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インフレが起これば金融緩和が出来ないので、低金利で資産価格バブルの時代は終わる。

1:777 :

2022/10/17 (Mon) 07:38:09

インフレが起これば金融緩和が出来ないので、もう何年も続いてきた低金利で資産価格バブルの時代は終わり、新しい時代が始まる。


チューダー・ジョーンズ氏: 2020年代は財政規律が勝利する時代
2022年10月16日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29788#more-29788

1987年のブラックマンデーを予想したことで有名な投資家のポール・チューダー・ジョーンズ氏がCNBCのインタビューで、低金利と緩和の時代の終わりとその後の経済見通しについて語っている。

アメリカ経済を振り返る

ジョーンズ氏はインフレ悪化を去年の内から警告していた著名投資家の1人である。

ポール・チューダー・ジョーンズ氏: インフレはどんどん酷くなる (2021/10/25)

政治家や中央銀行家が去年インフレを意図的に無視し、後でロシアに責任を押し付けた一方で、優秀なファンドマネージャー誰もが物価高騰を警告していた。

だが物価高騰は起こってしまった。インフレが起これば金融緩和が出来ないので、もう何年も続いてきた低金利で資産価格バブルの時代は終わり、新しい時代が始まる。

マイナード氏: 株価が暴落しても中央銀行はもう助けに来られない

ジョーンズ氏はこれまでのアメリカ経済の移り変わりを次のように振り返る。

これまでの経済史を10年ごとに振り返ってみれば、1970年代はインフレの時代、80年代はバブルとその崩壊、ドルが乱高下した時代、90年代はベンチャー企業の上場とドットコムバブルの時代、2000年代は不動産バブルとリーマンショックの時代、2010年代はグローバル化の終焉と、あとは恐らく中央銀行による金融政策実験の終焉の時代だろう。

70年代にはアメリカでは物価高騰とそれに伴う株価暴落が起こった。

ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に

80年代はレーガノミクスの時代であり、1985年のプラザ合意と1987年のルーブル合意におけるドルの為替レートの操作と、その失敗が1987年のブラックマンデー(ジョーンズ氏はこれを予想して有名になった)をもたらした。

プラザ合意からブラックマンデーまでを振り返る

90年代はMicrosoftなどのIT企業が隆盛した時代であり、株式市場では名前に「.com」が付いてさえいればIT企業でなくとも株価が高騰した。米国株であれば何でも買われた2021年の相場に似てはいないか。

2000年代は言わずもがなリーマンショックの時代である。ここから中央銀行による本格的な紙幣印刷が始まった。

リーマンショック時における米国株、政策金利、住宅価格の推移
そして2010年代、ジョーンズ氏の言葉で言えば、中央銀行は金融政策で実験を繰り返し、リフレ派は現金をばら撒けば人々が豊かになると説いた。そしてその結果は2020年代においてわれわれを待っている。

ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる
これからの世界経済

では2020年代はどういう時代になるのか? ジョーンズ氏は次のように予想している。

2020年代は、申し訳ないが、国ごとの負債の状況や財政赤字に人々が注目し、人々が通貨の長期的価値を信じられるような財政政策を行わなければならなくなる時代になるだろう。

何故そう言えるのか? 低金利の時代が終わったからである。

日本やアメリカの政府が無尽蔵に負債を増やし続けられたのは何故か? 金利がゼロだったからである。金利がゼロであれば、借金の期限が来てももう一度借金をして期限を伸ばせば良い。その間に払わなければならないペナルティはゼロである。

だから誰もが借金を増やし続けた。リフレ派は「インフレが起こらない限りばら撒きは問題ない」と言い続けた。そしてどうなったか? インフレが起きた。

世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
ジョーンズ氏は次のように振り返っている。

過去12年間に生じた問題は、われわれが金融政策で金利を低位に保つ壮大な実験を行なってしまったということだ。

そしてコロナ禍では財政政策においても壮大な実験が行われてしまった。

何故お金をばら撒けばインフレになるという子供でも分かる理屈が誰にも分からなかったのか。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
いずれにせよその時代はインフレとともに終わりを告げた。ジョーンズ氏は次のように続ける。

わたしの予想では、2020年代はその真逆の状況が待っている。アメリカの中央銀行は既にそれを行なっている。

アメリカは物価高騰を抑えるために強力な金融引き締め政策を余儀なくされており、結果として金利は高騰、株価は暴落している。

米国の量的引き締め、今月から2018年世界同時株安の時の2倍の規模に拡大 (2022/9/2)

だがジョーンズ氏によれば、これは始まりに過ぎないという。これはコロナ禍に始まった長期トレンドなのだ。ジョーンズ氏は次のように続ける。

2024年の大統領選挙で誰が大統領になるにしても、この切迫した債務の状況に対処することになる。

債務状況が切迫してしまっているために、次の大統領は支出を切り詰めざるを得ない。

あるいは切り詰めないことも出来るだろう。だが財政を切り詰めない国に対し、金融市場は容赦なく襲いかかるだろう。ジョーンズ氏はこう続ける。

切り詰めなければどうなるか? 2010年代は人工的な低金利の時代だったが、2020年代はその真逆になる。債券の金利は期間が長いものほど上がり、株式にも同じ現象が見られる。これまでの10年で見てきたものとは真逆の現象だ。

もはや中央銀行は金利を押さえつけることが出来ない。金利を押さえれば物価が高騰する。金利を抑えなければ高金利で経済が死ぬ。それが1980年代から始まった低金利政策の結果である。

前にも言ったが、われわれは1980年から2020年をバブルにするために2020年から2060年を犠牲にした。そしてこれからは地獄の数十年が待っているだろう。

ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に
結論

この新たなトレンドを体現している国がある。日本とイギリスである。イギリスではトラス新政権がインフレ対策でばら撒き政策を発表し(少しでも経済が分かる人間には意味不明である)、ポンドと英国債は急落した。

サマーズ氏: イギリスのばら撒きは危機創造のお手本、問題はまだ終わっていない
そして日本ではインフレが起こっているにもかかわらず日銀が怒涛の勢いで紙幣を刷り、円が暴落している。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
ちなみに日本円はタイバーツやインドネシアルピアなどに対しても暴落している。近隣窮乏化政策ならぬセルフ窮乏化政策である。

愚かな日銀のお陰で日本経済は自殺している。遠くない未来に安い物価を求め、東南アジアから人々が日本に押し寄せることになるだろう。海外から見て激安の労働力であるところの日本人は海外企業に良いように使われ、貧しい日本人に対して恩情的な労働条件を提示することはフェアトレードと呼ばれることになる。そして貧しい日本の子供たちは、裕福な東南アジアの旅行客に小銭をねだることになる。それが黒田氏の目指す日本である。

だが素晴らしいではないか。筆者は実はこの新しい時代を非常に気に入っている。要するに2020年代は馬鹿が勝手に滅んでゆく世界である。日本人の大半はインフレに放火する政策を喜んでいる。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
そして脱炭素政策とロシア制裁で、資源を生産することも輸入することもなくエネルギーや食料を確保できるという、凡人には不可能な未来予想に賭けたヨーロッパ人は、今や風呂に入らずバッタを食べる生活を目指している。

ドイツの政治家、カーボンニュートラルのために風呂に入らないことを推奨
EU、食料価格高騰の最中、代替食品としてトノサマバッタを推奨
こんな素晴らしい世界はなかなかないと筆者は考えている。一方でインフレ対策を行うまともな中央銀行を持った国民は、単に預金するだけでインフレを避けられるだろう。投資家はそういう国に賭けるべきである。

インフレ相場での最良の投資方法は株の空売りを除けば株式投資ではなく預金

国民が馬鹿かどうかで今後10年の明暗が確定する。果たして多くの人々は「お金が降ってきてうれしい」以上の知性を持ち合わせているのだろうか。多分ないだろう。楽しみに結果を待ちたい。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29788#more-29788

2:777 :

2022/10/17 (Mon) 07:47:31

紙幣をばら撒けばインフレになるという単純な事実が多くの人々には難しすぎて理解できない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14054383

史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14040247

ケインズは間違っている _ 何故公共事業が長期的には失業を生むか
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1453.html

量的引き締めのインフレ抑制効果は薄い
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14041986

1万円銀行融資すればマネーサプライは1万円増える、財政支出はマネーサプライを増やす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035981

銀行のバランスシートと銀行破綻
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14037261

MMTは機能しない!超緊縮論を唱える元大蔵官僚 野口悠紀雄
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035472

GDPでは国民所得はわからない _ 日本人の平均月収は15万円以下
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14042843

アメリカGDPのまやかし 富裕層以外はマイナス成長だった
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/877.html

GDP・経済成長率や株価の上昇に意味は無い _ 貨幣価値が下がったから GDP も株価も名目値が上がっているだけ
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/391.html

金融緩和するとデフレになる理由
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14038579

倒産する企業はそのまま倒産させるのが正しい
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14033162

1万円銀行融資すればマネーサプライは1万円増える、財政支出はマネーサプライを増やす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035981

ついに始まる世界金融恐慌
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793

金融緩和や財政出動をするとこういう結果になる
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/555.html

公共事業や量的緩和で経済は救えない _ 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/892.html

政府が事業者を救済しても無数のゾンビ企業を作るだけで、いずれ経営破綻する
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/554.html

政府主導の事業は必ず失敗する
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1415.html

何故公共事業が長期的には失業を生むか
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1564.html

量的緩和はデフレの原因
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1128.html

デフレとインフレは簡単に入れ替わる
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1473.html

インフレで起きる事
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1559.html

40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513

アメリカの政策金利はこれから 5%以上に上がって世界恐慌を引き起こす
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自称 数学者・経済学者の髙橋洋一は 完全なバカ か 詐欺師 のどちらかだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009765

三橋貴明には気をつけろ・・・「日本はこんなもんじゃない」という幻想」
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14003160

日本エリオット波動研究所の相場予測は凄い、宮田直彦のエリオット波動分析はデタラメ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14081932
3:777 :

2022/10/17 (Mon) 07:53:42

重商主義の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1530.html

アダムスミス『国富論』の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/917.html

リカード、マルサスの古典派経済学の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/914.html

ハイエク、フリードマンのマネタリズムの世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/913.html

マルクスの貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1119.html

マルクス経済学の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/915.html

新古典派経済学の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1531.html

信用貨幣論に基づく信用創造
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/919.html

商品貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1751.html

信用貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1750.html

現代貨幣理論(MMT)が採用している国定信用貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1749.html

新自由主義の世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/916.html
4:777 :

2022/10/17 (Mon) 07:54:10

戦後日本のバブル崩壊以前の一億総中流社会は共産主義者ばかりの GHQ が意図的に作ったものだった
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/830.html
5:777 :

2022/10/19 (Wed) 20:55:20

ジム・ロジャーズ氏: 景気後退で紙幣印刷再開、インフレ第2波へ
2022年10月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29942

ジョージ・ソロス氏とクォンタム・ファンドを立ち上げたことで有名な投資家のジム・ロジャーズ氏がThe Meb Faber Showのインタビューで、インフレが一度落ち着いた後のシナリオについて語っている。

インフレは一度沈静化する

世界的な物価高騰が続いている。一方、アメリカではもう半年ほどインフレ率が8%台で横ばいとなっており、ピークが近いのではないかと言われている。

9月の米インフレ率は8.2%、今後の推移予想
インフレ率は今後どうなるのだろうか。ロジャーズ氏は次のように語っている。

一直線に上昇するものも一直線に下落するものも存在しない。調整を交えながら上げと下げを繰り返すのが普通だ。そしてインフレにも同じことが言える。

だから物価は上昇した後、下落してゆくのだろうか? ロジャーズ氏の意見はそうではない。彼はこれからインフレ率が下がったとしても再び上昇する可能性が高いと見ている。

彼は次のように述べている。

原油の価格が高騰し、その後落ち着く。人々は「インフレが収まった」と考える。だが多くの場合一時的なものだ。

特にインフレはロシアのウクライナ侵攻のせいだという大手メディアのデマを信じている人はそう思いがちだ。ウクライナ情勢が短期的なものであれば、インフレも短期的なもののはずではないか。

だがロジャーズ氏はこう続ける。

戦争があれば穀物を植えたり農作物を収穫したりするのが難しくなる。だがもっと重要なのはインフレはウクライナ前から存在したということだ。

アメリカのインフレ率のチャートを掲載しよう。そしてインフレがウクライナ侵攻の始まった2022年2月末から始まったのかどうか確認してみるといい。


実際にはインフレはコロナ後の現金給付などのばら撒きが引き起こしたのである。

世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
インフレは続くのか

だから今後インフレ率が原油価格の落ち着きなどを反映して下落した後、インフレはまたぶり返すのかどうかを考えるためには、「ウクライナ情勢はいつまで続くのか」を考えるのではなく、「このばら撒きを好む人々は存在し続けるのか」を考える必要がある。そして答えはイエスである。

ロジャーズ氏は次のように予想する。

何か本当に劇的なことでも起こらなければ、インフレは続くだろう。景気が世界的に後退すれば、中央銀行は紙幣印刷を続けるだろうからだ。

ロジャーズ氏は戦争とインフレを好むアメリカ政府を嫌ってシンガポールに移住しているのだから、彼の中央銀行家に対する見方は非常に明確である。

ジム・ロジャーズ氏: 米国のウクライナ支援はロシアが米国直下のメキシコの反米を煽るようなもの
ロジャーズ氏は次のように続ける。

中央銀行は人々のことなど考えていない。彼らが考えているのは自分の職のことだけだ。

日本円が暴落しているのに、日銀は何故緩和をして円を暴落させ続けるのだろうか。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
日銀の黒田総裁は何故自分の政策が失敗どころか危機の原因であることを認めないのか? 認めたら任期終了を待たずに辞めざるを得ないからである。このロジャーズ氏の発言はほとんどの中央銀行の行動原理を表している。そしてそれゆえに投資家にとって非常に重要である。

パウエル議長は緩和に逆戻りするか

日銀の黒田氏は言及する価値すらないが、アメリカが深刻な景気後退に陥った時にFed(連邦準備制度)のパウエル議長が緩和に逆戻りするかどうかは投資家にとって議論する価値のある問題である。

ロジャーズ氏の考えでは、パウエル氏は緩和に逆戻りする。筆者もこの件についてロジャーズ氏と同じように考えている。

何故か? それを予想するためには、パウエル氏の行動原理が何であるかを考えてみるといい。

パウエル氏は何故2018年に自分の金融引き締めが世界同時株安を引き起こしたとき、引き締めを撤回して緩和に逆戻りしたのだろうか?

