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MMTは機能しない!超緊縮論を唱える元大蔵官僚 野口悠紀雄の嘘(池戸万作) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Aq-a_THAeNo
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野口 悠紀雄(のぐち ゆきお、1940年〈昭和15年〉12月20日 - )は、日本の経済学者、元大蔵官僚。研究分野は、日本経済論・ファイナンス理論。学位は、Ph.D.(イェール大学・1972年)。一橋大学名誉教授。
埼玉大学助教授、一橋大学教授、東京大学教授、青山学院大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学教授、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問などを歴任[4]。行政法学者の野口貴公美(一橋大学教授)は実子[5]。
経歴
1940年12月、東京府生まれ[1]。1959年、東京都立日比谷高等学校を卒業し、東京大学教養学部理科1類に進学。1963年、東京大学工学部応用物理学科卒業。1963年3月、東京大学大学院数物系研究科応用物理学専攻修士課程入学。
1964年、修士課程を中退し、大蔵省に入省。元々は通商産業省に内定していたが、集団面接試験の担当官だった高木文雄(当時大蔵省大臣官房秘書課長)に「お前を採用する」と言われた。理財局総務課に配属される[7]。入省同期には野田毅、田波耕治、秋山昌廣、涌井洋治などがいる。
1969年6月、カリフォルニア大学ロサンゼルス校より経済学修士 (M.A. in Economics) 学位取得。1972年6月、イェール大学より経済学博士 (Ph.D. in Economics) 学位取得。1973年、大蔵省主計局調査課長補佐。
1974年、大蔵省より出向し、埼玉大学教養学部助教授。1978年、一橋大学経済学部助教授。1981年、同学部教授。1987年11月に『週刊東洋経済・近代経済学シリーズ』で「バブルで膨らんだ地価」という論文を掲載しており、「私の知る限り、この時期の地価高騰を「バブル」という言葉で規定したのは、これが最初だ」と述べている。
1996年、東京大学先端科学技術研究センター教授。1999年、東京大学先端経済工学研究センター長。東京大学先端経済工学研究センター長を最後に大蔵省を退官。
2000年、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。
2004年、スタンフォード大学客員教授、一橋大学名誉教授。
2005年4月、早稲田大学に移り、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。2011年4月、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。2017年9月、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問。
人物
本人がアメリカ留学中に娘が北海道で生まれたため、電報でその旨を知らされたという。
趣味は天体観測。直径2mの開閉式ドーム天文台を自宅屋上に作り、口径20cmの反射望遠鏡を設置している。
極端なテレビ嫌い。
独学主義者。
「超」整理法
「超」整理手帳(ちょうせいりてちょう)を1996年に考案した。当時、手帳としては異色のA4横四つ折というサイズで、8週間が一覧できるジャバラ式のスケジュールシート4つで構成される。
「超」整理法シリーズはベストセラーになっており、毎年発売され、基本的な形は当初のままである。これは従来の整理法(京大式カードなど)は、個人では実行困難(個人で図書館のように整然と分類する必要はない)として、考案したシステムである。使ったファイルは手前に置くという「押出しファイリング」とパソコンの全文検索機能を利用した方法を提案している。
主張
1940年体制
1990年代以降に続いた長期不況に関して、その原因が戦時中に構築されたシステム(「1940年体制」)の非効率さにあると主張した。1940年体制とは、日本的な企業、経営、労使関係、官民関係、金融制度など日本経済の特徴とされる様々な要素が、1940年頃に戦時体制の一環として導入されたとする概念である。
野口は、
高度経済成長は、戦時体制によって実現された。戦時体制は、敗戦後も生き残り、高度経済成長を実現する上で、本質的な役割を果たした。
日本経済の特徴とされる要素は、戦時経済の要請によって導入されたものであり、日本の歴史の中では比較的新しいものである。
としており、「戦時体制からの脱却(構造改革)」を主張している。
著書の『1940年体制』は、いわゆる「構造改革論」のバイブルと目されている。野口らの提議した構造改革論に対しては、岩田規久男や野口旭らから痛烈な批判が寄せられたが、2004年以降の景気回復局面においては、議論は一時期雲散霧消してしまった感が否めない。なお、「1940年体制」に対して、堺屋太一は「昭和十六年体制」と呼称した理論を展開している。
TPP
TPPについて
「TPPがGDPを増加させる効果は、ほとんどない」、
「日本の輸出に与える影響はきわめて小さい」、
「関税以外の点での日本開国も、TPPによらなくともできる。」
といった主張をした。
デフレーション
通貨が減価し、東アジア諸国の価格競争力が高まりつつあった2009年当時のデフレーションにおいて、次の様に主張した。
「東アジア諸国と日本企業が競争しようとしても、勝ち目はない。
対応しようとすれば、生産拠点の海外転を促進するしかない。
日本国内で見た輸入品の価格は安くなる。これを利用した経済活動に転換することが重要である。」、
「『よいデフレ』とか『悪いデフレ』と言われることがあるがそうした区別は存在しない。立場によって評価が異なるだけである」、
「必要なのは、『デフレからの脱却』ではなく、『所得低下からの脱却』である。、工業製品の価格低下は、実質所得をさらに引き上げる望ましい現象として、歓迎されることになるだろう」
と述べている。
食料自給率
比較優位の観点から「日本の食糧自給率が低くても何の問題もなく、むしろ豊かな食生活をおくっている証拠である」
という趣旨のことを主張している。
ウィキペディアへの批判
野口はウィキペディアについて“ブリタニカにも匹敵する”と激賞しつつ、自身の項目に事実に反したことが書いてあったことに不快感を示し“誤りに対する責任の所在も明確ではない。ウィキペディア日本語版の管理者は誰であるのか、明確にされていないからである。さまざまな問題が指摘される「2ちゃんねる」でさえ、管理責任者が誰であるかは明確にされている。それと比べると、ウィキペディア日本語版の信頼性は「2ちゃんねる」以下と言わざるをえないのである”と批判している。
仮想通貨
野口はビットコインについて「通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」と評価している。
また、同氏は著書『仮想通貨革命』において「ビットコインは始まりにすぎない」と主張し、Googleが出資を行い各国の銀行が実証実験に参加しているリップルとビットコインの仕組みを貨幣以外の対象に拡張しようとする試みのイーサリアムは大きな可能性を秘めると述べている。
更に、現在の通貨と共存しうるリップルはビットコインより使いやすく、「リップルが広く使われるようになれば、ビットコインは不要になるかもしれない」とも述べている。
消費税
2015年10月に予定されていた消費増税について
「景気に関係なく上げるべきである。消費税が経済に悪影響を与えるのは当たり前であるが、増税しないと財政に対する信頼が失われ、金利が高騰する。その方が日本経済にとってはるかにダメージが大きい
」と指摘した。
著書 経済関連
『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年)
『バブルの経済学―日本経済に何が起こったのか』(日本経済新聞社、1992年)
『日本経済 改革の構図』(東洋経済新報社、1993年)
『税制改革のビジョン―消費税増税路線を見直す』(日本経済新聞社、1994年)
『1940年体制―さらば戦時経済』(東洋経済新報社、1995年、その後2002年に新版、2010年に増補版)
『日本経済再生の戦略―21世紀への海図』(中央公論新新社、中公新書、1999年)
『金融工学―ポートフォリオ選択と派生資産の経済分析』(藤井眞理子との共著、ダイヤモンド社、2000年)
『金融工学、こんなに面白い』(文藝春秋、文春新書、2000年)
『日本経済 企業からの革命―大組織から小組織へ』(日本経済新聞社、2002年)
「超」納税法(2003年 新潮社 ISBN 4104329029 2004年 新潮文庫 ISBN 410125625X)
『「超」税金学』(新潮社、2003年 ISBN 4104329037)
『ビジネスに活かすファイナンス理論入門―ここまでは知っておきたい基本』(ダイヤモンド社、2004年)
『公共政策の新たな展開―転換期の財政運営を考える』(東京大学出版会、2005年)
『ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル』(新潮社、2005年)
『日本経済改造論―いかにして未来を切り開くか』(東洋経済新報社、2005年)
『知っているようで知らない消費税―「超」税金学講座』(新潮社、新潮文庫、2006年)
『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社、2006年)
『資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略』(ダイヤモンド社、2007年)
『野口悠紀雄の「超」経済脳で考える』(東洋経済新報社、2007年)
『モノづくり幻想が日本をダメにする』(ダイヤモンド社、2007年)
『戦後日本経済史』(新潮社、2008年)
『ジェネラルパーパス・テクノロジー 日本の停滞を打破する究極手段』(遠藤諭との共著、アスキー・メディアワークス、2008年)
『円安バブル崩壊―金融緩和政策の大失敗』(ダイヤモンド社、2008年)
『世界経済危機 日本の罪と罰』(ダイヤモンド社、2008年)
『金融危機の本質は何か―ファイナンス理論からのアプローチ』(東洋経済新報社、2009年)
『未曾有の経済危機 克服の処方箋』(ダイヤモンド社、2009年)
『経済危機のルーツ―モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか』(東洋経済新報社、2010年)
『世界経済が回復する中、なぜ日本だけが取り残されるのか』(ダイヤモンド社、2010年)
『日本を破滅から救うための経済学』(ダイヤモンド社、2010年)
『大震災後の日本経済―100年に1度のターニングポイント』(東洋経済新報社、2011年)
『大震災からの出発―ビジネスモデルの大転換は可能か』(東洋経済新報社、2011年)
『消費増税では財政再建できない』(ダイヤモンド社、2012年)
『金融政策の死 ―金利で見る世界と日本の経済』(日本経済新聞出版社、2014年)
『1500万人の働き手が消える2040年問題』(ダイヤモンド社、2015年)
『戦後経済史―私たちはどこで間違えたのか』(東洋経済新報社、2015年)
『知の進化論』(朝日新聞出版、2016年)
『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社、2017年)
『日本経済入門』(講談社、2017年)
『世界史を創ったビジネスモデル』(新潮社、2017年)
『仮想通貨革命で働き方が変わる』(ダイヤモンド社、2017年)
『異次元緩和の終焉』(日本経済新聞出版社、2017年)
『世界経済入門』(講談社、2018年)
『仮想通貨はどうなるか バブルが終わり、新しい進化が始まる』(ダイヤモンド社、2018年)
『入門AIと金融の未来』(PHP研究所、2018年)
『AI入門講座 人工知能の可能性・限界・脅威を知る』(東京堂出版、2018年)
『平成はなぜ失敗したのか 「失われた30年」の分析』(幻冬舎、2019年)
『戦後経済史 私たちはどこで間違えたのか』(日本経済新聞出版社、2019年)
『マネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか』(新潮社、2019年)
『データ資本主義 21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か』(日本経済新聞出版社、2019年)
『野口悠紀雄の経済データ分析講座 企業の利益が増えても、なぜ賃金は上がらないのか?』(ダイヤモンド社、2019年)
『だから古典は面白い』(幻冬舎、2020年)
『中国が世界を攪乱する AI・コロナ・デジタル人民元』(東洋経済新報社、2020年)
『ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現 新版』(日経BP社、2020年)
『経験なき経済危機 日本はこの試練を成長への転機になしうるか?』(ダイヤモンド社、2020年)
『書くことについて』(KADOKAWA、2020年)
『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』(文藝春秋、2020年)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E5%8F%A3%E6%82%A0%E7%B4%80%E9%9B%84
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2022/08/19 (Fri) 01:07:56
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40年続いた米国株強気相場が崩壊する、米国株は30年上がらない
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14007513
アメリカの政策金利はこれから 5%以上に上がって世界恐慌を引き起こす
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009793
エリオット波動でみると日経平均は2050年まで上昇 _ 宮田直彦 日本株はもうすぐ大暴騰する
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14031612
日銀が 2011年から500兆円も ばら撒いたので「超円安・輸入物価高の時代」に変わった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14010201
40年間続いた「円高の時代」は既に2011年10月に「円安の時代」へとパラダイム・シフトしていた
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14004475
日銀総裁はロスチャイルドの手先 _ 黒田東彦総裁は完全なバカだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009730
ロシアを滅ぼそうとしているジョージ・ソロスの正体
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14006933
中国に投資して儲かる可能性は完全にゼロ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14017339
自称 数学者・経済学者の髙橋洋一は 完全なバカ か 詐欺師 のどちらかだった
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14009765
三橋貴明には気をつけろ・・・「日本はこんなもんじゃない」という幻想」
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14003160
株式投資は企業への投資ではない _ 外資が儲けたらそれと同額だけ日本が損する
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14008776
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2022/10/02 (Sun) 11:08:37
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日本人はビッグマック410円の貧しさを知らない iPhoneは高嶺の花、気がつけば「プア・ジャパン」
2022/10/02
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-621571.html
iPhoneや外国オーケストラ公演が、日本人には高嶺の花になってしまった。これまでも日本は円安によって貧しくなっていたが、今年3月からの急激な円安で、それがはっきりとわかるようになった。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第78回。
iPhoneはもはや高嶺の花
アップルは9月7日、新機種iPhone14シリーズを発表した。日本での価格は、最も安いタイプで11万9800円。 Pro Maxは約20万円だ。
昨年9月にリリースされたiPhone13シリーズでは、最も安いタイプが9万9800円だったから、20%の値上げになる。9月1日、円が急落して、1ドル=140円台となったことの影響だ。
これに先立つ7月1日、アップルは、日本での販売価格を引き上げていた。iPhone13を11万7800円から1万9000円値上げ。iPhone13 Proは14万4800円から2万2000円引き上げた。これも円安の影響だ。
一方、厚生労働省が発表した令和2年「賃金構造基本統計調査」によると、大学新卒者の賃金は、男女計で22.6万円だ。
上で述べた価格のiPhone13を、なんとか買うことはできる。しかし、Pro Maxを買ってしまえば、食費も残らない。iPhoneは、普通の日本人にとっては、もはや高嶺の花だ。
高嶺の花となったものは、他にもある。日本経済新聞(2022年9月12日)は、オーケストラの来日コストが上昇していると報じた。
大編成のオーケストラの場合、100人以上の人と楽器が移動する。航空運賃などが高騰しているため、経費が1億円以上増えているという。
このため、あるコンサートでは、入場料を、当初1万2000〜2万8000円と発表していたが、チケット発売日の直前に、1万5000〜3万2000円に値上げした。記事は、「一流オケの来日ツアーが、今後、激減するのではないか」としている。
日本人の文化環境は著しく低下する。
これまでも、外国のオーケストラやバレエの日本公演のチケット代は高かった。ただ、「贅沢」とは思っても、チケットの価格よりは、座席を取れるかどうか、どの位置に取れるかのほうが重要事項だった。しかし、1人3万円以上となれば、考え込んでしまう。
新型コロナの感染で、外国オーケストラやバレエの公演からは、この数年、足が遠のいていた。コロナが終わればもとのように行けると思っていたのだが、そうしたことはもうできないだろう。そう考えると、なんとも情けない気持ちになる。
私たちの世代の学生時代は、外国のオーケストラやバレエを実際に見たり、聞いたりするなど、夢のまた夢だった。いま、再びその時代に舞い戻ってしまった。円の購買力が固定為替時代の水準に戻ってしまったから当然のことなのだが、それにしても、なんと憎っくき円安だろう!
