入が議論されていた。中曾根内閣は「直間比率の是正」とか「所得税・法人税の減税」、「マル優廃止」などを掲げて「売上税」の導入を謀ったが、輿論の激しい抵抗に遭って断念するしかなかった。何しろ、製造業者や流通業者、全国各地に存在する小売業者に税負担が及ぶことになったから、日本小売協会や日本百貨店協会、日本チェーンストア協会などが騒ぎ出したのだ。

  各業界の不満を受け取った親分どもは、経団連の土光敏夫会長にも陳情したから、中曾根総理も無理強いは出来ない。しかも、衆参同時選挙を控えていたから、自民党議員も売上税の導入には反対だ。結局、中曾根総理は売上税の導入を否定し、衆参ダブル選挙で大勝利を得た。やはり、「増税」を掲げた選挙なんて危険である。自民党の重鎮達も心配になったのか、売上税の廃止に賛成することにした。たぶん、藤尾正行・政調会長や「税調のドン」山中貞則も“マズイ”と思ったのかも知れない。業界団体は硬い“票田”となっているから、当選が危うい国会議員なら焦ってしまうだろう。ここが無党派層とか孤立有権者との違いである。たとえ、数が多くても砂粒のような“個人”は政治改革の原動力にはならない。それゆえ、自民党は結束できない庶民から搾り取ろうとする。

Matsumoto 1(左 / 松本零士)
  中曾根内閣で大型間接税の導入に失敗した大蔵官僚は、「業界を敵に回したから悪かったのかなぁ~」と反省した。そこで今度は名称を「消費税」に変えて導入を謀った。名前は何であれ、大蔵省が目指したのは歐洲で実施された「附加価値税(VAT / Value Added Tax)」の模倣である。これは国民が何らかの“価値”を産みだしたら、そこから搾り取る税金だ。例えば、漫画家の松本零士(まつもと・れいじ)先生が、ペンや絵の具で「メーテル」のポスターを描いたとしよう。人気漫画家の直筆となれば、その価格は紙代や経費を上回って高値となる。もし、200円で買った画用紙が、オークションで2万円とか20万円になったら大儲けだ。本来なら、利益を得た松本先生が所得税を払えば済む話なのに、大蔵省(現:財務省)は附加価値税を取ったうえに、さらなる収奪として所得税を取ろうとする。

 「売上税」から「消費税」に名称を変えた大蔵官僚は、小売業者を宥(なだ)めるため、「消費税は客が払う税金です」と説明していた。そして、抜け目なく「お客様から預かった税金をちゃんと納めてください!」と釘を刺していた。しかし、これはペテンだ。実際は原材料の製造業者から、各流通業者、および小売店に至るまで、各段階で課税される仕組みになっていた。(要するに、課税売上×税率−課税仕入×税率を納めるという訳。)でも、大企業から小規模会社、個人事業者までを網羅する“根こそぎの徴税”となれば、多数の自営業者から苦情が殺到する。だから、大蔵官僚は附加価値税の“お目こぼし”を画策していたのである。つまり、「年間課税売上高が3千万円以下の事業者は“免税業者”にしてやるから、ギャアギァア騒ぐんじゃねぇ!」と言い放ったのである。

  しかし、2004年になると“ちょっとだけ”財務省の本音が現れたのか、「免税は1千万円以下の事業者」となってしまい、令和5年になるや、「今まで免税事業者になっていた奴らはけしからん! これからはテメー達らからも取るからな!」と凄むようになった。この方針転換により、零細業者は窮地に立たされた。インボイス(適格請求書)制度に登録しない者は、登録番号をもらえないから、取引先からの依頼が無くなるか、大幅な収入源となってしまうのだ。注文や仕事の依頼が激減するとなれば、自営業者は嫌々ながらでも「登録業者(適格請求書発行業者)」になるしかない。(ただし、インボイス制度への認知や理解が広まっていないから、未登録者は結構多いという。色々な情報筋から推測すると、法人で約200万件、個人事業主で約116万件らしい。

高橋洋一も賛成派

  新聞やテレビは藝能ニュースなら朝から夜まで報道するが、一般国民にとって重要な政策になると急に静かになる。当然ながら、テレビ局に招聘される御用学者や経済評論家もプロデューサーに従い、財務省のお役人様に逆らうような解説はせず、財務省のパペットを演じたりする。憐れなのは、テレビや新聞だけを頼みとする庶民と個人事業者で、慶應や早稲田で飯を食う偉そうな大学教授が喋ると「うわぁぁ~、登録しないと大変だ!」と騒ぎ出す。


Takahashi 2
(左 / 高橋洋一)
  元財務官僚で嘉悦大学の高橋洋一教授だって、インボイス制度に関しては危機感を抱いていなかった。去年、高橋氏は自信のYouTube番組でインボイス制度を取り上げていたが、なぜか“中小企業”だけに焦点を絞り、零細企業、とりわけ“個人事業者”の窮状について述べなかった。番組では一般人からの質問を受けて答えるという形式を取っている。いつもなら、財務官僚の悪巧みを暴く高橋教授なんだけど、インボイスの件に関しては論調を変え、「今まで払っていなかった人が払うようになるだけ」、という説明だった。曰く、「こういう質問をする人は、今まで免税事業者だったんじゃないの? ・・・消費税の金額だけ貰っておいて払わない人は結構いるよね。それは利益と勘違いしているんじゃないの?!」と。(「高橋洋一チャンネル」、第317回 『インボイス制度で中小企業が潰れる!』)