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
逆戻りしなければ世間に批判されて自分の立場が危うくなったからである。

ではパウエル氏は何故2021年に、アメリカのインフレ率は既にかなり高かったにもかかわらず、「インフレは一時的」とマントラのように唱え続け、金融引き締めをやらなかったのだろうか?

世間が物価高騰を騒ぎ始めるよりも前に引き締めで経済を冷やしてしまえば自分の立場が危うくなっただろうからである。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
ではパウエル氏は何故2022年に株価が暴落しても金融引き締めを続けているのか? 引き締めを続けずに物価高騰が続けば世間から批判されて自分の立場が危うくなるだろうからである。

パウエル氏が考えている唯一のこと

ここまで考えればお分かりだろう。パウエル氏はこれまで一貫して1つのことしか考えていない。自分の立場が危うくなるかどうかである。

1970年代にアメリカで物価高騰が起こったとき、それを沈静化したのは当時の議長だったポール・ボルカー氏だった。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
彼は彼の引き締めが世間の批判を浴びても引き締めを続けた。そして彼と大統領はともに自分の席を失ったが、インフレは食い止めた。

パウエル氏とボルカー氏は同じだろうか? まったくの別人である。パウエル氏が信念で動いていないことはこれまで5年彼の行動を見てきた人間ならば誰でも分かる。彼はボルカー氏ではない。

だからパウエル氏は金融引き締めが実際に景気後退をもたらし、世間の引き締め政策への批判が高まり、自分の立場が危うくなれば、喜んで緩和に転換するだろう。

緩和再開でインフレ第2波へ

したがってロジャーズ氏の予想は明快である。これからインフレ率が下がり、それ以上に経済成長率が下がるとき、パウエル氏はどうするか? ロジャーズ氏は次のように言う。

日本では既に膨大な紙幣印刷をしている。アメリカも同じだ。経済が落ち込めばFedは紙幣印刷をするだろう。彼らは緩和に逆戻りする。

要するにパウエル氏も黒田氏と同じ道を辿るということである。それはドルの暴落を意味する。

ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ
だが何度も言うが、利上げさえ正常に行われれば、預金者は預金金利の上昇でインフレから身を守ることが出来るのである。

インフレ相場での最良の投資方法は株の空売りを除けば株式投資ではなく預金
だが中央銀行は緩和を続ける。そして預金者は金利も得られず、インフレはますます酷くなる。

結論

ロジャーズ氏はこのように纏めている。

勿論これは人々にとって良いことではない。だが彼らはそれが彼らにとって良いことだと考えている。

まったく黒田氏にふさわしいフレーズではないか。そしてパウエル氏も、これまでそうだったように、これからもそうなるだろう。ジョン・ポールソン氏やポール・チューダー・ジョーンズ氏など、他の著名投資家も同じように考えているようである。

ジョン・ポールソン氏、インフレ第2波で金価格高騰を予想
チューダー・ジョーンズ氏: 利上げ停止でインフレ相場再開、ビットコイン暴騰へ
ロジャーズ氏はこう言う。

もし自分が中央銀行のトップなら、中央銀行を廃止してから辞任するだろう。

ハイエク : 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ
世界最大のヘッジファンド : 政府が金融危機から守ってくれると思うな

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29942


6:777 :

2022/11/09 (Wed) 07:33:46

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
2022年11月8日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで莫大な債務を抱えた日本経済の行く末について語っている。

現金給付の結末を予想したダリオ氏

ついに世界的なインフレが起こってしまった。思い返せば、この状況を一番早く予想していたのはレイ・ダリオ氏ではなかったか。このインフレを引き起こした現金給付について、ダリオ氏は早くも2020年5月には次のようにコメントしていた。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする (2020/5/8)


これはある意味モノポリー(訳注:人生ゲームのようなもの)でプレイヤーのほとんどが文無しになって怒り出したので銀行役の人が現金を配り始める瞬間と同じようなものだ。

人間はいくつになっても中身は子供と大して変わらない。現金給付を求める人も居れば、インデックスを保有して寝ているだけで金が儲かるという幻想にしがみつく人もいる。本質的には同じことである。

だが当時ダリオ氏が何をしていたかを思い出してほしい。人々が政府によるお金配りに熱狂していた一方で、ダリオ氏は淡々と紙幣印刷で滅んでいったかつての覇権国の研究をしていた。

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 (2020/5/22)
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 (2020/5/25)


当時、何故ダリオ氏が突然オランダ海上帝国や大英帝国の研究をし始めたのかを本当の意味で理解した人はほとんどいなかっただろう。

だが物価高騰と株価暴落が起こっている今、読者は2年前のこれらの記事をどう見るだろうか。

ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる


先進国の衰退の段階

いずれにせよ、インフレは起こってしまった。紙幣をばら撒き過ぎたので紙幣の価値がなくなり、紙幣ではものが買えなくなってしまった。

だがダリオ氏によれば、それは先進国に起こる典型的なサイクルの一部の過ぎないという。ダリオ氏は次のように語っている。

多くの国、特に主要な通貨を保有する国々は、経済の長期サイクルのうち縮小・再整理の段階に近づいている。

縮小・再整理の段階とは何か。アメリカも日本も、かつて栄えた国である。アメリカは辛うじてまだ栄えていると言えるだろうか。少なくとも2021年まではそうだと言えただろう。

しかしダリオ氏の経済理論によれば、栄える国は大抵の場合債務を増やしながら栄える。そして最初のうちは生産力の向上によって栄えてきたこれらの国は、徐々に債務に頼らなければ経済成長できなくなる。

どのような国でも永遠に栄えることはないので、そのタイミングはいずれやってくる。つまりは債務の力に頼ってももはや経済成長できないタイミングがやってくるのである。

ダリオ氏は次のように言う。

縮小・再整理の段階とは、債務の水準と成長率が1930年から1945年のように持続不可能な規模になった場合に起こる。

より具体的には、債権者を惹きつけられるだけの金利水準が、支払い義務を履行しようとする債務者にとって耐えられないほど高くなってしまった時にそれは生じる。

アメリカはまさにそういう状態にあると言えるだろう。アメリカの金利は4%程度であり、これまでゼロ金利に慣れ親しんできた借金漬けの企業にとっては耐えられないほど高い。

一方でアメリカのインフレ率は8%なので、4%の金利では債券の保有者は債券を持っていると差し引きで実質4%損をしてしまう。

どちらにしても滅ぶしかない

ダリオ氏は次のように続ける。

この状況になれば中央銀行は難しい立場に置かれる。(債券が投げ売りされて)金利が高騰し、資産価格や経済にダメージが及ぶことを許すか、紙幣を印刷して債券を買い支え、紙幣の価値が下がることを許すかのどちらかしかない。

そしてこの選択に既に迫られている国がある。ダリオ氏はこう続ける。

例えばイギリスの債務をめぐる大混乱は一番典型的な状況だろうし、より目立ってはいないが日本の紙幣印刷と円の減価は同じ状況だと言える。

イギリスの状況は、それを引き起こしたトラス政権の退陣という形で一応は決着した。

ドラッケンミラー氏: 他の国がイギリスに続けば暗号通貨は暴騰へ
しかし日本の状況は続いている。そもそもこの状況は2012年のアベノミクスの頃から続いている。

市場がアベノミクスを織り込み始めた2012年11月16日の衆議院解散時の日本円の価値(対ドル)を100とした場合、その後の円の価値は以下のように推移している。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/11/2022-11-8-jpy-to-usd-chart.png


当時を100とした場合、今の円の価値はおよそ55である。


結論

人々は米国株が20%ほど下落したくらいで大騒ぎしているが、そもそも10年でほぼ半値になっているものを日本人の多くは保有しているではないか。

そして何故そうならねばならなかったのか? 何故債務は増えなければならなかったのか? 政治家が東京五輪やGO TOトラベルを行うためである。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
それでも日本人は自民党に文句を言わない。彼らは永田町の中高年に貢ぐために生きているので、そっとしておいてあげるのが良いだろう。変わったキャバクラが日本では人気なのである。

投資家はただ市場の行方を予測するのみだろう。ダリオ氏は次のように言う。

中央銀行が強力な利上げを行ない流動性を引き締める場合、金融資産の価格は下がり、経済のうち金利に敏感な部分がダメージを受けるだろう。

一方で中央銀行が紙幣印刷を続ける場合、彼らの通貨の価値はより急速に落ちていくということが事実起こっている。

ドル円に関して言えば、短期的にはアメリカの利上げの限界はドル高の限界を意味する。円と同様にドルもゴミであるために、短期的には円が下がったりドルが下がったりするだろう。

ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ
だが長期的にはどちらも沈んでゆく。そして恐らく円の方が激しく沈んでゆく。

ドル円が150円というのは短期的には天井かもしれないが、長期的にはまだまだ通過点に過ぎない。財布の中に入っている日本円の価値をちょっと疑ってみるのが良いだろう。永田町のキャバクラよりも良い使い道があるはずである。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず 日銀が利上げを行わない理由

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502
7:777 :

2022/11/21 (Mon) 21:06:24

世界最大のヘッジファンド: 無節操に支出し続けるメンタリティのお陰でスタグフレーションへ
2022年11月21日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30931

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がBusiness Todayのインタビューでインフレの根本原因について語っている。

インフレの本当の原因

インフレの原因は何か。ヨーロッパなどの局所的な話を除けば、もはやロシアのウクライナ侵攻は完全に無関係である。原油価格は既に2022年2月末の侵攻開始時よりも大幅に低い水準にある。


これは識者が全員最初から指摘していることだが、大手メディアはいまだに2021年から始まっていたインフレの主因として2022年のウクライナ情勢を挙げている。デマを撒き散らすのも良い加減にしてはどうかと毎度思っている。

ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
ではインフレの本当の原因は何か。経済学的にはコロナ後にアメリカでは3回も行われた現金給付によって需要が爆発的に増加したこと、そしてそこからの物価上昇スパイラルが原因だが、ダリオ氏はもっと本質的な原因を分析したいようだ。

ヘリコプターマネーにすがる人々の声

経済学においては物価は需要と供給で決まる。現金給付は確かにこのバランスを完全に崩壊させた。

世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
だがそれを政治的に許容した背景とは何か。それがインフレの本当の原因のはずである。そしてそれは単にコロナだけの話ではないとダリオ氏は言いたいのだろう。彼は次のように述べている。

誰もがお金を必要としている。貧困緩和のためにもお金が必要だ。インフラのためにもお金が必要だ。ウクライナの復興のためにもお金が必要だ。気候変動のためにもお金が必要だ。

だがその原資は何処から出るのか? コロナ初期にジェフリー・ガンドラック氏がこう言っていたことを思い出したい。

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判 (2022/3/29)
政府による企業救済とヘリコプターマネーを求める声がうるさいほどである。でも政府は文無しだ! まったくの文無しだ。

現金給付を求める声に対してダリオ氏もまたこう言っていた。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

問題の根源は人々が消費したい量に対して商品の量が足りないことである。それを紙幣印刷で解決できるという妄想は何処から来たのか。あなたの欲しかったものは食料やエネルギーではなく紙だったのか?

このような馬鹿げたアイデアは個人の資金繰りのレベルでは考えもしないことのはずである。ダリオ氏はこう説明する。

個人であれば、先ずいくらお金を持っているかを考え、次に何に使うかを考えるだろう。だが政治においてはそのメンタリティがない。

個人と政府の大きな違いは、政府は紙幣を印刷することができるためにその制約がないということだ。

そしてお金を手にした人が更に必要のないものまで購入して更にものがなくなってゆく。それが政府のやっていることである。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
紙を求めた人は確かに紙を得たが、食料やエネルギーの欠如はむしろ酷くなった。現金給付支持者の望んだ通りの未来である。おめでとう。

生産なしに消費できるという妄想

要するにダリオ氏はこう言っている。インフレの本当の原因は、生産することなく消費をすることができるという妄想こそがインフレの根本原因である。

その一番の見本は、エネルギーを生産することなく暖房を確保できるというヨーロッパの新興宗教だろう。

ソロスファンドCEO: ESGはエネルギー価格を高騰させる
ドイツの政治家、カーボンニュートラルのために風呂に入らないことを推奨
しかしこうした身の丈に合わない消費をする傾向はリーマンショック以降長年存在した。それでもまだ貯金がある間は良い。無駄金が銀行口座に溜まってゆくだけで、元々貯金のある人々の消費行動にはそれほど影響しない。

だがコロナなどで人々に本当にお金がなくなり、降ってきた現金を人々が本気で使うようになれば紙幣印刷の幻影はもうおしまいだ。物価は高騰し、しかもこれまで10年以上溜まり続けた分の現金まで人々は使おうとする。そして現金の価値がなくなる。

だから今の相場はリーマンショック以後の14年、もっと言えば金利低下が始まった1980年以後の42年間の低金利巨大バブルの総決算なのである。それが20%程度の株価下落で収まり、インフレも次第に元に戻ってゆき、大した不況に陥ることもないという市場参加者の妄想は完全に間違っている。

米国株の今後の見通し: 企業利益激減で株価は再び暴落へ、空売り再開
ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に
今やインフレ率は下げなければならないが、現在7%台のアメリカのインフレ率を2%まで5%下げれば、現在1%台の経済成長率は間違いなく5%以上、恐らく10%程度下がるだろう。そうならなければ、物価高騰は10年は居座るだろう。そのほとんど間違いない未来は、まだ金融市場の何処にも織り込まれていない。

ダリオ氏はこのように纏めている。

中央銀行は今やインフレと経済成長のトレードオフを迫られている。残念ながらこの困難な状況はスタグフレーションを引き起こすだろう。

筆者の今年の相場観は、一貫してスタグフレーショントレードである。年始から明らかだったではないか。

ゴールドの買い開始、 スタグフレーショントレード再開


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30931
8:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2022/12/29 (Thu) 15:48:01

2023年著名投資家の相場予想まとめ: 株式、ドル、金利、インフレ率
2022年12月28日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32284

12月21日に亡くなったスコット・マイナード氏の最後のインタビューを訳し終わってしまったので、2023年の著名投資家や専門家の金融市場予想について纏めておこうと思う。2022年は物価高騰やウクライナ情勢など激動の年だったが、2023年はどうなるだろうか。

2023年の金融政策

2022年の金融市場を一言で言い表わせば、インフレと金融引き締めの年ということになるだろうか。物価高騰を抑えるための利上げと量的引き締めで株式市場は下落した。

だがその効果が2022年の秋には実体経済に出始め、アメリカのインフレ率は急減速を開始している。

11月アメリカのインフレ率は急減速継続で7.1%、ドル安加速へ
まずはこのインフレ急減速を的中させた2人の2023年の相場観から紹介しよう。

2023年のインフレ率の推移予想

インフレ率の動向については専門家の予想が分かれていたが、急減速を予想し的中させたのは債券投資家の2人だった。

Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏とDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏は、債券市場が長期金利の低下などのデフレシグナルを発していたことなどを理由にインフレ減速を予想していた。

ガンドラック氏の2022年9月のコメントを掲載しよう。

ガンドラック氏: 米国経済は風前の灯、金融引き締めをスローダウンすべき (2021/9/9)


債券市場と経済学者のコンセンサスとが意見を違えるとき、債券市場の方が正しい。そして債券市場は金利は上限に達したと言っている。

そして実際にインフレ率は減速を始め、投資家は利上げの上限について議論を始めている。

インフレ率は今後どうなるのか。インフレ率の推移を予想的中させた2人の予想はこうである。ガンドラック氏はインフレ率は現状の7%(2022年のピーク時は9%)から2023年の半ばまでに4.1%まで下落すると予想し、マイナード氏は3.1%というFedの2023年末のインフレ率予想を高いと言っている。

ガンドラック氏: インフレ率は4.1%まで下がりアメリカは利上げ出来なくなる
マイナード氏: アメリカはあと半年で利下げを余儀なくされる
2人のインフレ率予想によれば、インフレ率は現在の状況から2023年末には目標値である2%付近まで急降下するということになる。

インフレは根強く利上げが必要と主張していた経済学者のラリー・サマーズ氏も、最近のインフレ率急落を受けてインフレ率下落シナリオを支持しているから、2023年のインフレ率下落は専門家のコンセンサスと言って良いだろう。

サマーズ氏: インフレ率は下落する
インフレ率が下がること自体は良いことだが、ガンドラック氏などはFedが利下げをしない限りインフレ率の急落は2%では止まらないと言っている。彼は都合よく丁度2%で止まると予想している中央銀行家などに対してこう言っていた。

ガンドラック氏: 中央銀行のインフレ率予想は人間が想像可能な中で一番馬鹿げた経済予想
インフレ率が9%が2%まで極めて急速に下落するならば、下方向に行き過ぎると考えない理由が何かあるだろうか?

