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GUSTARD DAC-A26 _ 旭化成 AK4191+AK4499EX搭載のDAC

1:777 :

2022/11/16 (Wed) 20:48:17

旭化成社の最新フラッグシップDAC IC「AK4499EX」計2基と「AK4191」計1基を搭載した GUSTARD DAC-A26

Amazon | GUSTARD DAC-A26
ASAHIKASEI AK4499EX*2 XMOS AK4191+4499
¥205,400
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BPL6VGL5/ref=sr_1_9?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=2V68CERR1HHDR&keywords=Gustard%2BDAC&qid=1670581759&sprefix=gustard%2Bdac%2Caps%2C262&sr=8-9&th=1


【新製品】GUSTARD A26:デュアルAK4499EX&AK4191 DACチップ デスクトップ デジタル-アナログコンバーター - audio-sound @ hatena
https://www.ear-phone-review.com/entry/product/GUSTARD_A26


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GUSTARD DAC-A26 の先行製品の評価

S.M.S.L D400EX D/Aコンバーター
¥139,000
https://www.amazon.co.jp/S-M-S-L-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97DAC%E3%80%8CAK4499EX%E3%80%8Dx2%E6%90%AD%E8%BC%89-MQA%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%82%BE%E3%83%BBDSD%E9%9F%B3%E6%BA%90%E5%AF%BE%E5%BF%9C-LDAC%E3%83%BBAPTX%E3%83%BBAPTX-HD%E3%83%BBAAC%E3%83%BBSBC%E5%AF%BE%E5%BF%9C-CK-03%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E6%90%AD%E8%BC%89/dp/B0BLCFG7ZP/ref=sr_1_1?adgrpid=144627600473&hvadid=633426193379&hvdev=c&hvqmt=e&hvtargid=kwd-1885311682271&hydadcr=9490_13611828&jp-ad-ap=0&keywords=smsl+d400ex&qid=1668599562&qu=eyJxc2MiOiIxLjM0IiwicXNhIjoiMC4wMCIsInFzcCI6IjAuMDAifQ%3D%3D&sr=8-1


旭化成社の最新フラッグシップDAC IC「AK4499EX」計2基と「AK4191」計1基を搭載し、2chオーディオ出力回路、各チャネルに「AK4499EX」が計1基搭載され、こちらの最新オーディオアーキテクチャ「SDAA」に基づいて、チップの性能を限界まで引き出し、0.00006%(-124dB)という驚くほど超低歪みに達し、業界最高水準の超高いSNRと超低い歪率が実現する!


メーカー ‎Shenzhen Shuangmusanlin Electronic Co.,Ltd
Part number ‎D400EX
商品の重量 ‎1.85 kg
製品サイズ ‎18.8 x 24 x 4.6 cm; 1.85 kg


【製品仕様】:

入力端子:USB/光ファイバ/同軸/I2S/Bluetooth/AES

出力端子:ライン(RCA)、バランス ライン(XLR)

THD+N:0.000067%(-123.5dB)、0.000053% (-125.5dB)(A-WTD)

ダイナミックレンジ:XLR:133dB RCA:128dB

SNR:133dB

Bluetooth ver:BT5.0(LDAC・APTX・APTX-HD・AAC・SBCに対応)

USB伝送方式: 非同期伝送

対応OS(USB接続):Window7/8/8.1/10/Mac OSX10.6以降/Linux/Android(otg)/ios(AppleLightning-USB camera kit)

ビット:

USB/I2S: 16bit/24bit/32bit/1bit

光ファイバ/同軸: 16bit/24bit/1bit

サンプリングレット:

USB/I2S:PCM 44.1~768kHz DSD64、DSD128、DSD256、DSD512

光ファイバ/同軸: PCM 44.1~192kHz

MQA decoder:USB/光ファイバ/同軸/AES

MQA-CD decoder:光ファイバ/同軸/AES


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SMSL D400EXのレビュー(AK4191+AK4499EX搭載のDAC)
Posted on 2022/11/8 火曜日 by yohine
http://innocent-key.com/wordpress/?p=20674