アメリカのビッグマックの値段は、日本の2倍
イギリスの『エコノミスト』が「ビッグマック指数」を発表している。これは、「ビッグマック価格がアメリカと等しくなる為替レート」に比べて、現実の為替レートがどれだけ安くなっているかを示すものだ(数字が低いほど、購買力が低い)。しかし、これはわかりにくい概念だ。
この指数よりも、「ある国のビッグマック価格を日本円に直すといくらか」を見るほうが、直感的にわかりやすい。
2022年7月時点での各国のビッグマックの価格を日本円に換算してみると、図表1のようになる(換算レートは、9月末の市場為替レート)。9月30日に改定されたばかりの日本のビッグマックは410円で計算した(7月末時点では390円だった)。
(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
ビッグマックの価格
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-621571.html?page=3
日本では410円だが、1位のスイスは949円であり、「法外な値段だ」と感じる。アメリカは669.3円で、日本の1.6倍になる。イギリスやドイツも、日本より大分高い。
中国が483円で、日本より2割弱高い。2021年6月には日本より安かったのだが、ついに中国のほうが日本より高くなってしまった。韓国の463円も、日本より高いと感じる。
窓を開けないと、世界の状況がわからない
以上で述べたのは、これまでも静かに進行していた現象だ。2022年の円安で改めて気づいた。
この状況は、下降するエレベーターに乗っているようなものだ。
自分のいる高さは、本当は下がっているのだが、エレベーターに同乗している人たちとの相対的な位置関係は変わらない。だから、下がっているのがわからない。
エレベーターには窓がないから、こうしたことになるのだ。
自分の位置を正しく知るには、エレベーターの「窓を開ける」必要がある。日本にはいま、外の世界が見える窓を開けることが必要だ。
ビッグマック指数で日本の購買力が低くなったことは、多くの人が知っていた。しかし、これまでは、それが私たちの生活に直接影響する問題だとは考えていなかった。
なぜなら、ビッグマックは、アメリカと同じものを日本で作れるからだ。日本の安い労働力を使って、価格が安い(しかし同じ品質の)ビッグマックを作れる。だから、わざわざアメリカまで(あるいは他の国まで)高いビッグマックを買いにいく必要はない。日本で安いビッグマックを買えばよいだけのことで、さして大きな問題だとは感じていなかった。
しかし、iPhoneでは事情が違う。残念ながら、日本企業ではiPhoneと同じ品質のスマートフォンを作ることができない。だから、アメリカで高い労働力を使って作ったiPhoneを買わざるをえないのだ。日本の賃金が低いことは、iPhoneの価格を引き下げるのに、何も寄与しない(正確にいうと、アメリカの高い労働力を使っているのは、iPhoneの設計に関してである。製造は中国の工場で行っている)。
こうした問題は、以前から存在していたものだ。このところの急激な円安のために、多くの人が気づくような形でそれが表れたのだ。
結局のところ、「安い日本」が問題なのでなく、「賃金が安い日本」が問題なのだ。 日本で賃金があがらないこと、円安が続くこと、それらが問題だ。
このまま続けば、どうなる?
実は、「安い賃金で作れるから大丈夫」と言ったビッグマックも、いつまでも日本の価格が安いままに留まっているとはかぎらない。
なぜなら、ビッグマックを作るためには、牛肉や小麦粉など、輸入に頼らざるをえない原料が必要だからだ。それらの価格は、いま高騰している。だから、価格高騰が続けば、いくら日本の賃金が安いからといって、ビッグマックの価格を維持し続けるのは難しくなるだろう。日本マクドナルドは、ちょうど9月30日からビッグマックの価格を従来の390円から410円に引き上げた。
輸入価格高騰の半分程度はウクライナ問題などの海外要因によるが、半分程度は円安による。ウクライナ問題がおさまっても、構造的な円安が続けば、日本は貧しさのスパイラルから脱却することはできない。
このままの事態が続けば、日本人には高くて手が届かないものが続出するだろう。「舶来品」という言葉は、長らく死語となっていたのだが、それがよみがえるかもしれない。
そして、20年後の日本は、信じられないほど貧しい国になってしまいかねない。
日本に来ても賃金は安いので、外国の有能な人材は日本に来なくなる。日本の有能な人材は外国に流出する。要介護人口は増えるが、介護してくれる人は外国にいってしまう。
こうした事態を、どうすれば食い止めることができるだろうか?
著者:野口 悠紀雄
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2022/10/26 (Wed) 07:39:36
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ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
2022年10月25日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30188
ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、CNBCのインタビューで2022年の物価高騰の原因と、インフレの今後の見通しについて語っている。
インフレとウクライナ情勢
今年のインフレの原因は何だろうか。日本ではウクライナ情勢よりも円安が注目されており、最近ようやくインフレの原因としてはまともな要因が挙げられ始めてきたと感じている。
ちなみに円安は日銀が引き起こしており、彼らには国民を犠牲にしてでも金融緩和を継続する理由がある。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198
そしてインフレの要因として、(金融メディアの記者を含む)何も知らない素人たちによって挙げられるのが、ロシアによるウクライナ侵攻である。
2021年からインフレを警告していたドラッケンミラーは、このことについて次のように語っている。
多くの人々がインフレはプーチン氏が引き起こしたと主張している。彼は確かにインフレを延長したが、1つ言っても良いだろうか? 彼がウクライナに侵攻する前、インフレ率は既に前年同月比で7%だった。
アメリカのインフレ率のチャートを掲載しよう。そしてこのチャートの内、何処が2022年2月末のロシアのウクライナ侵攻かどうか考えてみると良い。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/10/2022-sep-us-cpi-growth.png
ちなみに今のアメリカのインフレ率は8%である。
9月の米インフレ率は8.2%、今後の推移予想
インフレの本当の原因
では物価高騰の原因は何だったのか。ドラッケンミラー氏は去年からFed(連邦準備制度)の金融政策を公の場で批判していた。彼は去年の状況を次のように振り返っている。
わたしが去年立てた新年の抱負は、テレビに出ないことだった。だが当時の状況を見た時、居てもたってもいられなくなった。
わたしの目には、Fedは考えられないようなリスクを取っているように見えた。だが何のために? 当時、インフレ率は1.7%だった。そしてFedは毎月1,200億ドルの量的緩和を行なっていた。
中央銀行のインフレ目標は2%だから、残り0.3%のために毎月1,200億ドルをばら撒いていたわけである。
だがFedのパウエル議長の奇行はそこで止まらなかった。Fedはインフレ率が2%どころか5%を超えて上がって行っても莫大な紙幣印刷を続けていた。
ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
ここでは量的緩和だけをやり玉に挙げているが、物価高騰の直接の実行犯は現金給付である。アメリカで3回行われた現金給付によって跳ね上がった個人所得がインフレを跳ね上げた様子は、2つのチャートを並べてみればすぐに分かる。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/10/2022-aug-us-disposable-personal-income-and-cpi-growth-chart.png
このことについてドラッケンミラー氏は次のようにコメントしている。
確かに中央銀行だけが原因ではない。財政刺激も大きな原因だった。だが客観的事実として、中央銀行がなければ財政刺激は出来なかった。
中央銀行による低金利がなければ、政府は莫大な借金を積み上げることも出来ず、東京五輪やGO TOトラベルやその他すべての馬鹿げたばら撒きを行うことも出来なかっただろう。
日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
全国旅行支援で日帰りの旅行を楽しむドル円
だが中央銀行のトップを政府が選ぶ以上、彼らがグルであるのは当たり前であり、また国民ではなく票田と自分自身の利益を考えて行動する政治家がその予算で好きなようにやるのは当然のことだろう。
今後のインフレ動向
筆者を含めまともな投資家は誰でもそうだったが、去年からインフレを警告し政府を非難してきたドラッケンミラー氏は半笑いで次のように語る。
現在のインフレはわたしがこれまで行なった予想の中で特段優れたものだったとは思わない。大規模な財政刺激、大規模な金融刺激、そして当時インフレは既に始まっていた。何故それで政策が原因ではないと思えるんだ?
著名投資家は誰もが同じことを言っている。
世界最大のヘッジファンド: インフレになって驚いているリフレ派は馬鹿じゃないのか
ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
しかしアメリカでも日本でも未だにインフレの原因を正しく認識している人さえ少数派なのだからもう笑うしかない。そして彼らはいまだに政府から紙幣が降ってくるのを待っている。だが彼らに降ってくるのはインフレである。自分が望んだものを有難く受け取るといい。
さて、アメリカの金融引き締めで原油価格が下落したことによって、短期的にはインフレには減速の兆しが表れている。
サマーズ氏: 利上げの終わりが近づいている
だがそれでインフレは本当に終幕となるのだろうか。ドラッケンミラー氏は次のように言う。
1970年代の経験によれば、一度起こったインフレは繰り返す。去年の夏には誰もが中古車価格が下がるとか、別のものが上がるとか、そういうことを喋っていたが、そういう問題ではない。
インフレの原因が現金給付であるとすれば、少なくとも去年のような規模の現金給付がもう一度行われない限り、インフレは収まると考えて良いのだろうか。
だがドラッケンミラー氏はインフレがより長く持続する理由を次のように説明している。
例えばイギリスの労働組合だ。彼らが春の賃金交渉で「5年物のフォワード金利が2.3%だから2.3%の賃金上昇ということにしよう」とでも言うだろうか? そんなわけはない。彼らは現実の世界の労働者だ。彼らはインフレにより3年間で24%を失っている。
消費者がそれだけの購買力を失った場合、それは賃金交渉に表れてくる。
そしてそうなれば会社は賃金を上げなくてはならなくなり、それはその会社の顧客が負担することになる。このようにしてインフレは自己強化する。
そこがインフレの厄介なところである。インフレは一度起こってしまえば自分自身を原因として更なるインフレスパイラルを引き起こしてゆく。
だから1970年代に始まる物価高騰時代の終わりにFedの議長を務めたボルカー氏は、インフレを終わらせるために経済を犠牲にせざるを得なかったのである。
ポール・ボルカー氏、1980年のインフレ打倒がどれだけ厳しかったかを語る
まだ不況にさえ陥っていない状況でインフレが収まるかどうか話し合うことがどれだけ馬鹿げたことかが分かるだろう。ドラッケンミラー氏は次のように纏めている。
それが現在の問題であり、中央銀行が自分のバブル生成・崩壊政策によって引き起こした状況だ。
未だにバブル崩壊政策を続けている日本は何処に行くのだろうか。
利上げで預金者はインフレから 資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30188
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5:777
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2022/11/09 (Wed) 07:34:32
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世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
2022年11月8日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで莫大な債務を抱えた日本経済の行く末について語っている。
現金給付の結末を予想したダリオ氏
ついに世界的なインフレが起こってしまった。思い返せば、この状況を一番早く予想していたのはレイ・ダリオ氏ではなかったか。このインフレを引き起こした現金給付について、ダリオ氏は早くも2020年5月には次のようにコメントしていた。
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする (2020/5/8)
これはある意味モノポリー(訳注:人生ゲームのようなもの)でプレイヤーのほとんどが文無しになって怒り出したので銀行役の人が現金を配り始める瞬間と同じようなものだ。
人間はいくつになっても中身は子供と大して変わらない。現金給付を求める人も居れば、インデックスを保有して寝ているだけで金が儲かるという幻想にしがみつく人もいる。本質的には同じことである。
だが当時ダリオ氏が何をしていたかを思い出してほしい。人々が政府によるお金配りに熱狂していた一方で、ダリオ氏は淡々と紙幣印刷で滅んでいったかつての覇権国の研究をしていた。
世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 (2020/5/22)
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 (2020/5/25)
当時、何故ダリオ氏が突然オランダ海上帝国や大英帝国の研究をし始めたのかを本当の意味で理解した人はほとんどいなかっただろう。
だが物価高騰と株価暴落が起こっている今、読者は2年前のこれらの記事をどう見るだろうか。
ガンドラック氏の景気後退予想: 現金給付のツケを払うことになる
先進国の衰退の段階
いずれにせよ、インフレは起こってしまった。紙幣をばら撒き過ぎたので紙幣の価値がなくなり、紙幣ではものが買えなくなってしまった。
だがダリオ氏によれば、それは先進国に起こる典型的なサイクルの一部の過ぎないという。ダリオ氏は次のように語っている。
多くの国、特に主要な通貨を保有する国々は、経済の長期サイクルのうち縮小・再整理の段階に近づいている。
縮小・再整理の段階とは何か。アメリカも日本も、かつて栄えた国である。アメリカは辛うじてまだ栄えていると言えるだろうか。少なくとも2021年まではそうだと言えただろう。
しかしダリオ氏の経済理論によれば、栄える国は大抵の場合債務を増やしながら栄える。そして最初のうちは生産力の向上によって栄えてきたこれらの国は、徐々に債務に頼らなければ経済成長できなくなる。
どのような国でも永遠に栄えることはないので、そのタイミングはいずれやってくる。つまりは債務の力に頼ってももはや経済成長できないタイミングがやってくるのである。
ダリオ氏は次のように言う。
縮小・再整理の段階とは、債務の水準と成長率が1930年から1945年のように持続不可能な規模になった場合に起こる。
より具体的には、債権者を惹きつけられるだけの金利水準が、支払い義務を履行しようとする債務者にとって耐えられないほど高くなってしまった時にそれは生じる。
アメリカはまさにそういう状態にあると言えるだろう。アメリカの金利は4%程度であり、これまでゼロ金利に慣れ親しんできた借金漬けの企業にとっては耐えられないほど高い。
一方でアメリカのインフレ率は8%なので、4%の金利では債券の保有者は債券を持っていると差し引きで実質4%損をしてしまう。
どちらにしても滅ぶしかない
ダリオ氏は次のように続ける。
この状況になれば中央銀行は難しい立場に置かれる。(債券が投げ売りされて)金利が高騰し、資産価格や経済にダメージが及ぶことを許すか、紙幣を印刷して債券を買い支え、紙幣の価値が下がることを許すかのどちらかしかない。
そしてこの選択に既に迫られている国がある。ダリオ氏はこう続ける。
例えばイギリスの債務をめぐる大混乱は一番典型的な状況だろうし、より目立ってはいないが日本の紙幣印刷と円の減価は同じ状況だと言える。
