777投稿集 2507123


リリアーナ・カヴァーニ _ 愛の嵐(NIGHT PORTER)1974年

1:777 :

2022/08/22 (Mon) 13:03:42

Liliana Cavani NIGHT PORTER 動画
https://www.bing.com/videos/search?q=Liliana%20Cavani%20%20%20NIGHT%20PORTER&qs=n&form=QBVR&=%25e%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E5%B1%A5%E6%AD%B4%E3%81%AE%E7%AE%A1%E7%90%86%25E&sp=-1&pq=liliana%20cavani%20night%20porter&sc=2-27&sk=&cvid=8F08C62F8DF945C4BA161255EC1BD9AC&ghsh=0&ghacc=0&ghpl=



「映画の中のクラシック音楽」 
配信日 03年10月2日
取り上げた映画作品 愛の嵐(原題「NIGHT PORTER」)
監督 リリアーナ・カヴァーニ
使われた音楽 モーツァルト「魔笛」
使われた意図 ズブズブの男女関係
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/old/03-10/03-10-02.html

このメールマガジンでは、サンプル配信も含めると3回連続でイタリアのヴィスコンティ監督の作品における音楽の使い方について書いています。
その延長として、やはりイタリアの女流映画監督リリアーナ・カヴァーニの「愛の嵐」という作品での音楽の使い方に注目して見ましょう。

映画「愛の嵐」は、第2次大戦後のウィーンで、ユダヤ人の強制収容所でナチスの将校だった男(ダーク・ボガード演じる)と、その男に収容所でオモチャにされ弄ばれていた女性(シャーロット・ランブリング演じる)の行き場のない男女関係を描いた作品です。

あまりに過激だったので、ローマ法王庁が「ブラックリスト」の載せたはず。

そうそう!なぜヴィスコンティと、この「愛の嵐」という作品とが関わりがあるかというと、この「愛の嵐」が法王庁からクレームが来た時、ヴィスコンティはこの作品を擁護してくれたんですね。
あと、この作品の主演であるダーク・ボガードとシャーロット・ランブリングは、言うまでもなくヴィスコンティ作品の常連さんですよね?

では、このメールマガジンの本題である音楽に注目してみましょう。
まずは、クラリネット中心のいかにも「やり場のない」テーマ音楽・・・この音楽の「行き場の無さ」はこの作品の中心的な感情です。

では、使われているクラシック音楽は?

この作品において、今はアメリカのオーケストラ指揮者の妻になった女性(かつてユダヤ人収容所でオモチャだった女性)が、夫の指揮するモーツァルトの「魔笛」を聞きに出かけます。
その「魔笛」が効果的に使われているんです。

かつて、ナチスの将校としてユダヤ人たちをいじめていた男も、その過去を隠し、ホテルの夜番(原題であるNight Porter)として地味に暮しています。その勤めているホテルに、かつて強制収容所で「ズブズブ」の関係だった女性が、オーケストラ指揮者の妻としてウィーンにやってきたわけです。

かつてはユダヤ人収容所で、ナチスの将校とユダヤ人の女ということで男性優位だった関係も、再会後はオーケストラの指揮者の妻と、しがないホテルの夜番と女性優位に逆転しています。

男はそのような「しがない」生活を受け入れている。かつてユダヤ人収容所で、ナチスの将校だったことがバレてしまったら、裁判にかけられて確実に「死刑」ですからね。
生きるためには、「しがない」生活に徹しないといけないわけです。

その「しがない」生活の男の目の前に現れたのが、かつての「ズブズブ」の関係の女性というわけです。

その女性が、歌劇場に「魔笛」を見にいく。その後の方の座席で、その女性に判るような座席を取ってボガード演じる夜番も「魔笛」を聞くわけです。それが意味ありげなんです。

しかし、音楽を知っている人なら、反論するでしょうね?
「ウィーンでオペラを見るんだったら、モーツァルトの『魔笛』を見るのは当たり前じゃないの!」って・・・

勿論そうです。ウィーンでは「魔笛」というオペラは特別の位置にあるオペラですね。
ウィーン国立歌劇場で一番多く上演されているオペラだったはずです。初演もウィーン。

ウィーンに旅行に出かけて「魔笛」を見られなかったら、長良川に出かけて「鵜飼」を見られないようなものなのかもしれません。

だからといって、「魔笛」は2時間以上ある作品。この「魔笛」のうちでどの部分を使うのかで、監督の意図が理解できることになるわけです。

この「愛の嵐」で使われているのは、第1幕での、パパゲーノ(男)とパミーナ(女)の2重唱。
歌詞はこのようなもの。

パパゲーノ(男)・・・甘い衝動を一緒に味わうのが、女の第1の務め。

二人(男女)・・・私たちは恋を喜び、ただ恋によって生きましょう!

パミーナ(女)・・・恋はあらゆる苦痛を鎮めます。生あるものはすべてに恋に身を捧げます。

「魔笛」のこのシーンで2重唱を繰り広げるパパゲーノとパミーナは、男女と言っても友人関係と言えます。深い関係ではありません。

しかし、歌詞に注目!
中々意味ありげでしょ?