2022/11/15 音質比較に簡単な注釈を追記

発売直後に買ってすぐ届きましたので、世界的に見てもほぼ最速のレビューになりそうです。

目安の測定値はアップしますが、近いうちに測定系の詳細はASRなどでアップされると思いますので詳細はそれらのサイトにおまかせする形として、ここでは音についてメインで書いていきたいと思います。

最新AK4191+AK4499EXの実力は
最初に結論から書きますがこの世代は今までのDACチップとは到達点のステージが全く違います。個人的にDACに求める要素の8割くらいはD400EXのような物量で満たしていますのでこの世代は期待できます。特定の趣向以外に幅広くおすすめできる世代のDACアーキテクチャとなりそうです。

さらに期待が深まるのは今後出てくると予想される「物量型かつ高特性なAK4191+AK4499EX搭載モデル」です。おそらくGustardあたりが最初になるのかなと予想していますが、かなりの到達点が期待できそうです。正直D400EXですら数十万円のDACどころか百万ちょっとくらいまでのDACをいくつか過去のものにするくらいの実力はあると感じました。

今後はAK4191+AK4499EX以前とそれ以降でDACの世代を分離して語る必要が出てくるかもしれません。個人的にはそれくらいのポテンシャルを感じました。かつてそういう進歩はPCM1794やES9018が担っていたと思います。これはその次の世代に位置づけできると思います。

ではD400EXについてです。まず今までの中華系高特性DACの問題点です。これらは特性は良くても音に問題があるとずっと伝えてきましたが次のような点です。

高域寄りのバランスでキツめな描写も見られる
余裕がなく必死な雰囲気がある
中高域にデジタルっぽい階調感が残る、生楽器の音が人工的だったりノイズっぽい
背景音はよく出るのに線が細く音が前に出てこない、前後感に乏しい
アタックが滲んでいて定位感や質感が失われる
低域の伸びが不足して速度も遅い、場合によっては膨らんで他の帯域をマスクする
これは今までチェックしたTopping DX7 pro、Topping DX5、SMSL D300、Gustard A22などでも一部該当する問題点で、すべてを同時にクリアしている製品はありませんでした。

ToppingやSMSLの低額高特性モデルだと1-4あたりは全部該当、Gustard A22は1、2、4は概ねクリアしてますが3、5あたりは苦手なポイントです。D300も概ね良かったですが圧倒的な駆動力不足で4と6の問題があります。このように中華系高特性DACでは従来までリストの全部を満たすことはなくて何かしらハイエンドクラス機と比較して微妙なところが残っている評価でした。

しかしD400EXはこれらの問題を概ねクリアしています。一部あと少しな要素もありますがこの価格帯なら十分すぎる成果です。とにかく今までデジタル処理やアナログ段に多大な労力を支払っているハイエンド機や積分形DACが達成していた領域に初めて到達した中華高特性DAC製品でしょう。D400EX単体だと少しだけノイズっぽい質感が残るところもあるのですが、送り出し側や後段プリアンプや電源で緩和できそうなレベルです。

もちろんD400EXで完全ではないと感じる要素もあります。それは駆動力のフラットさとワイドレンジをベースとした絶対的なアタックの正確性と焦点描写です。音のアタック≒インパルス応答の瞬間には多くの情報が含まれており、それが極低域から空間描写や定位や音の質感まで決める重要な要素です。これがハイエンドで最も予算のかかる要素だと思っています。

個人的にも去年後半から単純な駆動力でなくそのフラットさや焦点の領域を追求し始めましたが、その視点ですとD400EXは少し丸くて曖昧で柔らかいので不足感はあります。とにかく現状気づいたD400EXの問題はこの点と、高域が少しノイズっぽい点(クロックか電源起因と予想)のみです。

ただしこのための改善はここから電源やアンプ回路やクロック性能も全部重要なのですべて対策したら製品を安くできません。またその評価のためのシステムも安くないです。正確な評価のためにはDAC以外にアンプやSP=スピーカ(ヘッドフォン)の性能が高いレベルで必要なので、ミドルローまでのシステムの人ですと、耳が相当良くない限りここで書いた焦点的な重要性や価値に気づくことは難しいのではと思っています。