イギリスの状況は、それを引き起こしたトラス政権の退陣という形で一応は決着した。
ドラッケンミラー氏: 他の国がイギリスに続けば暗号通貨は暴騰へ
しかし日本の状況は続いている。そもそもこの状況は2012年のアベノミクスの頃から続いている。
市場がアベノミクスを織り込み始めた2012年11月16日の衆議院解散時の日本円の価値(対ドル)を100とした場合、その後の円の価値は以下のように推移している。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/11/2022-11-8-jpy-to-usd-chart.png
当時を100とした場合、今の円の価値はおよそ55である。
結論
人々は米国株が20%ほど下落したくらいで大騒ぎしているが、そもそも10年でほぼ半値になっているものを日本人の多くは保有しているではないか。
そして何故そうならねばならなかったのか? 何故債務は増えなければならなかったのか? 政治家が東京五輪やGO TOトラベルを行うためである。
日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
それでも日本人は自民党に文句を言わない。彼らは永田町の中高年に貢ぐために生きているので、そっとしておいてあげるのが良いだろう。変わったキャバクラが日本では人気なのである。
投資家はただ市場の行方を予測するのみだろう。ダリオ氏は次のように言う。
中央銀行が強力な利上げを行ない流動性を引き締める場合、金融資産の価格は下がり、経済のうち金利に敏感な部分がダメージを受けるだろう。
一方で中央銀行が紙幣印刷を続ける場合、彼らの通貨の価値はより急速に落ちていくということが事実起こっている。
ドル円に関して言えば、短期的にはアメリカの利上げの限界はドル高の限界を意味する。円と同様にドルもゴミであるために、短期的には円が下がったりドルが下がったりするだろう。
ドラッケンミラー氏: 今後6ヶ月でドル空売りへ
だが長期的にはどちらも沈んでゆく。そして恐らく円の方が激しく沈んでゆく。
ドル円が150円 というのは短期的には天井かもしれないが、長期的にはまだまだ通過点に過ぎない。財布の中に入っている日本円の価値をちょっと疑ってみるのが良いだろう。永田町のキャバクラよりも良い使い道があるはずである。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502
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6:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/01/24 (Tue) 12:44:15
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ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る
2023年1月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32998
世界中が日銀に注目している。何故ならば、日銀のイールドカーブコントロールが破綻しかけているからである。
日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32797
DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社のRound Tableで日本の金融政策を皮肉っているので紹介したい。
日銀のインフレ政策と日本のインフレ
2013年のアベノミクス以来、日本銀行は大規模な量的緩和を行なってきた。
日銀の量的緩和は途中でイールドカーブコントロールに進化した。イールドカーブコントロールとは、長期金利に上限を設け、金利がその上限を超えないように長期国債を買い入れるもので、イールドカーブコントロールがある限り政策金利どころか長期金利についても永遠の低金利が実現されたかのように見えた。
だが40年続いた米国株上昇相場が終わるように、何事も永遠には続かない。
世界最大のヘッジファンド: 40年続いた米国株強気相場が崩壊する
何故ならば、アメリカの低金利がインフレで終わったように、日本の低金利もインフレで終わるからである。
日本のインフレ率は去年の半ばから上昇を始め、最新の数字では4%に達している。
その原因の多くは日銀のインフレ政策による円安経由での輸入物価高である。(ウクライナがどうこうと未だに言っている人に言うべきことはもはやない。)
ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
去年の為替相場では日銀の緩和政策のお陰でドルやユーロどころか東南アジアなどの通貨に比べても円の価値は下がった。日銀が日本円を刷りまくっているからである。
インフレ下でインフレを目指す日銀の愉快な緩和政策がガソリンや食料品などの価格を上げ始めたため、インフレ政策が実はインフレを目指すものだったというアベノミクスの頃からの自明の事実に日本国民がついに気付いてしまった。
あまりに素早い頭の回転である。それで日銀はイールドカーブコントロールを修正し、長期金利の上限を0.25%から0.5%に上げた。当然ながら長期金利は上がった。2013年以来の低金利の終わりである。
日銀がYCC変更で長期金利の上昇を許容、日本も金利上昇による景気後退へ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/31979
日銀の方向修正
ドル円はアメリカ側の状況もあり下がり始めている。ドル円の下落予想は2023年の筆者のメインのトレードである。
日銀の長期金利の実質利上げを受けてドル円の空売りを開始
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2023/01/2022-1-23-usdjpy-chart.png
輸入物価高だけが問題ならば、ドル円のレートが下がればインフレは収束する。
だが同じようなことを2021年にアメリカの中央銀行も言っていたではないか。
ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
アメリカでもインフレの起源は2020年に行われた莫大な現金給付がエネルギーや農作物などコモディティ市場に流れ込んだことが原因の局所的なインフレだった。
伝播するインフレ
だがインフレは伝播する。エネルギー高が結局はアメリカのサービス業などのインフレに繋がったように、輸入物価高が長く続けばそれは日本のサービス業などのインフレに繋がってゆく。
そして日本のCPI(消費者物価指数)の内訳を見てみれば、それがもう始まっていることが分かる。今年の日本のインフレ率はドル円の下落で一時的には落ち着くかもしれないが、輸入物価高が引いた後にはサービス業などのインフレが明らかになる。
そうなれば日本もアメリカのようにインフレ抑制のためにどんどん金利を上げなければならなくなるだろう。
金利を上げれば、もう何十年も低金利に依存していた日本経済は不況に陥るだろう。上げなければどうなるか? イールドカーブコントロールによる金利上限により日銀は無尽蔵に国債を買い入れなければならなくなる。
Round Tableでガンドラック氏らが指摘しているのは、日銀が市場に存在する国債の半分以上を既に買い入れてしまっていることだ。
そして今後のインフレ指標でインフレの悪化が明らかになれば、国債の売り圧力が増え、日銀の買い入れ額が爆発的に増加する。これも既に起こっている。
日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
だからこのまま行けば、金利が爆発的に上昇するか、日銀の国債買い入れが国債をすべて買い入れてしまうことで終了するか、どちらかである。
結論
どちらにしても緩和の終了には違いない。国債をすべて買ってしまえばもう緩和は出来ない。社債を買い入れることも出来るが、市場規模が国債よりも小さいため、すぐに終わってしまうだろう。
そもそも市場に国債が存在しない先進国など前代未聞であり、どういう事態が起きるのかもう少し精査してみる必要がある。単に緩和の終了では済まないかもしれない。
最初から分かっていたことだが、10年続いたアベノミクスの結末は、金利高騰か物価高騰である。そもそも物価高はアベノミクスの目的である。何故そうだったのかは、以下の記事で説明している。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/29198
日銀の黒田氏は「目標がまだ達成できていないことが残念だ」などと供述しているが、もはや意味が分からない。日本経済は彼のお陰で十分に詰んでいる。
だがまだ詰んでいない。インフレ率はまだ4%で、国債もまだ暴落していない。日銀の緩和もまだ破綻していない。
日本国債の投げ売り急増、追加利上げがなければ日銀の量的緩和は半年で破綻する
インフレ政策は少なくとも8年間インフレを引き起こさなかった。そして9年目でインフレになった。結局は当たり前の帰結に帰ってゆく。
ガンドラック氏は次のように言う。
日銀は賢明だ。80階の窓から飛び降りて、70階分落下したところで「今のところは良い状態だ」と言っているようなものだ。
世界最大のヘッジファンド : 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/30502
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32998
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7:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/01/25 (Wed) 19:48:56
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世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
2023年1月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33013
世界最高の、というよりは彼ぐらいしか存命でまともな経済学者はいないのだが、アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏が世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でインフレについて語っている。
インフレの原因
2022年、インフレがようやく話題になった。だがここの読者には「今更か」と思われたことだろう。
何故ならば、サマーズ氏のような経済学者や、筆者やレイ・ダリオ氏、ジェフリー・ガンドラック氏などの投資家は、2021年に既に起こっていた物価高騰について何度も警告していたからである。
サマーズ氏は2023年のダボス会議でインフレについて振り返っている。当たり前のことなのだが、インフレを語るこの優れた経済学者の口からは「ウクライナ」という単語は出ない。ウクライナ情勢はインフレとはほぼ無関係だからである。
ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
その代わりに彼が持ち出すのは政府によるコロナ後の財政刺激である。彼は次のように説明している。
コロナ禍が生じ、アメリカはGDPの14%の規模の財政刺激を2年連続で行なった。この財政刺激はアメリカが第2次世界大戦時に行なった規模の半分を超えていた。
この規模の財政刺激は、それまでの長期停滞していた経済の需要不足を補って余りあることは明らかだった。
これこそがわたしが2021年前半に、インフレが深刻化するという予想に非常に自信を持っていた理由だ。
財政刺激の規模は、厳密には2020年に15%、2021年に12%である。そしてその多くは、合計で1人当たり40万円以上の現金給付に使われた。
1人当たり40万円をばら撒いておきながらインフレにならないと想定した政治家や中央銀行家は何を考えていたのだろうか?
インフレ率を押し上げた現金給付
データを見てみよう。以下のチャートはアメリカの可処分個人所得とインフレ率を並べたものだが、現金給付によって可処分所得が3回急増したことが、インフレ率を大きく持ち上げた様子が見て取れる。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/10/2022-aug-us-disposable-personal-income-and-cpi-growth-chart.png
そしてロシアのウクライナ侵攻があった2022年末以降、インフレ率は上がっていないどころかむしろ下がっている。
その事実は原油価格のチャートを見ても分かる。原油価格はウクライナ情勢のもっと前から上がっていた。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2023/01/2023-1-24-wti-crude-oil-chart.png
2022年2月末のウクライナ情勢で一度急上昇はしているが、全体から見れば僅かなものであり、しかも日本を含む西側のロシア産原油の禁輸措置が簡単に迂回できるザルな措置であることが明らかになってからは、急騰分をすぐに巻き戻し、その後はアメリカの金融引き締めもあり、ウクライナ前の水準よりも低い位置で推移している。
制裁で安くなったロシア産原油、欧米に転売される
以上により明らかなように、インフレの原因はウクライナ情勢ではなく、コロナ禍で行われた現金給付である。2020年、アメリカだけではなく世界的に行われた現金給付が原油や農作物などのコモディティ市場に流れ込み、世界的なインフレの素地を作ったことは、ここでは2020年に既に報じている。
金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
2021年、インフレを否定した政治家や官僚たち
さて、上記のような状況のもと、筆者を含む投資家や、サマーズ氏などの専門家は、2021年にはインフレの脅威について何度も警告していた。サマーズ氏は2021年5月に次のように言っている。
ラリー・サマーズ氏: インフレリスクは本物、利上げで景気後退へ (2021/5/25)
コロナ禍において山のように積み上げられた2兆ドル以上のアメリカ人の貯金がインフレ圧力を生んでいる。
だが2021年、インフレを生み出した張本人である政治家や中央銀行家はインフレの脅威を否定し続けた。
合計でGDPの30%近い現金をばら撒いておきながら、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長などはインフレは脅威ではないと主張し、ゼロ金利政策を継続した。それがインフレの火に油を注いだ。
例えばアメリカのインフレ率が7.7%に達していた2021年4月の段階でパウエル氏は次のように話していた。
4月FOMC会合結果: パウエル議長のインフレ無視は続く コモディティバブル継続へ (2021/4/30)
実体経済はまだ雇用と物価の目標からは程遠い所にある。
この時点でインフレ率は7.7%である。彼は例えば10%のインフレでも目指していたのだろうか。
こうした馬鹿げた発言は、例えば2023年の黒田なにがしの発言と完全に一致している。彼は緩和政策が問題を引き起こしたこの完璧なタイミングで職場を離れるにあたり、「インフレ目標を達成できていないことが残念」などという意味不明な供述をしている。日本のインフレ率は既に4%である。
ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/32998
2021年のパウエル氏でも十分に愚かなのに、それから2年も経ってから同じ愚かさを踏襲している日銀の黒田氏は、まさに先進国アメリカに追いつき追い越そうとする戦後日本人の鏡ではないか。黒田氏がいれば、日本もインフレに関してはアメリカに勝てるかもしれない。
結論
リーマンショックの時もそうだったが、金融や経済学の本物の専門家たちがこぞって警告を発していたにもかかわらず、政治家や中央銀行家はなぜ経済危機を予想できないのか。
彼らに比べてサマーズ氏らの頭が途方もなく良かったということなのだろうか。しかし筆者はむしろ、GDPの30%近いばら撒きをしてインフレにならないという結論に至ることのできる稀有な頭の方に解説の必要性を感じる。
インフレを予想できなかった人々は、 次は間違えないことが出来るだろうか。サマーズ氏は彼らにこうアドバイスする。
経済学の秘伝のソースは算数だ。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33013