映画において、過去「ズブズブ」の関係だった男が、女を無言で見つめる。
『甘い衝動を一緒に味わうのが、女の第1の務め』という意味ありげなオペラの歌詞を背景にして・・・

確かこの映画ではヴィデオでもDVDでも、オペラの歌詞は字幕では出なかったと記憶しています。
だから「魔笛」というオペラを知らない人には、この監督の意図がわからないことになってしまうわけです。

それに、この映画のセリフは英語で、オペラの歌はドイツ語ですしね。

この『甘い衝動を一緒に味わうのが、女の第1の務め』という夜番の気持ちを受け入れた女性は、再び「社会通念を逸脱したズブズブの関係」に入り込んでしまうことになります。

男にしてみれば、その女性との関係においてのみ「男性優位」という立場になる。
その女性にしてみれば、その男性との関係においてのみ「自らの本性」を開放することができる。

そして、まさにオペラの歌詞のとおりに、『私たちは恋を喜び、ただ恋によって生きましょう!』となり、結局は、2人とも殺されてしまうわけです。まさに『生あるものはすべてに恋に身を捧げます。』という言葉そのもの。

そうそう、もう一つヴィスコンティ監督との関わりでいうと、このパパゲーノとパミーナの2重唱は、カール・ベーム指揮のレコードが使われていると思います。歌手の声でわかりますからね。

このメールマガジンで前回配信したヴィスコンティ監督は「家族の肖像」という作品の中で「バーンスタイン指揮のモーツァルトとか、カール・ベーム指揮のモーツァルト」とか指揮者談義を展開していますよね?

この「愛の嵐」でのカール・ベームという指揮者の選択には特に意味がないとは思いますが、ヴィスコンティとはこの点でも繋がってくるわけです。

映画の中でこのような極限まで追求された男女関係と、パパゲーノとパミーナの平和な男女関係は全然違っています。しかし、平和な二人の楽しげな2重唱と、「ズブズブ」な男女関係も、言葉だけを見た場合には、同じ言葉で表現されているわけです。


ちなみに、「愛の嵐」というタイトルは昼メロにもあったような・・・よく知らないけど・・・
あと、主演のシャーロット・ランブリングの出世作の「さらば美しき人」の原作のタイトル「哀れ彼女は娼婦」も昼メロのタイトルにもあったような・・・
多分、このメルマガを購読されている方は昼メロは範疇外でしょうが・・・


今回の配信はトータルでは第4回目です。バックナンバーは配信元にあります。
また登録&解除可能な私のサイトに載せてあります。

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発行後記

前回私の発信ミスで火曜日に配信する予定だったのが、金曜日に配信されてしまいました。別に時期が重要な内容ではないのですが・・・
今回は木曜日に配信ですが、段々移動して基本的に火曜日配信としていきたいとい思っています。
R.10/5/22
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/old/03-10/03-10-02.html
2:777 :

2022/08/22 (Mon) 13:16:23

「映画とクラシック音楽の周囲集」_ 映画・音楽に関する最も優れた評論集

07年7月から07年12月まで配信しておりました メールマガジンのバックナンバーのサイトです。
もう配信は全巻終了しております。

07年7月から07年12月まで配信していたメールマガジン「映画とクラシック音楽の周囲集」のバックナンバー
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/schejule.html

03年9月から04年8月まで配信していたメールマガジン「映画の中のクラシック音楽」のバックナンバー
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/top-page.html

「複数回取り上げた監督&原作者」・・・監督別でのリストです。
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/tuika/derector-list.html

「引用元の使い方で分類」・・・引用した作品のどの面を使ったのかによって分類したものです。
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/tuika/tukaikata-list.html

追加の文章・・・特定の映画作品などについての、ちょっとした雑感です。
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/tuika/question-top.html

オペラの台本について・・・興味深いオペラの台本についての文章のリスト
https://geolog.mydns.jp/movie.geocities.jp/capelladelcardinale/tuika/opera-top.html

(上記のメールマガジンの文章と基本的には重複しております。)


最新追加文章 10年8月7日追加 ゲーテの「ファウスト」について
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①過去に配信されていた機能不全家族に関するメールマガジンを収録したサイトである「ダメダメ家庭の目次録」


②ミラーサイトの記事

を、さらに

③MediumのPublication「ダメダメ家庭の目次録」

へ転載したものです。

したがって、山崎奨は著作者ではありません。
記事は全てミラーサイトから、誤字脱字等も修正することなく、MediumのPublicationに転載しています。

「ダメダメ家庭の目次録」 の記事の著者は、ハンドルネーム「ノルマンノルマン」氏とのことですが、連絡が取れない状態です。
レスポンシブ化および広告の非表示化によって、記事の参照を容易にすることを目的として、MediumのPublicationに転載することとしました。

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3:777 :

2022/08/22 (Mon) 16:02:21

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