なのでD400EXは条件付き=厳しい領域に足を踏み入れていない大半の人に推奨できそうな製品と言えそうです。

この大半に含まれない例外になる人々というのは基礎クオリティと無関係の趣向の人(例:真空管、無帰還趣向など)や、超ハイエンド趣向の人ですが、このような人たちには推奨しようとは思いません。

念の為書いておきます。ハイエンドの極を追求する旅はD400EXでは終わりません。ハイエンドの人はこれで満足することは決してないと思います。これらの方はある意味病的に細かい部分を追求し、常に不満点を探し、もっと上に上にと行きます。コストもクオリティも労力も度外視で追求し続ける修行者のような方々です。なのでこのような方々を除いて…と注釈つきでの推奨モデルです。

当サイトの過去紹介DACと比較したD400EXの音的位置づけ
D400EXの到達点についてまとめてみたいと思います。以下基本的に明記してない場合は基礎クオリティに関連するパラメータが中心の評価です。


Topping DX5

この製品は過去には紹介していませんが、中華系リファレンスとして比較参考用に手元にあります。まずは価格帯の近いこちらから書きます。

駆動面の弱さはどちらも共通で傾向は似ています。おそらく小型スイッチング電源仕様でそこのコンセプトが同じだからでしょう。それでもDX5はToppingの中では重心が低めでバランスが良く聞きやすい製品です。

ただD400EXと比較するとDX5はより神経質よりで高域が悪い意味で目立ちます。システムのスピーカやアンプの性能が上がり、自然な高域の伸びや低域の瞬発力が上がってくるとDX5の音は良くない強調感がありその割に細かい音は毛羽立ちやデジタル的な質感によってマスクされている、そういう印象になっていきます。

このあたりは環境によって相性が出てくると思います。ローエンドに近いシステム環境だとスピーカもアンプもすべてが曖昧で丸くなっていきますのでむしろToppingのような強調感がちょうどよいと感じられる場合があるかもしれません。その場合はそれで良いのですが、色々と買い替えてシステム性能が良くなってくると本来のDACの問題点が明らかになってきます。

ここで問題に着手せずうるささを緩和するためにいろいろなアクセサリーに投資するようなことになると最悪です。システムの問題を他の要素による癖や相性問題で緩和していくと、それらをリセットするまで何を変えても解決困難という状態になりがちです。

そういうときは素直にD400EXに行くと一気に問題が解決すると思います。この二機種はそういう位置づけと思いました。

積分形DAC SONY PCM-501ES
AK4499EXは帯域内外ノイズが少なく、AK4191が高精度なデジタル処理をしているため、D400EXはアナログフィルターでマルチビットな積分形DAC比でも従来の中華系DACと比べて高域の階調感やノイズ感が劇的に緩和されています。これは素晴らしいです。正直現行のただ高いだけの一部のDACでは全然達成できていない製品のほうが多い分野だからです。

あとは余裕があって存在感がある力強い音こそ積分形DACが優秀ですが、それ以外の部分の背景音の緻密さや細かさ、焦点や定位の正確性ではD400EXが世代的特性的にもだいぶ優位です。なので各要素をトータルで見ると確実にD400EXは積分形DAC以上です。

あえて今積分形DACを選ぶ理由を考えてみますと音の余裕やアナログ的な質感です。積分形DACのほうがあたたかみがあるのでそこは好みです。ただ基礎性能にはだいぶ差があるのでそれを差し引いても温度感を優先するかどうかが問われそうです。



Chord DAVE

現在手元にはないので記憶での比較になってしまいますが、積分形DACの傾向から見て高域解像度は同等でしょう。駆動の力強さもおそらく似たようなレベルだと思います。DAVEもD400EXも現代ハイエンド的な駆動力はないです。

DAVEは帯域外ノイズが多いので質感はD400EXがより自然、定位もD400EXのほうが広い、背景音の描写力もD400EXでしょう。トータルではこれもD400EXのほうが良いと思います。

ここであえてDAVEを選ぶ理由を考えると、デジタルフィルターの絶対精度ですね。DAVEならM-scalerによるさらなるデジタル処理の発展性もあります。ただ帯域外ノイズが多いので高域の質感は自然ではなく、ノイズを外部フィルターで除去する(コモンモードに効く4次フィルターが必要)か、むしろノイズによる質感が好みに合うかどうか次第でしょうか。

