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量的引き締めのインフレ抑制効果は薄い

1:777 :

2022/09/04 (Sun) 15:49:14

そもそも量的緩和が物価上昇ではなく資産バブルを引き起こしただけだったのだから、量的引き締めのインフレ抑制効果が薄いのも考えてみれば当たり前の話である。

中央銀行がどれほどマネタリーベースを縮小しようとも、マネーサプライに影響を与えられなければインフレには影響しない。

2018年にマネタリーベースが縮小された時にマネーサプライがどうなっているかと言えば、マネタリーベースは減らされているにもかかわらず、マネーサプライは上昇し続けている。つまり、量的引き締めはマネーサプライに影響を与えていない。よってインフレ率にも直接の影響を与えることは出来ない。



米国の量的引き締め、今月から2018年世界同時株安の時の2倍の規模に拡大
2022年9月2日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/27872

世界的なインフレ抑制のため、アメリカのFed(連邦準備制度)は現在2つの金融引き締め政策を行なっている。1つは政策金利を上昇させる利上げであり、もう1つは量的緩和で拡大したバランスシートを逆に縮小させる量的引き締めである。

そしてもう忘れている人もいるかもしれないが、9月から量的引き締めの規模が2倍になる。

まだ試運転だった量的引き締め

元々、量的引き締め政策は5月のFOMC会合で発表された。

5月FOMC結果、2018年世界同時株安時の2倍の規模の量的引き締め開始
実行されたのは6月からだが、そこから8月まではバランスシート縮小の規模は月間300億ドルとされていた。そして9月からはこの規模が倍の600億ドルとなる。

2018年に世界同時株安を引き起こした量的引き締めの規模はまず50億ドルから始まり、その後300億ドルまで拡大されたから、今年8月までの規模でも2018年の最大規模で量的引き締めは行われていたわけだが、今月からはそれが遂に倍になる。

元々決まっていた話とはいえ、やや不安定になっている米国株にとって良いニュースではないだろう。S&P 500のチャートは次のように推移している。


量的引き締めと株式市場

そこで量的引き締めの効果について一度復習しておきたい。

まず、以前からの読者であれば2018年の世界同時株安については覚えているだろう。この時の量的引き締めは前議長のジャネット・イエレン氏によって前年の9月に発表された。

9月FOMC会合結果はバランスシート縮小決定、ドル円相場の推移見通し (2017/9/21)
だがこの時相場はほとんど反応しなかった。しかし2018年に入って量的引き締めの規模が拡大されてゆくにつれ、米国株は2月頃に一度急落、その後持ち直したが年末にかけて再び下落することとなった。当時のS&P 500は次のように推移している。


その原因は利上げと量的引き締めである。だがパウエル議長は当時、株価がどれだけ落ちようともその事実を認めようとはしなかった。

一方で筆者は2018年後半の下落相場を空売りしていた。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)

理由は明快であり、量的緩和で株価が上昇したのが事実であれば、量的引き締めで株価が下落しないはずがないからである。

だがパウエル氏は(去年インフレの脅威を認めなかったのとまったく同じように)最後の最後までそれを認めなかった。彼は年末のFOMC会合で次のように述べている。

12月FOMC会合結果は空売り派への満額回答 (2018/12/20)

現在の短期的な混乱は多くのファクターが原因となっており、バランスシートの縮小が原因だとは思っていない。

バランスシートの縮小は大した問題を起こしていない。

何処かで聞いた台詞ではないか? 「インフレは一時的」の掛け声が聞こえてきそうである。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)

しかし結局パウエル氏は株安の原因は自分だと認めなければならなかった。2018年の世界同時株安はそれで収まった。しかし2022年の問題は、インフレが高止まりしているため、株価が暴落しても金融引き締めを止められないことである。


量的引き締めとインフレ

量的引き締めが2018年の株式市場にどういう影響を与えたのかについては説明した。

ではインフレに対してはどうなのか? 量的引き締めは元来、インフレを抑えるために中央銀行が行う政策である。量的引き締めはインフレを抑制できるのだろうか?