何故2%で止まるのか? そこに何か魔法でもあるのか?

インフレ率がピークから7%以上急落すれば、経済成長率も少なくとも同じくらい下落するだろうから、ガンドラック氏とマイナード氏のシナリオはインフレと景気後退が同時に起きるスタグフレーションというよりは、純粋なデフレ不況ということになるだろう。

アメリカは2023年に利下げへ

インフレ率の急落を予想した後に考えるべきなのは、政策金利がどうなるのかということである。

Fedは現在、5%以上への利上げ継続を表明している。だがインフレ率が急落していることを踏まえ、ガンドラック氏はこう言う。

ガンドラック氏: インフレ率は4.1%まで下がりアメリカは利上げ出来なくなる
政策金利が5%以上に上がるとは思えない。

記事では引用しなかったがマイナード氏は次のように言っていた。

政策金利は5%以上になるかもしれないが、そこに長く留まるとは思えない。

そしてどちらにしてもマイナード氏はその後の利下げを予想している。彼は以下のように言っている。

マイナード氏: アメリカはあと半年で利下げを余儀なくされる
2023年後半にかけての何処かのタイミングで、Fedはインフレが自分の予想よりも早く減速していることに気付くことになる。そして利下げに傾いてゆく。

2023年のドル相場予想

利下げになれば真っ先に頭に浮かぶのは、2022年に話題になったドル高がどうなるかということである。

2022年、アメリカの利上げを受けてドルは全面高の状況となっていた。高金利に惹かれてドルを買いたがる投資家がドル相場に集まっていたからである。

だがドルの金利が下がるということであれば、話は変わる。

ドルについて思い出すべきは、2022年6月のスタンレー・ドラッケンミラー氏のコメントである。

ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ (2022/6/20)
為替市場は非常に興味深いと思う。為替相場ではまだ大したことはやっていないが、今後6ヶ月のいつかのタイミングで自分がドルを空売りしていなければ驚くだろう。

ここでは言うまでもないことだが、ドラッケンミラー氏はクォンタム・ファンド在籍時にポンド危機においてポンド空売りを成功させたことで有名である。為替取引は彼の十八番だろう。

そしてその後、ドル円は実際に6ヶ月以内にピークに達した。ドル円のチャートは次のようになっている。


アメリカで金利低下が継続するならば、ドル安トレンドも継続するということになるだろう。

そもそもインフレはアメリカで現金給付が原因で始まったことであり、インフレとはドル紙幣の価値下落のことなのだから、本来はドル安で作用すべき要因だった。何故それが2022年後半まで遅れたのかということについては、以下のサマーズ氏とレイ・ダリオ氏の論争が参考になるだろう。

ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争
2023年はインフレでドル紙幣が減価した分のドル安が一気に来る年になると筆者は予想している。

日銀の長期金利の実質利上げを受けてドル円の空売りを開始
2023年株式市場の推移予想

さて、利下げとドル安予想まで議論したので、次は株式市場の番だろうか。2022年の米国株は結局下落のまま終わった。


株安は継続するだろうか。マイナード氏は1株当たり利益と株価収益率の低下というシンプルな根拠で2023年の株価下落を予想していた。

マイナード氏の米国株の推移予想: 利益と株価収益率の下落で2023年は暴落へ
マイナード氏はこの予想で企業利益を10%の下落と見積もっており、その上で株価は10%から20%の下落になると言っている。だが実際には企業利益はもっと下がるのではないか。

マイナード氏は年末に株価が多少上がったことについて次のように述べていた。

現在の季節的な上げ相場と、6週間前のFOMC会合から続いている安心感による上昇相場が終われば、株式市場はダウントレンドに戻るだろう。株価はまだ底値に達していない。

また、長期の視点で言えば、ドラッケンミラー氏が次のことを根拠に米国株の40年間の長期上げ相場の終了を予想している。

ドラッケンミラー氏: 株式市場は40年前の物価高騰時代より酷い惨状に
1982年から始まった金融市場の上げ相場は、特に直近の10年においてブーストされたが、それを生み出したすべての要因は、無くなっただけではなく、逆流している。

米国株は40年間上げ続けてきた。この事実に注目する人は多いが、にもかかわらず米国株が40年上がってきた原因について考える人はほとんどいない。

それは1982年から始まった低金利政策による長期株価上昇トレンドだったのである。

そしてそれはインフレの発生によって終焉を迎えた。短期的な利下げはあるだろうが、もはや長期的な金融緩和はできない。やってしまうとインフレが再発生し、その度に金融引き締めを行わなければならなくなる。その度に株価は下がるだろう。

「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
この事実は特に長期の株式投資家にとって重要である。また、米国株に投資する日本の投資家にとっては更に悪いことに、これからドルは下がる。

相場について何も知らない金融庁(彼らが何も知らないということさえ一般の投資家は理解していない)の言うことを聞くのか、ドラッケンミラー氏のような本当の専門家の言葉に耳を傾けるのか、2023年、投資家はもう一度考えてみるべきだろう。

「株式の長期投資はほぼ儲かる」という幻想は金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」から来た
2023年、アメリカは緩和転換するのか?

さて、最後に議論するのは2023年に実体経済が大惨事になってからの話である。

残念ながら、インフレが減速した後に実体経済が大惨事になるということはマクロ経済学的に不可避である。20世紀最大のマクロ経済学フリードリヒ・フォン・ハイエク氏はこう言っていた。

ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
失業はインフレが加速をやめたときに、過去の誤った政策の帰結として、非常に残念だが不可避の結果として出現せざるをえない。

コロナで沈んだ経済を現金給付で無理矢理浮揚させようとしたツケがこれから一気にやってくる。

ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる
だから2023年はインフレ減速とともに大量失業と大不況の年になる。

問題は、実体経済がそこまで悪化した時に中央銀行がどうするかである。

ここで紹介している専門家たちの意見では、パウエル議長が金融引き締めをやり遂げるということに懐疑的な意見が多いようだ。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

ドラッケンミラー氏: 経済が強い時に引き締めを続けるのは簡単だが
労働市場が強い状態で中央銀行が正しい方向に行くことは簡単だ。ハードランディングになれば彼らはどうするか見てみよう。彼らが銃撃を止めなければ良いのだが。

サマーズ氏は、インフレ退治をやり切ると言いつつもハードランディングや失業率の大幅上昇などを予想しない(予想したくない)パウエル議長について次のような例えを使っていた。

サマーズ氏: パウエル議長のインフレ退治が本気かどうか疑う理由
例えばわたしがニューヨークでマンションを買うと言えばあなたは信じてくれるだろうが、50万ドルしか払う気がないと言えば、あなたはわたしが本気かどうか疑い始めるだろう。

インフレの本番はインフレ減速後に不況が起こってからである。それがインフレ政策の最大の弊害である。

ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
その時にFedが大規模な緩和に転換するならば、市場経済では何が起こるだろうか。

クォンタム・ファンドを創業したジム・ロジャーズ氏はFedがインフレ退治をやり切るということを信じておらず、インフレ第2波の発生をメインシナリオとしている。

ジム・ロジャーズ氏: 景気後退で紙幣印刷再開、インフレ第2波へ
そしてそうなれば金価格は高騰するだろう。リーマンショックを予想し巨額の利益を上げたジョン・ポールソン氏などは金価格高騰を予想している。

ジョン・ポールソン氏、インフレ第2波で金価格高騰を予想
結論

ということで、2023年の著名投資家らによる相場予想を纏めてみた。読んでの通り、この中で一番重要なのはマイナード氏の利下げ予想である。

マイナード氏: アメリカはあと半年で利下げを余儀なくされる
そのマイナード氏の声がもう聞けないというのはあまりに惜しい。

スコット・マイナード氏、心臓発作で死去 63歳
また、ここでは取り上げなかったが2023年はBridgewaterのレイ・ダリオ氏の復活を期待したいところである。

世界最大のヘッジファンド、インフレ減速を予想できず大損の模様


読者も自分のポートフォリオと彼らの意見を比較してみてほしい。 2023年が良い年になることを祈っている。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32284
9:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/01/20 (Fri) 07:40:01

ここではエリオット波動の宮田さんと反対に今年の日経平均暴落を予測しています:

日本政府、金融緩和終了に言及 連続利上げなら日経平均は暴落へ
2023年1月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32865

年末に日本銀行が実質利上げを行なったことで、2013年のアベノミクス以来の金融緩和政策が危機に瀕している。

実質利上げをしている黒田総裁自身は、記者会見で自分は金融緩和を続けているという意味不明な供述を続けているが、今度は政府の側から金融緩和の終了に言及する声が上がっている。

円安とインフレ

日銀は12月20日の金融政策決定会合で実質利上げを決めた。

日銀がYCC変更で長期金利の上昇を許容、日本も金利上昇による景気後退へ (2022/12/20)
日銀が利上げに踏み切らなければならなかったのは、日本のインフレ率が急上昇しているからである。12月の東京都区部の速報値ではインフレ率は遂に4.0%まで上がっており、しかもこの数字は9月以降どんどん加速している。

その一因は明らかに日銀の緩和によってもたらされた円安である。インフレが問題となる中でインフレを目指す日銀の量的緩和によって、2022年の為替相場では日本円はドルやユーロどころかインドネシアルピアなどよりも弱い最弱通貨の1つとなっていた。(※1/19誤りを訂正しました)

日本円が下がり、日本人から見てほとんどすべての外貨が上昇すると、当然ながら輸入品の価格が上がる。そもそも「インフレ政策」とはそれを目指す政策だったというのに、自民党の支持者たちは何が不満なのだろうか。

ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
インフレ政策を支持しながらインフレの意味を今年まで知らなかった彼らの卓越した頭脳はさておき、もうすぐ任期が終了する黒田氏は、「緩和には何の問題もなかった」という顔をして逃げ切りたかったのだろうが、最後の最後に利上げをやらされたのである。それが恐らくは、金利を上昇させながら「これは利上げではない」などという意味不明な黒田氏のコメントに繋がっていると思われる。

金融緩和を終わらせたい日本政府

その意図が恐らくは政府から来たのだろうということは、1月の会合後の西川経産相の発言から読み取れる。

世界経済フォーラム(通称ダボス会議)において、彼はまず次のように発言した。(Reutersの英語記事の直接引用からの翻訳である。)

政府の多様な政策によって日本のインフレは他国よりも緩やかなものに留まっている。

ちょっと笑ってしまうような奇妙な話である。自民党はインフレを抑制するような政策は一切行なっていない。例えば全国旅行支援である。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
更に言えば、ガソリンに対する補助金は最悪の悪手であり、エネルギー資源が足りないからインフレが起きているのに、エネルギーの購入に補助金を出すことはまさに火に油を注ぐことに等しい。

サマーズ氏: ガソリンの価格高騰対策でインフレ悪化へ 現金給付の悪夢を人はもう忘れている
だが自民党の政治家の卓越した頭脳はマクロ経済学の常識など軽々と飛び越えてゆく。

そしてこういう人々が最初にやることは、自分を棚に上げてまず他人から批判することである。西村氏は次のように言う。

当然ながら、金融政策は将来正常化されなければならない。

投資が行われて賃金が上がり、経済が回り始めれば、金融緩和は将来停止させることが出来るだろう。そしてその段階に近づきつつある。

2013年のアベノミクス以来の日本政府としては異例の発言ではないか。こうした発言になった原因は、日本のインフレの状況である。

日本のCPI(消費者物価指数)のデータを見れば、日本のインフレ率の上昇ペースは危機的であり、このままではすぐにでも5%や6%に上がっていくだろう。

しかも円安による輸入物価の上昇が国内物価に波及している様子が見られ、ドル円が下がったとしても国内物価の方はそれだけでは下がってくれないだろう。

だから黒田氏は逃げ出せば良いかもしれないが、日本政府の方はこのままでは物価が高騰し国民に責められる。インフレ政策を有権者も支持したではないかという突っ込みは正論なのだが、馬鹿に正論は通用しない。

ここでは何度も言っているが、インフレとは物価上昇という意味である。それ以外の意味はない。インフレ政策はそれを目指してきたのである。その理由については以下の記事で解説している。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
2023年は利上げの年に

よって2023年は日本にとって利上げの年となるだろう。それが投資家にとってどういう意味を持つかと言えば、まずはドル円の下落である。


去年はドル高かつ円安の年だったが、アメリカと日本の両方でそのトレンドがひっくり返り、今年はドル安かつ円高の年になりそうだ。アメリカ側の事情については以下の記事を参考にしてもらいたい。