DAVEを選ぶ理由になるのはChordのデジタルフィルターの音や帯域外ノイズの音自体が好きかどうかが分かれ目になると思います。



Mola Mola Makua

基本的な傾向は似ています。最大の違いは駆動力性能です。細部描写と駆動力この2つの要素を天秤にかけてどちらを選ぶか分かれそうです。

高域の質感はD400EXのほうが良いですし細部の描写も若干D400EXが優位だと思います。逆にMakuaはスローロールオフフィルタなので立ち上がりこそ良いですがデジタル階調感があり帯域外ノイズも若干気になります。プリアンプ内蔵なので少しだけ背景音が曇っている感じがあり、高域に少しエッジが立っていてそれが耳につく感じも少しあります。

ですが駆動面はMakuaのほうが優位でいわゆるハイエンド的な時間軸の正確性では上です。この性能は上にも書いてますが測定値には現れにくく、そして低価格では得難い領域なので、かなりの価格差がありますが同様の傾向を持つDACはたいてい安くなくD400EXが駆動面で不利なのは仕方ないところでしょう。



Mytek Manhattan 2

よく引き合いに出されているのを見るのでこれも紹介します。記憶での比較ですが相対的な製品の位置づけや音は覚えていますので概ね傾向はお伝えできると思います。

基礎性能はほぼ全面的にD400EXの方がいいと思います。実はManhattan 2の内部設計は物量型ES9038proですので設計的な優位性ってそんなにないです。物量型の割に出力駆動性能もそこまで高くないですし測定値的にもあまり優秀ではないのであとは音楽性です。

Manhattanは面白い製品で「心拍数が上がる方向性の音」です。なのでそういう音が好きかどうかです。正直質感は荒いし駆動も乱暴ですがそれがむしろ魅力と感じるかどうか。そういう方にとってはD400EXはぐっとこない、大人しくてきれいで物足りない音となるでしょう。

この例からわかるように、これからは基礎クオリティを追求するために高額製品を買うというより、音が趣向や好みにあうかどうか、あとは音以外の要素を追求する時代に入る可能性が高いと思っています。なのでManhattanはそういう時代でもあえて選ぶ理由のある製品かもしれません。



MSB discrete DAC、dCS Bartok DAC

これらは所有こそしていませんが、同メーカーのモデルを使って比較視聴をしていますので参考程度に追記します。同じモデルではありませんが各社の上位モデルを音も含めて厳密比較をしたので以前より精度の高いレビューを書けると思います。

dCSですがこのメーカーのデジタルフィルターはそこまで精度が高くありません。上位機含めても背景音の描写、余韻描写も得意ではないです。なので質感の良さ、自然さ、静寂感という意味ではD400EXのほうが優位でしょう。

ですがdCSには絶対的な優位性があります。それは駆動力的な面です。これはmola molaやMSB比でも強力なので現行機ではdCSが最も強力と思います。音の絶対的な立ち上がり精度、駆動力、タイミング精度ではdCSのDACを今でも積極的に選ぶ理由があります。

ただ残念ながらBartokは上位モデル比でそこは強くありません。APEX以降>旧Rossini以降>Bartok以下とグレードが明確に分かれてくるところです。なので正直dCSに行くなら最低Rossini以上、今ならAPEXまでいかないと中途半端だと個人的には思ってしまいます。更に悪い話としてdCSはクロックを入れることが前提です。クロックなしの単体DACで使っても立ち上がりがソフトで時間軸描写はベストになりません。なので総合的に見てとんでもないコストがかかります。これが無慈悲なハイエンドの世界です。

そしてD400EX比で数百万円かけて得られるのはタイミング精度とか駆動の余裕などです。正直根本的なdCSのデジタル処理精度の悪さはクロックやDAC基板をかえても改善しないので、高域の自然さとか余韻の描写力とかは数百万円かけてもD400EXのほうが良い可能性が高いです。残酷ですがそういうものだと思います。

MSB DACは上位機になると圧倒的に強い異次元のトータル性能があるのですがDiscreteクラスだと正直普通のDACと異次元と言えるほどは変わりません。それでも強調感のない駆動のフラットさ、丁寧で緻密な描写、優れた奥行き描写など、総合的に問題が少なく優れていて良い製品だと思います。ただMSBはもともとバランスが良いだけにD400EX比で価格並みに圧倒的なところは何もないと思います。MSBのDiscreteクラスだとこのような印象でしょうか。