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8:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/03/01 (Wed) 10:09:54
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ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
2023年2月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33890
引き続き、リーマンショックでサブプライムローンを空売りして莫大な利益を上げたことで有名なジョン・ポールソン氏の、アラン・エルカン氏によるインタビューである。
ジョン・ポールソン氏、サブプライムローンの空売りで大儲けした時のことを語る
今回はコロナ後の緩和政策と現在のインフレの関係について語った箇所を取り上げる。
インフレと量的緩和
インフレの原因についてはここの読者には改めて言う必要はないだろう。ウクライナ情勢ではなく、コロナ後に行われた未曾有の現金給付である。
ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
国民に大金を振り込んで誰もがそれを使えば物価は高騰するという誰でも分かるはずの当たり前の話なのだが、メディアを鵜呑みにする人々にはウクライナがどうこうというナンセンスが横行している。だがそれは実際の経済統計に反している。
しかし現金給付の裏にあった量的緩和についてはきっちりとフォーカスされていないのではないか。ポールソン氏は今回、現金給付よりも中央銀行の量的緩和に重点を置いて話している。
彼はコロナ後の経済状況について次のように振り返っている。
コロナ危機が起こり、経済が沈んだ。だから彼らは2020年の第2四半期に非常に緩和的な金融政策を行なった。
コロナ後にすぐ、日本でもアメリカでも現金給付が行われた。債券投資家ジェフリー・ガンドラック氏などはそれを狂気の沙汰と呼んでいたが、誰も耳を傾けなかった。レイ・ダリオ氏は2020年の時点で淡々と過去のインフレの事例について研究を始めていた。
ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判 (2020/3/29)
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨 (2020/5/23)
だが政府は既に莫大な政府債務を抱えていたのに、どうやって紙幣をばら撒いたのか? 中央銀行がそれを印刷したのである。
厳密に言えば、政府が国債を発行して投資家から現金をもらい、投資家はそれを中央銀行に売却して中央銀行が印刷した紙幣をもらうわけだが、要するに中央銀行が刷った紙幣が政府に行っているのである。それが量的緩和である。
だから量的緩和がなければ現金給付は不可能だった。この意味で量的緩和はコロナ後の物価高騰の原因なのである。
インフレ後の量的緩和
さて、コロナ直後の現金給付はロックダウンによるデフレを止めた。だが何故かその後も中央銀行は量的緩和を続けていた。ポールソン氏は次のように説明している。
2021年の始めに緩和を止めていれば良かったのだが、彼らは2021年のあいだずっと緩和を続け、驚くべきことに2022年の4月までそれを止めず、経済を資金で溢れさせた。
2021年、バイデン大統領は就任直後に大規模な現金給付をやらかした。当時、アメリカ経済は既に正常に戻っていたのにである。そのような状況でコロナ後と同じような大規模な現金給付をすれば、当然物価は爆発する。
バイデン氏は最近「インフレは自分の就任前からあった」という発言して批判されている。
ガンドラック氏、バイデン大統領の「インフレは就任前から」発言を批判
何故か。政治家が現金給付をすれば票を取れるということを学んでしまったからである。
だが何より馬鹿げているのは、それを有権者が支持したことである。人間は自分が愚かな行いをやりたくなってしまったとき、それを正当化する理屈をあとから考え始める。ポールソン氏は次のように続けている。
彼らは幻想を見ていた。彼らは紙幣印刷はインフレに繋がらないという新種の金融理論さえ信じ始めた。
だから彼らは嬉々として2021年のあいだずっと毎月1,200億ドルもの紙幣を印刷し、それでもインフレにはならないと主張した。
いわゆるMMTである。だがMMTは実は新種の理論ではない。MMTは19世紀にもあった。MMTとは人々が紙幣印刷をやりたくなった時にだけ発生し、その後の物価高騰とともに消えてゆく歴史上のいつもの風物詩である。
そしていつも通りインフレが起こった。ポールソン氏は次のように続ける。
2021年にはインフレ率は既に6%に達していたのだが、実際にインフレが起こった時、彼らはインフレは彼らの金融政策ではなく供給不足によって起こったもので、一時的だと主張した。紙幣印刷のインフレへの影響を無視した完全な幻想だ。
彼らはインフレの原因を正しく診断せず、すべてを供給の制約のせいにし、紙幣印刷を続けた。
MMTはインフレが起こらない限り問題ない
「インフレが起こらない限り問題ない」とされていたMMTについてはガンドラック氏が次のように問題を指摘している。
ガンドラック氏: 永遠に追加緩和か、景気後退か
インフレが起こっている。
ポールソン氏は次のように続ける。
紙幣印刷をどれだけ続けてもインフレは起こらない。それがどれだけ馬鹿げたアイデアか考えてみてほしい。
実際にはコロナ後、日本円換算で合計40万円以上の現金給付で物価は高騰した。現実はそういうものである。
それで2021年に「インフレは一時的」と言い続けていたパウエル議長も非を認めざるを得なくなった。ポールソン氏は次のように説明する。
彼らは2021年の終わりに態度を変えて、一時的がどうとかいうナンセンスをようやく止めた。自分がインフレの火に油を注いでいることに気付いたからだ。
だが彼らは紙幣印刷の規模を毎月減らしただけで紙幣印刷を2022年4月まで続けた。その頃にはインフレ率は10%に近くなっていた。
結論
それで現在の物価高騰まで至るわけである。量的緩和と現金給付がなければインフレは起こらなかったし、現在株価を下落させており、2023年に景気後退を引き起こす金融引き締めもやる必要がなかったわけである。
2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない
だがすべて、インフレ政策を支持し、結果として見事その成果であるところのインフレを受け取った有権者が自分で選んだことである。
ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
また、量的緩和はそれ単体では金融資産の上昇率を賃金の伸びよりも高くする政策であるので、労働世代から高齢者へと資産を移転させる年金以外の政策でもある。
以下の記事で説明した通り、日本ではその量的緩和を支持したのが搾取される側である労働世代だということがまた興味深い。人は何でも自分の好きなものを選べるのである。
ドラッケンミラー氏、 高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/33890
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9:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/03/04 (Sat) 22:12:25
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ポールソン氏: 成功は紙幣印刷ではなく教育と勤勉さから生まれる
2023年3月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34278#more-34278
長らく続いていたアラン・エルカン氏によるジョン・ポールソン氏の長編インタビューの最後の記事となる。
今回はコロナ後の政府の経済政策について語っている部分を紹介する。
コロナ後の緩和政策
2020年、コロナ第1波におけるロックダウンで先進国経済は大きなダメージを受けた。これに対して日本でもアメリカでも、政府と中央銀行は紙幣印刷と現金給付で対応した。
アメリカでは、Fed(連邦準備制度)が3月23日に無制限の量的緩和を発表しているが、実はこの措置は当時の株価の暴落を止めることが出来ず、一定期間株価はそのまま落ち続けた。当時の相場を知らない読者には、当時の記事からリアルタイムの雰囲気を読み取ってみるのも面白いかもしれない。
米国、量的緩和の無制限化を発表も米国株は下落 (2020/3/24)
だが結局、この緩和措置は過剰だった。特に2021年、既にアメリカ経済は元の水準まで回復していたにもかかわらず、就任直後のバイデン大統領が人気取りのために莫大な現金給付を行なったことが一番まずかった。
ガンドラック氏、バイデン大統領の「インフレは就任前から」発言を批判
それで経済は強くなり過ぎた。ポールソン氏は次のように解説している。
Fedが紙幣印刷で未曾有の刺激策を行ない、それが政府に莫大な資金を使う余裕を与えた。財政支出と紙幣印刷の組み合わせが非常に強い経済を演出した。
中央銀行が印刷した紙幣を政府がばら撒いたことで需要が非常に強くなれば、経済に何が起こるか。需要と供給について少しでも知っている人ならばその答えを出すことは容易い。インフレである。
ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
過剰な資金はまだ経済に残っている
ポールソン氏によれば、その効果は紙幣印刷を終了して1年ほどになる今でも続いているらしい。彼は次のように続けている。
今ではFedは引き締めを行なっているが、まだ経済の中に多くの余剰資金が残っており、それが消費と経済成長を支えている。
アメリカ経済は着実に減速しているもののまだ持ちこたえている。
アメリカ経済は確実に減速している、2022年4QアメリカGDP
インフレ率全体が下落しているなか経済成長は持ちこたえていることで、ソフトランディング期待も囁かれた。だがインフレの内訳を見てみれば、実体経済が持ちこたえているのは、サービスなど実体経済の核心にある部分のインフレがまだ止まっていないからだということが分かる。
サービスのインフレだけひとりで上がり続けるのか
この記事で詳しく説明したように、サービスのインフレが止まらない限りインフレは止まらず、そしてサービスのインフレと経済成長率は一蓮托生である。つまり、サービスのインフレを止めようと思えば、経済成長も止めるしかない。
よってソフトランディングは有り得ない。それが筆者が株を空売りしている論拠である。
2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない
副作用のない麻薬はない
ということで、紙幣印刷でリッチになれると思った多くの有権者はインフレで酷い目に遭っている。2020年に既に誰かが警告していたではないか。
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする (2020/5/8)
ポールソン氏は次のように言う。
それはパーティのようなものだ。パーティに行き、たくさん飲みたくさん笑うが、パーティが終われば2日酔いが待っている。
だからアメリカ経済には大きな2日酔いが待っている。最終的には負債を支払うか、インフレで債務を帳消しにするかどちらかしかない。
債務はいずれ払わなければらない。そうでなければ債権者が損をするので、債務を払うか、債権者に損をさせるかのどちらかである。そして例えば日本の場合、国債の保有者は実質的には預金者なので、政府債務をきっちり支払うか、国民が損をするかのどちらかである。
だが負債を払わず預金者も紙幣を取り上げられない第3の道がある。ポールソン氏は次のように説明する。
それはもう始まっている。インフレは政府債務の実質的な量を減らしているが、それは賃金よりも大きく物価が上昇することに苦しむ平均的な国民の犠牲のもとに成り立っている。
敗戦後のドイツが支払い不可能な債務を何とかした方法である。
ここでは何度も言っているが、インフレ政策は最初からそれを目的にしている。
ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
インフレ政策とは国民の預金を犠牲に莫大な政務債務を帳消しにして、政治家が引き続き予算を票田にばら撒けるようにする政策であり、それを政治家が何としてもやりたかった理由は完全に理解できるが、それを有権者が支持した理由は理解不能である。
以下の記事で詳しく説明したが、あなたがたは騙されている。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
結論
ポールソン氏は紙幣印刷について次のように纏めている。
成功するための魔法など存在しない。成功は教育、勤勉さ、貯蓄、再投資によって得られる。そうすればあなたは成功するだろう。
結局のところ、2020年に現金給付を横目に見ながらインフレの歴史について淡々と研究していたレイ・ダリオ氏が言った次の言葉がすべてである。
世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる (2020/5/17)
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。
紙幣は食べられない。
賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ。愚者はまさに今経験から学んでいる。いや、問題は恐らく、愚者は経験から学ぶことすらないということだろう。
だが市場経済の素晴らしいところは、債務のツケは誰かが払ってくれても自分の愚かさのツケだけは自分で払わなければならないということである。筆者は市場経済のその部分を本当に素晴らしいものだと考えている。
そう言えば自分で働くことなくお金が降ってくるように願った人々がはまった穴がインフレの他にもう1つある。つみたてNISAである。
「株式投資は長期的にはほぼ儲かる」という主張が完全に間違っている理由
2023年、緩和に対するツケを払うための引き締めはアメリカでも日本でも始まっている。株価とドル円はともに下落することになるだろう。
2023年の株価予想: 米国株と日本株の空売りを開始、ソフトランディングは有り得ない
日銀の長期金利の実質利上げを受けてドル円の空売りを開始
金融庁に騙されて彼らの多くは資金を米国株に注ぎ込んでいるが、円建ての米国株の価値は株価下落とドル円下落の二重苦で酷いことになるだろう。つみたてNISAは既に詰んでいる。金融市場とは素晴らしい場所である。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/34278#more-34278
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10:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/04/26 (Wed) 08:48:18
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世界最大のヘッジファンド: 豊かな国ほど借金まみれになる理由
2023年4月25日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がImpact Theoryのインタビューで、先進国がほとんど例外なく多額の負債を抱えている状況について解説している。
先進国の膨張する債務
奇妙なことだが、先進国の政府債務残高は軒並み高い。日本もアメリカもそうである。世界的には裕福であるはずの先進国が、例えばそれよりも貧しいはずの東南アジアやアフリカの国々よりも借金が多いのはどういうことか。
ダリオ氏は次のように問題提起している。
人々や社会が裕福になればなるほど負債を増やすようになることは興味深いことだ。これは逆説的だ。
100%や200%というGDP比の政府債務に慣れてしまった現代人は疑問に思わないかもしれないが、よく考えてみればほとんどすべての先進国の政府債務が軒並み高くなっているのは偶然でも当たり前の減少でもなく、何か隠された共通の原因があるはずだ。
個人のレベルで考えてみれば、富裕層が貧困層から借金をするという状況は考えられない。だが政府のレベルでは逆のことが起きている。
ダリオ氏は次のように指摘する。
アメリカが中国からお金を借りるようになったとき、アメリカ人の個人所得は中国人の40倍だった。そしてアメリカは中国からお金を借り始めた。
何故このようなことが起きるのか本当に不思議に思う。
ダリオ氏の仮説
それは何故だろうか。ダリオ氏は次のように仮説を立てる。
これは心理学的なものだ。お金がない人がお金を手に入れるとお金を貯めたいと思う。そして貯金とは誰かにお金を貸すことを意味する。