日銀の長期金利の実質利上げを受けてドル円の空売りを開始
そして日本株については、以下の記事で纏めてある。

2023年の日経平均の推移予想: ドル円下落と金利上昇で二重苦に (2023/1/4)
だがその後のインフレ統計や日本政府の発言を見ていると、2023年には黒田総裁の退任後に新総裁のもとで連続利上げが行われる可能性がある。

今年の株式市場は、アメリカでは金利の低下が始まっており、去年の利上げ効果による企業利益の減少と金利低下による浮揚効果が相殺し合う状況になるとここでは説明してきた。

だが日本が世界的な景気後退のもとで連続利上げを行うならば、企業利益の減少と日本の長期金利の急上昇という状況のもとで、日本株はかなり急激な下落相場になるだろう。日経平均は現状では次のように推移している。


結論

ということで、新体制の日銀が連続利上げに踏み切れば、ドル円と日経平均は仲良く暴落してゆくだろう。

だが金利を上げなければ日本は恐らくアメリカやヨーロッパ並みの物価高騰に突入してゆく。欧米の物価高騰が地獄絵図であることは、以下の記事などで紹介してきた。

ドイツの政治家、 カーボンニュートラルのために風呂に入らないことを推奨
EU、食料価格高騰の最中、代替食品としてトノサマバッタを推奨
自民党が国民の生活を慮って本気でインフレ退治をするかどうかはかなり怪しいところだが、少なくとも多少の利上げは強いられることになるだろう。

そこで問題となるのは、コロナ後に大流行りしたつみたてNISAなどの、金融の専門家から見て何の根拠もないギャンブル的な素人投資法である。

「株式の長期投資はほぼ儲かる」という幻想は金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」から来た
金融庁などは高校生にまで日本株や海外株のETFなどを買うことを推奨してきたから、それに乗せられて投資をした人のポートフォリオは日本株や海外株のETFで構成されているだろう。

だが2023年、彼らのポートフォリオはどうなるか。日本政府が主導する利上げによって日本株は死に、海外株はドル円の下落によって価値が大幅に毀損することになるだろう。

何度も言っているが、何故彼らはわざわざこのタイミングで投資を奨めたのか。しかも単に投資理論が間違っていただけではなく、日本政府自身が国民のNISA口座にそうした商品を放り込み、その後でそれらの価値を暴落させようとしている。

この件については何度も語ったので、ここまでにしておこう。詳しい議論が知りたい人は以下の記事を参考にしてほしい。

「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
だが、他人に買わせた投資商品の価値を意図的に下落させることは、控え目に評価しても詐欺である。

岸田首相にはその才能がある。還付金詐欺などを本業にするタイプのプロの方々は、是非お上の優れたやり方を学ばせてもらうと良いだろう。これこそが本物である。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32865



参考

日本エリオット波動研究所の相場予測は凄い、宮田直彦のエリオット波動分析はデタラメ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14081932

宮田直彦 エリオット波動レポート - YouTube動画
https://www.youtube.com/results?search_query=%E5%AE%AE%E7%94%B0%E7%9B%B4%E5%BD%A6+%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%83%E3%83%88%E6%B3%A2%E5%8B%95&sp=CAI%253D

エリオット波動・宮田レポート(短期アップデート)
https://www.m2j.co.jp/market/report/20525/list

エリオット波動でみると日経平均は2050年まで上昇 _ 宮田直彦 日本株はもうすぐ大暴騰する
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14031612

エリオット波動 宮田直彦 半導体株の出直り期待と日経平均の強気保ち合い
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14056708
10:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/01/20 (Fri) 08:22:47

同じエリオット波動でも日本エリオット波動研究所は、宮田直彦さんとは反対に、今年からの日経平均株価の大暴落を予測しています:

一般社団法人 日本エリオット波動研究所
https://jewri.org/

日経平均1年間のカウント の振り返りとナスダック100とS&P500の進行想定/有川和幸さん【キラメキの発想 12月19日】 | 一般社団法人 日本エリオット波動研究所
https://www.youtube.com/watch?v=MGFhLQnPOf4
https://jewri.org/news/news-3333/


エリオット波動
http://www.asyura2.com/13/ban6/msg/591.html
11:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/01/20 (Fri) 18:10:01

為替については

一般社団法人 日本エリオット波動研究所
https://jewri.org/

エリオット 波動原理から見た ドル円と日経平均/有川和幸さん【キラメキの発想 9月12日】 | 一般社団法人 日本エリオット波動研究所
https://www.youtube.com/watch?v=0I_beldwtXE&t=119s
https://jewri.org/news/news-3250/
12:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/02/14 (Tue) 23:33:23

サマーズ氏、日銀の新総裁によるイールドカーブコントロール廃止を示唆
2023年2月12日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33487

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏が、Bloombergのインタビューで日銀の新総裁となる植田和男氏について語っている。

植田和男日銀新総裁

2月10日、日銀の黒田総裁の後釜にマクロ経済学者で東大名誉教授の植田和男氏が選ばれることが発表された。

日銀の新総裁は当然日本の金利を左右するので、筆者は前回の記事において速報として植田氏の金融政策に関する考え方を簡単にレビューしておいた。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
筆者は植田氏について、大蔵省の役人だった黒田氏やプライベート・エクイティ・ファンド出身のパウエル議長などのマクロ経済学の門外漢である中央銀行家とは違い、マクロ経済学を専門とする学者である点を評価したが、一方で経済学者としては通説以上の独自の考えがない平凡な人物であると評しておいた。

サマーズ氏の評価はどうかと言えば、彼はインタビューで日銀新総裁について聞かれて次のように答えている。

植田氏は日本のベン・バーナンキのような人だと考えられるだろう。

ベンとほぼ同じ時期にMITで学び、論文アドバイザーもベンと同じだった。金融経済学の似た分野を専門とし、同じように学者のソフトな語り口ながら、決断力も持っている。

バーナンキ氏は2006年から2014年までFed(連邦準備制度)の議長を務めた人物である。前回の記事でも少し触れたが、ジョージ・ソロス氏やジョン・ポールソン氏などファンドマネージャーらが事前に警告していた2008年のリーマンショックを「住宅市場に限られた問題」として無視した張本人であり、彼と重ねられていることが褒め言葉なのかどうかは微妙である。

ジョン・ポールソン氏、サブプライムローンの空売りで大儲けした時のことを語る
サマーズ氏が同じ経済学者でありながら植田氏の研究の具体的内容に触れていないことから見れば、恐らくは経済学者としての植田氏についてほとんど知らないものと思われる。インタビューで司会者に聞かれたので、他国の新しい総裁にリップサービスを贈ったのだろう。

サマーズ氏は黒田氏とは知り合いらしく、黒田氏についても次のように世辞を贈っている。

植田氏は大人物の後を継ぐことになる。わたしは黒田さん(※原文ママ)を30年以上知っているが、彼は並外れて有能で分析力がありながら、計算高い中央銀行家になれる能力も持っている。

彼が辞めるのは残念だが、植田氏が後を継ぐのならこれからも安泰だろう。

日銀の政策はどうなるか

ここまでは大した内容ではない。本当に優れた人物ならば、アメリカ人はむしろ厳しいコメントを残すだろうということは、アメリカ人を知っている読者なら分かるだろう。

日本の国力がアメリカに届きかけていた時代には、アメリカ人はこぞって日本人を批判した。今では中国人が批判され、日本人は世辞を送られる。脅威にならないからである。

その意味で、サマーズ氏のコメントは筆者にとって日本の現状を思い出させるものだった。これは分かる人にしか分からないので、このくらいにしておこう。今回のサマーズ氏のコメントの中で、本音が表れていたのは新総裁がどういう問題に直面するかについて語った部分である。

サマーズ氏は次のように言っている。

日本はこれから非常に難しい問題に直面することになる。イールドコントロールを永遠に続けることが可能だとは思えない。

さらっと言っているが非常に重要な部分であり、要するに日銀は長期金利に上限を設定しているイールドカーブコントロールを続けられないと言っているのである。

日本のインフレと長期金利

2022年、日本国民がインフレに苦しんでいる中、誰も理由は分からないがインフレを目指して金融緩和を続けてきた黒田総裁は、量的緩和による円安を通して見事にインフレ悪化を実現した。日本のインフレ率は現在4%である。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
日銀はイールドカーブコントロールによって長期金利の上限を0.25%に設定してきたが、当然ながらこの低金利を続けるとインフレが止まらなくなる。それで黒田氏は、恐らくは政府の圧力によって、金利上限を0.25%から0.5%に上昇させることを余儀なくされた。

日銀がYCC変更で長期金利の上昇を許容、日本も金利上昇による景気後退へ
ちなみに黒田氏はその政策変更を「利上げではない」と主張しているが、はっきり言って意味不明である。彼はインフレ率が4%である現状を見て、インフレ目標が達成できていないことが残念とも述べており、誰か彼の言語を筆者向けに翻訳してほしい。

結論

いずれにせよ黒田氏は居なくなる。そしてサマーズ氏は、黒田氏に世辞を贈りながら、同時に黒田氏のやっていたことが持続不可能だと言っている。債券投資家のスコット・マイナード氏も言っている。

マイナード氏: 日銀の持続不可能な緩和政策の破綻は他国の教訓的前例になる
緩和を続ければどうなるか。インフレ下で緩和を行おうとしたイギリスに対してサマーズ氏が言ったことを、ここの読者は覚えているだろう。

サマーズ氏: 景気後退で財政支出する国はイギリスの二の舞になる
いずれにせよ、誰がどう言おうが、 誰も何も言わなかろうが、インフレ時に緩和を行うのは狂気の沙汰である。

日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
そして新総裁の植田氏はそれを知っている。

彼はアベノミクスの間違いを指摘されたくない自民党安倍派へのリップサービスとして「現在の金融緩和は適切」と言っているが、植田氏は少なくともある程度まともなマクロ経済学者であるので、金利を上げなければインフレが止まらないことを理解している。

投資家にとって重要な点はそこである。それがドル円と日経平均を動かすからである。

2023年の日経平均の推移予想: ドル円下落と金利上昇で二重苦に
植田氏の考え方を知りたい人は、前回の記事を参照してもらいたい。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33487
13:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/02 (Thu) 09:32:09

踏み絵のように緩和支持を言わされる日銀の植田新総裁と新副総裁たち
2023年3月1日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34101

日銀の新総裁に就任する予定の植田和男氏と、副総裁候補の内田真一氏と氷見野良三氏が、国会に呼ばれて次々に所信表明を行なっている。現在の日銀の状況も含めて、彼らの考えていることを解説したい。

アベノミクスとインフレ

2013年に始まったアベノミクス以来、大規模な量的緩和政策(つまり紙幣印刷)と長期金利を操作するイールドカーブコントロールによって日本にインフレをもたらすべく頑張ってきた黒田東彦日銀総裁が4月に退任することから、その後任として岸田首相に選ばれたのが長年東大でマクロ経済学者として教鞭を執ってきた植田氏である。

植田氏には黒田氏のインフレ政策の後始末が求められている。黒田氏は長年インフレを目指して金融緩和を行なってきた。そして日本経済はインフレになった。その原因はウクライナ情勢ではない。すべての優れた金融の専門家が、インフレの原因が量的緩和と現金給付であることを認めている。

ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
日本でも2021年には既に生産者物価指数が高騰していた事実を無視して2022年のウクライナがどうのと言い始める無知な人々が居るが、彼らももう絶滅寸前である。それで日銀に批判の目が向けられている。

インフレ政策の何が悪かったのか。インフレが実際に実現されてしまい、日本国民が遂にインフレが物価高という意味だという衝撃的事実に気付いてしまったことが黒田氏の一番の誤算かもしれない。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
実際にはインフレには何の利点もない。インフレとは経済学的には需要過剰、供給過少という意味であり、平たく言えば人々が必要としている量に比べてものが不足している状況である。デフレとは逆にものが余っている状況である。

ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
ものが余っている状況よりものが不足している状況の方が良いと誰が言い始め、何故それを誰もが無批判に信じたのか。筆者のような愚かな人間にはまったく理解できない思考回路である。人類は本当に卓越した頭脳を持っている。

円安で輸入物価上昇

その根本的で致命的な問題点はさておき、もう少し実務的に言えば日銀の尻に火が着いている理由は主に2つある。

先ず1つは円安である。2022年、例えばドル円の為替レートは大きく上昇し、ガソリンを含む輸入物価の高騰を引き起こした。ドル円のチャートは次のようになっている。


このドル円の急上昇は、日本の長期金利が日銀の当時の長期金利の設定上限であった0.25%に達した2022年3月から始まっている。日銀は上限を守るために国債を買い入れなければならず、その緩和によって急激な円安が進んだのである。

ドル円だけに関して言えば、当然ながらアメリカの側で金利が上がり、ドル高に動いたことも非常に大きい。だが2022年、日本円はこの日銀の緩和政策によって世界最弱通貨の1つとなった。ドル高で新興国通貨も下がったが、日本円は例えばインドネシアルピアなどの東南アジアの通貨と比べても下落している。

こうした円安が輸入物価の高騰をもたらした。だがアベノミクスによれば、円安は良いことではなかったのか? 日銀はそれを目指してきたのではなかったのか?

だが実際には円安政策とは日本製品が安くなることで外国人を儲けさせるものの、日本国民には何の得もない政策である。筆者は以下の記事で次のように分かりやすく説明している。

日銀がYCC変更で長期金利の上昇を許容、日本も金利上昇による景気後退へ
例えば1ドル=100円の時に600万円(=6万ドル)の日本車があり、6万ドル持っている外国人が購入を考えているとしよう。

これが円安になり、1ドル=120円になったとする。600万円の日本車は、ドル換算では6万ドルではなく5万ドル(=120円 x 5万)になる。予算が1万ドル余ったので、ついでに軽自動車も買えるかもしれない。

これで日本人は自動車だけでなく軽自動車も売れたと喜ぶかもしれない。だが実際には、元々6万ドルを日本車1つと交換していたものを、円安によって同じ報酬で日本車と軽自動車をセットで譲り渡す羽目になっただけで、得をしているのは外国人のほうである。

一方で日本円の価値が下がるので、日本国民は外国の製品が買えなくなる。円安の何が良いのか誰か説明してくれないだろうか?