筆者の考えでは、残念ながら効果は薄い。何故ならば、例えば2018年の事例では縮小されたマネタリーベースはマネーサプライに影響を及ぼしていないからである。

まず、マネタリーベースとは主に銀行が中央銀行に保有する口座残高であり、量的引き締めとは中央銀行がこれを減らす政策である。つまり、銀行が持っている現金の量が減る。

一方でマネーサプライとは銀行を除く民間の人や企業が銀行などに保有する現金の総額であり、物価に直接の関係があるのはこちらの方である。

だから中央銀行がどれほどマネタリーベースを縮小しようとも、マネーサプライに影響を与えられなければインフレには影響しない。

では2018年にマネタリーベースが縮小された時にマネーサプライがどうなっているかと言えば、次のようになっている。


マネタリーベースは減らされているにもかかわらず、マネーサプライは上昇し続けている。つまり、量的引き締めはマネーサプライに影響を与えていない。

よってインフレ率にも直接の影響を与えることは出来ないというのが筆者の結論である。

そもそも量的緩和が物価上昇ではなく資産バブルを引き起こしただけだったのだから、量的引き締めのインフレ抑制効果が薄いのも考えてみれば当たり前の話である。

結論

株価には影響するがインフレ率には直接影響しない量的引き締めは、インフレ相場における株式保有者にとって最悪のニュースである。いくら株価を下げてもインフレ率は下がらないからである。

量的引き締めがインフレ率を抑制するとすれば、マネタリーベースの減少ではなく株価の下落そのものがデフレに繋がる場合だろう。以下の記事では株価下落は金融引き締めの副作用ではなく目的そのものだという考え方を紹介している。

ポズサー氏: 米国株暴落でコロナ株安時の底値に逆戻りする可能性
その量的引き締めの規模が今月から2倍に拡大される。投資家は念頭に置いておいた方が良いだろう。

米国株の今後の見通し: 企業利益激減で株価は再び暴落へ、空売り再開


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/27872


2:777 :

2022/09/04 (Sun) 15:51:03

史上最高の経済学者ハイエクの警鐘
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14040247

金融緩和するとデフレになる理由
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14038579

倒産する企業はそのまま倒産させるのが正しい
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14033162

1万円銀行融資すればマネーサプライは1万円増える、財政支出はマネーサプライを増やす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035981
3:777 :

2022/10/19 (Wed) 20:54:30

ジム・ロジャーズ氏: 景気後退で紙幣印刷再開、インフレ第2波へ
2022年10月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29942

ジョージ・ソロス氏とクォンタム・ファンドを立ち上げたことで有名な投資家のジム・ロジャーズ氏がThe Meb Faber Showのインタビューで、インフレが一度落ち着いた後のシナリオについて語っている。

インフレは一度沈静化する

世界的な物価高騰が続いている。一方、アメリカではもう半年ほどインフレ率が8%台で横ばいとなっており、ピークが近いのではないかと言われている。

9月の米インフレ率は8.2%、今後の推移予想
インフレ率は今後どうなるのだろうか。ロジャーズ氏は次のように語っている。

一直線に上昇するものも一直線に下落するものも存在しない。調整を交えながら上げと下げを繰り返すのが普通だ。そしてインフレにも同じことが言える。

だから物価は上昇した後、下落してゆくのだろうか? ロジャーズ氏の意見はそうではない。彼はこれからインフレ率が下がったとしても再び上昇する可能性が高いと見ている。

彼は次のように述べている。

原油の価格が高騰し、その後落ち着く。人々は「インフレが収まった」と考える。だが多くの場合一時的なものだ。

特にインフレはロシアのウクライナ侵攻のせいだという大手メディアのデマを信じている人はそう思いがちだ。ウクライナ情勢が短期的なものであれば、インフレも短期的なもののはずではないか。

だがロジャーズ氏はこう続ける。

戦争があれば穀物を植えたり農作物を収穫したりするのが難しくなる。だがもっと重要なのはインフレはウクライナ前から存在したということだ。

アメリカのインフレ率のチャートを掲載しよう。そしてインフレがウクライナ侵攻の始まった2022年2月末から始まったのかどうか確認してみるといい。


実際にはインフレはコロナ後の現金給付などのばら撒きが引き起こしたのである。

世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
インフレは続くのか

だから今後インフレ率が原油価格の落ち着きなどを反映して下落した後、インフレはまたぶり返すのかどうかを考えるためには、「ウクライナ情勢はいつまで続くのか」を考えるのではなく、「このばら撒きを好む人々は存在し続けるのか」を考える必要がある。そして答えはイエスである。