そして皮肉にも、よりお金を持つようになればお金が借りやすくなり、その人や社会や政府はより多くの負債を抱えるようになる。
裕福な人間の方が借金をしやすいというのは事実だろう。実際、富裕層は借金を自由に利用して投資を行なったり、節税対策をしたりする。
だがそれでも富裕層には資産があり、資産の総額を超えるような借金をすることはない。だが先進国の政府は資産がほとんどないにもかかわらず、借金だけを増やし続ける。
つまり、裕福な国の政府と、裕福な人間では別の行動をしている。ダリオ氏の仮説ではこの違いを説明できない。
国の一生
人間には一生がある。生まれてきて、学校に通い始め、卒業して労働するようになり、やがて肉体や知性が衰えて引退し、死んでゆく。
このように国にも一生がある。それがダリオ氏の言うスーパーサイクルである。
最初は小国であったものが、技術革新や人口増加によって徐々に豊かになり、成熟してゆくにつれて経済成長率が落ち始める。日本で言えば高度経済成長からバブル崩壊後だろうか。
そしてその頃から徐々に借金と紙幣印刷に頼るようになる。力が落ちてゆくのでそうならざるを得ないのである。ダリオ氏によればそれはサイクルであり、ほとんどの国が例外なくそのようになる。
そして最後には人が死ぬように、借金と紙幣印刷により物価が高騰して滅んでゆく。
少なくともそれが大英帝国やオランダ海洋帝国など、かつての大国に起こったことである。
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退
世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
そしてこのサイクルを見れば、アメリカは衰退のフェイズに足を踏み入れかけている。だからインフレが起こったのである。
世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は世界経済全体に波及して物価高騰か倒産危機で終わる
国が借金を増やす理由
だがそもそも何故政府は借金を増やせるのか。人間であれば、資産がほとんどないのにGDPの200%以上の債務を積み上げることはできない。
何故それが政府には可能なのか。ダリオ氏の見解によれば、有権者がそれを許可するからである。ダリオ氏は次のように述べている。
選挙前には政治家には借金を増やして支出を増やす動機がある。有権者は誰も借金の方には注意を向けず、そのお金が何処から来るのかは気にもせず、支出の方にだけ注意を向けるからだ。
負債の上でパーティをやっているようなものだ。
だから毎年税金で数百万自分から奪ってゆく政府に10万円を給付されただけで彼らは嬉しくなってしまうのだ。だがそれは元々自分の金である。彼らは馬鹿なのだろうか。
政府を選ぶ有権者は定義上国民の過半数なのだから、国民の過半数が借金を許せば政府は借金をするだろう。政治家の仕事は国民から税金を徴収して自分の票田にばら撒くことなのだから、その被害者がそれを許してくれる状況でそれを拒む理由がない。
だが状況としてそれが可能になっても、経済的に可能になるわけではない。100%しか資産がないのに借金をして200%消費しようとすればどうなるか。単純にものの値段が2倍になるだけである。実際今それが起こっている。
日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
借金によって消費を無理やり増やすことは、インフレを生じさせるだけでなく、長期的には増税を増やす。国の借金はいずれ税金という形で国民から徴収されるか、紙幣印刷によって返済されるしかないが、紙幣印刷はインフレを悪化させるので、緩和政策の出口は結局は増税か物価高騰しかない。それが多くのファンドマネージャーらが指摘していることである。
ポジャール氏: 中央銀行は金利高騰か通貨下落かを選ぶことになる
世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
だが政治家には関係ない。自分は票田とともに利益を得られる上に、国の借金は自分が引退した後に誰かが何とかするものである。彼らに遠慮をする理由があるだろうか。だから東京五輪でも全国旅行支援でも好きにやったではないか。
経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が次のように言っていたことを思い出したい。
ハイエク: インフレ減速後の失業増加は避けられない
しかし、短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。
日本にはいまだに国の借金には問題がないなどと言う人間がいることには驚かされるが、事実日本では増税とインフレが降り掛かっているではないか。インフレ政策の当たり前の帰結に気付くことの出来なかった自民党支持者の知性には本当にいつも驚嘆せざるを得ない。彼らの頭脳は最高である。
ハイエク: 緩やかなインフレが有益であるという幻想
結論
何故こうなるのか。ダリオ氏はこう説明している。
人々は近視的なのだ。子供を育てるときのマシュマロ・テストと同じだ。
小さい子供に今マシュマロを1つ受け取るか、15分後にマシュマロを2つ受け取るかを選ばせる。賢明な子は15分我慢して2つのマシュマロを手に入れる。
だが現代の多くの社会では人々は今それがほしいのだ。
大半の日本人は賢明な子供以下ということだろう。あるいは人間とはそういうものではないか。賢明な子供ほどの頭脳のある大人などほとんど見たことがないではないか。
お金をばら撒けばインフレになるという子供でも分かるような理屈さえ分からず、インフレになった今でさえエネルギー購入支援や全国旅行支援というインフレ政策を行う政治家をのさばらせ、どれだけ年金を減らされ税金と社会保険が増えようとも政治家という略奪者を自分で当選させる馬鹿ばかりなのだから、日本の将来はどうしようもなく明るいだろう。
良かったではないか。自分の欲しかったものを手に入れた彼らの将来を祝福したい。
利上げで預金者はインフレから 資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36175#more-36175
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11:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/05/15 (Mon) 06:35:35
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ドラッケンミラー氏: リーマンショックより酷くなる可能性は否定できない
2023年5月14日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36808
引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用したことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏のSohn Conferenceにおけるインタビューである。
ドラッケンミラー氏のインフレ率の推移予想
前回の記事ではドラッケンミラー氏がハードランディングまであと半年ほどだと予想している部分を取り上げた。
ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802
だが今回はこれまでの経済危機とは違い、インフレが起こっているという問題がある。
ハードランディングが起こった時、インフレ率は下がっているのか? 下がっていれば、普通の不況だ。下がっていなければ、不景気と物価高が両方来るスタグフレーションになる。
ドラッケンミラー氏は今後のインフレ率の推移について次のように語っている。
難しいのはマネーサプライをどう見るかだ。
エド・ハイマン氏はマネーサプライが史上最速の速さで縮小していることを指摘した。
だが話はそれほど簡単じゃない。マネーサプライは数年前と比べると30%後半から40%ほど拡大している。だから積み上がっているお金の量はそれでも極めて多いということだ。
マネーサプライとは市中に存在している現金や預金の総額である。コロナ後に現金給付によってばら撒かれた多額のお金は今どうなっているのか? 実質マネーサプライのグラフは次のようになっている。
Fed(連邦準備制度)の金融引き締めによってマネーサプライは急減している。だが絶対水準で言えばそれでもコロナ前よりもかなり多いのである。
そもそもコロナ後にマネーサプライが酷いことになったのがグラフから分かるだろう。それを押し上げたのは現金給付である。これでインフレにならないと言った馬鹿は今どうしているのか。ジェフリー・ガンドラック氏はそれくらいは12才児でも分かると述べていた。
ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
ドラッケンミラー氏のインフレ率の推移予想
マネーサプライが急減しながらもまだ積み上がっていることは、恐らくアメリカに景気後退がまだ来ていないこと、特に消費がいまだに強いことの原因だろう。
以下の記事でGDPの内訳を分析しているが、それがなかったらアメリカ経済は既に景気後退しているはずだ。
ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
しかしそれでもマネーサプライは急減速している。
ドラッケンミラー氏は年末年始頃にアメリカ経済はハードランディングになると予想した。
ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36802
ではその頃にはインフレ率はどうなっているのか? 彼は以上のことをすべて考慮に入れた上で次のように予想する。
インフレ率は今後6ヶ月から9ヶ月で恐らく3%から3.5%辺りまで下がるだろう。
現在アメリカのインフレ率は5.0%である。
サプライズなしの4月米国インフレ率発表でドル安に動いた理由
インフレ率の長期見通し
だが問題はその後である。ハードランディングに陥った時に中央銀行がどうするのかによってその後のシナリオが変わってくる。
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
そこからが難しい。Fedがどうするか予想しなければならないからだ。
Fedが緩和に逆戻りすればインフレ第2波になり、引き締めを続ければ経済恐慌になる。
前回の記事でも言っていたが、ドラッケンミラー氏は基本的にインフレ第2波をメインシナリオとしている。理由は歴史上緩和をやり過ぎて問題を引き起こしてきたFedの経歴である。彼は次のように述べる。
わたしは2000年や2021年から2022年前半までにおけるFedの対応に本当に驚いている。そして来年が大統領選挙の年であることを考慮すべきだ。
ドラッケンミラー氏はバイデン政権がパウエル議長に圧力を掛けることを想定しているのだろうか。
また、ドラッケンミラー氏は1970年代におけるFedの議長、ポール・ボルカー氏の前任者で緩和的な政策でインフレを悪化させたアーサー・バーンズ氏を持ち出して次のように述べている。
インフレ率が3%か3.5%まで下がった時に彼らがアーサー・バーンズ氏のように対応するならば、インフレが下がった時に即座に反応せず龍を殺しきらないならば、今後数年はインフレーションか、恐らくはスタグフレーションになるということを強調したい。
だが一方で、次のように現在の世界経済には巨大なデフレ圧力も存在することにも言及している。
あるいは現在の巨大な資産バブルが弾けた場合、もう経済はどうにもならないかもしれない。
結局はFedが物価高騰か経済恐慌かどちらを選ぶのかという問題に帰着する。だからドラッケンミラー氏は笑いながら次のように言っている。
先週社内で会議があったのだが、そこでわたしはこう言った。インフレ率は今後3年8%で推移するとも言えるし、デフレになるとも言える。
結論
だがインフレ第2波でも経済恐慌でも経済は酷いことになるだろう。それがインフレというパンドラの箱を開けてしまった紙幣ばら撒きの末路である。
世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
ポールソン氏: 量的緩和がインフレを引き起こした
それはどれくらい酷い結果になるのか。ドラッケンミラー氏は次のように続けている。
これは2007年や2008年とは違うということが繰り返し言われている。
だがそう言っている人々が2007年に危機を予想したという話を聞いたことがない。
わたしは2008年より悪い状況を予想しているわけではない。明日のニュースでわたしがそう言ったという見出しを付けてほしくはない。
だがこれだけの資産バブルの後であること、ゼロ金利のあとに史上もっとも急激な金利の上昇があったことを考えると、本当に酷いことが起きる可能性を除外するのは本当にナイーブだと思う。
一体どうなるだろうか。だがドラッケンミラー氏を含め、あと1年以内だと言い始めた専門家が多いのである。
世界最大の ヘッジファンド: 経済クラッシュで量的緩和再開まであと1年以内
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36808
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12:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/05/16 (Tue) 16:35:27
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米国経済のハードランディングの衝撃はリーマンショックの2倍以上になる
2023年5月15日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36818
インフレ抑制のためのFed(連邦準備制度)の金融引き締めが銀行危機を引き起こす中、多くの専門家がアメリカ経済の景気後退を予想している。
ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
だがその規模はどの程度になるのか? 今回の記事ではそれを考えてみたい。
マネーサプライの増減
今回の考察のきっかけとなったのは、前回の記事でスタンレー・ドラッケンミラー氏がマネーサプライの動きに言及していたことである。
ドラッケンミラー氏: リーマンショックより酷くなる可能性は否定できない
マネーサプライとは市中に存在する現金や預金の総量である。アメリカではコロナ以後、3回の現金給付が行われたことでマネーサプライが増大した。マネーサプライのグラフは次のようになっている。
コロナ第1波のロックダウンの後、世界経済が数字上急回復したのは現金給付が原因である。アメリカのGDPはロックダウンで一度沈んだものの急回復し、あたかも何もなかったかのようにコロナ前のトレンドに戻っている。以下は実質GDPのチャートである。
しかし一方で現金給付による可処分所得の急激な増加はインフレをもたらした。アメリカの可処分所得とインフレ率を並べると次のようになる。
3回の現金給付が可処分所得の急増をもたらし、それが2021年にインフレ率を持ち上げたことが分かる。(ウクライナ情勢以後インフレ率はほとんど上がっていない。)
ドラッケンミラー氏: プーチン氏が引き起こしたわけではないインフレの本当の理由
マネーサプライの回収
このように現金給付とマネーサプライの増加がコロナ後のアメリカ経済の動向を決定したことは明らかだ。一方で、アメリカは物価高騰に陥ったことでばら撒いた紙幣を回収せざるを得なくなっている。
それが現在の金融引き締めである。その結果、コロナ後に急増したマネーサプライは急減している。
ドラッケンミラー氏は直近1年ではマネーサプライは急減しているが、絶対的な水準としてはコロナ前を大きく上回っていることを指摘していた。
ドラッケンミラー氏: リーマンショックより酷くなる可能性は否定できない
恐らくはそれがアメリカのGDPが減速しながらもまだプラス成長を保っている理由である。積み上がったマネーサプライによる消費がGDPを支えている。
ますます弱ってゆくアメリカGDP、2023年第1四半期は予想以上の減速
だがマネーサプライは急速に減少している。ここまでの考察が正しければ、マネーサプライがこのまま減少を続け、コロナ前の水準まで戻るならば、今アメリカ経済を辛うじて支えているものがなくなることにならないだろうか?
マネーサプライの今後
ではマネーサプライは具体的にどのような速度で減少しているのだろうか。マネーサプライの変化率を前月比年率(直近1ヶ月の変化が1年続けばどうなるかを示したもの)で見ると次のようになる。
マネーサプライは最新3月の数字で年率-14.3%の速度で減少しており、しかも減少ペースは加速しているように見える。
年率-14.3%ということは、1年で14.3%減少するということである。減少ペースは加速しているが、仮に今と同じペースでマネーサプライが減少を続けるとどうなるだろうか?