MSBの最大の懸念はR2R特有の高域の質感の問題です。これを改善するためにはトランスプリアンプやLPF入りのプリアンプなどでR2Rの高調波=帯域外成分の除去をしないと素の質感はD400EXのほうが自然で良いかもしれないです。これはMSB上位でも同じ傾向です。


音質比較まとめ

高額製品を交えてこんなことを書いたら怒られてしまうと思っています。ただ一応フォローとなりますが駆動はMSBのほうがフラットで自然だし帯域外高調波さえ取れば質感も良いです。D400EXもまだまだな点も問題もあります。でも価格差が10倍以上でも大きな音的な問題が解決できていない高額製品はどうかと思いますので、こういうことはきちんと伝えていかないといけないと思っています。

もちろんMSBの上位モデルもR2Rの問題を除けば総合的に素晴らしい到達点にある製品だと感じました。価格もとんでもないですが他では得られない世界があるとお伝えしておきます。上に書いたように価格だけですべての問題は解決しませんが、価格だけが解決できる問題もある、という罪作りな事実があります。

D400EXから上の世界、そこでは価格が上がれば何でも解決してくれる。そんな簡単な世界ではなく逆に難易度が上がっていく、問題が次々可視化されて悩みが増えていく終わりのない道です。

あまり希望のない話で申し訳無いです。難しいところですが大事なことはそのような厳しい世界を前に、自分にとって何が必要で何が必要でないかを見極めておくことだと思っています。何が必要なのかわかっていないのに高額機器を買うのはリスクが高すぎますし、その前に色々聞いて自分を知るべきかなと思っています…。

しかしまだ趣向が定まっていない人に、とりあえずとしておすすめできるのはD400EXのような製品でしょう。

まだ特定の理想主義に至っていない、または効率主義ならば、価格に関係なく問題が少ないモデルを選ぶことが大事で、ちょうどD400EXは多くの人にとって(音的な)問題が少ないモデルだと予想しています。

まとめます。予算に制限がある殆どの方(ハイエンド思考の人以外)に推奨するならD400EXでいいし、アンプやSPやルームチューンに予算を回したほうが効率的だと思います。このDACに不満を感じて先に行くのは手持ちのシステムや自分自身がDACにもっと高い性能を要求したときで良い。そう感じました。

補足:私自身も毎年新しい音の評価軸をいろいろな経験から発見することがあり、今書いているレビューも後で見返したらまだまだわかってないだらけだと感じると思います。ですが今わかっていること、今感じたことは今の段階では真実です。なので今の精一杯をお伝えするだけです。

2022/11/15 注釈を追記します。上記レビューですが自宅環境比較の項目ではトランスポート周りをあえて無対策環境で比較しています。ですがトランスポート側を改善するとD400EXのノイズっぽさが目立ってくる傾向がありました。この問題はもしかしたら後付の対策で解決が難しい可能性があります。やはり上位システムほど細かい問題が明らかで、満足の難易度は高いです。

AK4191+AK4499EXの優位性とその理由
技術的なお話になりますが、他ではまず詳細に語られない部分だと思いますのでまとめておきます。

このようなAK4191+AK4499EXのような分離チップは個人的にかなり前から待望していました(AK4497時代にTIASでAKMの人に偶然あいまして、分離型の要望を直接伝えたことがあります)。さらにAKMはそれを予想を上回る「理想的な形」でリリースしてきました。なぜ理想的なのかそのあたりについて説明します。

分離化によるデジタル処理の大幅な強化
それはデジタル処理精度の大幅進化です。D400EXでわかった音質の飛躍で貢献度が高いのはAK4499EXというよりむしろAK4191でしょう。

R2R世代以降のほぼ20年近くの間、DACチップはほとんどすべてアナログ回路とデジタル回路が一体型でした。なので必然的にデジタル処理用のチップはアナログチップと同居できるサイズやプロセスと言う無言の制約がありました。