日銀の買い入れで国債がなくなる

インフレと円安、本当に何の得にもならないものを日銀はよく目指してきたなと思うが、日銀にとって最大の窮地は自分の国債買い入れで日本国債がなくなることである。

以下の記事で説明したが、日銀は量的緩和政策でこの世に存在する日本国債の半分以上を既に買い入れてしまっており、ペース次第では今年中に債券市場で国債が枯渇する。

日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
だから新総裁になる植田氏は何とか買い入れのペースを減らす(つまり緩和を縮小する)ことを目指している。

新総裁植田氏の所信表明

以下の記事で説明したように植田氏は経済学者としてはそれほど優秀ではないものの、まともなマクロ経済学の知識を持った人物であるとは言えるので、日銀が既に詰んでいるということをよく分かっている。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
日銀のインフレ政策、特に長期金利の上限を決めるイールドカーブコントロールは何とかしなければならない。だが普通の経済学の知識がある人間がアベノミクスはどうだったかと聞かれ、本音を漏らすとどう頑張っても酷評になってしまう。そうすると年頃の乙女のような自民党安倍派のプライドを傷つけてしまうので、日銀総裁になれなくなるのである。

そんな植田氏は、自民党安倍派の前で自分の見解を披露する所信表明をどのように乗り切ったか。彼は所信表明でインフレをもたらしたインフレ政策について何と言ったか。彼は次のように言っている。

デフレではない状況をつくり上げたと考えております。

かなり苦しいこの言い方の理由を、ここ読者はもう理解するだろう。日本のインフレ率は既に4%でしかも加速している。だが「インフレ政策がインフレをもたらした」という当たり前のことを言ってしまうと、インフレが物価高だという衝撃の事実に気付いてしまった国民に自民党安倍派が批判されてしまう。

だが植田氏はこの踏み絵を乗り切り、更に緩和政策は「必要かつ適切」だと言い切った。より具体的には彼は次のように言っている。

様々な副作用が生じていますが、先程お話しした経済物価情勢を踏まえますと、2%の物価安定の実現にとって必要かつ適切な手法であると考えます。

だが「様々な副作用」が何かということについて彼は一切語らなかった。

この言葉をどう解釈するかが、日本の金利を予想する投資家にとって非常に重要となる。植田氏は、副作用がある(どころではない)ということは言っておかなければならない(そうでないと後で緩和政策を修正できない)が、所信表明の場で「副作用」の詳細を長々と話して自民党安倍派の急所をえぐっても何の得にもならない。だから言わないのである。

また、植田氏は金融緩和を継続するという趣旨の話をするのを躊躇わない。だがそれは長期金利を上げないという意味ではない。長期金利は今0.5%だが、インフレ率が4%の状況で長期金利を1%に上げても2%に上げてもまだその政策は緩和である。4%、5%に上げなければならなくなれば、緩和政策は2023年初頭まで適切だったが状況が変わったと言えば良いだろう。

植田氏の所信表明はよく考えられている。だが彼の過去の文章を読めば、彼の狙いが国債買い入れの減額であることは明らかである。

植田戦法を真似て踏み絵に挑む副総裁候補たち

副総裁となる予定の内田日銀理事と氷見野前金融庁長官も植田氏の戦法を踏襲して所信表明に挑んでいる。

内田氏は異次元緩和が「デフレではない状況を実現した」という自民党安倍派に対して有効な呪文を繰り返した。

だが一方で彼も言うべきことは言っている。彼は「金融機関収益や市場機能などの面で悪影響が生じていることも事実」とした上で「副作用があるから見直すのではなく、いかに工夫を凝らして緩和を継続していくかが課題」という、さも副総裁に就任すれば金融政策を見直すがこれまでの政策が悪かったわけではないという、崖っぷちに追い込まれている緩和支持者をなだめるような言い方をしている。だがこの言い方は明らかに緩和政策の修正を前提としている。

氷見野氏も概ね同じ内容だが、黒田氏と同じ元大蔵官僚である氷見野氏よりも、日銀理事の内田氏の方が踏み込んだ内容に聞こえた。日銀内部にはアベノミクスに最後まで抵抗し実質的に安倍氏に首を切られた白川元総裁の恨みがアベノミクスに対して溜まっているという話も聞く。

結論

いつも通り何も分かっていない大手メディアでは「新総裁が緩和継続に言及した」などと報じられているが、緩和を継続すると宣言することはイールドカーブコントロールの修正をしないことをまったく意味しない。2%でも3%でもイールドカーブコントロールを続ける限り緩和である。

以下の記事のように植田氏のこれまでの言説を把握した上で彼の言葉を解釈するべきだが、原油価格の推移も調べないでインフレについて語っているほとんどのメディアにそんなことは望めないだろう。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
いずれにしても日銀は詰んでおり、究極的には彼らの意向は市場にとって問題ではないとも言える。彼らがどうしようとも緩和は終わるからである。

日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
インフレ政策の出口戦略はインフレである。始めから分かっていたことではないか。緩和を支持した人々は馬鹿ではないのか。あるいはそれでも緩和を続ければ、今度は円安が止まらなくなるだろう。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が予想していた通りである。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
じわじわと上がる日本のインフレ率が日銀をその状況に追い込んでいる。

このような日銀の状況を債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は見事な例えで表現している。

ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る
日銀は賢明だ。80階の窓から飛び降りて、70階分落下したところで「今のところは良い状態だ」と言っているようなものだ。

植田新総裁に期待したい。また、 何故日銀が金利を上げなかったかという理由については以下の記事を参考にしてもらいたい。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34101
14:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/03/03 (Fri) 10:25:07

日本国債の空売りを開始、植田新総裁で長期金利上昇を予想
2023年3月2日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34200

日銀の新総裁に経済学者の植田和男氏が就任すると見られることを受け、日本国債の空売り(価格が下落すれば利益が出るトレード)を開始する。筆者の意見では、このトレードはリスク・リワード比が非常に良い。以下に理由を説明したい。

遂に始まった日銀の実質利上げ

ことの発端は4月に現日銀総裁の黒田氏が退任する予定になっていること、そしてその黒田氏が去年12月、恐らくは岸田政権に迫られて長期金利の実質利上げを行なったことである。

日銀がYCC変更で長期金利の上昇を許容、日本も金利上昇による景気後退へ (2023/3/2)
イールドカーブコントロールと呼ばれる金融政策により、日本の長期金利はそれまで0.25%という低い水準に保たれていた。それが2022年の円安と、それにともなう輸入物価高騰をもたらしたことは、前回の記事で説明している。

踏み絵のように緩和支持を言わされる日銀の植田新総裁と新副総裁たち
黒田氏は恐らく「インフレ政策には何の問題もなかった」という顔をしながら退任期限まで逃げ切りたかったのだろうが、結局彼は長期金利の上限を0.5%まで上げるはめになった。

実質利上げは始まったばかり

だが日本のインフレ率は4%である。このインフレは0.5%の長期金利で止まるものではない。では何処まで利上げすればインフレは止まるのか。

過去の事例を探せば、1970年代のアメリカの物価高騰時代では金利がインフレ率を上回るまでインフレは止まらなかった。当時のインフレ率と政策金利のグラフを並べると次のようになる。


そして現在のアメリカでも、長期的にはインフレ率は5%に収束すると予想されており、金利は5%まで上がろうとしている。

1月のアメリカのインフレ率はソフトランディングが不可能であることを示している
1970年代とは状況が違うとは言っても、やはり金利はインフレ率と同じ水準まで上がらなければ止まらないらしい。

コストプッシュインフレ?

日銀は(これは新総裁の植田氏もそうだが)日本のインフレは輸入物価高騰によるコストプッシュインフレであり、緩和を止める理由にはならないと主張している。

だがここでは何度も論じたように、原油や農作物などが高騰した理由はコロナ後に世界中で行われた量的緩和と現金給付であり、2020年にはその兆候が既に表れていたことをここでは報じておいた。

金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
コストプッシュではなく政府と中央銀行の政策によってもたらされた大量の資金が市場に流れ込んだ結果であり、2020年に緩和をしていた主要国の中央銀行(当然日銀を含む)はすべてその責任をしっかり負っている。

自らインフレを引き起こした政府と中央銀行がコストプッシュインフレという言い訳を使うだろうということは、大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏によって数十年前に予想されており、彼らはその通りの道を歩んだというわけである。

ハイエク: コストプッシュ型インフレは政府の責任回避の言い訳に過ぎない
大体輸入物価全般に関しては円安が原因であり、前回の記事で説明したように2022年の円安は日銀のイールドカーブコントロールによってもたらされているのだから、緩和政策を止めない理由にはならない。

踏み絵のように緩和支持を言わされる日銀の植田新総裁と新副総裁たち
彼らの言い分は論理的に破綻している。

また、CPI(消費者物価指数)統計を見れば、輸入物価のインフレが国内物価にも波及し始めていることが分かる。2021年に「コストプッシュインフレ」を繰り返し、インフレに対策を打たなかったアメリカのパウエル議長が何をするはめになったかは誰もが知っている。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
アメリカやヨーロッパの例で既に見たように、インフレは一度始まると止めるまで永遠に加速し続ける。そして日本でもそれは始まりつつある。

植田新総裁は実質利上げを継続する

さて、そこで問題になるのが、植田新総裁が長期金利をどうするかである。

結論から言えば、植田氏の狙いは日銀の国債買い入れ額を減らすことである。そしてそのために長期金利の上限をある程度上げるだろう。

植田氏も副総裁候補たちも、今の日銀の金融政策には「副作用」があるということを強調している。そして私見によれば、そうした副作用のうち彼らが一番懸念しているのは、インフレでも円安でもなく日銀の国債保有額である。

日銀は現在既に市場に存在する国債の半分以上を買い入れてしまっている。イールドカーブコントロールで長期金利に上限を付ければ、金利が上限に達するごとに金利を抑えるために国債を買い入れなければならなくなる。

だがこのままでは日銀の買い入れによって年内に市場から国債が枯渇してしまう可能性がある。

日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
筆者の考えによれば、これこそが日銀の審議委員として現在の緩和にもかかわった植田氏の一番の懸念点である。彼の懸念点は必ずしもインフレでも円安でもない。だが国債買い入れ額を減らすために金利上昇が必要ならば、金利を上昇させるだろう。

何故そう言えるか。植田氏は所信表明において「情勢において工夫を凝らしながら、金融緩和を継続することが適切」だと言っている。

「工夫」とは具体的に何か? もっと分かりやすいのは、副総裁候補の内田氏が緩和政策について「副作用があるから見直すのではなく、いかに工夫を凝らして緩和を継続していくかが課題」と言っていることである。

これは明らかに枯渇しかけている国債の残高のことを言っている。そしてその問題を解決するためには長期金利の上限を上げることが必要である。上限を例えば1%や2%に上げれば、現状の上限である0.5%を超えても国債を買い入れずに済むからである。

日本国債の空売りを開始

ということで、日本国債の空売りを開始する。債券の金利上昇は価格下落を意味するので、日本国債の価格が下がることを予想するからである。

日銀は長らくゼロ金利政策を続けてきた。そしてそれが維持不可能だと見込んで日本国債の空売りを行なったヘッジファンドもあったが、これまで日本の金利は結局上がらなかったため、日本国債を空売りする取引は金融市場でウィドウメイカー(寡婦を生み出すトレード)と呼ばれてきた。

だがこうした見方が見落としている点が1つある。日本国債の空売りはほとんど損をする可能性のない取引だということである。

何故か? 債券の金利上昇は価格下落、金利低下は価格上昇だということを考えてみてもらいたい。そして日本国債の金利は上がることはあっても、下がることはほぼ考えられない。今のケースで言えば、金利上限を下げると日銀は国債を更に買い入れなければならなくなる。筆者の予想ではその可能性は限りなくゼロに近い。

だから日本国債は価格が下がることはあっても上がることはない資産である。よって日本国債の空売りは、仮に失敗してもほとんど損をしない。

日銀は最近、これに対抗するために国債を借りる時に金融機関が支払う国債の品貸料を1%に引き上げた。空売りをするためにはまず国債を借りなければならないため、空売りのコストを上げようとしているのである。

だが金利がもし上昇すれば国債の価格がどれだけ下がるかを考えてもらいたい。債券は満期までの期限が長ければ長いほど金利上昇に対する価格の下落幅が大きい。10年物国債は1%の金利上昇で10%近く、2%でほぼ20%近くの価格下落となる。3%、4%になれば30%、40%である。

これはジョン・ポールソン氏がリーマンショック時にサブプライムローンを空売りした場合と似たようなリスク・リワード比だと筆者は考えている。ポールソン氏は当時のことについて以下のように語っている。

ジョン・ポールソン氏、サブプライムローンの空売りで大儲けした時のことを語る
空売りのコストは年間たった1ドルということになる。

しかしサブプライムローン債券がデフォルトすれば、空売り投資家は100ドルを得ることができる。

結論

ということで、筆者も遂に日本国債の空売りに手を出すことになった。大手メディアや金融市場はまだ分かっていないが、筆者の意見では植田氏の狙いは明らかである。以下の記事を読みながら彼の言葉を精査してみてほしい。

踏み絵のように緩和支持を言わされる日銀の植田新総裁と新副総裁たち
日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者

また、金利上昇は株価にとってもマイナスとなる。 筆者は日本株の空売りも行なっている。アベノミクスのお陰で日本経済が滅ぶ時が来たようである。自業自得である。

2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34200
15:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/04/26 (Wed) 08:47:46

世界最大のヘッジファンド: 豊かな国ほど借金まみれになる理由
2023年4月25日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がImpact Theoryのインタビューで、先進国がほとんど例外なく多額の負債を抱えている状況について解説している。

先進国の膨張する債務

奇妙なことだが、先進国の政府債務残高は軒並み高い。日本もアメリカもそうである。世界的には裕福であるはずの先進国が、例えばそれよりも貧しいはずの東南アジアやアフリカの国々よりも借金が多いのはどういうことか。

ダリオ氏は次のように問題提起している。

人々や社会が裕福になればなるほど負債を増やすようになることは興味深いことだ。これは逆説的だ。

100%や200%というGDP比の政府債務に慣れてしまった現代人は疑問に思わないかもしれないが、よく考えてみればほとんどすべての先進国の政府債務が軒並み高くなっているのは偶然でも当たり前の減少でもなく、何か隠された共通の原因があるはずだ。