マネーサプライは5.9兆ドル付近まで下落し、丁度コロナ前の水準まで逆戻りすることになる。
実際にはマネーサプライの減少は加速しているから、コロナ後にばら撒かれた紙幣がすべて回収されるまでに恐らく1年かからないだろう。ハードランディングまで1年以内と予想しているドラッケンミラー氏やレイ・ダリオ氏の主張を裏付ける計算である。
ドラッケンミラー氏: あと半年でハードランディング、米国経済に死体が積み上がる
世界最大のヘッジファンド: 経済クラッシュで量的緩和再開まであと1年以内
マネーサプライとGDP
さて、ここで考えてほしいことがある。ここまで考えてきたように、2020年にロックダウンで数ヶ月も経済をほぼ完全に停止したにもかかわらず、GDPが何事もなかったかのようにコロナ前のトレンドに戻っているのは明らかに現金給付とその結果のマネーサプライの急増が原因である。
それが上で見たマネーサプライの急増がGDPにもたらした影響である。
しかし今、コロナ後に行われたマネーサプライの急増とちょうど同じ規模のマネーサプライ急減が起きようとしている。そして投資家はその影響を推定しなければならない。
それはそれほど難しくないのではないか? 大まかな推計ではあるが、コロナ後に起こったマネーサプライ急増と同じ規模のマネーサプライ急減の経済への悪影響の規模は、大雑把に言ってコロナ後のマネーサプライ急増の好影響とそれほど変わらないはずだ。
つまり、同じ規模のマネーサプライ急増がコロナ後にGDPを救済してあたかも何も起きなかったかのように元のトレンドに戻したとすれば、同じ規模のマネーサプライ減少はその救済をなかったことにするはずである。
コロナ危機の本来の規模
つまり現金給付によるコロナ後のGDP救済がなかったことになる。ロックダウンによるコロナ危機の本来の姿が2023年と2024年に現れるわけである。緩和政策による経済の救済とは、実際には借金による経済危機の延期であるから、当然のことである。
ということで、ドラッケンミラー氏の予想しているハードランディングの規模がどれくらいになるかということは、紙幣印刷による問題の先延ばしがなければコロナ危機がどのようなものになっていたのかを基準に考えられるということになる。
そこでコロナ危機がどのようなものだったかを振り返るためにアメリカの実質GDP成長率の長期チャートを見てみると、コロナ危機が2008年のリーマンショックよりもその他のどの経済危機よりも規模が大きかったことが分かる。
実際、コロナショックの景気後退のピークは-8.4%で、リーマンショック時のピークの-4.0%の倍以上である。コロナショックではその後現金給付により急回復しているが、当時ばら撒かれた紙幣がすべて回収されるならば、同じ規模の経済危機がもう一度来ることになるだろう。
結論
ということで、今後待ち受けているアメリカ経済のハードランディングの規模を大雑把にだが推計してみた。
ちなみにこの大雑把な推計には他に考えなければならないことが2つある。1つは、中央銀行が紙幣印刷によって経済危機をもう一度延期する可能性である。だがドラッケンミラー氏が述べている通り、その場合インフレ第2波は避けられない。
ドラッケンミラー氏: リーマンショックより酷くなる可能性は否定できない
そしてもう1つは、お金をまずばら撒いて同じ量のお金を後で回収した場合、厳密に言えばその影響は差し引きゼロではなくマイナスである。
何故ならば、ばら撒き政策は実体経済に歪みを引き起こすからである。例えば全国旅行支援で一時的に急増した需要にホテルが従業員を追加雇用して対応するならば、一時的な急増が終わった後にはホテルは過剰な数の従業員を抱えることになる。以下の記事で説明している。
日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
ばら撒きとは長期的な経済の効率性を犠牲にして経済危機を先延ばしにすることなのである。日銀総裁の植田氏も、インフレ率はゼロから上に離れても下に離れても非効率性は増大すると述べていた。彼はインフレ政策の弊害を知っている。
踏み絵のように緩和支持を言わされる日銀の植田新総裁と新副総裁たち
そもそもこのことについては20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が何十年も前に説明していたではないか。彼は完全雇用を目指すインフレ政策について著書『貨幣論集』において次のように述べていた。
ハイエク : インフレ主義は非科学的迷信
完全雇用政策の支柱となっている理論はすべてここ数年の経験によって完全に否定されるに至っている。経済学者はその理論の致命的な知的欠陥を発見したが、それはそもそも以前から分かりきっていた。
しかしこの理論は今後も多くの問題を生むだろう。何故ならば、インフレ理論の他に何も学ばなかった失われた世代の経済学者が残されたからである。
このハイエク氏の記事を読めば緩和政策が何故非効率を引き起こすのかが分かる。
だがインフレ政策を実行した政治家にもそれを支持した有権者にもハイエク氏の著書から学ぶような知性はなかった。残念なことである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36818
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13:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/05/18 (Thu) 07:09:45
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サマーズ氏: 日銀の植田総裁はイールドカーブコントロールからの離脱プロセスを開始した
2023年5月3日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36397
アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、就任後初めての金融政策会合を通過した日銀の植田総裁について語っている。
植田総裁の初登板
インフレ政策でインフレを引き起こした挙げ句、「インフレ目標を達成できなかったことが残念」と言い残して舞台を去った黒田なにがしに代わり、4月にはマクロ経済学者である植田氏が日銀総裁に就任した。以下の記事には就任前の彼の金融政策に関する主張が纏めてある。
日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
植田氏には黒田氏が円安を通して引き起こしたインフレの後始末が求められている。本当は黒田氏の時代に副総裁を務めた雨宮氏らが新総裁候補の本命だったのだが、誰がやっても惨事にしかならないインフレの後始末をすることを雨宮氏らが嫌がったために植田氏が急遽浮上したと言われている。
4月28日には植田総裁になってから初めての金融政策決定会合が行われた。植田氏の初登板についてサマーズ氏は次のように語っている。
彼は用心深く抜け目のない人物だと思う。為替レートであれ金利であれ、レートの固定とはチェックインは簡単だがチェックアウトの難しいホテルだ。
予想通りだが、初回の決定会合では大した発表はなかった。日本のインフレ率が日本政府による意図的な粉飾を除けば4%を超えて推移する中、黒田氏の始めた大規模な紙幣印刷政策を維持し、緩和政策の有効性と副作用を検証すると発表した。
日本政府の詐欺的な物価指数の計算方法がインフレを悪化させる
緩和維持をどう見るか
初回の緩和維持をどう見るかである。そもそも日銀は何故緩和政策の撤回に追い込まれているのか。
先ず第一にインフレと円安である。2022年には日銀の量的緩和によって大幅な円安が進行した。2022年はドル高の年でもあったので分かりにくいが、2022年の日本円はドルだけではなく東南アジアなど新興国の通貨に対しても下落するなど世界最弱通貨の1つとなった。
その原因は日銀が長期金利に上限を設定するイールドカーブコントロールである。2022年には金利がイールドカーブコントロールの上限に達し、日銀が紙幣を印刷して国債を買い支え、金利を抑えなければならなくなった途端に円安が進んでいる。2022年春のことである。以下はドル円のチャートである。
円安が進むと輸入物価が上昇する。事実、原油価格はドル建てではもうかなり下がっているのに、日本のガソリン価格がまだ高いのは円安のせい(つまりは日銀のせい)である。ドル建ての原油価格は次のように推移している。
インフレの何がまずいのか
この状況の何がまずいのか。日銀がこのまま緩和を続けると円安を通してインフレが悪化し続ける。だから円安とインフレを止めたければ、日銀は国債の買い支えを止める必要がある。筆者やスタンレー・ドラッケンミラー氏が日本国債の下落を見込んで空売りを仕掛けている理由はそれである。
ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り
勿論日銀には永遠に紙幣を刷り続けて緩和を続けるという選択肢もある。だがそうなれば物価は青天井に上がり、日本人は自分の預金で何も買えない状態に陥るだろう。
そもそも日銀はそれを目指しているという話もある。結局はインフレと通貨暴落だけが日本政府の莫大な政府債務をチャラにする方法だからである。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
それはドイツが戦後の賠償金を完済した方法である。政府の借金はチャラになるが、同時に国民の預金は紙くずになる。
日本政府にとっては、自分で積み上げた債務の責任を何一つ取ることなく国民が勝手に犠牲になってくれるのだから、それ以上の方法はないだろう。だが日本国民がそういう目的の緩和政策を支持した理由はよく分からない。彼らは馬鹿なのだろう。少なくともファンドマネージャーの目からはそう見える。彼らは自分が何を支持したのかさえ分かっていない。
世界最大のヘッジファンド: 日本は金利高騰か通貨暴落かを選ぶことになる
植田総裁の優先順位
だが今の状況、植田総裁にとっては有利な点が1つある。インフレ抑制で先に利上げを行なっていたアメリカでは景気が減速し始めていることである。
サマーズ氏: スタグフレーションの危険あり、高確率で景気後退へ
それに連動して日本の金利高もやや収まっている。少なくとも日銀の設定した長期金利上限である0.5%を継続的に叩くような状況には陥っていない。
日銀は金利が上限に達しない限り国債を買い支えなくて良いので、植田氏が初回会合で金利上限を上げなかったのは、市場が催促しない限り自分から金利上限を上げる必要はないと考えているからだろう。
その判断自体は理にかなっている。植田氏は腐ってもマクロ経済学者である。単なるノーパンしゃぶしゃぶの省出身の黒田氏とは違うのである。彼は経済学など何も知らなかった。それでインフレ政策でインフレを引き起こし、そのまま逃げて行った。
日銀新総裁の植田和男東大名誉教授は平凡なマクロ経済学者
実際、筆者が日本国債の空売りを始めた時から想定していたように、アメリカ経済が減速すれば日本経済にも一時的なデフレ圧力になるシナリオは存在する。筆者はアメリカ経済のハードランディングは不可避だと考えているので、それはメインシナリオですらある。
世界最大のヘッジファンド: 銀行危機は世界経済全体に波及して物価高騰か倒産危機で終わる
植田氏もそれを想定しているのだろう。今引き締めをすれば海外の減速で経済が落ち込みすぎる可能性があると指摘している。
日本のインフレ見通し
植田日銀はこのまま緩和を続けていくのか。ドル円の動きなどを見ても、市場のコンセンサスはそのようになっているように見える。
だが世界最高のマクロ経済学者であるサマーズ氏はまったく別のことを言っている。彼は次のように述べている。
日銀の緩和は目的よりも長生きし過ぎたと言うべきだろう。緩和政策の検証を開始したことによって、植田氏は金利の固定からの離脱プロセスを開始したのだとわたしは考えている。
日銀がこのまま金利を押さえつけ続けられる可能性など少しも考えていないことが彼のコメントから分かる。
既に利上げでインフレに対処しているアメリカやヨーロッパの人間から見れば、遅かれ早かれ日銀が金利を上げなければならない(国債の買い支えを止めなければならない)のは自明なのである。そうでなければ物価は青天井に高騰してゆく。
私見では、アメリカ発の世界的な不況があったとしても、日本の経済成長率には影響する一方で、海外要因ではインフレ率はそれほど下がらないだろう。日本のインフレは自民党のおかげで既に国内要因へと飛び火しているからである。
日本政府の全国旅行支援で宿泊予約殺到してホテル代値上がり
アメリカやヨーロッパは、大幅な利上げをしてもインフレ率はなかなか下がらないということを既に経験している。日本人だけがインフレの状況で紙幣印刷や全国旅行支援などのインフレ政策を続ける狂気が狂気であると気づいていない。馬鹿は本当に痛い目を見るまで状況を理解しない。
結論
だから、筆者は植田氏の理屈に多少の理があることを認めた一方で、植田氏が2021年にインフレ加速の事実を希望的観測から無視していたFed(連邦準備制度)のパウエル議長のように見えるのである。
ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ (2021/7/18)
インフレは放っておけば加速してゆく。金利が同じでも、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利が、インフレ率の上昇で自然に下がってゆくからである。
このままでは一部バブルになっている住宅価格も更に上がってゆくだろう。筆者は2021年にアメリカ経済に対して同じことを言ったが、住宅価格が例えば年に10%上がるような状況で金利がゼロだとしたら、誰もがコストゼロの住宅ローンを組んで値上がりを続ける資産を買うだろう。
そして誰もが家(や他のもの)を借りた資金で買うようになり、インフレ率はますます上がり、物価の上昇率と金利の乖離は更に進んでゆく。
このように、金利が変わらない状況ではインフレは自己強化的にますます悪化してゆく。植田氏はそれを見逃している。
サマーズ氏は日銀が緩和を続けるシナリオは有り得ないと考えている。著名投資家たちも去年の時点で同じことを言っていた。特にガンドラック氏は長年インフレを目指した日銀のインフレ政策について傑作なジョークを述べている。
ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る
日銀は賢明だ。 80階の窓から飛び降りて、70階分落下したところで「今のところは良い状態だ」と言っているようなものだ。
だからあと10階分はまだ落ちられるかもしれない。だがもうすぐ地面である。日本の物価高騰がどうしようもなくなるまで、もうそれほど時間はないだろう。
マイナード氏: 日銀の持続不可能な緩和政策の破綻は他国の教訓的前例になる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/36397
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14:保守や右翼には馬鹿しかいない
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2023/05/25 (Thu) 10:46:38
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世界最大のヘッジファンド: アメリカはデフォルトするのか?
2023年5月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37042
世界最大のヘッジファンド、Bridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、自身のブログでアメリカの債務上限問題について語っているので紹介したい。
何度でも浮上する債務上限問題
アメリカではまた債務上限が問題になっている。アメリカには政府債務の上限が設定されており、だが債務は増え続けているので、上限が来ると議会が上限の引き上げで合意をするということが何度も続けられている。
与野党の合意が必要となることが多いので、その度に野党は与党に何か注文をするのが恒例なのである。だが、今回は野党共和党に影響力を持つ前大統領のドナルド・トランプ氏を筆頭に、共和党の要求をすべて通さなければデフォルトも辞さないとする勢力があるため、本当にアメリカが債務を増やせずに債務不履行になるのではないかと巷では騒がれている。
これに対して、ダリオ氏はあまりにも冷静な意見を次のように述べている。
一番可能性が高いのは、民主党と共和党がデフォルトを許さず(あるいはデフォルトしても長くは続かず)、しかも重要な議題で大した合意を形成しないというものだ。彼らはむしろ実質よりも見た目のほうが良いような合意(例えば債務を将来減らすと約束してその時間が来れば実行しないとか)を何とかして作り上げるだろう。
政治家の底を見透かしたかのような意見である。
実際、債務上限の問題は何度も繰り返しこのようにして解決されてきた。アメリカのデフォルトの可能性という大きなテーマに対して金融市場がそれほど大騒ぎしていないのもそれが理由である。
実質的に存在しない債務上限
だからこの債務上限の問題の本当の問題は別にあるように感じる。債務上限が債務上限になっていないことである。
ダリオ氏は次のように述べている。
議会と歴代大統領が行ってきたような(そして今回も高確率でそうなるような)債務上限の引き上げは、実際には債務に上限などないことを意味している。そしてそれは最終的には悲惨な金融崩壊に繋がる。
何故か? 先進国であっても、基軸通貨国であっても、借金はいずれ払わなければならないからある。日本の人々が実際に起こっている増税に苦しみながら「政府の借金は国民の借金ではないから大丈夫」と言っているのは革新的な発想の転換である。彼らは本当に良く訓練された奴隷だと思う。
経済の規模がある程度大きくなれば、債務を多少増やしたところで即座に国債市場や為替市場に影響が出ることはない。基軸通貨国であれば、どれだけ無茶をしても世界中の人々がその通貨を買ってくれるので、例えば世界的なインフレを引き起こすほどの現金給付を行ってもドルが即座に暴落することはなかった。
世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
だがそれでも国債や通貨の下落という副作用(これも「副反応」と呼んでみようか)はなくなったのではなく、延期されただけである。これについてはスタンレー・ドラッケンミラー氏が以下の記事で説明している。
ドラッケンミラー氏: アメリカは基軸通貨ドルのお陰で致命傷を食らうまで緩和を続けられる
そもそも日本にはその副作用が来はじめているが、日本人は呑気に構えているようだ。しかしはっきり言っておくが、2023年は莫大な政府債務を抱えた日本経済の終わりの始まりである。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は次のように言っていた。
ガンドラック氏、日銀の量的緩和を皮肉る
日銀は賢明だ。80階の窓から飛び降りて、70階分落下したところで「今のところは良い状態だ」と言っているようなものだ。
本当の債務上限
だが債務上限が本当に債務上限として機能してしまえばどうなるかについて、ダリオ氏は次のように書いている。
逆に債務上限を引き上げなければ、アメリカはデフォルトし、生活必需品の減少がそれに耐えられない人々に起き、金融市場の大混乱と社会的な大惨事が起こるだろう。
だがそうだろうか。アメリカのデフォルトと言えば大事件に聞こえる。だがそれは、このまま債務を増やし続け、最終的には債務が紙幣印刷以外で払えなくなり、今の日本のように(そしてこれから日本でもっと酷くなるように)増税と通貨安とインフレによって無尽蔵に膨らんだ債務を実質的に国民が支払うようになることよりも惨事なのだろうか?