しかしデジタル部を分離することでデジタル側はデジタルに特化したプロセスにすることができます。昔のチップと比べて「飛躍的に優秀」と言えるのはアナログではなくデジタルでしょう。たとえば組み込み用小型コンピュータの処理能力が20年前より飛躍的に向上したのはラズパイなどでご存じの方も多いと思います。

この優位性をDACチップとしてはじめて投入した世代がAK4191+AK4499EXといえます。

DACの内蔵デジタル処理は20年間ほとんど進歩していなかった
AK4191がどの程度のプロセスを使ったのかは不明ですが、少なくとも仕様を見る限り2003年発表のPCM1794世代から20年間大した進歩のなかった状況からは明らかに次元の異なる内容となっています。

それがわかるのはこの部分です。データシートはNDAこそありませんが登録限定公開みたいなので、一部抜粋でのみ掲載します。

Ripple: ±0.001 dB, Attenuation: 150 dB (Sharp Roll-Off Filter Setting
64-bit Dual / 32-bit Single Input PCM I/F


これらが示すのは、内部処理が64bitになったこと、128fsまでのハイサンプルレートアップサンプリングに-150dBという高い抑圧かつ低リップルのフィルターを実現できたこと、です。

この重要さを説明するのは非常に困難なのですが、簡単に言えばデジタル領域での広帯域SNが従来比で飛躍的に高まった、アナログフィルターにかなり近い超高精度の処理が可能になったということです。

データシートを一見するだけだとPCM1794のフィルター特性も十分優秀そうなのですが、AK4191で次元が違うのはアップサンプルの倍率です。



PCM1794は4fsのフィルターです。抑圧とリップルだけなら似たようなレベルですがこれはDSPで実現するのは難しくなく現代ではかなり軽いフィルターだと言えます。

しかしAK4191の128fsのフィルターは簡単ではないです。デジタルフィルターはサンプル周波数が上がるごとに処理が重く高精度処理が速度的に厳しくなっていくからです。おそらくPCM1794比で数十倍くらいは処理の重さが違うんじゃないでしょうか。少なくともデータシートによるとAK4191は初段フィルターだけで1280タップ。それ以降はもっと大きな差があります。

このように従来型のDACでは処理能力の制約が厳しかったため、ほとんどすべての製品は4-8fs以降のMHz領域へのアップサンプリングは線形補間などの簡易補間を使ってデルタシグマ段へ送っています。これがどういう問題を引き起こすのか。線形補間のフィルター特性を紹介します。



線形補間では4倍アップサンプリングの抑圧特性で-30-40dBしかなく0.5fs以内の周波数特性もかなり悪いです。これが線形補間ですらない最も軽量なサンプル&ホールドだともっと特性が悪いです。大半のDACでは768kからアップサンプリングする場合はこの程度の特性しか得られません。そのため768k~の帯域に発生しているノイズは除去できず盛大な折り返しノイズとなってデルタシグマ段に入力されます。これが従来型DACチップの問題です。



対してAK4191ではシャープロールオフ設定で1.5Mサンプル周波数で入力したときにこの抑圧特性が最も悪くなりますが、それでも-50dB以上の抑圧があります。なのでAK4191は線形補間ではありません。-50dBの抑圧率を達成するにはFIR系のフィルターだと予想されますが、この周波数帯でFIRを使うことは高い処理能力が要求されますので、一体型DACチップのデジタル回路では難しいと予想されます。

AK4191では384kHz以上の入力でノイズ抑圧性能が低下する
上のフィルター特性図を見る限り「超ハイレゾ音源(PCM 1536kHz, 64bit; DSD 44.8MHz) の再生に対応」このような宣伝は音の良い理由と無関係どころか384k以上で入力すると大半のフィルター設定でノイズ抑圧特性が劣化しますから192k以下で入れるほうが概ね性能は良いです。

これが従来型チップですとPCなどで768kなどにアップサンプルして送るほうがDAC内部の線形補間より高精度なアップサンプルが可能なだったため一定の優位性があったわけですが、AK4191は外部でいくら頑張ってもチップの仕様による問題がありますので外部アップサンプルしないほうが良いとなる可能性があります。