ロジャーズ氏は次のように予想する。

何か本当に劇的なことでも起こらなければ、インフレは続くだろう。景気が世界的に後退すれば、中央銀行は紙幣印刷を続けるだろうからだ。

ロジャーズ氏は戦争とインフレを好むアメリカ政府を嫌ってシンガポールに移住しているのだから、彼の中央銀行家に対する見方は非常に明確である。

ジム・ロジャーズ氏: 米国のウクライナ支援はロシアが米国直下のメキシコの反米を煽るようなもの
ロジャーズ氏は次のように続ける。

中央銀行は人々のことなど考えていない。彼らが考えているのは自分の職のことだけだ。

日本円が暴落しているのに、日銀は何故緩和をして円を暴落させ続けるのだろうか。

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
日銀の黒田総裁は何故自分の政策が失敗どころか危機の原因であることを認めないのか? 認めたら任期終了を待たずに辞めざるを得ないからである。このロジャーズ氏の発言はほとんどの中央銀行の行動原理を表している。そしてそれゆえに投資家にとって非常に重要である。

パウエル議長は緩和に逆戻りするか

日銀の黒田氏は言及する価値すらないが、アメリカが深刻な景気後退に陥った時にFed(連邦準備制度)のパウエル議長が緩和に逆戻りするかどうかは投資家にとって議論する価値のある問題である。

ロジャーズ氏の考えでは、パウエル氏は緩和に逆戻りする。筆者もこの件についてロジャーズ氏と同じように考えている。

何故か? それを予想するためには、パウエル氏の行動原理が何であるかを考えてみるといい。

パウエル氏は何故2018年に自分の金融引き締めが世界同時株安を引き起こしたとき、引き締めを撤回して緩和に逆戻りしたのだろうか?

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
逆戻りしなければ世間に批判されて自分の立場が危うくなったからである。

ではパウエル氏は何故2021年に、アメリカのインフレ率は既にかなり高かったにもかかわらず、「インフレは一時的」とマントラのように唱え続け、金融引き締めをやらなかったのだろうか?

世間が物価高騰を騒ぎ始めるよりも前に引き締めで経済を冷やしてしまえば自分の立場が危うくなっただろうからである。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
ではパウエル氏は何故2022年に株価が暴落しても金融引き締めを続けているのか? 引き締めを続けずに物価高騰が続けば世間から批判されて自分の立場が危うくなるだろうからである。

パウエル氏が考えている唯一のこと

ここまで考えればお分かりだろう。パウエル氏はこれまで一貫して1つのことしか考えていない。自分の立場が危うくなるかどうかである。

1970年代にアメリカで物価高騰が起こったとき、それを沈静化したのは当時の議長だったポール・ボルカー氏だった。

ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
彼は彼の引き締めが世間の批判を浴びても引き締めを続けた。そして彼と大統領はともに自分の席を失ったが、インフレは食い止めた。

パウエル氏とボルカー氏は同じだろうか? まったくの別人である。パウエル氏が信念で動いていないことはこれまで5年彼の行動を見てきた人間ならば誰でも分かる。彼はボルカー氏ではない。

だからパウエル氏は金融引き締めが実際に景気後退をもたらし、世間の引き締め政策への批判が高まり、自分の立場が危うくなれば、喜んで緩和に転換するだろう。

緩和再開でインフレ第2波へ

したがってロジャーズ氏の予想は明快である。これからインフレ率が下がり、それ以上に経済成長率が下がるとき、パウエル氏はどうするか? ロジャーズ氏は次のように言う。

日本では既に膨大な紙幣印刷をしている。アメリカも同じだ。経済が落ち込めばFedは紙幣印刷をするだろう。彼らは緩和に逆戻りする。

要するにパウエル氏も黒田氏と同じ道を辿るということである。それはドルの暴落を意味する。

ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ
だが何度も言うが、利上げさえ正常に行われれば、預金者は預金金利の上昇でインフレから身を守ることが出来るのである。

インフレ相場での最良の投資方法は株の空売りを除けば株式投資ではなく預金
だが中央銀行は緩和を続ける。そして預金者は金利も得られず、インフレはますます酷くなる。

結論

ロジャーズ氏はこのように纏めている。

勿論これは人々にとって良いことではない。だが彼らはそれが彼らにとって良いことだと考えている。

まったく黒田氏にふさわしいフレーズではないか。そしてパウエル氏も、これまでそうだったように、これからもそうなるだろう。ジョン・ポールソン氏やポール・チューダー・ジョーンズ氏など、他の著名投資家も同じように考えているようである。

ジョン・ポールソン氏、インフレ第2波で金価格高騰を予想
チューダー・ジョーンズ氏: 利上げ停止でインフレ相場再開、ビットコイン暴騰へ
ロジャーズ氏はこう言う。

もし自分が中央銀行のトップなら、中央銀行を廃止してから辞任するだろう。

ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ
世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29942



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