『カリガリ博士』(原題:Das Cabinet des Doktor Caligari、カリガリ博士の箱=眠り男がその中で眠る箱を指す)は、1920年に制作された、ロベルト・ヴィーネ監督による、革新的なドイツのサイレント映画である。本作品は、一連のドイツ表現主義映画の中でも最も古く、最も影響力があり、なおかつ、芸術的に評価の高い作品である。 フィルムは白黒フィルムが使用されているが、場面に応じて緑、茶色などが着色されている。現在入手できるのは1996年に再編されたバージョンである。
クラカウアーへの反論の例を示す。Thomas Elsaesserは著書"Weimar Cinema and After"の中で、クラカウアーの著書を、「歴史学の見地における、空想の」論であると酷評した[5]。Elsaesserは、ヒトラーの政権掌握は本作品の発表後に起きたことであり、よってクラカウアーのカリガリ博士がヒトラーを体言しているという考えは矛盾している、と断言した。Elsaesserは、当時のドイツの社会通念と映画の関連性を分析するには、研究対象として取り上げた映画が少な過ぎるとしてクラカウアーを批判した。さらに、結末の変更によって、映画の革新性が失われたと主張するクラカウアーに対し、脚本の革新性を過小評価し過ぎているとも批判した。
1962年の映画「怪人カリガリ博士」(en:The Cabinet of Caligari)は、車のタイヤがパンクしたJane Lindstromという女性が博士の屋敷に閉じ込められ、そこからの脱出を試みるが、実は彼女自身が妄想に苛まれた精神病患者であったことが分かるというストーリーで、原作とは基本的には類似した構造だが、別のシナリオになっている。表現主義的な傾向は最後に数分間見られるだけのハリウッド的なスリラー作品である。