簡単なまとめ
従来型ではDACチップにデジタル回路が統合されており、簡単な処理しかできなかった
その方法論はPCM1794から20年間ほとんど進歩していない
従来型では数MHz領域のノイズ抑圧処理が簡易化の影響で特性が悪い
これを本格的に見直したDACチップメーカーもハイエンドメーカーもほぼ皆無
ということです。そしてこれらを実現する初の次世代DACチップアーキテクチャがAK4191+AK4499EX構成ということです。

ちなみにですがこの問題に予算度外視で真面目に対策しているのはハイエンドメーカーでは唯一Chordだけじゃないでしょうか。そうでなければ100万タップなんて不要です。しかしChordは盛大な帯域外ノイズを出してしまう欠陥がありました。

AK4191+AK4499EXはマルチビットやアナログフィルターを克服したか
これは20年間言われ続けてきたデルタシグマの違和感やデジタルフィルターの違和感から、AK4191+AK4499EX構成によって初めて開放される可能性を示唆しています。この数MHz領域のノイズはデルタシグマ段に入力されノイズフロアと一体化します。その結果はデジタルフィルターの違和感とまとめて判断されがちですが、この部分が長らくデルタシグマの音の問題の一つの原因であり、すべての従来型デルタシグマ系DACチップの課題だったと考えています。

デルタシグマ型DACの不可視的課題の存在は、同時にアナログフィルターNOSDACやマルチビット型の優位性でした。

アナログフィルターは無限のサンプル周波数で処理をしているのと同じなのでデジタルのような折り返しノイズがありません。その代わり位相ずれやチャンネル誤差やアナログフィルター自体がノイズを発生する問題がありました。
マルチビットの場合アップサンプルの要求は低くデルタシグマのように数MHz~数十MHzまで行う必要がないので高度なデジタルフィルターが不要で折り返し問題と戦う必要がありませんでした。そのかわりビット精度の問題が発生し、THDや帯域外高調波の問題を引き起こしていました。それでも一定の音質的優位性があったので完全にデルタシグマを置き換えることはありませんでした。
AK4191+AK4499EXではもはやこの問題はありません。帯域内ノイズも帯域外ノイズも極小、THD+N特性も最高峰、デジタル処理も高精度、IC化されており小型化も可能で誰でも現実的な価格で買える、という従来のDACの解決困難な課題がほぼすべてクリアされ、史上最も完璧に近いDACチップ構成と言えそうです。

正直これらは積分形DACの音を聞いて以降ずっとデルタシグマ型の課題だと個人的には考えていたところです。実験でこのあたりのフィルター特性を強化したディスクリートDACを作ったりもしましたがAK4191に近い傾向に なります。なのでほぼ確信的です。

これらは大事なノウハウなので積分形DACの記事ではわかる人にだけわかるようなメッセージを発信していたつもりですが、AKMはそれに気づいてきっちりと対策をしてきました。とても素晴らしいと思います。このサイトは海外からは見えないのでESSが停滞している間にロームにも頑張ってほしいと思っています。

とにかくこんなものを中華DACが普及価格帯で投入したインパクトはおそらくデジタルに詳しい人にしかわからないかもしれませんが、個人的にはオーディオDAC業界における巨大なパラダイムシフトだと思うくらい重要な進歩でした。

ということで音が良いにはきちんと合理的な理由があると考えています。単純にチップを分離したから良くなったという簡単な理由ではないです。今後の世間によるAK4191+AK4499EX世代とマルチビット系DACの比較レビューが今から楽しみです。


D400EXの測定特性

参考程度です。測定はCosmosADC、APUを使っています。

D400EX@SPDIF、I2S入力時、5.6MHzアップサンプル

D400EX@USB入力時、5.6MHzアップサンプル

D400EX@SPDIF、I2S入力時、11.2MHzアップサンプル

D400EX@APUノッチフィルター有効(THD+N=118.6dB)、5.6MHzアップサンプル

D400EX@5MHzレンジのノイズ分布、5.6MHzアップサンプル

D400EX@5MHzレンジのノイズ分布、11.2MHzアップサンプル


測定まとめ

ASRに掲載されると思うのであえて掲載してませんが周波数特性も20kまでほとんど減衰なしなので設計に問題はないです。ジッターを見るJ-testも最近の高特性DACはではどれも問題なしで、ノイズフロアが上昇するような粗悪な製品は皆無です。あとは-150dB帯のスペクトルの裾の広がり具合の差のみです。