個人のレベルで考えてみれば、富裕層が貧困層から借金をするという状況は考えられない。だが政府のレベルでは逆のことが起きている。

ダリオ氏は次のように指摘する。

アメリカが中国からお金を借りるようになったとき、アメリカ人の個人所得は中国人の40倍だった。そしてアメリカは中国からお金を借り始めた。

何故このようなことが起きるのか本当に不思議に思う。

ダリオ氏の仮説

それは何故だろうか。ダリオ氏は次のように仮説を立てる。

これは心理学的なものだ。お金がない人がお金を手に入れるとお金を貯めたいと思う。そして貯金とは誰かにお金を貸すことを意味する。

そして皮肉にも、よりお金を持つようになればお金が借りやすくなり、その人や社会や政府はより多くの負債を抱えるようになる。

裕福な人間の方が借金をしやすいというのは事実だろう。実際、富裕層は借金を自由に利用して投資を行なったり、節税対策をしたりする。

だがそれでも富裕層には資産があり、資産の総額を超えるような借金をすることはない。だが先進国の政府は資産がほとんどないにもかかわらず、借金だけを増やし続ける。

つまり、裕福な国の政府と、裕福な人間では別の行動をしている。ダリオ氏の仮説ではこの違いを説明できない。

国の一生

人間には一生がある。生まれてきて、学校に通い始め、卒業して労働するようになり、やがて肉体や知性が衰えて引退し、死んでゆく。

このように国にも一生がある。それがダリオ氏の言うスーパーサイクルである。

最初は小国であったものが、技術革新や人口増加によって徐々に豊かになり、成熟してゆくにつれて経済成長率が落ち始める。日本で言えば高度経済成長からバブル崩壊後だろうか。

そしてその頃から徐々に借金と紙幣印刷に頼るようになる。力が落ちてゆくのでそうならざるを得ないのである。ダリオ氏によればそれはサイクルであり、ほとんどの国が例外なくそのようになる。

そして最後には人が死ぬように、借金と紙幣印刷により物価が高騰して滅んでゆく。

少なくともそれが大英帝国やオランダ海洋帝国など、かつての大国に起こったことである。

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退
世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
そしてこのサイクルを見れば、アメリカは衰退のフェイズに足を踏み入れかけている。だからインフレが起こったのである。

世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は世界経済全体に波及して物価高騰か倒産危機で終わる
国が借金を増やす理由

だがそもそも何故政府は借金を増やせるのか。人間であれば、資産がほとんどないのにGDPの200%以上の債務を積み上げることはできない。

何故それが政府には可能なのか。ダリオ氏の見解によれば、有権者がそれを許可するからである。ダリオ氏は次のように述べている。

選挙前には政治家には借金を増やして支出を増やす動機がある。有権者は誰も借金の方には注意を向けず、そのお金が何処から来るのかは気にもせず、支出の方にだけ注意を向けるからだ。

負債の上でパーティをやっているようなものだ。

だから毎年税金で数百万自分から奪ってゆく政府に10万円を給付されただけで彼らは嬉しくなってしまうのだ。だがそれは元々自分の金である。彼らは馬鹿なのだろうか。

政府を選ぶ有権者は定義上国民の過半数なのだから、国民の過半数が借金を許せば政府は借金をするだろう。政治家の仕事は国民から税金を徴収して自分の票田にばら撒くことなのだから、その被害者がそれを許してくれる状況でそれを拒む理由がない。

だが状況としてそれが可能になっても、経済的に可能になるわけではない。100%しか資産がないのに借金をして200%消費しようとすればどうなるか。単純にものの値段が2倍になるだけである。実際今それが起こっている。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
借金によって消費を無理やり増やすことは、インフレを生じさせるだけでなく、長期的には増税を増やす。国の借金はいずれ税金という形で国民から徴収されるか、紙幣印刷によって返済されるしかないが、紙幣印刷はインフレを悪化させるので、緩和政策の出口は結局は増税か物価高騰しかない。それが多くのファンドマネージャーらが指摘していることである。

ポジャール氏: 中央銀行は金利高騰か通貨下落かを選ぶことになる
世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
だが政治家には関係ない。自分は票田とともに利益を得られる上に、国の借金は自分が引退した後に誰かが何とかするものである。彼らに遠慮をする理由があるだろうか。だから東京五輪でも全国旅行支援でも好きにやったではないか。

経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が次のように言っていたことを思い出したい。

ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
しかし、短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。

日本にはいまだに国の借金には問題がないなどと言う人間がいることには驚かされるが、事実日本では増税とインフレが降り掛かっているではないか。インフレ政策の当たり前の帰結に気付くことの出来なかった自民党支持者の知性には本当にいつも驚嘆せざるを得ない。彼らの頭脳は最高である。

ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
結論

何故こうなるのか。 ダリオ氏はこう説明している。

人々は近視的なのだ。子供を育てるときのマシュマロ・テストと同じだ。

小さい子供に今マシュマロを1つ受け取るか、15分後にマシュマロを2つ受け取るかを選ばせる。賢明な子は15分我慢して2つのマシュマロを手に入れる。

だが現代の多くの社会では人々は今それがほしいのだ。

大半の日本人は賢明な子供以下ということだろう。あるいは人間とはそういうものではないか。賢明な子供ほどの頭脳のある大人などほとんど見たことがないではないか。

お金をばら撒けばインフレになるという子供でも分かるような理屈さえ分からず、インフレになった今でさえエネルギー購入支援や全国旅行支援というインフレ政策を行う政治家をのさばらせ、どれだけ年金を減らされ税金と社会保険が増えようとも政治家という略奪者を自分で当選させる馬鹿ばかりなのだから、日本の将来はどうしようもなく明るいだろう。

良かったではないか。自分の欲しかったものを手に入れた彼らの将来を祝福したい。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175
16:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/14 (Sun) 12:14:50

世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は悪化しインフレは止まらずスタグフレーションになる
2023年5月12日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36793

世界最大のヘッジファンド Bridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がModern Wisdomのインタビューでアメリカ経済の先行きについて語っている。

積み上がった債務とシリコンバレー銀行破綻

アメリカ経済はGDPで言えば減速はしているもののプラス成長を維持してはいる。

ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
だがアメリカ経済に不安があるのは何故か。シリコンバレー銀行などの地方銀行が次々に破綻しているからである。

アメリカ経済はいま非常にいびつである。全体としてはまだ減速してない一方で、地方銀行や中小企業などは悲鳴を上げている。

ダリオ氏はこの状況をどう見るだろうか。彼は次のように述べている。

大きな問題は大量の政府債務、そして企業の債務、それよりは少ないが家計の債務が積み上げられたことだ。

シリコンバレー銀行の問題は特定の銀行の問題ではなく世界規模の問題だ。

何故か? ダリオ氏がよく言っているように、誰かの負債は誰かの資産だからである。借金があるということは、誰かがお金を貸しているということである。お金を貸した人は貸したお金の代わりに債券を受け取る。政府にお金を貸せば国債を受け取る。そして貸し手は債券を当然ながら自分の資産だと思っている。

債券は金融市場で売買できるので、債券の保有者はそれを忘れがちだが、それは誰かの借金なのである。

膨大な借金が積み上げられたということは、世の中には大量の債券があり、それを多くの人が持っているということを意味する。そして問題は、それらの債券の価格が何十年もの低金利政策で人為的に押し上げられてきたということである。

特に2008年のリーマンショック以来、世界中の中央銀行が紙幣を印刷して買い入れ、債券価格を直接買い支えてきた。

それを買い支えられる間は良かったかもしれないが、インフレが起こると緩和政策はインフレを悪化させる。それでアメリカやヨーロッパは長年続いた緩和政策を撤回し、債券価格の人工的な買い支えを止めなければならなくなった。

インフレ退治と債券価格

それは債券価格の下落を意味する。債務が少なければその影響も少ないかもしれないが、残念ながら債務は世界中に大量に積み上がっている。

そしてそれは債券として誰かが保有している。それは世界中で資産価格が大きく下落していることを意味する。

破綻したシリコンバレー銀行も下落した米国債を持っていた。それが破綻の一因となった。だが米国債を持っているのはシリコンバレー銀行だけではない。アメリカの政府債務は31兆ドル積み上がっており、それは誰かの資産であり、しかもその大半は価格が大きく下落している。それが今の問題である。

ダリオ氏は次のように述べている。

同じことが何処でも起こっている。銀行だけではない。保険会社もそうだ。世界中で同じことが起こっている。ヨーロッパでも、そして日本でもドル建ての債券を持っている人は多い。

だがアメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)次のように主張していた。

3月FOMC会合結果、パウエル議長に2018年世界同時株安の影が見え始める
シリコンバレー銀行の破綻は例外的な事例だ。銀行システム全体に広く存在する脆弱性ではない。

彼らはアメリカの中央銀行でありながら米国債の発行残高と価格推移を知らないらしい。日本の黒田なにがしを含め、中央銀行に期待できることは高々そのくらいである。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
銀行危機は波及する

さて、銀行危機の問題はそれだけではない。シリコンバレー銀行が破綻したということは、それで損をした人がいるということである。シリコンバレー銀行の株主や債券保有者は当然だがシリコンバレー銀行破綻で大損した。それらの人々のうち何人かは、まだ表沙汰になっていない何処かで苦境に陥っているだろう。それが次のシリコンバレー銀行となり、その破綻が更に次のシリコンバレー銀行を作ってゆく。

ダリオ氏は次のように述べている。

金融引き締めがドミノを倒そうとしている。これから更に問題が生じることになる。

増えすぎた債務の帰結

結局のところ、債務の量が多すぎることが問題なのである。債券が多すぎるが、これまで買い支えていたFedはもう債券を買っていない。

ダリオ氏はこの問題の帰結についてこう述べている。

金利が上がるか中央銀行がまた紙幣印刷して買い支えるしかない。この問題は欧州中央銀行でも日本銀行でも同じだ。

一部のファンドマネージャーは後者を予想してゴールドを買っている。

ドラッケンミラー氏、ドルを空売りしてゴールドを買い
ポールソン氏: ドルからの離脱が今のトレンド、資金逃避で金価格上昇へ
だが問題は、どちらでも酷い問題が生じるということだ。ダリオ氏はこう続ける。

シナリオは2つある。1つは価値の落ちていない通貨で普通に債務が支払われること、もう1つは紙幣印刷で簡単に返すことだが、その場合には通貨の価値は落ちているだろう。

借金を真面目に返せばこれまでの借金漬けの優雅な生活はできなくなる。借金で優雅な生活をしていたのは国民ではなく政治家とその票田なのだが、彼らは増税とインフレを通して国民に支払いを依頼するそうだ。日本人は投票を通してそれにイエスと言っている。

いずれにせよ不況かインフレ、あるいはその両方しかない。ダリオ氏はこう纏めている。

多分スタグフレーションになると思う。

日本ではいまだに国の借金が増えただの、政府の借金は国民の借金ではないから大丈夫だのという話をしている。本当に馬鹿ではないのだろうかと思う。この状況をどう読み取ればそういうお花畑な結論になるのだろうか。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
マイナード氏: 日銀の持続不可能な緩和政策の破綻 は他国の教訓的前例になる

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36793
17:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/14 (Sun) 12:54:30

ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
2023年5月13日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏がFed(連邦準備制度)の金融引き締めでハードランディングが起こるタイミングについて語っている。

史上最大の資産バブル

バブルが崩壊しようとしている。2008年のリーマンショック後に始まったゼロ金利と量的緩和という名の紙幣印刷政策は、中央銀行の緩和がある状態が当たり前だという意識をアメリカ経済に植え付けた。

更にはコロナ後に世界中で現金給付が行われ、特にアメリカ経済には未曾有の規模の資金が流れ込み、そして世界的な物価高騰が起こった。

世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
インフレによって金融市場の状況は一変した。Fedはインフレ抑制のために大規模な緩和政策から一転して大規模な引き締め政策を強いられ、もはや緩和政策は出来なくなった。アメリカのインフレ率は2022年からの引き締めで下がってきてはいるが、緩和をするとインフレが再発するからである。

ドラッケンミラー氏はこの状況について次のように述べている。

今の状況はわたしが見た中、あるいは研究した中で最大かつもっとも広範囲な資産バブルで、それは10年か11年続き、フィナーレとしてコロナ後にアメリカ政府は5兆ドルを支出し、Fedはその60%を融通した。

そして今や大幅な利上げが行われている。これらの要素と、1950年以来数えるほどしかソフトランディングは起こっていないこと、そしてそれらはすべてFedが事前に対処した結果であったことを考えると、ソフトランディングがあり得ると考えることは困難だ。

Fedはもはや事前に対処できない。もしかすると事後にも対処できないかもしれない。金融引き締めでアメリカ経済が壊滅状態に陥ったとしても、そのときにインフレ率が下がっているとは限らない。もしインフレ率が下がっていなければ、Fedはインフレ抑制のために引き締めを続けて既に壊滅状態のアメリカ経済を更に壊滅的にするのか、あるいは経済成長率を救うために緩和をして既に起こっているインフレの火に油を注ぐのかの選択を強いられることになる。

それがインフレ政策を煽った政治家たちの口からは語られなかったインフレの本当の意味である。つみたてNISAもそうだが、詐欺師が事前にリスクを説明することはない。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
ハードランディングのタイミング

だからドラッケンミラー氏はハードランディングは不可避だと考えている。だがそれ自体は筆者が2021年にインフレが起こったときからずっと予想していることだ。筆者が不況前に起きるアメリカ国債の長短金利逆転を予想し、それを的中させたのはもう1年も前の話である。

長短金利逆転を予測できた理由と今後の不況と株価暴落について
だが巨大なバブルは徐々にしか崩壊しない。リーマンショックも住宅価格の下落という終わりの始まりから完全な崩壊まで2年かかった。経済危機の歴史を振り返ると、ショックと言っても一瞬で起こるわけではないのである。

ドラッケンミラー氏はハードランディングのタイミングについてどう考えているのだろうか? 彼は次のように述べている。

タイミングについては、それがハードランディングかソフトランディングかということよりも不確実になる。

すべての状況を考慮すると、タイミングは今年の第4四半期から来年の第1四半期だろう。

これから半年ほどといったところだろうか。

現在のアメリカ経済と今後の見通し

まだ時間がかかる理由は、金融引き締めの影響はアメリカ経済の一部には既に深刻な状態となっているが、影響を受けるまでにまだ時間がかかるセクターもあり、経済がいびつな状態になっていることである。

ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

データは強弱入り混じっている。住宅市場は歴史的には経済全体の先行指標だが、それは十分に強い。レストランや旅行も十分に強い。だが例えばトラック輸送は6ヶ月から8ヶ月ほど早い先行指標としてわたしの会社の創業以来経済予想に役立ってきたが、それは極めて弱い。小売からは非常に悪いニュースが聞こえてくる。

そして銀行の問題だ。

一番悲鳴を上げているのは地方銀行だろう。シリコンバレー銀行の破綻に始まり、もういくつもの銀行が破綻している。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
最初がシリコンバレー銀行だったことには恐らく意味がある。シリコンバレーにはゼロ金利にあぐらをかいて利益を永遠に出す気がなかった赤字企業が大量にいて、借金で延命されていたが、金融引き締めで借金が出来なくなって死んだのである。そうした企業が預金を引き出したのでシリコンバレー銀行も死んだ。

