中世のアシュケナージ系ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究(Brace et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、イギリスのノリッジ(Norwich)遺跡の中世の井戸の底で発掘された6個体のゲノム配列データを報告します。これらの遺骸の改定放射性炭素年代分析は、歴史的に確認された1190年2月6日の反ユダヤ主義暴力事件の一部だったことと一致します。これら6個体のうち4個体は密接に関連しており、6個体は全て現代のアシュケナージ系ユダヤ人と強い遺伝的類似性を有していました。
個体SB604は、多くの染色体の大半を構成する長い複数の同型接合連続領域(runs of homozygosity、略してROH)を有しており(図2)、近交係数(0.21)は1親等の組み合わせの子供で予測されるものに近くなっています。この個体で特定されたひじょうに長い最大で約40 cM(センチモルガン)となるROHは、ごく最近の近親交配事象を示唆します。さらに、個体SB676とSB605における長いROHの割合は、両親が2親等の親族関係にあることと一致します。観察されたROHが低い有効人口規模により完全に説明できる可能性は除外されます。それは、ROHの長さの分布が短いROHの過剰を示すと予測されるからで、これは観察されませんでした(図2)。以下は本論文の図2です。
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参考文献:
Brace S. et al.(2022): Genomes from a medieval mass burial show Ashkenazi-associated hereditary diseases pre-date the 12th century. Current Biology. https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.08.036