特にカタログスペックの基準と思われる5.6MHz動作時のTHD+N特性は非常に良好です。気になったのはカタログスペックより実機は若干劣ることと、50Hzのハムの存在です。Topping DX5などではハムはないのでDAC側の設計の問題だと思います。SMSLが紙の上での高特性を売りにしているならきちんとしたほうが良い部分だと思いました。個人的には測定は重要ではなく目安だと思っているので問題なしですけど。

ジッター特性ですがSPDIFやI2S入力のときはスペクトルの裾がやや広がります。I2S入力のほうがクロック条件は良好のはずなのですが改善しないためこれは内部設計の問題です。USBでは問題がありませんので特性を気にする場合はUSB入力、5.6MHzで使うことがASR的ベスト評価になりそうです。I2Sで音が変わるDACを探しているならSMSL以外のほうがいいかもしれません。

こちらの音質テストではSPDIF系のノイズ対策+11.2MHz動作が良好です。測定を見ても11.2Mのほうが帯域外ノイズが少なくなっています。THDと帯域外ノイズどちらの影響が音として大きいのかは個人差もあるかもですが、自分は帯域外ノイズのほうが質感に大きく影響すると感じます。11.2MでもTHDは-100dBと大半のR2R-DACより良いですしそこまで問題はないです。

このあたりは環境や趣向によっても変わってくる部分だと思いますので参考程度にしてください。DDCやトランスポートの状況、アンプの機種によっても印象は変わってくると思います。

ライン録音による音質比較
ここではTopping DX5とSMSL D400EXの比較ファイルを置いておきます。DAC側のDDCは共通でどちらもSPDIF同軸です。DAC最大出力のゲインが異なっているので、ローノイズプリアンプでゲインを0.5dB以内に揃え、CosmosADCで録音しています。THD特性はプリアンプ側の制約を受けていますがノイズもTHD+Nも良好なので影響は最小限です。

アップサイズの問題があるので96kHzにしています。このレートが違いを聞き取れるギリギリですが上げても大差はないのでこれで十分です。というか録音で取れる違いはちょっとレートを上げても一部だけですので、あとは実機を聞いていただくしかありません。

https://72.gigafile.nu/0216-j29a17ef7ecf0f028e372f09a2488a477

96kHz/24bitのwavはこちらです。200MB位あります。なお使用音源(izme – Raise)は当サイトでのオーディオ検証用の比較用途のための許可を取得済みです。

音声プレーヤー
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ボリューム調節には上下矢印キーを使ってください。
SMSL D400EX(シャープロールオフ、11.2M)

音声プレーヤー
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ボリューム調節には上下矢印キーを使ってください。
Topping DX5(デフォルト設定)

こちらはmp3です。違いはわかりにくくなりますがアップ期限がありません。この試聴の印象については各自の判断にお任せいたします。

注意点
以前にAK4499のキットをリリースしているので、色々疑惑があると思いますが、先に宣言しておきます。

キットはやりません。
結構な絶賛記事になっていますが宣伝意図ではないです。
AKMからお金なども受け取っていません。
今回聞いて思ったことは今更苦労してキットなんて作る意義ないってことです。むしろD400EXを聞いて色々とやる気はなくなりました。もはや中華製品を買ったほうが安くて確実です。おそらくMatrixかGustardあたりが良い製品作ります。やすいのがいいならSMSLかToppingのAK4499EX製品でも十分良さそうです。

おそらくですが今後DACは音質面ではなくて、デザインや機能や音作りのセンスで差別化する、枯れたアナログアンプのような趣味性の高い世界となり、世代ごとによる陳腐化のペースは急速に緩やかになっていくと思います。ここから先は基礎クオリティの追求はコスト効率が極めて悪く、安く簡単に解決できる問題はあまり多く残されていません。

ましてや素人が、個人がなにかできる余地はあまり残されていません。以前のAK4499キットでは簡単なDSPを積んで高精度フィルターを積んで他のDACと差別化していましたがこれよりももっと高度な処理がAK4191を使えば誰でも達成できます。
http://innocent-key.com/wordpress/?p=20674

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