筆者はむしろ債務上限が債務上限になってしまえば良いのではないかと思う。リーマンショック以来、アベノミクス以来増え続けた、人々が買わないような商品しか作らず利益を上げられないまま紙幣印刷によって延命されているゾンビ企業を一掃する必要がある。スタンレー・ドラッケンミラー氏が言うように、日本経済もアメリカ経済もそのようにして復活する必要がある。
ドラッケンミラー氏: ハードランディングで米国経済は復活する
今大惨事を受け入れなければ、これまで数十年のばら撒き政策で得をした高齢者が居なくなってから将来の世代がより悲惨な大惨事を受け入れる羽目になるだけである。有権者は本当にそれを望むのだろうか。
ドラッケンミラー氏、 高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37042
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15:777
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2023/06/24 (Sat) 23:15:15
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世界最大のヘッジファンド: アメリカの債務危機は終わっていない
2023年6月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37702
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がCNBCのインタビューで債務上限問題が解消された後の問題について語っている。
個人的な考えでは、この話は重要である。
債務上限問題の解決
1ヶ月ほど前に市場を騒がせていたアメリカの債務上限の問題は解決された。アメリカでは法律で債務の量に上限が決まっており、その上限が迫っていたが、与党民主党と野党共和党がこの上限を2025年1月1日まで棚上げにすることで合意した。
これでアメリカは再び借金が出来るようになった。これで問題が解決したかと言えば、そうでもない。何故ならば、両党の合意の結果、これから米国政府は年末までに1.3兆ドルの国債を発行することになるからだ。
これはかなり莫大な金額である。アメリカのGDPは26兆ドルだから、GDPの5%に相当する。
どの国でもそうだが、政治家は予算を増やしたがる。政治家の仕事とは国民から税金を徴収して票田にばら撒くことであり、予算が大きければ大きく票田にばら撒くことが出来るからである。
ちなみに票田どころか外国にばら撒いている首相もある国には居るようだ。保守派の人々は何故彼を売国奴と呼ばないのだろう。保守とは何だろう。
さて、政治家が国債を好きなだけ発行して好きなだけばら撒くことは永遠に続くのだろうか? ダリオ氏は政府が借金で支出を増やし続けることについて、以下のように述べている。
これを終わらせるものが2つある。1つは債券保有者に対する支払いだ。債券保有者は債券保有の対価を必要としている。彼らは元本に金利を乗せたものを要求する。
債務の支払いは政府の支出を圧迫している。
これは債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も指摘していた問題だ。
ガンドラック氏: アメリカ経済に大幅な増税が来る
米国債の利払いは急増している。米国政府の利払いの推移をGDP比で見ると次のようになっている。
米国債の利払いが急増しているのは、インフレ対策でアメリカが金利を上げたからだ。
これを見れば日本政府が金利を上げたくない理由が分かるだろう。自分が票田にばら撒くお金が利払いに消えるくらいならば、国民がインフレで苦しむ方がましだからである。当たり前ではないか。
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
だがアメリカでは金利を上げたので、利払いが政府支出を圧迫している。利払いが増えれば政治家が好きに金を使えなくなる。
米国債は買われなくなる?
そして増加し続ける債務には別の問題もある。ダリオ氏はこう続けている。
もう1つは債券の需給だ。言い換えれば、売る必要のある債券を買いたくないと人々が言い始めれば、より大きな危機に発展する。
しかし米国債が買われなくなるなどということがあるのだろうか? ダリオ氏はこう続けている。
これからアメリカは大量の国債を発行することになるが、多くの国債保有者は既に米国債を大量に保有している。
事実、現在の銀行などの主な問題は、下落している米国債を持ちすぎていることだ。シリコンバレー銀行や銀行システム全体の損失のことだ。
アメリカでは利上げによって金利が上がったが、債券にとって金利上昇は価格下落を意味する。だから世界に31兆ドル存在する米国債の保有者は損失を負ったということになる。
その1つがシリコンバレー銀行だった。シリコンバレー銀行の破綻の一因は、保有していた米国債の価格が下落したことである。
シリコンバレー銀行の決算書から破綻の理由を解説する
そして31兆ドル存在する米国債を保有して損失を食らっている人は世界にいくらでもいる。
ダリオ氏はこう続ける。
中央銀行さえも例外ではないが、銀行の問題は主に保有している債券価格が下落して損失を出し、しかも調達したお金に支払う金利が高過ぎることによる。
そのような状況で1.3兆ドルの国債が新たに発行される。国債の保有者はその米国債をすべて買い切ることが出来るのだろうか? そもそも買いたがるのだろうか? 買い切れなければ国債の価格が下がることになるというのがダリオ氏の議論なのだろう。
彼はこう続けている。
この状況は、今後1、2年でかなりリスキーだ。
そしてその問題がなくても債務の支払いの問題がある。
国債発行とマネーサプライ
だがダリオ氏の議論には個人的に異論がある。
考えてほしいのだが、発行された国債で政府が支出を行なったとき、政府から支払いを受けた業者は新たにお金を手にするわけだが、その業者はそのお金を銀行口座に入れるので、銀行口座に入ったお金で銀行が国債を買うことになる。
だから国債を発行しても米国債の危機にはならない。だが筆者が気にしているのは、この国債発行がマネーサプライ(市中に存在する現金と預金の総量)に及ぼす影響である。
国債を発行しても米国債の危機に繋がらないのは、上述のように国債の発行と同時に貨幣の量も増える場合である。だから、この国債発行でマネーサプライがどうなるのかを考える必要がある。
この1.3兆ドルの資金はマネーサプライにどう影響するか? マネーサプライは下落しており、現在6.8兆ドル付近だが、1.3兆ドルの国債発行がマネーサプライの下落トレンドにどう作用するかは投資家にとって非常に重要な問題である。
それはインフレ問題の行き先を決める。ガンドラック氏の言うようにこのままインフレ率は下落コースなのだろうか? それが投資家にとって恐らく今一番重要な問いである。
ガンドラック氏: アメリカはデフレになりコモディティ価格は下落する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/37702
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16:777
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2023/08/05 (Sat) 17:18:38
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世界最大のヘッジファンド、量的緩和と現金給付に続く新たな金融緩和を語る
2023年8月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで、世界的な物価高騰をもたらした現金給付に続く新たな金融緩和の方法について語っている。
過去40年の金融緩和
アメリカでは1970年代の物価高騰が終わって以来、金融市場の歴史は金融緩和の歴史である。
1970年代の物価高騰を止めるために20%以上に上がったアメリカの政策金利は、その後30年近くかけて低下してきた。以下はアメリカの政策金利のチャートである。
中央銀行は経済が弱るたびに利下げを行い、金融緩和によって実体経済を支えてきた。
だがその金利は2008年のリーマンショックでついにゼロに到達する。中央銀行はこれ以上金利を下げられなくなったが、それでも緩和をする方法が欲しかったので、紙幣を印刷して金融市場から国債などの証券を買い入れる量的緩和という方法に頼ることになった。
政策金利を操作する方法では国債の金利を直接下げることはできないが、紙幣印刷で中央銀行が有価証券を買い上げてしまえば、資産価格を人工的に押し上げ、国債の金利を押し下げることで更なる緩和を行うことができる。
だがこの方法では実体経済をコロナ危機から救うことは出来なかった。日本で実際にそうなっているように、資産価格を上げても得をするのは資産を持っている人々だけだという当たり前の事実に、アメリカも直面せざるを得なくなった。
そこで考案されたのが、国民の銀行口座に直接現金を注ぎ込む方法である。現金給付と呼ばれるこの方法は、家計の財政状況を見た目上改善した一方で、世界的な物価高騰を引き起こした。
世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
このように緩和の歴史を振り返ってみると、明らかに言えることは、緩和の副作用が強くなっていることである。利下げの副作用は、2000年にドットコムバブルを引き起こしたり、2008年のリーマンショックにつながる住宅バブルを引き起こしたりすることだった。
それだけも酷かったかもしれないが、利下げが量的緩和になり、量的緩和が現金給付になった今、緩和の副作用は雪だるま式に膨らみ、インフレという形で全国民に降り掛かっている。
だが緩和の極端化というこのトレンドは、もはや誰にも止められないだろう。人間にそれを止める頭があれば、そもそもインフレは起きていない。
ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから投資家は現金給付に続く新たな緩和方法が何かということを、そろそろ考え始める必要がある。
中央銀行はまず利下げによって金利を低下させ、経済における最大の債務者、つまり政府を救済し続けてきた。その次には量的緩和によって、金融危機で資産を失った資産家を救済した。コロナ禍におけるはロックダウンで収入を失った家計を救済した。
もう救済するものはあと1つしか残っていない。中央銀行による中央銀行の救済である。
中央銀行が自分自身を救済する
政府が国債を中央銀行に押し付け、中央銀行はシリコンバレー銀行などの破綻処理にあたって価格が下落していた債券を額面で引き受けているので、もはや中央銀行はさながらゴミ箱のような様相である。
政府はこのまま中央銀行をゴミ箱のように扱い続けることができるのか? 現代人は誰もその実験を経験したことはないが、歴史上には同じような事例は存在する。こうした疑問を尋ねるのに最良の人物は、やはりダリオ氏だろう。
ダリオ氏は次のように述べている。
長期的には、歴史を振り返ってこれから何が起こるかを描いてみると、政府の財政赤字が増大するのは実質的に確実で、利払いや他の予算の費用が増加している以上、増加の加速度は上がる可能性が高い。
アメリカのGDP比財政赤字は次のように推移している。
短期的には上下しているが、長期的には赤字は増え続けている。そしてこれが少なくなる見通しのないことは、誰もが同意するところだろう。
緩和も財政も悪化し続ける。だが緩和が利下げから現金給付まで指数関数的に進化してインフレという限界にぶつかったように、政府の財政も同じように指数関数的に進化して人々が思っているよりも早く限界にぶつかるだろう。
このまま財政赤字が加速度的に増加すればどうなるか。ダリオ氏は次のように述べている。
そしてそうなれば、政府はより多くの国債を発行しなければならなくなり、自己強化的な債務スパイラルに陥ることになるだろう。
金融市場がそれ以上増やさないよう迫る一方で、中央銀行は紙幣印刷によってもっと多くの国債を買わなければならなくなる。そうしなければ損失が拡大し自分のバランスシートが毀損されることになる。
「金融市場がそれ以上増やさないように迫る」というのは、国債の発行増加を市場の投資需要が支えきれなくなり、国債価格が暴落してゆく状況だろう。
そうした要因での米国債の価格下落は、今の市場参加者にはほとんど想像もできないはずだ。だが少し前の市場参加者には、インフレも想像できなかったことを思い出したい。
ダリオ氏の言う通り、国債の発行が指数関数的に増加してゆくならば、 量的緩和なしには国債価格を維持できない状況はいずれ必ず訪れる。そして「指数関数的」な増加によってその水準に到達する日はそれほど遠くないということは、少しの数学的素養のある人ならば分かるはずだ。
ダリオ氏によれば、そうした問題の典型的な解決策は、政府が中央銀行の損失を補填することだという。だが政府は中央銀行の紙幣印刷によって資金供給されているので、中央銀行は結局は自分に資金供給することになる。この空中でジャンプして空に浮き続けるような末期的状況の典型的な帰結は、金利高騰か通貨暴落かインフレ、あるいはその組み合わせだろう。
結論
実際、イギリスはその状況に到達しかけた。1つ前のトラス政権がインフレの状況下で大規模な財政緩和を行おうとしたとき、金融市場では英国債とポンドが両方急落した。
サマーズ氏: 景気後退で財政支出する国はイギリスの二の舞になる
結局はトラス氏が辞任に追い込まれることによって緩和は撤回されたが、他の先進国はそうした瀬戸際にある。日本では円安とその結果としてのインフレが大きな問題になっている(が、自民党支持者はストックホルム症候群によって緩和の引き起こした円安とインフレの関連を頭から消し去っている。)
利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
アメリカは、基軸通貨ドルの恩恵によって今のところ日本やイギリスのような羽目にならないで済んでいる。だがスタンレー・ドラッケンミラー氏は、まさにそれが原因でアメリカはより大きな危機に陥ると予想している。
ドラッケンミラー氏: アメリカは基軸通貨ドルのお陰で致命傷を食らうまで緩和を続けられる
短期的な延命のために長期的な危機が許容される。いつものことである。しかし若者たちはそれで良いのだろうか。
ドラッケンミラー氏、高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616
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17:777
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2023/12/05 (Tue) 13:57:07
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レイ・ダリオ氏: 国債の暴落トレンドが始まりつつある
2023年12月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がFortune Magazineのインタビューで国債と金利の見通しについて語っている。
リーマンショック後の金融緩和
ダリオ氏はコロナ前までの金融政策を振り返っている。アメリカではリーマンショック時にゼロ金利と量的緩和が始まった。ダリオ氏は次のように述べている。
金融市場はこれまで金利がゼロになるような、資金の溢れている馬鹿げた状況になっていた。
この流れのなかでGDP比の負債は増加した。
政府が中央銀行に命じて金利をゼロにしたかったのは、国の借金を増やして支出を増やしたかったからだ。
政治家の商売は税金を集めてそれを票田に流し込むことで成り立っている。他人が正当に稼いだ金を無許可で徴収して自分の裁量で選んだ誰かにばら撒くことの本質はそこにしかない。
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから政治家は国の借金を増やすことを好んだ。国の借金は政治家が返すわけではないからである。そしてそのためにはゼロ金利が必要だった。国債に大きな金利が付いてしまえば、政府はばら撒くのではなく借金返済にお金を使わなければならなくなるからである。
国債の需要と供給
だがその低金利を実現するために中央銀行が買い支えをしなければならなかったということは、その低金利では普通の投資家は国債を買いたがらなかったということである。ダリオ氏はこう述べている。
債券の需要と供給がマッチしなかったので、中央銀行が債券を買い支えた。債券に十分な買い手がいなかったということだ。だから中央銀行が来て買い支えた。そしてそれは自由な市場を捻じ曲げながら金利を低位に抑え続けた。