  若い頃、税務署の署長を務めたことがある高橋教授は、税制に詳しくない視聴者に対してアドヴァイスを与えていた。彼は笑顔を浮かべて、「インボイス制度に関してよく解らない人は、税務署で訊いてみれば」と勧めていたけど、新たな増税で困っている庶民が、きっちりと税金をむしり取る税務署に行くのか? 夫婦で営業する大衆食堂や街の魚屋、赤字すれすれの青果店、燃料代の高騰に苦しむ配送業者、無名の声優、フリーランスの作家やイラストレーター、下っ端の演奏家、売れない漫画家、三流作品を手掛ける脚本家などは、所得の激減や経理業務の煩雑化で悲鳴を上げている。焦燥感を抱く個人業者は「このままでは身の破滅だ」と悟ったそうで、勇気のある者達が立ち上がり、インボイス制度の廃止を訴えているそうだ。(岡田有花「インボイスはデスゲーム」、税の押し付け合いが始まる 反対署名18万、“身バレ”問題も未解決」ITmedia、2023年02月14日)

  高橋教授から見ると、こうした人々は本来払うべき消費税を懐に入れている“ネコババ業者”なんだろうが、どうして税務署や財務省は“泥棒業者”を放置してきたのか? 脱税に対して厳しい税務署が、明らかな泥棒を赦すなんておかしい。サン・フランシスコの警官じゃあるまいし、イワシの大群みたいに容易に捕まる脱税者を取り締まらないなんて不自然だ。おそらく、大蔵官僚は消費税が本質的に“附加価値税”であったから、「お前らはチンケな雑魚だから見逃してやる!」と思っていたのだろう。

  ところが、岸田政権下の財務官僚は、更なる税収を求めた。つまり、鬼の形相を見せるお役人様達は、この“恩恵”をチャラにしようとした訳だ。高級官僚というのは悪徳代官のようなもので、消費税の導入前は「少子高齢化になっても社会保障を充実するため」とか、「安定した福祉財源を確保するためにも、消費税の導入は必要です」と嘯(うそぶ)いていた。令和になると、「消費税額と消費税率を正確に記載することができ、業務の簡素化が実現できます」と役所のメリットだけを強調し、塗炭の苦しみを味わう庶民の生活は無視。マスコミに登場する経済評論家も、財務省の手先になった方が「得」と考えたのか、「インボイス制度の導入は納税の不正防止になるます!」と煽るようになった。

  そもそも、消費税の導入は法人税の減額とセットになっており、企業から得られる税収が減った分を一般人から“むしり取る”という仕組みになっている。法人税は徐々に40%から37.5%、34.5%から30%へと減っていったが、消費税は逆に増えていった。橋本内閣で5%に上昇し、安倍内閣では8%へと引き上げられ、さらに10%へと鰻登り。岸田総理がどうするのか判らないが、将来的には財務省が目論む13%か15%に引き上げられるだろう。まともな国民であれは、消費税が導入される前から、「大蔵官僚は北歐型の税制と福祉制度を目指しているから、やがて20%か28%にになるだろう」と予測できたはず。でも、こうした予測は少数派だった。

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(上写真 / 高い税金と高度の福祉を容認するスウェーデン人 )

  一般人でも北歐諸国の税制を見てみれば解る。例えば、スウェーデンの標準税率は25%で、ほとんどの商品に適用されている。ただし、軽減税率もあって、食料品や藝術家の作品は12%で、新聞・雑誌・書籍、飛行機や列車の運賃、映画やスポーツ観戦、コンサートのチケットなどは6%になっている。ただし、医薬品は0%。スウェーデンの税制では、社会保障税や賃金・労働税の比率が高いけど、法人税は7%くらい。たぶん、日本も法人税をもっと低くして、その減った分を社会保障税の増加で埋め合わせるつもりなのかも知れない。つまり、国民健康保険税や地方税を増やすか、新たな税金、例えば環境税とか通行税、自転車保有税、子供支援税とか、色々な理屈を述べて増税路線を強化することも可能だ。

  衰退する日本経済については、もっと深い闇がある。大学やシンクタンクに雇われる経済学者は口にしないが、財務省や日銀の財政・金融政策には政治の要素が絡んでいる。この件に関しては別の機会で述べたい。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68940192.html
9:777 :

2023/10/01 (Sun) 23:40:34

大手メディアでは報道されないインボイス制度の裏側|室伏謙一
2023/10/01
https://www.youtube.com/watch?v=-8ZR8ZTGPPM
10:777 :

2023/10/01 (Sun) 23:44:16

消費税を社会保障目的税にしているのは世界中で日本だけだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14017929

大失業社会へまっしぐら?最低賃金アップと消費税減税のどちらが責任ある政治なのか
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14028869

yohine(Innocent Key) 消費税大増税時代を生き抜く方法
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14073253
11:777 :

2023/12/13 (Wed) 16:33:13

インボイス制度導入は輸出還付金のため 2023年分 輸出大企業上位20社で1・9兆円に
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16829833



藤井聡 徹底解説・インボイス ~何がそんなにヤバイのか~
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14061199

高橋洋一 _ 年金は大丈夫!消費増税は必要ない!!
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/476.html

消費税を社会保障目的税にしているのは世界中で日本だけだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14017929

大手メディアでは報道されないインボイス制度の裏側|室伏謙一
2023/10/01
https://www.youtube.com/watch?v=-8ZR8ZTGPPM

【安藤裕】消費税+インボイスという庶民を殺すシステム、最高税収でも国民はクーラーを控える夏が来る![桜R5/7/4]
2023/07/04
https://www.youtube.com/watch?v=BffuDupVmWw

大失業社会へまっしぐら?最低賃金アップと消費税減税の どちらが責任ある政治なのか
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14028869

yohine(Innocent Key) 消費税大増税時代を生き抜く方法
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14073253

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