それはリーマンショック以来積み上げられたゾンビ企業を大掃除する過程なのである。ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

資金があふれかえると人々は馬鹿げたことをする。資金が11年もあふれかえると人々は本当に馬鹿げたことをする。

だから水面下ではそれが始まっている。地方銀行が良い例だ。

一部の人は銀行危機がもう終わったと嘯いている。だがドラッケンミラー氏は不吉な予想を口にしている。彼は次のように言っている。

だが死体は もっと積み上がるだろう。

それは以前から分かっていた。だがそろそろタイミングを予想する時期が近づいている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802
18:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/15 (Mon) 06:35:04

ドラッケンミラー氏: リーマンショックより酷くなる可能性は否定できない
2023年5月14日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36808

引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用したことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏のSohn Conferenceにおけるインタビューである。

ドラッケンミラー氏のインフレ率の推移予想

前回の記事ではドラッケンミラー氏がハードランディングまであと半年ほどだと予想している部分を取り上げた。

ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802

だが今回はこれまでの経済危機とは違い、インフレが起こっているという問題がある。

ハードランディングが起こった時、インフレ率は下がっているのか? 下がっていれば、普通の不況だ。下がっていなければ、不景気と物価高が両方来るスタグフレーションになる。

ドラッケンミラー氏は今後のインフレ率の推移について次のように語っている。

難しいのはマネーサプライをどう見るかだ。

エド・ハイマン氏はマネーサプライが史上最速の速さで縮小していることを指摘した。

だが話はそれほど簡単じゃない。マネーサプライは数年前と比べると30%後半から40%ほど拡大している。だから積み上がっているお金の量はそれでも極めて多いということだ。

マネーサプライとは市中に存在している現金や預金の総額である。コロナ後に現金給付によってばら撒かれた多額のお金は今どうなっているのか? 実質マネーサプライのグラフは次のようになっている。


Fed(連邦準備制度)の金融引き締めによってマネーサプライは急減している。だが絶対水準で言えばそれでもコロナ前よりもかなり多いのである。

そもそもコロナ後にマネーサプライが酷いことになったのがグラフから分かるだろう。それを押し上げたのは現金給付である。これでインフレにならないと言った馬鹿は今どうしているのか。ジェフリー・ガンドラック氏はそれくらいは12才児でも分かると述べていた。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
ドラッケンミラー氏のインフレ率の推移予想

マネーサプライが急減しながらもまだ積み上がっていることは、恐らくアメリカに景気後退がまだ来ていないこと、特に消費がいまだに強いことの原因だろう。

以下の記事でGDPの内訳を分析しているが、それがなかったらアメリカ経済は既に景気後退しているはずだ。

ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
しかしそれでもマネーサプライは急減速している。

ドラッケンミラー氏は年末年始頃にアメリカ経済はハードランディングになると予想した。

ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802

ではその頃にはインフレ率はどうなっているのか? 彼は以上のことをすべて考慮に入れた上で次のように予想する。

インフレ率は今後6ヶ月から9ヶ月で恐らく3%から3.5%辺りまで下がるだろう。

現在アメリカのインフレ率は5.0%である。

サプライズなしの4月米国インフレ率発表でドル安に動いた理由

インフレ率の長期見通し

だが問題はその後である。ハードランディングに陥った時に中央銀行がどうするのかによってその後のシナリオが変わってくる。

ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

そこからが難しい。Fedがどうするか予想しなければならないからだ。

Fedが緩和に逆戻りすればインフレ第2波になり、引き締めを続ければ経済恐慌になる。

前回の記事でも言っていたが、ドラッケンミラー氏は基本的にインフレ第2波をメインシナリオとしている。理由は歴史上緩和をやり過ぎて問題を引き起こしてきたFedの経歴である。彼は次のように述べる。

わたしは2000年や2021年から2022年前半までにおけるFedの対応に本当に驚いている。そして来年が大統領選挙の年であることを考慮すべきだ。

ドラッケンミラー氏はバイデン政権がパウエル議長に圧力を掛けることを想定しているのだろうか。

また、ドラッケンミラー氏は1970年代におけるFedの議長、ポール・ボルカー氏の前任者で緩和的な政策でインフレを悪化させたアーサー・バーンズ氏を持ち出して次のように述べている。

インフレ率が3%か3.5%まで下がった時に彼らがアーサー・バーンズ氏のように対応するならば、インフレが下がった時に即座に反応せず龍を殺しきらないならば、今後数年はインフレーションか、恐らくはスタグフレーションになるということを強調したい。

だが一方で、次のように現在の世界経済には巨大なデフレ圧力も存在することにも言及している。

あるいは現在の巨大な資産バブルが弾けた場合、もう経済はどうにもならないかもしれない。

結局はFedが物価高騰か経済恐慌かどちらを選ぶのかという問題に帰着する。だからドラッケンミラー氏は笑いながら次のように言っている。

先週社内で会議があったのだが、そこでわたしはこう言った。インフレ率は今後3年8%で推移するとも言えるし、デフレになるとも言える。

結論

だがインフレ第2波でも経済恐慌でも経済は酷いことになるだろう。それがインフレというパンドラの箱を開けてしまった紙幣ばら撒きの末路である。

世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
それはどれくらい酷い結果になるのか。ドラッケンミラー氏は次のように続けている。

これは2007年や2008年とは違うということが繰り返し言われている。

だがそう言っている人々が2007年に危機を予想したという話を聞いたことがない。

わたしは2008年より悪い状況を予想しているわけではない。明日のニュースでわたしがそう言ったという見出しを付けてほしくはない。

だがこれだけの資産バブルの後であること、 ゼロ金利のあとに史上もっとも急激な金利の上昇があったことを考えると、本当に酷いことが起きる可能性を除外するのは本当にナイーブだと思う。

一体どうなるだろうか。だがドラッケンミラー氏を含め、あと1年以内だと言い始めた専門家が多いのである。

世界最大のヘッジファンド: 経済クラッシュで量的緩和再開まであと1年以内


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36808
19:保守や右翼には馬鹿しかいない :

2023/05/18 (Thu) 07:09:29

サマーズ氏: 日銀の植田総裁はイールドカーブコントロールからの離脱プロセスを開始した
2023年5月3日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36397

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、就任後初めての金融政策会合を通過した日銀の植田総裁について語っている。

植田総裁の初登板

インフレ政策でインフレを引き起こした挙げ句、「インフレ目標を達成できなかったことが残念」と言い残して舞台を去った黒田なにがしに代わり、4月にはマクロ経済学者である植田氏が日銀総裁に就任した。以下の記事には就任前の彼の金融政策に関する主張が纏めてある。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
植田氏には黒田氏が円安を通して引き起こしたインフレの後始末が求められている。本当は黒田氏の時代に副総裁を務めた雨宮氏らが新総裁候補の本命だったのだが、誰がやっても惨事にしかならないインフレの後始末をすることを雨宮氏らが嫌がったために植田氏が急遽浮上したと言われている。

4月28日には植田総裁になってから初めての金融政策決定会合が行われた。植田氏の初登板についてサマーズ氏は次のように語っている。

彼は用心深く抜け目のない人物だと思う。為替レートであれ金利であれ、レートの固定とはチェックインは簡単だがチェックアウトの難しいホテルだ。

予想通りだが、初回の決定会合では大した発表はなかった。日本のインフレ率が日本政府による意図的な粉飾を除けば4%を超えて推移する中、黒田氏の始めた大規模な紙幣印刷政策を維持し、緩和政策の有効性と副作用を検証すると発表した。

日本政府の詐欺的な物価指数の計算方法がインフレを悪化させる
緩和維持をどう見るか

初回の緩和維持をどう見るかである。そもそも日銀は何故緩和政策の撤回に追い込まれているのか。

先ず第一にインフレと円安である。2022年には日銀の量的緩和によって大幅な円安が進行した。2022年はドル高の年でもあったので分かりにくいが、2022年の日本円はドルだけではなく東南アジアなど新興国の通貨に対しても下落するなど世界最弱通貨の1つとなった。

その原因は日銀が長期金利に上限を設定するイールドカーブコントロールである。2022年には金利がイールドカーブコントロールの上限に達し、日銀が紙幣を印刷して国債を買い支え、金利を抑えなければならなくなった途端に円安が進んでいる。2022年春のことである。以下はドル円のチャートである。


円安が進むと輸入物価が上昇する。事実、原油価格はドル建てではもうかなり下がっているのに、日本のガソリン価格がまだ高いのは円安のせい(つまりは日銀のせい)である。ドル建ての原油価格は次のように推移している。


インフレの何がまずいのか

この状況の何がまずいのか。日銀がこのまま緩和を続けると円安を通してインフレが悪化し続ける。だから円安とインフレを止めたければ、日銀は国債の買い支えを止める必要がある。筆者やスタンレー・ドラッケンミラー氏が日本国債の下落を見込んで空売りを仕掛けている理由はそれである。

ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り
勿論日銀には永遠に紙幣を刷り続けて緩和を続けるという選択肢もある。だがそうなれば物価は青天井に上がり、日本人は自分の預金で何も買えない状態に陥るだろう。

そもそも日銀はそれを目指しているという話もある。結局はインフレと通貨暴落だけが日本政府の莫大な政府債務をチャラにする方法だからである。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
それはドイツが戦後の賠償金を完済した方法である。政府の借金はチャラになるが、同時に国民の預金は紙くずになる。

日本政府にとっては、自分で積み上げた債務の責任を何一つ取ることなく国民が勝手に犠牲になってくれるのだから、それ以上の方法はないだろう。だが日本国民がそういう目的の緩和政策を支持した理由はよく分からない。彼らは馬鹿なのだろう。少なくともファンドマネージャーの目からはそう見える。彼らは自分が何を支持したのかさえ分かっていない。

世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
植田総裁の優先順位

だが今の状況、植田総裁にとっては有利な点が1つある。インフレ抑制で先に利上げを行なっていたアメリカでは景気が減速し始めていることである。

サマーズ氏: スタグフレーションの危険あり、高確率で景気後退へ
それに連動して日本の金利高もやや収まっている。少なくとも日銀の設定した長期金利上限である0.5%を継続的に叩くような状況には陥っていない。

日銀は金利が上限に達しない限り国債を買い支えなくて良いので、植田氏が初回会合で金利上限を上げなかったのは、市場が催促しない限り自分から金利上限を上げる必要はないと考えているからだろう。

その判断自体は理にかなっている。植田氏は腐ってもマクロ経済学者である。単なるノーパンしゃぶしゃぶの省出身の黒田氏とは違うのである。彼は経済学など何も知らなかった。それでインフレ政策でインフレを引き起こし、そのまま逃げて行った。

日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
実際、筆者が日本国債の空売りを始めた時から想定していたように、アメリカ経済が減速すれば日本経済にも一時的なデフレ圧力になるシナリオは存在する。筆者はアメリカ経済のハードランディングは不可避だと考えているので、それはメインシナリオですらある。

世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は世界経済全体に波及して物価高騰か倒産危機で終わる
植田氏もそれを想定しているのだろう。今引き締めをすれば海外の減速で経済が落ち込みすぎる可能性があると指摘している。

日本のインフレ見通し

植田日銀はこのまま緩和を続けていくのか。ドル円の動きなどを見ても、市場のコンセンサスはそのようになっているように見える。

だが世界最高のマクロ経済学者であるサマーズ氏はまったく別のことを言っている。彼は次のように述べている。

日銀の緩和は目的よりも長生きし過ぎたと言うべきだろう。緩和政策の検証を開始したことによって、植田氏は金利の固定からの離脱プロセスを開始したのだとわたしは考えている。

日銀がこのまま金利を押さえつけ続けられる可能性など少しも考えていないことが彼のコメントから分かる。

既に利上げでインフレに対処しているアメリカやヨーロッパの人間から見れば、遅かれ早かれ日銀が金利を上げなければならない(国債の買い支えを止めなければならない)のは自明なのである。そうでなければ物価は青天井に高騰してゆく。

私見では、アメリカ発の世界的な不況があったとしても、日本の経済成長率には影響する一方で、海外要因ではインフレ率はそれほど下がらないだろう。日本のインフレは自民党のおかげで既に国内要因へと飛び火しているからである。

日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
アメリカやヨーロッパは、大幅な利上げをしてもインフレ率はなかなか下がらないということを既に経験している。日本人だけがインフレの状況で紙幣印刷や全国旅行支援などのインフレ政策を続ける狂気が狂気であると気づいていない。馬鹿は本当に痛い目を見るまで状況を理解しない。

結論

だから、筆者は植田氏の理屈に多少の理があることを認めた一方で、植田氏が2021年にインフレ加速の事実を希望的観測から無視していたFed(連邦準備制度)のパウエル議長のように見えるのである。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
インフレは放っておけば加速してゆく。金利が同じでも、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利が、インフレ率の上昇で自然に下がってゆくからである。

このままでは一部バブルになっている住宅価格も更に上がってゆくだろう。筆者は2021年にアメリカ経済に対して同じことを言ったが、住宅価格が例えば年に10%上がるような状況で金利がゼロだとしたら、誰もがコストゼロの住宅ローンを組んで値上がりを続ける資産を買うだろう。

そして誰もが家(や他のもの)を借りた資金で買うようになり、インフレ率はますます上がり、物価の上昇率と金利の乖離は更に進んでゆく。

このように、金利が変わらない状況ではインフレは自己強化的にますます悪化してゆく。植田氏はそれを見逃している。

サマーズ氏は日銀が緩和を続けるシナリオは有り得ないと考えている。著名投資家たちも去年の時点で同じことを言っていた。特にガンドラック氏は長年インフレを目指した日銀のインフレ政策について傑作なジョークを述べている。

ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る

日銀は賢明だ。80階の窓から飛び降りて、70階分落下したところで「今のところは良い状態だ」と言っているようなものだ。

だからあと10階分はまだ落ちられるかもしれない。だがもうすぐ地面である。日本の物価高騰がどうしようもなくなるまで、もうそれほど時間はないだろう。

マイナード氏: 日銀の持続不可能な緩和政策の破綻は他国の教訓的前例になる


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36397
20:777 :

2023/06/24 (Sat) 23:14:39

世界最大のヘッジファンド: アメリカの債務危機は終わっていない
2023年6月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37702

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がCNBCのインタビューで債務上限問題が解消された後の問題について語っている。

個人的な考えでは、この話は重要である。

債務上限問題の解決

1ヶ月ほど前に市場を騒がせていたアメリカの債務上限の問題は解決された。アメリカでは法律で債務の量に上限が決まっており、その上限が迫っていたが、与党民主党と野党共和党がこの上限を2025年1月1日まで棚上げにすることで合意した。

これでアメリカは再び借金が出来るようになった。これで問題が解決したかと言えば、そうでもない。何故ならば、両党の合意の結果、これから米国政府は年末までに1.3兆ドルの国債を発行することになるからだ。

これはかなり莫大な金額である。アメリカのGDPは26兆ドルだから、GDPの5%に相当する。

どの国でもそうだが、政治家は予算を増やしたがる。政治家の仕事とは国民から税金を徴収して票田にばら撒くことであり、予算が大きければ大きく票田にばら撒くことが出来るからである。

ちなみに票田どころか外国にばら撒いている首相もある国には居るようだ。保守派の人々は何故彼を売国奴と呼ばないのだろう。保守とは何だろう。

さて、政治家が国債を好きなだけ発行して好きなだけばら撒くことは永遠に続くのだろうか? ダリオ氏は政府が借金で支出を増やし続けることについて、以下のように述べている。

これを終わらせるものが2つある。1つは債券保有者に対する支払いだ。債券保有者は債券保有の対価を必要としている。彼らは元本に金利を乗せたものを要求する。

債務の支払いは政府の支出を圧迫している。

これは債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も指摘していた問題だ。

ガンドラック氏: アメリカ経済に大幅な増税が来る
米国債の利払いは急増している。米国政府の利払いの推移をGDP比で見ると次のようになっている。


米国債の利払いが急増しているのは、インフレ対策でアメリカが金利を上げたからだ。

これを見れば日本政府が金利を上げたくない理由が分かるだろう。自分が票田にばら撒くお金が利払いに消えるくらいならば、国民がインフレで苦しむ方がましだからである。当たり前ではないか。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
だがアメリカでは金利を上げたので、利払いが政府支出を圧迫している。利払いが増えれば政治家が好きに金を使えなくなる。

米国債は買われなくなる?