それでも米国債を買ったのは、国債を買わなければならなかった中央銀行や銀行と、ダリオ氏はあと1つ買い手のカテゴリーを挙げている。
だから今、中央銀行は大量の米国債を抱えている。市中の銀行も大量の米国債を抱えている。日本人も大量の米国債を抱えている。
そして今やどうなったか? コロナ後の現金給付によってインフレが起こり、インフレ抑制のために金利を上げなければならなくなり、更には量的緩和で国債を買い入れていた中央銀行が量的引き締めによって保有量をむしろ減らすようになった。
元々中央銀行の他にはほとんど買い手が見つからなかった国債市場で、アメリカ政府はむしろ国債発行を増やしているにもかかわらず、一番大きな買い手だった中央銀行が保有量を減らしている。
それが国債市場の状況である。それで国債価格が下落し、金利が上がっている。
チューダー・ジョーンズ氏: 米国債の大量発行で金利はまだまだ上がる
そしていまだ残っている買い手、つまり銀行と日本人はどうなっているか? ダリオ氏はこう言っている。
そして彼らは米国債の値下がりで損失を出している。
日本人とドル
だが米国債を保有している日本人にとっては、これまでドル高が国債下落の損失を補填してくれていたかもしれない。だが来年予想されている景気後退が来ればドルは下がることになる。
ガンドラック氏: アメリカの景気後退でドルは暴落する
このタイミングで筆者の周りの日本人でドル預金の話をする人が増えてきている。彼らはいつもナイスタイミングである。彼らがNISAの話をし始めた時がまさに米国株の天井だったように。
ジム・ロジャーズ氏: 他人の意見で投資をするとほぼ間違いなく失敗する
それでも米国債は米国株よりはマシな投資なのだろうが。
2024年の米国株予想: 株価は最大で50%下落する
国債下落のスパイラル
さて、国債に話を戻そう。デフレと低金利の時代が、インフレと高金利の時代に置き換わった。低金利の時代に増やし続けた莫大な政府債務に大きな金利が付き、アメリカ政府も日本政府もそれを支払わなければならなくなっている。
高い金利が大きな利払いを呼び、政府の利払いは国債発行で賄われるだろうから、金利が高くなるほど国債発行が増えてゆく。そして更に金利が高くなる。
ダリオ氏によれば、そのサイクルに入った時の典型的な兆候が最近の世界経済で見られるという。ダリオ氏は次のように述べている。
典型的なサインは、中央銀行が大きな損失を計上することだ。
最近、日本でも日銀の損失が報じられた。ドイツやイギリスでは中央銀行の損失をどう補填するかが問題となっている。
ドイツの中央銀行、資金不足で政府の口座への利払い停止を決定
人々は紙幣を刷ることのできる中央銀行は破綻しないと思っているが、歴史的に見ればそうではないことをダリオ氏は以下の記事で説明していた。
世界最大のヘッジファンド: 中央銀行でもインフレで破綻する可能性
結論
国債の利払い増加と高金利の負のスパイラルは一度突入すると止まらなくなり、どんどん加速してゆく。
ダリオ氏は こう述べている。
今、経済はそういう加速に非常に近い状況にある。そうなれば状況は悪化してゆく。
アメリカでは実際に金利上昇によって政府債務の問題が大きく議論されるようになっている。
だが日本も似た立場にある。むしろ政府債務は日本の方が大きいので、日本の方が大きな問題なのである。
日本国債の空売りを開始、植田新総裁で長期金利上昇を予想 (2023/3/2)
ドラッケンミラー氏、日本のインフレで日本国債を空売り (2023/5/2)
筆者やスタンレー・ドラッケンミラー氏など、日本国債の下落トレンドに賭けている投資家のポジションは今のところ成功している。これからどうなるだろうか。楽しみに待ちたい。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/42178
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18:777
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2024/04/27 (Sat) 02:14:06
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円安進行で日銀方針転換!量的緩和終了!?【一般ライブ】4/26 (金) 17:00~17:30【渡 邉哲也show】渡邉哲也×西村幸祐×小野寺まさる
https://www.youtube.com/watch?v=YmI8pwhIu0o
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19:777
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2024/04/30 (Tue) 12:52:08
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【Front Japan 桜】渡邉哲也 円安はなぜ?どこまで進むのか?[桜R6/4/30]
https://www.youtube.com/watch?v=vgOq-3rUK9k
【円安ドル高】なぜ日本の円安は止まらないのか…アメリカとの根本的な政策の違いとは【渡辺哲也SP対談】渡邉哲也×荒瀬弘毅
2024/04/27
https://www.youtube.com/watch?v=2q63dQoov8U&t=1165s
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20:777
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2024/08/01 (Thu) 05:15:32
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高橋洋一 緊急Live 日銀が利上げ!なんて事だ!
https://www.youtube.com/watch?v=uZADXdPmunM
日銀、利上げとテーパリング決定、記者会見での植田総裁の発言まとめ
2024年7月31日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51799
7月31日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.25%に引き上げることを決定した。また、現在行われている国債の買い入れについて、徐々に減額すると発表した。いわゆるテーパリングである。
ゼロ金利脱出とテーパリング
まずは利上げからだが、政策金利がゼロ金利から0.25%に引き上げられた。これは3月にマイナス金利から離脱したことに続いての動きである。
日銀、マイナス金利とETF買い入れを終了、量的引き締めを視野に (2024/3/20)
これで長年続いたゼロ金利政策が終了した。経済への影響としては、変動金利で住宅ローンを借りていた人に対する金利がいよいよ上がることになる。固定金利が超長期国債の金利に影響される一方で、変動金利は政策金利に影響されるからである。
また、この会合では日銀による国債買い入れ(つまり量的緩和)の金額を段階的に縮小することが発表されている。現在6兆円である毎月の買い入れ額は、2026年第1四半期までに半分の3兆円に減らされる。
金融引き締めの理由
こうした決定の理由は当然インフレ対策である。植田総裁は会合後の記者会見でまず実体経済について次のように発言している。
賃金と物価が連環を高めつつ緩やかに上昇してゆくと見込まれます。
そしてやはり言及しなければならないのが円安である。植田氏は次のように述べている。
これまでの為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じていまして、物価の上振れリスクには注意する必要もあると考えています。
こうした状況を踏まえ、物価安定目標の持続的安定的な実現という観点から、今回政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整することが適切であると判断しました。
利上げは正しかったのか?
さて、植田氏はいつもの冷静な表情で淡々と述べているが、筆者はこれがかなりの苦渋の選択だったのではないかと考えている。
何故ならば、植田氏の発言は円安については正しく、実体経済については正しくないからである。
それは最新のCPI(消費者物価指数)統計を見れば分かる。日本のインフレ統計はアメリカのものとは逆になっており、食品とエネルギーを除くコア指数は減速しているが、エネルギーは加速している。
食品とエネルギーは海外のコモディティ市場に影響されるため、ドル円が高くなれば物価が上がる。
一方で内需の強さに依存しているコア指数(日銀が勝手にコアと呼んでいるものとは別である)のインフレ率は1.9%まで下がってきており、特に直近2ヶ月のデータが弱い。更に、GDPは消費の減速から最新のデータはマイナス成長となっている。
一方で日銀自身の金融緩和によってドル円は上昇しており、その結果特にエネルギーのインフレが加速していた。
弱い内需と上がるドル円のジレンマ
だから日銀は選択を迫られていた。緩和を止め、利上げでドル円の上昇を止めなければ、ドル円と輸入物価は上がってゆく。しかし利上げをしてしまうと既にかなり弱っている日本経済はますます弱ってゆくだろう。
このジレンマについてはかなり前から指摘しておいた。日銀はインフレか経済減速か、どちらかを選ぶしかないと。
そして中央銀行の役目は 物価の安定であり経済成長ではないから、植田氏は輸入物価の上昇を止めるため、黒田前総裁が開始した円安政策を徐々にもとに戻してゆくことを決定したのである。
結果、ドル円は下がった。経済成長より輸入物価抑制だという植田氏の決意が伝わったのか、ドル円は下落している。
しかし既にマイナス成長(2四半期続けば定義上景気後退である)に陥っている日本経済は、利上げを受けてどうなってしまうのか。
結論
植田氏は今後の経済見通しについて次のように言っている。
背景として賃金や物価が上昇しているという中での動きですので、経済・物価がこれを契機に減速するという風には必ずしも見ていないということと、より長期的な観点から申し上げますと、非常に低い水準にある金利を経済物価情勢に合わせて少しずつ調整しておいた方が、物凄い急激な調整を強いられるというリスクを減らすという意味で、全体としてはプラスになるという考え方もあり得るかなという風に思っております。
だが利上げは今回だけではないらしい。植田氏は同時に次のようにも言っている。
経済物価情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整してゆく方針です。
植田氏は確かに「引き続き」と言っている。つまりこれからも利上げするということである。
だが正直筆者は日本経済がそれに耐えられるとは思えない。何度も言うが、日本経済は既にマイナス成長なのである。
そして利上げは株価にとってもマイナスである。2022年、米国株はアメリカの利上げによって急落した。世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏は以下の記事で、日銀の利上げによって日本株も同じような急落を経験する可能性を指摘している。
レイ・ダリオ氏: 日本、金利上昇で経済崩壊の可能性
会合後の日経平均は、むしろ上がってる。だが筆者は日本経済の展望にかなり警戒している。本当に大丈夫だろうか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/51799
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2024/12/10 (Tue) 16:31:42
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レイ・ダリオ氏: 日本人は日本政府の低金利政策のせいで年間7%の資産を失っている
2024年12月9日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57066
世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が日本やアメリカの政府債務とマネタイゼーションについて語っている。
政府債務の意味
アメリカでは政府債務が大いに話題になっている。アメリカではコロナ後に金利が上がり、GDPの129%という莫大な政府債務に多額の利払いが発生しているからである。
米国政府は借金の利払いのために借金を増やしている。政府債務が雪だるま式に増えるプロセスが開始しており、利払いの金額はGDP比で見て次のように増えている。
だがアメリカのこのプロセスは始まったばかりだ。まだ利払いがGDPの1%ほど増えたに過ぎない。上がり方が急速だから非常事態ではあるのだが、まだこれから始まる話に過ぎない。
政府債務はなぜ問題か
アメリカで政府債務が雪だるま式に増えるプロセスが始動していることはただの事実である。だが政府債務はなぜ増えてはいけないのか?
それは国債市場にも需要と供給があるからである。買い手に対して供給が多すぎれば国債の価格は下落するだろう。
グリフィン氏: 米国債暴落でブラックマンデー再来の可能性
ましてや今はインフレによって中央銀行が量的緩和を出来なくなっている。だから政府債務だけではなくて、インフレ政策によるあらゆるツケが回ってきているのである。
では国債の価格が下落すれば誰が困るのか。ダリオ氏は次のように言っている。
誰かの負債は誰かの資産だ。
困るのは国債の保有者である。では国債の保有者とは誰か? 銀行である。
だが銀行はもともとお金を持っていない。お金を預かっているに過ぎない。銀行は預かったお金で国債を買っている。ではそれは誰のお金か? 預金者である。
麻生太郎氏も言っていたではないか。借金をしているのは政府であって国民ではないと。
だから国債価格が下がって困るのは政府ではない。国民の方である。
国債価格が下落しない代わりに
預金者は銀行を通して大量の国債を保有している。だからダリオ氏は次のように言っている。
通貨が富の貯蓄手段だと言うとき、実際にはそれは債務が富の貯蓄手段だということを意味している。
そしてそこに大きなリスクがある。
だが実際には、先進国で国債価格が大幅に下落する可能性は低い。多くの人は漠然とそう思っているだろうし、それは正しい。
しかし国債の需給問題は事実として存在する。では政府はこの問題をどうするのだろうか?
ここで登場するのが日本である。国債価格を下落させられないなら、量的緩和で日銀に国債を買わせたり、低金利を維持させて債務負担を減らすしかない。
ダリオ氏は次のように述べている。
日本は非常に良い例だ。
日本が過去15年ほど行なってきたことは、平均してアメリカよりも3%低い金利を維持することである。そして自国通貨の価値を年率4%下落させている。だから日本人は年間7%を失っている。
誰も気付いていないが、低金利政策で得をするのは金利を払う側である政府であり、損をするのは金利をもらう側である国民である。
更に2022年まで誰も気付いていなかったが、政府のインフレ政策もまた、債務(イコール日本円)の実質的な価値を下落させ、日本円の保有者の犠牲によって債務者である政府の借金を実質的に帳消しにする政策である。
数年前まで誰も知らなかっただろうが、インフレとは 物価上昇という意味なのである。インフレ政策を支持していた人にとっては何という驚きだろうか。その結末は名前に書いてある。
ダリオ氏は次のように言う。
インフレは通貨の保有者から少しずつ資金を奪う。人々は名目の金額で物事を考えすぎだ。インフレを差し引いた実質ではお金のことを考えない。
マネタイゼーションのために債務の保有者を犠牲にしているのだ。
結論
更に日本人にとって物悲しいのは、ダリオ氏が次のように述べていることである。
同じことがわれわれアメリカ人にも起きる可能性がある。
お分かりだろうか。ダリオ氏にとっては日本人の資産減少は既に起きた話なのである。アベノミクス以来、日本円の価値は半分になっている。
減価された日本円で計算した日本のGDPが上がって喜んでいるような国民が気付けるわけのない話なのだが、減価した通貨で計算したGDPや株価が上がるのは当たり前の話である。それはGDPや株価が上がったのではなく、円が下がったのである。
恐らく日本人はこのまま自分が資産を失っていることにさえ気づかずに、日本政府によるマネタイゼーション完了を見届けるのだろう。まさにダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予言した、衰退してゆく先進国の典型的なシナリオである。
すべてはこれまで数十年の選挙の結果である。日本国民が自分で望んだことなのだから、他人がどうこう言えることではないのである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57066