そして増加し続ける債務には別の問題もある。ダリオ氏はこう続けている。

もう1つは債券の需給だ。言い換えれば、売る必要のある債券を買いたくないと人々が言い始めれば、より大きな危機に発展する。

しかし米国債が買われなくなるなどということがあるのだろうか? ダリオ氏はこう続けている。

これからアメリカは大量の国債を発行することになるが、多くの国債保有者は既に米国債を大量に保有している。

事実、現在の銀行などの主な問題は、下落している米国債を持ちすぎていることだ。シリコンバレー銀行や銀行システム全体の損失のことだ。

アメリカでは利上げによって金利が上がったが、債券にとって金利上昇は価格下落を意味する。だから世界に31兆ドル存在する米国債の保有者は損失を負ったということになる。

その1つがシリコンバレー銀行だった。シリコンバレー銀行の破綻の一因は、保有していた米国債の価格が下落したことである。

シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
そして31兆ドル存在する米国債を保有して損失を食らっている人は世界にいくらでもいる。

ダリオ氏はこう続ける。

中央銀行さえも例外ではないが、銀行の問題は主に保有している債券価格が下落して損失を出し、しかも調達したお金に支払う金利が高過ぎることによる。

そのような状況で1.3兆ドルの国債が新たに発行される。国債の保有者はその米国債をすべて買い切ることが出来るのだろうか? そもそも買いたがるのだろうか? 買い切れなければ国債の価格が下がることになるというのがダリオ氏の議論なのだろう。

彼はこう続けている。

この状況は、今後1、2年でかなりリスキーだ。

そしてその問題がなくても債務の支払いの問題がある。

国債発行とマネーサプライ

だがダリオ氏の議論には個人的に異論がある。

考えてほしいのだが、発行された国債で政府が支出を行なったとき、政府から支払いを受けた業者は新たにお金を手にするわけだが、その業者はそのお金を銀行口座に入れるので、銀行口座に入ったお金で銀行が国債を買うことになる。

だから国債を発行しても米国債の危機にはならない。だが筆者が気にしているのは、この国債発行がマネーサプライ(市中に存在する現金と預金の総量)に及ぼす影響である。

国債を発行しても米国債の危機に繋がらないのは、上述のように国債の発行と同時に貨幣の量も増える場合である。だから、この国債発行でマネーサプライがどうなるのかを考える必要がある。

この1.3兆ドルの資金はマネーサプライにどう影響するか? マネーサプライは下落しており、現在6.8兆ドル付近だが、1.3兆ドルの国債発行がマネーサプライの下落トレンドにどう作用するかは投資家にとって非常に重要な問題である。


それはインフレ問題の行き先を決める。ガンドラック氏の言うようにこのままインフレ率は下落コースなのだろうか? それが投資家にとって恐らく今一番重要な問いである。

ガンドラック氏: アメリカはデフレになりコモディティ価格は下落する


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37702
21:777 :

2023/12/05 (Tue) 13:56:55

レイ・ダリオ氏: 国債の暴落トレンドが始まりつつある
2023年12月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がFortune Magazineのインタビューで国債と金利の見通しについて語っている。

リーマンショック後の金融緩和

ダリオ氏はコロナ前までの金融政策を振り返っている。アメリカではリーマンショック時にゼロ金利と量的緩和が始まった。ダリオ氏は次のように述べている。

金融市場はこれまで金利がゼロになるような、資金の溢れている馬鹿げた状況になっていた。

この流れのなかでGDP比の負債は増加した。

政府が中央銀行に命じて金利をゼロにしたかったのは、国の借金を増やして支出を増やしたかったからだ。

政治家の商売は税金を集めてそれを票田に流し込むことで成り立っている。他人が正当に稼いだ金を無許可で徴収して自分の裁量で選んだ誰かにばら撒くことの本質はそこにしかない。

ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから政治家は国の借金を増やすことを好んだ。国の借金は政治家が返すわけではないからである。そしてそのためにはゼロ金利が必要だった。国債に大きな金利が付いてしまえば、政府はばら撒くのではなく借金返済にお金を使わなければならなくなるからである。

国債の需要と供給

だがその低金利を実現するために中央銀行が買い支えをしなければならなかったということは、その低金利では普通の投資家は国債を買いたがらなかったということである。ダリオ氏はこう述べている。

債券の需要と供給がマッチしなかったので、中央銀行が債券を買い支えた。債券に十分な買い手がいなかったということだ。だから中央銀行が来て買い支えた。そしてそれは自由な市場を捻じ曲げながら金利を低位に抑え続けた。

それでも米国債を買ったのは、国債を買わなければならなかった中央銀行や銀行と、ダリオ氏はあと1つ買い手のカテゴリーを挙げている。

だから今、中央銀行は大量の米国債を抱えている。市中の銀行も大量の米国債を抱えている。日本人も大量の米国債を抱えている。

そして今やどうなったか? コロナ後の現金給付によってインフレが起こり、インフレ抑制のために金利を上げなければならなくなり、更には量的緩和で国債を買い入れていた中央銀行が量的引き締めによって保有量をむしろ減らすようになった。

元々中央銀行の他にはほとんど買い手が見つからなかった国債市場で、アメリカ政府はむしろ国債発行を増やしているにもかかわらず、一番大きな買い手だった中央銀行が保有量を減らしている。

それが国債市場の状況である。それで国債価格が下落し、金利が上がっている。

チューダー・ジョーンズ氏: 米国債の大量発行で金利はまだまだ上がる
そしていまだ残っている買い手、つまり銀行と日本人はどうなっているか? ダリオ氏はこう言っている。

そして彼らは米国債の値下がりで損失を出している。

日本人とドル

だが米国債を保有している日本人にとっては、これまでドル高が国債下落の損失を補填してくれていたかもしれない。だが来年予想されている景気後退が来ればドルは下がることになる。

ガンドラック氏: アメリカの景気後退でドルは暴落する
このタイミングで筆者の周りの日本人でドル預金の話をする人が増えてきている。彼らはいつもナイスタイミングである。彼らがNISAの話をし始めた時がまさに米国株の天井だったように。

ジム・ロジャーズ氏: 他人の意見で投資をするとほぼ間違いなく失敗する
それでも米国債は米国株よりはマシな投資なのだろうが。

2024年の米国株予想: 株価は最大で50%下落する
国債下落のスパイラル

さて、国債に話を戻そう。デフレと低金利の時代が、インフレと高金利の時代に置き換わった。低金利の時代に増やし続けた莫大な政府債務に大きな金利が付き、アメリカ政府も日本政府もそれを支払わなければならなくなっている。

高い金利が大きな利払いを呼び、政府の利払いは国債発行で賄われるだろうから、金利が高くなるほど国債発行が増えてゆく。そして更に金利が高くなる。

ダリオ氏によれば、そのサイクルに入った時の典型的な兆候が最近の世界経済で見られるという。ダリオ氏は次のように述べている。

典型的なサインは、 中央銀行が大きな損失を計上することだ。

最近、日本でも日銀の損失が報じられた。ドイツやイギリスでは中央銀行の損失をどう補填するかが問題となっている。

ドイツの中央銀行、資金不足で政府の口座への利払い停止を決定
人々は紙幣を刷ることのできる中央銀行は破綻しないと思っているが、歴史的に見ればそうではないことをダリオ氏は以下の記事で説明していた。

世界最大のヘッジファンド: 中央銀行でもインフレで破綻する可能性
結論

国債の利払い増加と高金利の負のスパイラルは一度突入すると止まらなくなり、どんどん加速してゆく。

ダリオ氏はこう述べている。

今、経済はそういう加速に非常に近い状況にある。そうなれば状況は悪化してゆく。

アメリカでは実際に金利上昇によって政府債務の問題が大きく議論されるようになっている。

だが日本も似た立場にある。むしろ政府債務は日本の方が大きいので、日本の方が大きな問題なのである。

日本国債の空売りを開始、植田新総裁で長期金利上昇を予想 (2023/3/2)
ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り (2023/5/2)

筆者やスタンレー・ドラッケンミラー氏など、日本国債の下落トレンドに賭けている投資家のポジションは今のところ成功している。これからどうなるだろうか。楽しみに待ちたい。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178
22:777 :

2024/04/05 (Fri) 08:57:29

令和日本は追い風が吹いて国運が上昇している
2024.04.05
https://www.thutmosev.com/archives/34366.html

向かい風では頑張っても進まないが、風向きが変わるとすべてがうまく行き始める


日本経済はデフレからインフレに向かう

日銀は23年10月から12月の需給ギャップが0.02%プラスになり、3年9か月ぶりプラスに転じたと発表した

需給ギャップは生産力と需要の差で、生産力が100で需要が99だとマイナス1%なので、商品が売れず物価が下がり給料が下がりリストラが増える

反対に生産力が100なのに需要が101だったら商品が売り切れて物価が上昇し給料は増えて企業は新たな労働者を募集するでしょう

リーマンショックの2008年の受給ギャップはマイナス6で新型コロナの2020年もマイナス5、確かに大幅マイナスの時に日本経済は大打撃を受けていました

需給ギャップがプラスはいつだったかというとバブル崩壊後では阪神大震災復興景気の1996年、小泉景気の2006年頃、アベノミクスの2013年、訪日客が多かった2018年頃でした

だが需給ギャッププラスは数か月から3年程度で終わっていて、その後はまた長いマイナス期間に突入するのを繰り返してきました

日本は30年ほどデフレに苦しんできたが物価が下がる原因は供給より需要が少ないからで、弁当を100個作ったのに毎日売れ残ったら生産量を減らすか値下げするしかありません

日本中が売れ残った弁当屋みたいになって従業員を解雇したり給料を下げて値下げし、給料が下がったのでより一層安い商品しか売れないのを繰り返した

公共事業は国が消費者の代わりにお金を使うので需給ギャップは簡単にプラスにできるが、財政悪化を招くと財務省が反対し逆に消費増税を繰り返した

消費増税は消費する人から罰金を取る制度なのでどうしても需要が減り、当然のことながら消費税創設と増税はすべて景気を悪化させた

こうして日本は八方ふさがりになったが日銀の金融緩和は円安と株価上昇を招き、外国資本は「安い日本」を買い求めて対日投資額を増やした

株価が上昇すると企業収益やGDPや需要・消費が増えるのでやっと受給ギャップはプラスに転じ、インフレ率も2%前後に上昇した

日本に風が吹いている
1990年前後の日本にはあらゆる逆風が全て吹いたような状況で、戦後好景気の前提だった日米関係もソ連という敵の喪失でアメリカは日本を必要としなくなり敵視するようになった

ソ連圏崩壊で大量の共産主義国が安い人件費を武器に工業生産を初め日本の産業は低コストな新興国に敗れて長い衰退期に突入しました

同時に昭和天皇の崩御で精神的な支柱を失い、新天皇は「日本はこんなに酷い国です」と口を開けば日本の悪口を繰り返したので国家の威信も失われた

威信を失った国家はハゲの雄ライオンみたいなもので敬意を払ってもらえず、ハイエナや雌ライオンからもコケにされて退散するようになります

平成30年間を通じて日本が衰退しつづけたのはこういう理由もあり、国家元首が自国の悪口を世界に言い触らしたらどんな国も衰退します

令和になって天皇が代替わりし新天皇は「口害」をやめたので、平成30年で衰退した日本の国運は上向いていく可能性があります

新型コロナで日本経済はかなりの打撃を受けたがそれはコロナ前からで、中国は40年続いた好景気をゼロコロナで完全に破壊した

中国は経済が悪化すると国内の引き締めを強めて様々な規制を強化し、気に食わない外国人を逮捕したり出国禁止にしている

欧米人や日本人など中国制裁に加わった国を中心に、数十人から数百人の外国人が中国から出国禁止になっている

こんな事は中国経済にとって百害あって一利なしなのだが習近平は経済に無知なので、先進国を脅しては屈服させ服従姿勢を示せと訳が分からない事を言い続けています

外国企業や外資は中国から一斉に逃げ出していて逃避先はアジアでは日本とインドになっていて、日本は安全保障で中国と対立する役割が期待されている

中国が成長していた時欧米は「日本は中国に謝罪しなさい」と毎年365回くらい要求していたが、時代は変わって「日本は中国と対立しろ」と勝手な事を言っています

中国が欧米と対立するほど旧ソ連時代のように日本の役割が大きくなり、ロシアと中国がナチス化するにつれて日本は漁夫の利を得ます

アメリカと言えども中ロを敵に回してユーラシア大陸とは戦えないが、日本とインド・欧州とアメリカが組めば十分に対抗する事ができる

こんな風に時代が変わった事で日本に追い風が吹いていて、中国ロシア には逆風が吹いています
https://www.thutmosev.com/archives/34366.html

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